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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 獣 医 学 ) 張    慧 淑

     学位 論 文題 名

    Studies on the functionality of

alk(en)yl thiosulfates derived from garlic and onion

     (ニ ンニクおよ ぴタマネギ に由来する 有機チオ硫酸化合物の機能性に関する研究)

学位論文内容の要旨

  近年、ヒトの健康維持の目 的で、天然物を有効利用し ようとする機運が高まってきている。天 然物は、医薬品に比較して副 作用が少ないために、医師 や専門家の指示なしに誰もが手軽に利用 できる利点を有しているから である。その中でも、ニン ニクおよぴタマネギの有用性や治療薬と しての効果が注目されている 。特に、これらの野菜に含 まれる化合物の腫瘍や心血管系の疾患に 対する治療およぴ予防効果に 、多くの注目が集まってき ている。

  一方、イヌおよびその他の 家畜においては、ニンニクおよびタマネギを摂取することによって、

赤血球の酸化傷害に起因する 溶血性貧血が発症すること が知られている。しかし、これらの野菜 がヒトにはそのような毒性を 示すという報告はない。本 研究で使用された有機チオ硫酸化合物、

すな わちsodium2―propenyl thiosulfate (2PTS)およびsodium n‑propyl thiosulfate (NPTS) は、それぞれ、犬に溶血性貧 血を惹起する因子として、 ニンニクおよぴタマネギの成分中から同 定さ れた 天然物で ある。本研究の目的は、こ れら2種類の有機チオ硫酸化 合物の有効な生理活性

(機能性)を調べ、その発現 メカニズムを明らかにする ことであった。本研究では、ニンニクお よぴタマネギが有していると 考えられている効能に関連 して、有機チオ硫酸化合物の機能性を順 次調査した。

  第1章で は 、有 機チ オ硫 酸 化合 物の 抗腫 瘍効 果 につ いてin vitroで検 討した。その結果、こ れら の化 合物 が、 ヒ トの 腫瘍 細胞 株(WiDr、293お よぴHL−60)の増殖を 、濃度依存性に阻害す るこ とが 明ら かと な った 。2PTSの 抗腫瘍効果 は、総じてNPTSよりも強か ったが、WiDr細胞に対 して は両 化合 物の 効 果は 同程 度で あった。ま た、2PTSおよびNPTSは、HL−60細胞に酸化傷害を 及ばし、アポ卜ーシスを誘導 した。そのアポトーシスの 程度は、酸化傷害および細胞毒性の程度 と一致していたため、有機チ オ硫酸化合物は、酸化傷害に起因するアポトーシスの誘導によって、

腫瘍細胞の増殖を阻害すると 考えられた。

  第2章で は、イ ヌおよびヒトの血小板を用い て、有機チオ硫酸化合物の 血小板凝集阻害効果に

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つ いてin vitroで 検討 した。 その結 果、2PTSお よびNPTSを添加す ること によっ て、ADP依 存性 血小板凝集が、イヌでは0. Ol mM(P〈0.01)で、ヒトでは0.001ーO.1M(P〈0.05)で、対照群に 比 較し て 有 意 に阻 害さ れた。 しかし 、有機 チオ硫酸 化合物 の濃度 が1桝に 上昇す ると、 イヌお よびヒ ト血小 板の凝 第が、 対照群 のレベルまで回復する傾向が認められた。次に、血小板凝集に 対する このよ うな調 節機能 のメカ ニズム を明ら かにす るために 、2PTSに よる血 小板中 のシクロ オキシ グナー ゼ(coX)およぴ 還元型 グルタチオン(GSH)に及ばす効果を調べた。その結果、血 小 板のcoX活 性 は、2PTSの 添 加 量 が0,1洲 まで は 濃 度 依存 性 に 有 意に 減 少 し 、2PTSがlmMに 上 昇す る と 対 照群 のレ ペルに 回復す る傾向 を示した 。ー方 、血小 板のGSH濃 度は、2PTSの添 加 量に応じて減少しっづけ、0.1鹹(P<0.05)およぴ1械(P〈0.001)で有意な低下が観察された。

さ らに 、 こ の 血小 板GSH濃 度の 低 下 がCOX活性に及 ばす影 響を調 べるた め、市 販の精 製COX−l とGSHの 相互作 用を検 討した結 果、GSHが直接 にcoX−1活 性を阻 害して いるこ とが明ら かとなっ た。以 上の成 績から 、有機 チオ硫 酸化合 物には 、ADP依存 性血小板凝集を阻害する効果があるこ とが明 らかと なり、 この機 能性は 心血管 系の疾 患の予 防に役立 っと考 えられ た。2PTSの有する 血小板 凝集阻 害効果 はCOXの阻 害に起 因ものであ・ったが、同時に血小板GSH濃度に影響すること により 、間接 的にcoX活性に対 する過 剰な機 能発現 を抑制 し、血小板凝集に対する調整機能を発 揮していると推測された。

  最後 の第3章 では、 イヌおよ びヒト 多形核 自血球 の活性 酸素生成に対する効果を調べた。その 結果、 有機チ オ硫酸 化合物 は、phorbol12ーmyristate13−acetateによって刺激されたイヌ多形 核自血 球の活 性酸素 生成量 を、対 照群に 比較し て有意 に(0.1および1刪2PTS;P〈0.005,1mM NPTS;P<0.05)増加させ、その反応速度を有意に(lmM2PTSおよびO.01―lmM;Pく0.05)増加 させた 。しか し、有 機チオ 硫酸化 合物の 添加量 が10刪に 上昇す ると、 逆に対照 群のレ ベルに回 復する 傾向が 認めら れた。 一方、 ヒト多 形核自 血球を 用いた場 合には 、2PTSお よびNPTSの活性 酸素生 成量に 及ぼす 有意な 変化が 認めら れなか ったも のの、2PTSによる反応速度の増加(1およ び10mM;P〈0.05) が認め られた ため、2PTSはヒト多形核自血球に対しても活性酸素生成機能を 刺激す ると推 測され た。以 上の成 績から、有機チオ硫酸化合物は、イヌおよびヒト多形核自血球 の活性酸素生成機能を刺激増強する効果があることが明らかとなった。

  本研 究の成 績から、 有機チ オ硫酸 化合物 である2PTSおよびNPTSが、 抗腫瘍 効果、血 小板凝集 阻害効 果およ び白血 球の活 性酸素 生成刺激効果(免疫賦活効果)を有していることが明らかとな った。 有機チ オ硫酸 化合物 が有す るこれらの複数の機能性は、ヒトの健康増進や福利に役立っと 考えられた。

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    前出吉 光 副 査    教授    藤田正 一 副査   助教授   稲波   修 副査   助教授   大和   修

     学位論文題名

    Studies on the functionalityof alk ( en ) ylthiOSulfateSderiVedfromgarliCandonion      ( ニ ン ニ ク お よ び タ マ ネ ギ に 由 来 す る      有機チオ 硫酸化合物の機能性に関する研究)

  本 論 文 は 、 犬 に 溶 血 性 貧 血 を 惹 起 す る 因 子 と し て 、 ニ ン ニ ク お よ び タ マ ネ ギ の 成 分 中 か ら 同 定 さ れ た 有 機 チ オ 硫 酸 化 合 物 、 す な わ ちsodium 2‑propenyl thiosulfate:   (2PTS)お よ びsodium n‑propyl thiosulfate  (NPTS)の 有 効 な 生 理 活 性 ( 機 能 性 ) を 調 べ 、 そ の 発 現 メ カ ニ ズ ム の 解 明 を 試 み た も の で あ る 。

  論 文 提 出 者 は 、 は じ め に 、 有 機 チ オ 硫 酸 化 合 物 の 抗 腫 瘍 効 果 に っ い て 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 こ れ ら の 化 合 物 が 、3種 類 の ヒ . ト 腫 瘍 細 胞 株 の 増殖 を ・ 、 濃度 依 存 性 に阻 害 す る こ と を 明 ら か に し た 。 ま た 、 有 機 チ オ 硫 酸 化 合 物 は 、 腫 瘍 細 胞 に 酸 化 傷 害 を 及 ば し 、 ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 し た こ と か ら 有 機 チ オ 硫 酸 化 合 物 は 、 酸 化 傷 害 に 起 因 す る ア ポ ト ー シ ス の 誘 導 に よ っ て 、 腫 瘍 細 胞 の 増 殖 を 阻 害 す る と 推 測 し た 。 次 に 、 イ ヌ お よ び ヒ ト の 血 小 板 を 用 い て 、 有 機 チ オ 硫 酸 化 合 物 の 血 小 板 凝 集 阻 害 効 果 に つ い て 検 討 し た 結 果 、 低 濃 度(0.001‑0.1 mM)の 有 機 チ オ 硫 酸 化 合 物 を 添 加 す る こ と に よ っ て 、ADP依 存 性 血 小 板 凝 集 が 阻 害 さ れ た 。 し か し 、 有 機 チ オ 硫 酸 化 合 物 の 濃 度 が l mMに 上 昇 す る と 、 血 小 板 凝 集 が 対 照 群 の レ ベ ル ま で 回 復 す る 傾 向 が 認 め ら れ た 。 有 機 チ オ 硫 酸 化 合 物 の 有 す る 血 小 板 凝 集 阻 害 効 果 は 、 シ ク ロ オ キ シ ゲ ナ ー ゼ (COX)の 阻 害 に 起 因 す る も の で あ っ た 。 さ ら に 、 高 濃 度 域 に お い て は 、 血 小 板 の 還 元 型 グ ル タ チ オ ン 濃 度 を 低 下 さ せ る こ と に よ り 、 間 接 的 にCOX活 性 を 回 復 さ せ て 、 血 小 板 凝 集 に 対 す る 調 整 機 能 を 発 揮 し た 。 最 後 に 、 イ ヌ お よ び ヒ ト 多 形 核 白 血 球 の 活 性 酸 素 生 成 に 対 す る 効 果 を 調 べ た 結 果 、 有 機 チ オ 硫 酸 化 合 物 は 、 比 較 的 低 濃 度 (l mM以 下 ) で 多 形 核 白 血 球 の 活 性 酸 素 生 成 を 刺 激 し 、 そ の 反 応 速 度 を 増 加 さ せ た こ と か ら 、 有 機 チ オ 硫 酸 化 合 物 は 、 イ ヌ お よ び ヒ ト 多 形 核 白 血 球 の 活 性 酸 素 生 成 機 能 を 刺 激 増 強 す る 効 果 が あ る こ と を 明 ら か に し た 。

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   以上 のよ うに、本論文は有機チオ硫酸化合物である2PTS およぴNPTS が、抗腫瘍 効果、血小板凝集阻害効果および白血球の活性酸素生成刺激効果(免疫賦活効果)

を有していることを明らかにしたものであり、博士論文にふさわしい内容と認めら

れた。また論文提出者は関連分野の口答試問にも的確に応答した。よって審査委員

一同は、上記博士論文提出者張慧淑氏の博士論文は、北海道大学大学院獣医学研究

科 規 程 第 6 条 の 規 程 に よ る本 研究 科の 行う 博士 論文 の審 査等 に合 格と 認め た。

参照

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