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博士学位論文審査結果の要旨

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Academic year: 2021

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京都女子大学大学院

博士学位論文審査結果の要旨

学位申請者氏名

       

陳        鳳

論 文 題 目

中国における伝統的社会集団の歴史的変遷とその現状

――華北山西省農村を事例として

論文審査担当者

主    査      竹  安  栄  子      ㊞ 審査委員      首  藤  明  和      ㊞ 審査委員      松  下      洋      ㊞ 審査委員      東  元  春  夫      ㊞

本論文は、現代中国社会において、新中国成立後消滅したとされていた宗族と社が復活している 実態に着目して、中国村落社会における伝統的集団である宗族と社に関する先行研究で残された課 題を整理し、中国社会で伝統的集団が果たしてきた役割と現代的意義を明らかにすることを目的と している。

本論文は、第1部11章、第2部8章、参考文献を含む本文190頁と族譜図などの付属資料6点 からなっている。2015年 1月24日に開催された公開審査会および引き続き行われた審査委員に よる協議の内容の要旨は以下の通りである。

1.宗族については膨大な研究が蓄積されているが、本論文では第1部の第2章から第5章にわ たって、1920 年代から現在に至るまでの中国、日本、欧米の宗族に関する諸研究を網羅的に渉猟 し、詳細に検討している。また社に関する先行研究は宗族と比較すると数少ないが、第6章におい て中国、日本における研究の検討が行われている。審査会ではこれらの先行研究の検討の努力と分 析内容の的確さが高く評価された。

2.筆者は先行研究の分析を通して、宗族の歴史的変遷を整理し、元来血縁集団として成立した宗 族が、長い歴史の中で、また地域によって、政治的機能や経済的機能などの利益型集団として成立 する事例が様々あることを明らかにしている。社についても、地縁集団として祭祀機能を目的に結 合した集団から、行政機能や経済的互助機能を担う集団など多様な形態があることを明らかにし た。その上で、第7章において社会学の集団理論に依拠しながら、多様な成立動機によって形成さ れた宗族と社を包括的に理解し、その多様性を説明する分析枠組みを提示している。筆者は、政治 的、経済的条件によって変化する多様な宗族も、その成立根拠は根源的共同にあり、愛と親和の程 度に応じて血縁・系譜型から政治的利益追求型に変容すると結論づけている。本論文は、集団の分 析枠組みを動的視点から構築することを目指した点で、社会学分野における貢献は大きいといえ る。

3.第2部では、華北山西省段村における実地調査にもとづいて、現代中国社会における宗族と社

(2)

京都女子大学大学院 の実態が明らかにされ、宗族と社が現代中国社会で果たしている役割が考察されている。本論文が 研究対象とする華北地方の調査研究は、1940 年代に実施された『中国農村慣行調査』以外めぼし い研究は行われたことがなく、これまでほとんど解明されたことがない華北地方の実態を明らかに した点において本論文の独創性は高く評価される。

  実態調査は予備調査も含めると2001年から2014年までの14年にわたって実施され、延べ70 人近い村民を対象としたインタビュー調査と、調査地に残された資料の内容分析で構成されてい る。筆者によって発掘された「銀銭流水帳」は 19世紀末から 20 世紀半ばまでの社の役割の歴史 的変遷を知る上で貴重な一次資料であり、インタビュー調査結果とともにその資料的価値は高い。

  なお審査会では、先行研究の考察によって明らかにされた多様な宗族形態の相互連関と変動のダ イナミズムが説明されればより本論文の価値が高まると思われること、また今後の課題として第2 部の実態調査の分析を一層精緻化することが望まれるとの意見が表明されたが、上述のように本論 文が優れた独創性と学術的意義を有していることより、審査委員会は全員一致で、本論文が現代社 会研究科公共圏創成専攻の博士論文に値すると評価した。

参照

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