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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 鈴 木 友 己

     学 位 論 文 題 名    ´

     ・   A newlmmunOSuppreSSant , FTY720 ,     inCanlnekidneytranSplantation :

ea ・ ・ . eCtofSingle ‐ drug , induCtionandCOmbinationtreatmentS

(イヌ腎移植モデルにおけるFTY720 の単独,

   イ ン ダ クシ ョ ン お よ び 併 用 治 療 効 果)

学位論文内容の要旨

1.研究目的

  FTY720(FTY)は末梢血中 のTリンパ 球を長期 間選択的 に減少さ せる特性 を有した新 規免疫抑制剤であり,この作用機序はりンパ球におけるアポトーシスの誘導あるいはり ンパ節やパ イエル板 へのりンパ球ホーミングの促進によるものであるとされている,

本実験は, イヌ腎移 植モデル を用いてFTYの免疫抑制効果,作用機序,薬物動態なら びに毒性について検討した.

2.方法

  雑種成犬(体重11‑13kg)をドナーどし雌性ビーグル成犬(体重9‑llkg)をレシピェン ト とし た 。 実験 群 はコ ン ト ロー ル を 非治 療 群と し ,FTY単 独 治療 群 を 投与 量 より 0.05,0.1,1,5,10mg/kgの5群とした .インダ クション 治療群は ,FTYの投与量を 5mg/kgと し 術 前3日間 , 術日 と 術 後2日目 ま での3日 間 , 術後3日 目 から の3日 間 , 術日のみ投与の4群とした.併用治療群は非有効投与量のcyclosporine A(Cs心5mg/kg とtacrohmus(FK)0.5mg/kgの単独治 療群に0.1と5mg/kgのFTYをそれぞれ併用投 与させた6群 とした, インダク ション治 療群を除 く全ての治療群は免疫抑制剤を手術 翌日より90日 間連日経 口投与し た,生存 日数なら ぴに血液 生化学検査 (クレアチニ ン:Cre,BUN,AST,ALT,LDH,総ビ リルビン ,血糖) ,術後の 末梢血中 自血球お よびりンパ 球数の変 化を解析した,各免疫抑制剤の経時的な血中濃度と剖検時に採取 した腎グラ フトI腸間 膜リンパ節,脾臓,胸腺におけるFTYの組織内濃度を測定した.

病理組織学 的検索と して腎グラフトに韜ける拒絶反応抑制効果の評価およびそれ以外 の各種臓器 の病理学 的異常に関して検討した.また,リンパ組織におけるアポトーシ ス細胞の程度評価をTUNEL染色法にて行った,

3.結果

  非 治療 群 に おけ る 中間 生存日 数は12日で あった, 全てのFTY単 独治療群 は非治療 群に比べてわずかではあるが有意な生存日数の延長を認めた,投与量0.1mg/kgのFTY 単独投与群の中間生存日数が22.5日と最も長かったが,容量依存効果は認めなかった.

インダクシ ョン治療 群は術後3日目から の投与群 を除く全ての群で単独治療群と同程 度の生存日 数の延長 を認めた .CsA単独治 療群の中 間生存日 数は22日であ った.CsA との 併 用治 療 群 の中 間 生存日 数はFTY投与 量0.1mg/kgで25.5日,5mg/kgで27日

(2)

と明らかな生存日数の延長は認められなかった.一方,FK 単独治療の中間生存日数は 29 日 で あ り IFK と の 併 用 治 療 群 は 投 与 量 O.lm g/kg で 49.5 日 ,投 与量 5m g/kg で 50 ロと併用治療効果を認めた,

   生化学検査において,術後Cre の変動は非治療群において術後10 日目で、10m g/cll を 超え 〕単独 治療 群で はCre の 上昇 は非治 療群 より 数日 遅れ るが ,グ ラフ トは 全て 10m g/cll を超える腎不全を呈し,インダクション治療群も同様であった,CsA との併 用 療法 群にお ける 最終 Cre は10m g/cll 近 くま で上 昇したが,FK との併用治療群では 平 均 Cre は 観 察 期 間 中 5mg/dl 以 下 で あ っ た , BUN と Cre 以 外 の生 化学検 査値 は全 て の実験群において異常値を認めなかった.

   血液 学的検 査に おい て非 治療 群, CsA ま たは FK 単 独治 療群 はり ンパ 球数 の変 動は 認 めな かった がFTY 治 療群 は著 しい りンパ 球の 減少 を認め,治療後3 日目に術前値の 30 %以下の値を示し観察期間中低値を維持した,

  FTY 血 中 濃 度 は 容 量 依 存 的 に 増加 し,CsA ま たは FK と の併 用投 与にお いて それ ぞ れ の 薬 物 濃 度 に 影 響 を 及 ぼ さな かっ た, 同投 与量 のFTY 血中 濃度 と比 べて FTY 組 織 内濃度は100 倍以上であり,特に脾臓において高かった。

   病理組織学検索において非治療群の全グラフトでSevere rejection を認め,単剤治 療 群ま たはイ ンダ クシ ョン治療群においても同様であった,CsA との併用治療群で漕 moclerate か ら severe rejection の 所見を 認め ,FK との 併用 治療 群で はmoclerate rejection の み で あ っ た . 全 て のFTY 治療 群は 軽度 のmacrophage の肺胞 内浸 潤と , 回 腸の パイエ ル板 にお ける りン パ濾 胞の 増大 を認 めた ,TUNEL 染 色法 にお ける アポ トーシス細胞はどのりンパ組織においても非治療群,治療群ともに散在的に認めるの みであった.

4 .考察

  FTY 単 独治 療の 効果 は強くなかったが,周術期のインダクション治療により単独治 療 群と 同等の 免疫 抑制 効果を認め,術日1 日間投与のみでも拒絶反応抑制認めた,こ れ はFTY の速 やか な反 応と その 効果 が長期 に持 続す ることを示している.FTY は多種 に わた る動物 の実 験モ デルで他剤との併用効果を認めているが,今回の実験ではCsA と は 認 め ら れ ず , FK と の 併 用 お いて 免 疫 抑 制 効 果 の 増 強 を 認め た, しか し, FTY O.lmg/kg と5mg/kg の併 用治 療に おけ る容 量依 存効 果は単独治療と同様に認めなかっ た。これらの結果は,臨床応用を考慮した場合,十分な末梢血リンパ球の減少が認め ら れれ ばFTY の投 与量 を増 やす こと に意味 がな いこ とを 示し てお り, 言い 換え れぱ FTY は非常に安全域の広い免疫抑制剤であるとも言える,゜FTY0.05 mg/kg の投与量で,

既にパイエル板のりンパ濾胞の増大を伴う末梢血中リンパ球数の著しい減少が認めら れている,また,治療群におけるりンパ飾組織のアポトーシス細胞は非治療群と比べ て 増加 してい ない こと などから,FTY の主な薬物作用機序はりンパ球ホーミングであ る こと を強く 示唆 した .FTY 血中濃度は全ての群において投与量と相関したが,経時 的 に上 昇傾向 を示 した .これはFTY の組織蓄積性と長い半減期が原因であると考えら れ ,臨 床応用 の際 には 注意 が必 要で ある と考 えら れた .FTY 治療 群に おけ る肺 胞内 へ のmacrophage の 浸潤 を除 いて I 肝 毒性, 耐糖 能異 常, 顆粒 球減 少, 造血 障害 ,感 染症のエピソードは全投与群を通じて存在しなかった.総じて,臨床前および臨床試 験 にお いてFTYf ま 重篤 な副 作用 を有 して いな いと され てゎ り, 本実験 でも FTY の有 効 投与 範囲内 にお いて は問題となる副作用は存在しなかった.FTY の作用機序は既知 の免疫抑制剤とは全く異なるもので重篤な副作用は有しておらず,主要免疫抑制剤の 拒絶反応抑制効果の増大と副作用を軽減する目的の併用剤として臨床での応用が十分 期待できるものであると考えられた,

     ・101 −

(3)

学位論文審査の要旨

     学 位 論 文 題 名

    A newlmmunOSuppreSSant , FTY720 ,      ●

    lnCanHlekidneytranSplantation :

ea . . . eCtofSingle ・ drug ,induCtionandCOmbinationtreatInentS

(イヌ腎移植モデルにおけるFTY720 の単独,

   イ ン ダ ク シ ョ ン およ び 併 用 治 療 効 果 )

  臓器移植における既存の免疫抑制剤のもつ感染症や臓器障害などの副作用は時に個体に とって重篤な合併症となる,これらの副作用を軽減する目的で作用機序の異なる免疫抑制 剤による多剤併用療法が行われているがより安全で有効な免疫抑制剤の登場が待望されて いる.FTY720(FTY)は末 梢血中 のTリンパ球を長期間選択的に減少させる特性を有した新 規免疫抑制剤であり,この作用機序はりンパ球におけるアポトーシスの誘導あるいはりンパ 節やパイエル板へのりンパ球ホーミングの促進によるものであるとされている.本実験は,

イヌ腎移植モデルを用いてF1Yの免疫抑制効果,作用機序,薬物動態ならびに毒性につい て検討された.非治療群における中間生存日数は12日であった.全てのFTY単独治療群は 非治療群 に比べ てわずか ではあ るが有意な生存日数の延長を認めた.投与量O.lmg/kgの FTY単独投与群の中間生存日数が22.5日と最も長かったが,容量依存効果は認めなかった.

インダクション治療群は術後3日目からの投与群を除く全ての群で単独治療群と同程度の 生存日数の延長を認めた.サイクロスポリン単独治療群の中間生存日数は22日であった.

サイクロスポリンとの併用治療群の中間生存日数はFTY投与量O.lmg/kgで25.5日,5mg/kg で27日と 明らかな 生存日数 の延長は認められなかった.ー方,FK単独治療の中間生存日 数は29日 であり,FKとの併 用治療群 は投与量O.lmg/kgで49.5日 ,投与量5mg/kgで50日 と併用治療効果を認めた.生化学検査において,術後クレアチニンの変動は非治療群にお いて術後10日目で10mg/dlを超え,単独治療群ではクレアチニンの上昇は非治療群より数 日遅れるが,グラフトは全て10mg/dlを超える腎不全を呈し,インダクション治療群も同様 であった.サイクロスポリンとの併用療法群における最終クレアチニンは10mg/dl近くまで 上昇したが,FKとの併用治療群では平均クレアチニンは観察期間中Smg/dl以下であった,

血液尿素窒素とクレアチニン以外の生化学検査値は全ての実験群において異常値を認めな     −102−

也 光 省 克 利 村 出 堂 々    

(4)

かった.血液学的検査において非治療群,サイクロスポリンまたはタクロリムス単独治療 群はりンパ球数の変動は認めなかったがFTY治療群は著しいりンパ球の減少を認め,治療 後3日目に術前値の30%以下の値を示し観察期 間中低値を維持した.FTY血 中濃度は容量 依存的に増加し,サイクロスポリンまたはタクロリムスとの併用投与においてそれぞれの 薬物 濃度 に影 響を 及ぼ さな かっ た .同 投与 量のFTY血中 濃度と比べてFTY組織内濃度は 100倍以上であり,特に脾臓において高かった。病理組織学検索において非治療群の全グラ フトでSevere reectionを認め,単剤治療群またはインダクション治療群においても同様で あった.サイクロスポリンとの併用治療群ではmoderateからsevererejectionの所見を認め,

タクロリムスとの併用治療群ではmoderaterejectionのみであった,全てのFTY治療群は軽 度のmacrophageの肺胞内浸潤と,回腸のパイエル板におけるりンパ濾胞の増大を認めた.

TUNEL染色法にお けるアポトーシス細胞はどのりンパ組織においても非治療群,治療群と もに散在的に認めるのみであった,以上より ,F1Yは広い安全域を有し,主要免疫抑制剤 の拒絶反応抑制効果の増大と副作用を軽減す る目的のadjuVantdmgとして臨床での応用が 十分期待できるものであると結諭づけた,

公開発表後、副査の上出教授より1)容量依存効果を認めなかった理由2)リンパ球減少の程 度と治療効果との関係3)サイクロスポリンとタクロリムスのそれぞれの併用治療群におけ る治療効果の違い4)実験動物の臨床所見についての質問があった.それらに対し,1)実験 データよりFTY投与量0.lm餅くg以下の投与量において容量依存効果が存在するであろう可能 性があること2)リンパ球減少は投与量において差を認めず治療効果との相関は得られなか ったこと3)過去におこなったイヌ肝移植での成績を示し移植臓器の違いが原因のーっであ ること4)FTYを投与された動物の臨床所見に異常は認めなかったこととの回答があった.主 査の野々村教授より1)他の免疫抑制剤と比較してFTY720の優れている点2)実際の臨床応 用での使われ方3)小腸移植での効果についての質問に対して1)単独での免疫抑制効果は 強くないが併用効果が期待でき安全性が高いこと2)術後早期に他剤と併用することによっ て免疫抑制剤の量を減らせること3)小腸移植の拒絶反応の場とりンパ球ホーミングの場が 異なるため小腸移植での免疫抑制効果も期待できるとの回答を得た,最後に副査の藤堂教授 から1)FTYの作用機序についての質問があった.これに対して,リンパ球アポトーシスとホ ーミングの2つの説が当初存在したこと,そして,現在ではホーミングが主要メカニズムで あり,sphmgosinebnaseによって燐酸化を受けたF1yがsphingosine1.phosphate受容体を介 してりンパ球ホーミングを生じること.更に,人での徐脈の原因が これに起因するとの回答 がなされた,また,副査の藤堂教授からはタクロリムスの毒性,FTY720の小腸移植での効果 についての追加コ メントを頂いた.当該研究より得られた結果は,FTY720の臨床応用に 際して極めて有益な情報をもたらすものであると判断し,審査員一同は,これらの成果を 高く評価し,申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した.

103 ‑

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