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(1)

シッフ(Schiff) 試薬の検討

(社)愛知県臨床衛生検査技師会病理細胞検査研究班

名古屋大学大学院医学系研究科

医療技術学専攻病態解析学講座

(名古屋大学医学部保健学科検査技術科学専攻)

橋本克訓

(2)

PAS (Periodide acid Schiff) 反応とは

・過よう素酸によって隣接した水酸基(ヒドロシル基)をもつ、炭素間の 結合が切断されることによって生じたアルデヒド基に、シッフ(Schiff) 試薬が結合しシッフ塩基を形成し、赤~赤紫に呈色する反応のこと。 ・分析化学ではアルデヒド基の証明、病理学的には多糖類の証明を はじめ、粘液、真菌の検出、基底膜の染色のために用いられる。 ・病理検査でHematoxylin Eosin染色以外で最も多用される染色法の 1つである。

(3)

シッフ (Schiff) 試薬

・H. Schiff (ドイツ人)によって考案された。成分は塩基性フクシンと亜 硫酸からなる。 ・製法によりボイルド(boiled)シッフと、コールド(cold)シッフの2種類 がある。 ボイルドシッフの作製法 (200ml) 200mlの蒸留水を沸騰させる。火を消した後、塩基性フクシン1gを加 え、よく撹拌しながら再度沸騰させてフクシンを溶解する。50℃に冷 えた後、濾過し、1N 塩酸を20ml加える。流水で25℃に冷却後、無水 重亜硫酸ナトリウムを1g加えて撹拌する。 コールドシッフの作製法 (200ml) 蒸留水192mlに亜硫酸ナトリウム5g溶解し、濃塩酸8mlを加える。 塩基性フクシンを2g加え、1晩撹拌する。その後、活性炭を1g加え、 10分間撹拌後、濾過する。(Mowryの処方)

(4)

塩基性フクシン (basic fuchsin)

・パラローズアニリン(pararosanilin)の同族体が混合した

色素の総称である。

・シッフ試薬として重要なのはパラローズアニリンである。

pararosanilin (magenda 0)

rosanilin (magenda II) neufuchsin (magenda III) rosanilin (magenda I )

(5)

シッフ試薬の調製とaldehydeとの発色反応

SO32-

H+

SO32-

(6)

シッフ試薬の調製とaldehydeとの発色反応

- OSO2

(7)

愛知県内で用いられているシッフ試薬の調査

・ Muto (cold):

21

・自家調製 (cold):

6

・ Muto (boiled):

16

・ Merck (boiled) :

8

・ Sigma-Aldrich (boiled) :

1

・不明/ 未解答(boiled):

4

合計56施設 (cold: 27 vs. boiled: 29)

(愛臨技のPAS反応推奨法はcold シッフを推奨)

(8)

【検討事項】

1. シッフ試薬の種類による反応性の違い。

・既製品シッフ3種(ボイルドシッフ2つとコールドシッフ1つ)

・自家製コールドシッフの使用色素による反応性の違い

(パラローズアニリンHCl、パラローズアニリンbase、塩基性フクシン)

2. シッフ試薬の温度による反応性の違い。

(室温、冷蔵庫中、37℃温浴中)

3. 組織による反応性の違い。

(胃粘膜被覆上皮細胞、腎生検、真菌)

4. その他

(9)

【方法】

腎生検、胃粘膜被覆上皮細胞、真菌をそれぞれ、

室温、4℃(冷蔵庫内)、37℃(温浴中)の3種の温度

のシッフ試薬で反応させて、染色性の違いを観察した。

PAS反応の各工程は愛臨技の推奨法に準じた。

(10)

検討に用いたシッフ 試薬

入手先・種類 含有色素 色素

入手先

色素含有量 (100ml中) 1 A社 (boiled) pararosanilin (HCl) 0.46g 2 A社 (cold) pararosanilin (HCl) 1.36g 3 B社 (boiled) pararosanilin (HCl) 0.091g 4 自家製 (cold) pararosanilin (HCl) C社 1g 5 自家製 (cold) pararosanilin (base) C社 1g 6 自家製 (cold) basic fuchsin D社 1g 自家製 (cold)シッフ試薬はMowry の処方で調製した。

(11)

PAS反応 愛臨技推奨法

1.脱パラ、脱キシ、水洗

2.1.0%過よう素酸

10分

3.水洗

5分

4.コールドシッフ

15分

5.亜硫酸水

3層 各3分

6.水洗

5分

7.核染色(マイヤーのヘマトキシリン)

8.色出し(温湯)

5分

9.脱水、透徹、封入

(12)
(13)

シッフ試薬の種類(メーカー、製法)による染色態度の差異

A社 ボイルド A社 コールド B社 ボイルド

(14)

自家製シッフ試薬(コールド)の使用色素の種類による染色態度の差異

C社パラローズアニリン(HCl) C社パラローズアニリン(base) D社 塩基性フクシン

(15)

【結果】

・腎生検組織では、B社のボイルドシッフの基底膜の染色

性が他のシッフ試薬より悪かった。

・パラローズアニリン (base)を用いたコールドシッフ試薬

も、他のシッフ試薬に比べ染色性が悪かった。

・塩基性フクシンはメーカーによってパラローズアニリンの

含有率にばらつきがあり、シッフ試薬として使用に耐えない

製品もあるようであるが、C社の製品は良好であった。

(16)

シッフ試薬の反応温度による影響

(17)

シッフ試薬の温度による染色態度の差異 A社 ボイルド

(18)

シッフ試薬の温度による染色態度の差異 A社 コールド

(19)

シッフ試薬の温度による染色態度の差異 B社 ボイルド

(20)

シッフ試薬の温度による染色態度の差異

自家製 コールド 色素:パラローズアニリン(HCl)

(21)

シッフ試薬の温度による染色態度の差異

自家製 コールド 色素:パラローズアニリン(base)

(22)

シッフ試薬の温度による染色態度の差異 自家製 コールド 色素:塩基性フクシン

(23)

シッフ試薬の反応温度による影響

(24)

A社 ボイルドシッフ

(25)

A社 コールドシッフ

(26)

B社 ボイルドシッフ

(27)

自家製コールドシッフ(パラローズアニリン HCl)

(28)

自家製コールドシッフ(パラローズアニリン base)

(29)

自家製コールドシッフ(塩基性フクシン)

(30)
(31)

室温 4℃

A社 ボイルド A社 コールド B社 ボイルド

(32)

自家製コールドシッフ

パラローズアニリン(HCl) パラローズアニリン(base) 塩基性フクシン

(33)

結果

1. 腎生検組織における基底膜の染色性に関しては、B社の

ボイルドシッフは、他社シッフ試薬や自家製コールドシッ

フに劣る。

2. 自家製シッフのうち、色素にパラローズアニリン(base)を

用いた場合、パラローズアニリン(HCl)に比べ、染色性が

劣る。

3. 塩基性フクシン(D社)のものは染色性が良好であった。

4. シッフ試薬は低温時の反応性が特に腎生検組織におい

て減弱した。しかし、胃粘膜被覆上皮細胞、真菌の反応

性は低温時でも室温と同様の良好な反応性を示した。

(34)
(35)

シッフ試薬の経時的温度変化

(冷蔵庫から室内に出した時) 0 5 10 15 20 25 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 条件 ・日時:4月3日 15時、天候:雨、室温:22.5℃、室内水温(蒸留水):21.0℃ 方法 ・シッフ試薬(B社)を冷蔵庫から出し、ガラス製染色壺に50mlに移して室内に 放置し、5分おきに温度を測定した。

(36)

シッフ試薬+アルデヒド添加後の呈色反応

0分 5分 10分

15分 30分 30分以降室温 B社シッフ試薬500μ l+20%ホルマリン1μ l添加 左:氷温、右:室温

(37)

【考察】

教科書には“シッフ試薬は室温に戻してから用いる”と

記されているが、胃粘膜被覆上皮細胞、真菌に対しては、15

分間の反応時間では4℃でも、室温と遜色ない反応性を示し

た。一方、腎生検組織では、4℃での基底膜への反応性が

減弱した。この現象は市販のボイルドシッフ2品が自家製を

含む、コールドシッフより顕著に現れた。

PAS反応物質が少ない場合、もしくは切片が薄い場合、

低温時の反応性の減弱が認められるのではないかと推測

する。特に色素含有量が少ない、ボイルドシッフに顕著に現

れるのではないか。

(38)

【考察】

逆に言えば、PAS反応物質が組織・細胞中に豊富に存在

する場合は、低温時でも室温の時と同程度、シッフ試薬の反

応が起こるのではないかと推測する。

今回の検討で、冷蔵庫から取り出したシッフ試薬の温度

変化を経時的に調査した結果、室温になるまでに90分間を

要した。低温時にシッフ試薬の反応が減弱する対象組織、

物質があることを念頭に入れて、シッフ試薬は使用する90分

以上前に冷蔵庫から出しておくことが望ましい。

【結語】

PAS反応はシッフ試薬を室温に戻してから行うべきである。

(39)

【今後の課題】

・PAS反応のシッフ試薬の至適温度、時間

→ 冷蔵庫から取り出してすぐ使用する施設も少なくない。

(14/56施設)。

室温になるまで90分もかかるが、90分間、待つ必要が

あるのか?

→ 反応時間を15分に固定した場合、どの程度、シッフ試薬

の温度が上昇すれば室温と同等の反応結果が得られる

のだろうか?

・シッフ試薬の劣化について。

(40)

シッフ試薬の回復法

第85回日本病理組織技術学会(平成24年3月4日)の抄録より PAS反応におけるシッフ試薬の検討 -劣化したシッフ試薬の回復について- 湯浅瑛介1),田口勝二2),村石佳重2),高橋 啓2) 東邦大学医療センター大橋病院電子顕微鏡室1),同 病理部2) 以下のURLで抄録が掲載されている。 http://www.sasappa.co.jp/jsht/modules/program/index.php?content_id=219

(41)
(42)

0 5 10 15 20 25 30 35 40 0 5 10 15 シッフ試薬の経時的温度変化(室温から37℃の温浴に入れた時) 16分で37℃に達した。

(43)

青系シッフ試薬

チアジン系に分類される色素は青色系シッフ(blue Schiff)として応用で きる。なお、従来のシッフ試薬はRed- Schiffとよばれることもある。 Medical Technology別冊 最新 染色法のすべて p139 チアジン系色素のトルイジンブルーOとチオニンで青色系シッフ試薬の 作製を試みた。

(44)

A F E D C B

青系シッフ試薬

大腸粘膜上皮細胞 A: HE B: PAS C: アルシアン青 D: トルイジン青水溶液 E: トルイジン青・シッフ F: チオニン・シッフ

(45)

青系Schiff試薬の染色態度(腎生検組織)

(46)

青系Schiff試薬の染色態度(胃粘膜被覆上皮)

(47)

青系Schiff試薬の染色態度(真菌)

参照

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