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学位論 文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 水 柿 秀 紀

学 位 論 文 題 名

ア−secretase inhibitor と放射線照射併用による Notch 発現 肺 癌 細胞 株 に 対す る抗腫 瘍効果の 検討

学位論 文内容の要旨

【背景と目的 】Notchは膜貫通型受容体で 、神経、造血、血管といっ た様々な組織の細胞分化にとって 重要な役割を 果たしており、多くの癌種 においてNotch pathwayの異 常活性が癌化に密接に関連してい ることが報告 されている。我カは、Notch3が非小細胞肺癌組織の約4090に過剰発現し、Notchのインヒビ ターであるッーsecretaseinhibitor (GSI)を用いてNotch3を抑制するとあvitroまたマウスモデルにおいて 肺癌の増殖が 阻止されることを示してき た。一方で放射線は日常診療 において肺癌患者の治療に広く用 いられており、その抗腫瘍効果の1っはアポトーシスによるものであることが報告されている。しかし、放射 線治療を行う 上で放射線抵抗性は重要な 問題の1っとしてあげられる 。乳癌幹細胞では、放射線照射後 にNotchlと りガ ン ドで あるJaggedlの発 現が 増強することや、神経膠腫幹 細胞では、放射線照射後に Notch pathwayの標的遺伝子が増強するこ とが報告されている。これ らの報告から、Notch pathwayの活 性 が放 射線 抵抗 性 のメ カニ ズム の1っで ある 可能性が示唆されるが、肺癌 において放射線照射に伴う Notch pathwayの動 態やGSIと放 射線 照 射併 用に よる 抗 腫瘍 効果 に関して は仞vitroとめwvo共に報告 は 少な ぃ。 この た め、我々は本研究において 、GSIと放射線照射併用によ るNotch発現肺癌細胞株に対 する抗腫瘍効果について検討した。

【 対象 と方 法】 細 胞株 はNotchの発 現とGSIの抗 腫瘍 効 果が 既に 確認 され て いる 非小 細胞肺癌細胞株 (HCC2429、H460、A549)を 用い た。 細胞 株を 一 晩培 養し て、 放射 線 照射24時 間後 にGSIを投与し、併 用 治 療 の 抗 腫 瘍 効 果 をMTT assayとclonogenic assayを 用 いて 検討 した 。Notchl、Notch3、Notch pathway下 流の 標的 遺伝 子(HES−1、HEY‑1)の発現と細胞 内シグナル伝達系(アポトー シスシグナル、

MAPK pathway、PI3K/AKT pathway)に関 連す る 蛋白 の発 現はWestern Blot法で確認し た。アポトーシ スはAnnexinVとpropidium iodideを爛い 、フローサイトメトリーで解析した。また抗腫瘍効果とNotchと の関連性については、siRNAを用いて検討した。in vitroの結果をもとに、ゼノグラフトマウスモデルを用い、

in vivoでの 抗腫瘍効果についても検証し た。また腫瘍を摘出しNotchの発現をWestern Blot法で、Ki67 の発現を免疫組織染色で確認した。

【結 果】 は じめ に併 用治 療 の適 正な治療ス ケジュールをMTT assayを用 いて検討した。GSI、放射線 同 時併 用群 、GSI投 与24時 間後 に放 射線 併 用群 の2種類 の併 用治 療ス ケ ジュ ール では 単独治療と比較 し て相乗効果を認めな かった。G'SI、放射線照射後 にGSIを投与する逐次併用群では放射線単独群と比べ、

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MTT assayにおいて細胞増殖の抑制とclonogenic assayにおいてコロニー数の低下を認め、さらにフロー サ イトメト リーで はapoptosis細 胞の増加を認めた。このため以降の実験では放射線治療後にGSIを投与 す る方法を 用いた 。次に 各種治 療後のNotch関連蛋 白やア ポトーシス関連蛋白の発現を検討した。放射 線 照射によ り、NotchとNotch pathwayの 標的遺 伝子で あるHey一1の発現 が増強 し、更に放射線照射時 に 増 強 したNotchの発 現 はGSIの 逐次併 用によ り減弱 した。 逐次併 用群では 、アポ トーシ ス抑制 蛋白

(p一Bcト2、Bcl‑xL)とpーERKの発現は単独治療と比較してより抑制され、アポトーシス促進蛋白(Bim)と PARPの 発現は より増 強した 。H460にお いて、siRNAを用い てNotch3を 抑制す ることで、GSI単独群と逐 次併用群の抗腫瘍効果は減弱した。さらにゼノグラフトマウスモデルにおいても併用群でより強い抗腫瘍 効 果 を 認め 、 治 療 後の 腫 瘍 のNICD3の発現 を検討し たとこ ろ増強 したNICD3の発現 は併用群 で抑制 さ れており、in vitroの結果と同様であった。また、免疫組織染色で検討した腫瘍のKi67は、コントロールと 比 較して併 用群で は最も 抑制さ れていた。全身毒性の指標として治療中のマウスの体重測定を施行した が、明らかな体重減少は認められなかった。

【 考 察 】本 研 究 に おい て 、GSIと放 射線照射 併用は 単独治 療と比 べてNotch発現肺癌 細胞に 対して 高 い有 効性を 示した 。併用 治療ス ケジュ ールの 検討を 行ったところ、放射線照射後にGSIを投与する逐次 併 用 療法が最 も有意 な抗腫 瘍効果 を認め た。放 射線照 射後のNotch pathwayの活 性化が 放射線 抵抗性 の1つの要因 であり 、放射 線照射 後にGSIを 投与す ること が、照射により活性化したNotch pathwayを抑 制し、より高い抗腫瘍効果を示すと考えられた。

  併 用治療 群ではア ポトー シス細 胞数が 有意に 増加し 、PARPの発 現が誘 導され た。このことは、併用 治療群の抗腫瘍効果がアポトーシスを介していることを示唆している。また、併用群では単独群と比べ、

生存 促進蛋 白のp−ERKや抗 アポトー シス蛋 白のp−Bcト2とBcトxLが抑 制され ており、以上の結果は、

GSIまたは放射線がBcl‑2ファミリーを含むアポトーシス経路を活性化するという、過去の報告に矛盾しな い。BimはBcト2のサブ ファミ リーに 属するBH3―only蛋白 であり、我カは肺癌においてNotch3を介した アポトーシスはBim依存的であることを報告してきた。本研究では、併用治療がBimを介したアポトーシス により肺癌細胞の増殖が抑制されることを示した。このため、肺癌治療においてNotch pathwayの他にも、

MAPK pathwayやBcト2pathwayな ど様カ な分子 が治療 のター ゲット となり うる可能 性が示 唆され た。

GSIはNotch以外の膜 貫通蛋 白にも 作用す ること が報告 されて いる。 そのため 、併用 効果のNotch依存 性 に ついてNotch3 siRNAを用 いて検 討した ところ、GSI単独 群と併 用群にお いてNotch3 siRNA群で ア ポトーシス細胞が有意に低下しており、Notch依存性であると考えられた。

さら にマウ スモデ ルにお いても 併用治 療はよ り高い 腫瘍抑制効果を認めた。GSIの臨床試験における制 限 毒 性の1っ が水様性 の下痢 である が、今 回の併 用治療 では重 篤な副 作用発現 は認め られず 放射線 と の併用は認容性が高いと考えられた。

【結 論】本研 究は、 肺癌に 対するGSIと放射線との併用効果の有用性に関する最初の報告である。現在、

GSIを 用い た 固 形 癌の 臨床 試験は肺 癌を含 め、乳 癌、中 枢神経 系の悪 性腫瘍 を中心 に進行し ている 。 今回 の我々の 結果か らGSI単独もしくは放射線単独では肺癌に対する治療効果はある程度限られており、

両者を併用することで更なる抗腫瘍効果が認められた。このことから本治療が新たな肺癌の治療法とたる 可能 性が示唆 された 。

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    佐邊壽孝 副査   准教授   濱田淳一 副 査    教授    秋田弘俊 副 査    教授    松野吉宏 副 査    教授    西村正治

学 位 論 文 題 名

T‑secretase inhibitor と放射線照射併用による Notch 発現肺癌細胞株に対する抗腫瘍効果の検討

本 学位 論文 は 肺癌治療における、 放射線とy‑secretase inhibitorとの併用効果を培養細胞 、並びに、

それらの マウスヘのxenograftを用い て検討したものである。

    y‑secretaseはNotchと よぱ れる 膜貫 通型 受 容体 の活 性化 に 伴う 切断 を行 う。 切 断さ れたNotch の 細胞 質領 域 は核へと移行し、様 々な遺伝子発現の制御に関与 する。従って、y‑secretase inhibitor (GSI)によ りNotchの活性化が阻害され る。

    Notchは 、神 経 、造 血、 血管 を はじ めと する 様々 な 組織 の分 化に 重要 た 役割 を果 たす 。 一方 、 多 くの 癌種 に おいて、Notchシグナ ルの異常な活性化が、それ らの発癌や悪性化に関与して いることが 報 告さ れて い る。成人の正常な肺 組織には通常、Notchの発現 は認められない。申請者の属 する研究室 で は、Notch isoformであ るNotch3が非 小 細胞 肺癌 細胞 株の 約40% に有 意に 発 現し てお り、GSI処理 によって それらの増殖を抑制できるこ とを示した。肺癌治療には、その補助療法として放射線照射が広く 用いられ る。放射線照射の主な抗腫瘍 効果は癌細胞のアポトーシ ス誘導である。しかし、癌細胞は放射 線治療に 抵抗性を示す事も多く、その 成績向上の為に解決すべき 点が多く残されている。例えぱ、悪性 度 の高 いこ と が知 られ てい る癌 幹 細胞 様乳癌細胞では、放射 線照射後にNotchlとそのりガ ンドである Jaggedlの 発現 が増 強 し、 また 、神 経膠 腫幹細胞においても、 放射線照射後にNotch標的遺 伝子群の発 現 が増 強す る 。これらの報告から 、放射線照射によるNotchの 活性化が放射線抵抗性の一端 である可能 性 が考 えら れ る。 肺癌 に韜 ける 放 射線 照射に伴うNotchの動態 やGSIとの併用効果に関して は未だ報告 は殆どな く、本研究ではこれらを検討 した。

    実 験 に は 、Notch発 現 とGSIに よ る 抗 腫 瘍 効 果 が 確 認 さ れ て い る 、 非 小 細 胞 肺 癌 細 胞 株 HCC2429、H460、A549を用 いた 。培 養細 胞 に放 射線 を照 射し 、24時 間後 にGSIを 投与 し、 その後の細 胞 増殖 能を 、MTT assayとclonogenic assayにて検討した。ま た、活性化Notchの標的遺伝 子(HES‑I、 HEY‑1)の 発現 、並 び に、 幾っ かの 代表 的 細胞 内シ グナ ル伝 達 蛋白質やアポトーシス関連 蛋白質の量

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や 活 性 もWestern Blot法 に て 検 討 し て い る 。平 行 して 、ア ポト ーシ ス 誘導 に関 して 、AnnexinVと propidium iodideを 用いたフローサイトメトリ ー解析も行った。GSIによる抗腫瘍効果が実際にNotch経路 を介していることは 、siRNA法によるNotch発現 阻害時に、その効果が消失す る事により確認した。肺癌 細胞移植のマウスー の移植実験系にても、同様 な検討を行った。

    ま ず 最 初 に 、GSIと 放射 線照 射 の併 用処 理の 適 切な プロ トコ ール を 検討 して いる 。そ の 結果 、 GSIと放 射線 との 同 時処 理、GSI投与24時 間後 に 放射 線照 射に お いて は、 各々 の単 独 処理 と同 レベル の増殖阻害効果しか 見られなぃことを明らかに した。しかし、放射線照射24時間後にGSIを投与したとこ ろ、単独処理と比べ、有意な細胞増殖抑制と細胞コロニー数の低下を認めた。フローサイトメトリー解析に おいても、apoptosisを起している細胞数の増加 が観察された。以降の実験 では放射線照射後にGSIを投 与し、この処理によ り,標準的経路によって細 胞死が誘導され、その結果、細胞の増殖が阻害されている ことを示した。マウ スへの移植実験でもこのプ ロトコールで顕著な抗腫瘍効果が見られた。ー方、全身毒 性 の 指 標 と し て マ ウ ス の 体 重 測 定 を 施 行 し た が 、 明 ら か な 体 重 減 少 は 認 め ら れ な か っ た 。     本 論 文 は 、 今 後 の 肺 癌 治 療 に お け る 新 た な 可 能 性 を 示 唆 し た も の で あ る 。 臨 床 応 用 に は 検討 す べき 点が 多く 残さ れ ては いる が、 申請 者 はこ れら に関 し ても きち んと した 議 論を 展開 した。

よ っ て 、 平 成23年2月7日 の 学 位 審 査 会 に お い て 、 本 論 文 は 北 海 道 大 学 大 学 院 医 学 研 究 科 博 士 課程論文にふさわし いものと判断し合格とした 。

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参照

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