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学 位 論 文 内 容 の 要 旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 難 波 憲 司

学 位 論 文 題 名

合成ムラミルジベプチド誘導体ロムルチドの造血亢進作用 および感染抵抗性増強作用に関する実験的研究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  細菌 菌体 成分の免疫強化作用に関する免疫薬理学的研究は、 その活性部位の特定および 化 学合 成に よる 合成 免疫 強化 剤の 開発 へと 発展 して きた 。 ムラ ミルジベプチド(MDP;N‑

acetylmuramyl‑L‑alanyトD‑isoglutamine)は、細菌細胞壁ペプチドグリカンの有する免疫ア ジ ュバ ント 活性 を担 う最 小構 造単 位と して同定され、以来、MDPおよぴその誘導体の構造 活 性相 関と 作用 機作 に関 する 研究 が進 められてきた。現在では、数種のMDP誘導体がサイ ト カイ ン誘 発剤 とし て位 置づ けら れ、 その臨床応用が検討されている。MDP誘導体のーつ で ある ロム ルチ ド[MDP‑Lys (L18)]は、そのサイトカイン産生 誘導作用を介した造血亢進 作 用に 基づ き、癌患者における自血球減少症の治療薬として世 界に先駆けて本邦で臨床応 用 され た。 従来、合成免疫強化剤の癌領域への展開は、癌の免 疫学的治療そのものを目的 と した もの であった。しかし、口ムルチドの場合は、癌治療に おける補助療法および癌患 者 のQOL向 上の 一助 と位 置付 け られ る。このような薬剤の重要 性は、癌患者の主な死因が 感 染症 と出 血であることからも明らかである。抗癌化学療法や 放射線療法の副作用である 骨 髄障 害に よる自血球減少や腸管などの粘膜障害は宿主の易感 染化を招き、骨髄障害によ る 血小 板減 少は出血傾向の主因とされている。近年、自血球減 少症にはりコンビナントサ イ トカ イン やロムルチドが臨床応用され、治療法が確立されつ っある。しかし、血小板減 少 症に は血 小板輸血以外に有効な治療法がなく、腸管などの粘 膜障害に対する治療法も未 だ 確立 され ていないのが現状である。癌患者における治療に伴 う副作用の軽減および全身 状 態の 改善 を目的とした血小板造血や粘膜防御機構の制御を可 能とする治療法の確立は、

癌 患者 のQOLの 向上 に重 要な 役 割を 果たすものと考えられる。 以上の背景から、本研究で は 、実 験動 物に よる 骨髄 障害 モデ ルお よび感染モデルを用いて、MDP誘導体口ムルチドの 血 小板 増加 効果と腸管粘膜における感染防御機構増強効果を明 らかにするとともに、それ らの作用機構について検討し た。

1.健 常 モル モッ トに おい て、 ロムルチドはその皮下投与時に 血小板増加効果と好中球お よ び単 球を 主体 とす る自 血球 増加 効果を示すことが明らかとなった。また、X線照射によ る モル モット骨髄障害モデルにおいて、ロムルチドは減少した 末梢血小板数を対照群に比 較 して 早期に健常レベルに回復させ血小板回復促進効果を示し 、その効果は投与量依存的 に 発現 することが明らかとなった。ロムルチド投与動物では、 末梢血小板数の回復に先行 して、血清中IL―6レベルの上昇と:それに続 く骨髄内巨核球数の増加および巨核球のサイ ズ の増 大が 認め られ た。 以上 の結 果から、ロムルチドはX線照 射によるモルモット実験的 血 小板 減少症に対し、巨核球―血小板造血の亢進に基づく治療 効果を示すことが明らかと

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なり、その効果には、ロムルチドによる

IL‑6

産生増強が関与することが示唆された。

2.

抗癌 剤CBDCA投与に よるカニクイサル骨髄障害モデルにおいても、ロムルチドは投 与量依存的に血小板回復促進効果とナデイアの底上げ効果を示し、ロムルチドの効果は種 を越えて認められることが明らかとなった。ロムルチド投与動物では、末梢血小板数の回 復に先行して、血清中のSCF,

IL‑6

,およびEpo濃度の増加が認められた。一方、試験管 内においてロムルチドはサル単核球のGM‑CSF,G‑CSF,およびM−CSF産生を増強すること が明らかとなった。サイトカイン産生の増強に引き続き、骨髄内では、最終分化段階まで 成熟した巨核球の数が増加していることが巨核球の

ploidy

解析から明らかとなった。同時 に、ロムルチドは、末梢血中の単球数増加効果およぴ骨髄系前駆細胞(赤芽球系、穎粒球 系、単球系およびりンパ球系)の分化成熟促進効果を示した。以上の結果から、ロムルチド の血小板増加効果は、巨核球一血小板造血の各ステージに関与する造血諸因子の産生増強 を介して発現していることが示唆された。サルを用いた抗癌化学療法剤による血小板減少 症モデルに対する治療効果が示されたことは、血小板減少症治療における口ムルチドの有 用性を示唆するものと考えられた。

3.

健常マウスにおいて、ロムルチドはその経口投与時に

CSF

産生増強を介した好中球お よび単球を主体とする白血球増加効果を示すことが明らかとなった。ロムルチド経口投与 により、皮下投与の至適用量O.lmg/n10use投与時と同等の薬効を求めるには、10mg/mouse の口ムルチドを要した。また、抗癌剤

CBDCA

投与によるカニクイサル骨髄障害モデルに おぃて、ロムルチドは50mg/monkeyの連続経口投与によって血小板回復促進効果とナデイ アの底上げ効果を示し、その効果はロムルチドをlmg/n10nkey皮下投与時と同等であるこ とが明らかとなった。以上の結果から、ロムルチドはマウスおよぴサルに経口的に投与し ても皮下投与時と同等の造血亢進効果を示すことが明らかとなり、経□剤としての有用性 が示唆された。

4

.大腸菌によるマウス敗血症モデルに対して、ロムルチドは感染1日前に経口投与する ことにより投与量依存的に感染抵抗性増強効果を示すことが明らかとなった。同感染モデ ルに対して、ロムルチド経口投与により、皮下投与の至適用量0.lmg/mouse投与時と同等 の感染抵抗性増強効果を求めるには、3mg/mouseの口ムルチドを要した。各種病原体によ る敗血症モデルに対するロムルチド経口投与時の有効菌種は、口ムルチド皮下投与時のそ れと同様であった。緑膿菌および真菌によるマウス敗血症モデルに対して、口ムルチドは その経口投与時に抗菌剤との併用効果を示した。以上の結果から、マウス敗血症モデルに 対して口ムルチドは経口投与しても、口ムルチド皮下投与時と同様の効果を示すことが明 らかとなった。

5

.消化管が感染成立の舞台になると考えられるX線照射によるマウス内因性感染モデル において、ロムルチドはlmg/n10useの割合に連続経口投与することによってロムルチド皮 下投与の至適用量O.lmg/mouse投与時の効果に優る感染抵抗性増強効果を示し、内因性感 染モデルに対するロムルチド経口投与の有用性が示唆された。内因性感染モデルに対する ロムルチドの効果は、諸臓器からの大腸菌の分離頻度の低下と分離時期の遅延が確認され たことから、腸管からの大腸菌の侵入の過程を遮断あるいは抑制した結果であることが示 唆された。その効果には、ロムルチドがX線照射による腸管粘膜組織の損傷の回復促進作 用とそれに連動すると考えられるX線照射後の大腸菌を主体とした腸内フローラの爆発的 な増殖に対する抑制作用を示すことが関与すると考えられた。以上の結果から、ロムルチ ドは経□的に投与することにより、腸管防御機構の最前線であるサーフェイスバリアとし て の 粘 膜 組 織 の 再 構 築 を 介 し て 感 染 防 御 効 果 を 示 す こ と が 示 唆 さ れ た 。

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(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査    教 授    東    市 郎 副 査    教 授    谷 口 和 彌 副 査    教 授    菊 池 九 二 三 副 査    講 師    劉    永 春

学 位 論 文 題 名

合成ムラミルジペプチド誘導体ロムルチドの造血亢進作用 および感染抵抗性増強作用に関する実験的研究

  ムラミルジペプチド(MDP;N−ac etylmuramyl‑L‑ alanyl‑D‑is oglutamine)は、細菌細胞壁ベプ チ ド グ リカ ン の 有 する 免 疫 アジ ュ バ ント 活 性 を担 う 最 小構 造 単 位であ る。ロム ルチド [MDPLys (L18)]は、MDPが有 する多 彩な生物 活性のう ち、特 にサイト カイン誘発作用を 介 し た 造血 亢 進 と それ に 関 連す る 感 染抵 抗 性 の増 強 作 用をMDP以 上に 強め、か つMDP 毒 性を低 減した誘 導体で ある。ロ ムルチド のサイトカイン誘発剤としての特色は、複数の サ イトカ インを生 体に誘 発するこ とで効率 よく宿主の生体防御機構を強化することが考え ら れ、魅 カある薬 剤開発 の今後の 新しい方 向性が期待されている。本研究では、実験動物 に よる骨 髄障害モ デルお よび感染 モデルを 用いて、ロムルチドによる血小板増加効果およ び 腸管粘 膜におけ る感染 防御効果 の新規生 物学的作用を明らかにするとともに、それらの 作用機構について検討し、以下の結果を示した。

  1.X線 照 射による モルモッ ト骨髄 障害モデ ルにお いて、ロ ムルチ ドはその 皮下投与 時 に 減少し た末梢血 小板数 を対照群 に比較し て早期に健常レベルに回復させ、血小板回復促 進 効 果 を示 した 。ロムル チド投 与動物で は、末梢 血小板 数の回復 に先行 して、血 清中に Interleukin−6 (IL‑6)レベルの上昇と、それに続く骨髄内巨核球数の増加および巨核球のサイ ズ の増大 が認めら れた。 以上の結 果から、 ロムルチドは血小板減少モデルにおいて、巨核 球 一血小 板造血の 亢進に 基づく血 小板増加 効果を示すこと、その効果には、口ムルチドに よるII一‐6産生増強が関与することが示唆された。

  2.抗癌剤カ ルボプラ チン投 与による カニク イ、サル骨髄障害モデルにおいて、ロムルチ ド はその 皮下およ び経口 投与時に 血小板回 復促進効果と血小板数の減少抑制効果を示し、

ロ ム ル チド の効 果は種を 越えて 認められ ることを 明らか にした。 ロムル チド投与 動物で は、末梢血小板数の回復に先行して、血清中のStem cell factor,IL‑6,およぴErythropoietin 濃度の増加が認められた。一方、面'iitroにおいてロムルチドはサル単核球のGranulocyte‑

macrophage‑colony‑stimulating factor (GM‑CSF),Granulocyte‑CSF (G‑CSF),およびMacrophage‑

CSF (M‑CSF)産生 を増強 すること を明ら かにした 。サイト カイン 産生の増強に引き続き、

骨 髄内で は、最終 分化段 階まで成 熟した巨 核球数の増加を巨核球のploidy解析から明らか に した。 以上の結 果から 、ロムル チドのサ ル血小板増加効果は、巨核球一血小板造血の各

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ステージに関与する造血諸因子の産生増強に始まる血小板造血のプロセスを介して発現し ていることが示唆された。

  3.

健常マウスにおいて、ロムルチドはその経口投与時にCSF産生増強を介した好中球 および単球を主体とする自血球増加効果を示した。また、各種病原微生物によるマウス敗 血症型感染モデルに対して、ロムルチドは感染

1

日前に経口投与することによって感染抵 抗性増強効果を示した。以上の結果から、健常マウスおよびマウス敗血症型感染モデルに 対してロムルチドは経口投与しても、ロムルチド皮下投与時と同程度の造血亢進および感 染防御効果を示すことが明らかとなった。

  4

.消化管が感染防御機構の場となる.X線照射によるマウス内因性感染モデルにおい て、ロムルチドは1 mg/マウスの割合に連続経口投与することによってロムルチド皮下投与 の至適用量O.lmg/マウス投与時の効果に優る感染抵抗性増強効果を示し、当該モデルに対 するロムルチド経口投与の有効性が示唆された。内因性感染モデルに対するロムルチドの 効果は、ロ・ムルチドがX線照射による腸管粘膜組織の損傷の回復促進作用とそれに連動す ると考えられるX線照射後の大腸菌を主体とした腸内フローラの増殖に対する抑制作用が 関与すると考えられた。以上の結果から、ロムルチドは経口的に投与することにより、腸 管防御機構の最前線であるサ亠フェイスバリアとしての粘膜組織の再構築を介して感染防 御効果を示すことが示唆された。

  

以上、申請者は動物病態モデルを駆使してのMDP誘導体ロムルチドの生体防御機構にお ける新規作用として、ロムルチドの血小板増加効果および宿主の粘膜防御増強効果とその 作用機構を血液学的およぴ細菌学的に明らかにした。これらの成果は合成免疫強化剤の新 規領域への臨床応用研究に大きく寄与するものと高く評価される。審査員一同は申請者が 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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