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被服領域の諸問題

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Academic year: 2021

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(1)

被服領域の諸問題

ニットのBagging性に関して

井  上 栄*

(昭和57年10月31日受理)

Some Problems with the Field of Clothing 一〇n the Bagging of Knitted Fabric一

Sakae INOUE

(Received October31,1982)

はじめに

 近年衣料品の中に占めるニットの割合,すなわちニット化率が急激に増加してきている。

ニットが織物より生産高の多い品目は,ワイシャツ以外のシャツ類,肌着類,ナイトウェ ア,スポーツウェアであるが,最近のスポーツ人口の増加と相まってスポーツウェアの日 常着化が見られ,アパレルメーカーとスポーツ専業メーカーとの接近ないしは主導権争い が予想される情勢である。

 ニット製品の特性の中で第一に挙げられることは伸縮性の良さである。しかしそれは欠 点にもつながるもので形態安定性の悪さとなり,いわゆるひざ,ひじぬけ現象(Bagging)

となって,これがニット製品のネックとなる。しかし,従来Bagging性の測定には適当な 測定機がなかった。著者は且て摩耗試験機の平面摩耗試験での,空気圧によりゴム隔膜が 膨張し固定される構造を利用して行ったが,その加圧に限度があり問題を残していた。

 今回Y社で「Bagging性試験機」が開発されたのでそれを用いて,ニット11種類につい て測定を行った。一方,定伸長回復率,定荷重伸長率,せん断変形を測定してこれら物性 値との対応の有無を検討した。また消費者が購入の際,この性能の良否が判別できるか,

官能検査との対応も検討したので報告する。

 実験方法

 1) 試料:表1に示す。

 2) 実験方法

  2)一1 Bagging性

 Y社の開発になる「Bagging性試験機」(屈曲疲労試験機)を用いた。図1に示す。

*長崎大学教育学部家庭科教室

(2)

表1 試料・測定値

試料 Q

繊維組成

%)

糸密度(2cm) 厚 さ

㎜)

重量 9/1㈲

Bagging性(㎜) せん断剛性(G)

備      考

ウェール コース 直後 24時間後 ウェール コース 平均

1 P 100 28 28

1.1

2.65

1.4 1.2

1,044 1,067 1.06 ・・イストレッチポリエステル加工糸

ノ子編吸汗加工

2 P  80  20 25 17

0.7

2.09

2.6 2.6

0,733 0,911 0.82

3 P  50  50

13 12 1.4

2.88

3.3 3.3

1,067

1.0

1.03

表:綿      変型バイル他裏1ボリエステル

4 P  80  20 24 34

0.9

2.97

1.1 1.1

0,733 0,933 0.83 表:ボリエステノレブライト加工糸

:綿(パイノレ)

5 P  65ce.35 42 33

0.9

2.69

5.1 5.1

1,311 1,689 1.50

表:ポリエステノレ        たて編裏:アセテート(起毛)

6 P  75  25 33 41

0.6

2.35

3.4 2.3

0,867 0,911 0.89 表:超光沢ボリエステルフィラメント

:ボリエステル・綿混 モックリバーシブル

7 P  gO  10

24

24

1.0

2.49

3.0 1.5

0,978 0,956 0.97 ボリエステル・綿交編ニット

8 P  70  30

22 20

0.8

2.35

4.2 2.8

0,578 0,556 0.57 三層両面編

9 P 100 24 42

0.6

2.32 0 0 1.20 1.40 1.30 両面編

10

Acr.100 44 33 0.5

1.69

2.0 1.5

0,578 0,667 0.62

11

C 100 35 36

0.6

2.05

3.9 2.4

0,756 0,689 0.72

P:ボリエステル C:綿 A㏄.:アセテート Acr.:アクリル

灘L

・轟懲・

図1 Bagging性試験機

1.試料:たて15cm,よこ12cmに4枚ずつ採取し,たて方向を1cmの縫代でミシン縫製  (伸縮縫い)をする。

2.試験角度および試験回数の設定:試験角度は45。,回数は3,000回に設定した。

3.試験布の取付けおよび運転=垂直にしたアームに自然の状態で取付け,締付金具で 締めつけ,受板にはめ込み,運転を開始して所定の屈曲運動を繰返す。

すなわち本機は円筒状反復屈曲法である。

4.Baggingの測定:試験終了直後,試料をアームからはずして縫目のきわを切断し,水 平な板(プラスチック)の上に置いてふくらみの高さを測定する。今回はトースカン

に依った。その後24時間放置後の高さも測定する。Bagging性は次の式で表わされる。

    Bagging性二A−B(mm)  A:最高位の高さ(㎜) B:生地の厚さ(mm)

 2)一2 伸長回復率(定伸長法)

1.試料:20×2.5cmの試料を,ウェール,コース,バイアス方向それぞれ5枚採取し,

 ショッパー型引張試験機で,つかみ間隔10cmで40%伸長する。そのまま3分間放置後

(3)

113 被服領域の諸問題(井上)

  取りはずして平板上に放置し,3分後および24時間後の残溜伸びを測る。伸長回復率   は次の式で求める。

   定伸長時伸長回復率(%)二{(L.一五,、〆)/五.}×100    ここに,L,、=一定伸び  L,、 :残溜伸び

  2)一3 伸長率(定荷重時伸長率)

 2)一2と同様の試料について,同様の試験機,つかみ間隔で5009の荷重をかけ,10秒 間放置後の長さを測る。伸長率は次の式で求める。

    定荷重時伸長率(%)=/(L1−L)/五}×100    ここに,五:もとの印間の長さ

      L1:5009の荷重をかけ10秒間放置後の印間の長さ

 伸長回復率は一定の伸長後の回復であり,伸長率は一定の荷重での伸長である。トレー ニングズボン着用の際を想定すれば,ひざ屈伸の場合,すそにわたされたゴムひもの抵抗 をうけるので一定の伸長での回復率をみることが適当と考えた。またスポーツウェアでは 25〜40%の最大伸長率が要求される1)ことから,伸長率を40%とした。

 伸長率については,官能検査の場合一定とまではゆかないにしてもそれに近い力での伸 長を試みることが考えられるので,一定荷重での伸長率を測定した。

  2)一4 せん断変形(剛性)

 KES−LABO  MODEL  F1−S を用いて測定した2)Q但し前報と異なる

点は,ニット試料のため初荷重を5g/cmに減じたことである。

 3)官能検査

 11点の試料の中から,ひざぬけしにくいと思われるもの(Best),し易いと思われるもの

(Worst)各々3位までを選ばせ,上位より,3,2,1点の配点をした。またその判定の 理由を記述させた。被検者は女子学生35名である。

結果および考察

 実験結果中,Bagging性,せん断剛性は表1に,伸長回復率は図2,伸長率は図3に示 す。図2にみるように,伸長回復率ではウェール,コース,バイアスの三方向での回復に おいて,一般にウェールよリコースの回復が良い。伸長率(図3)でもNα9を除いてコー スの伸長が大きい。

 ニットの伸長性については,糸の曲げ,ねじれ,ついで糸のすべり,さらに糸が伸びて 切断に至る挙動を総合して解析せねばならない。過去,糸間のすべり,糸の屈げ変形,ま た各種よこ編地の荷重一伸長曲線の原点を適当に移動させ,重ね合わせるという報告があ るが,実際には難かしい問題である1)。しかも本題は円筒の反復屈曲疲労であるので,多方 向への伸縮の影響を解析することはさらに困難である。ここでは,現象についてBagging 性との対応を見る。

 表2にそれら実験値間の相関係数を示し,図4(1〜4)には,係数の高いものを例示

した。

 表2で明らかなように,Bagging性と伸長回復率との相関は,ウェール,バイアス

(1),ウェール・コースの平均において,「関係がある」という数値を示した。伸長率間で は,コース(1),ウェール・コースの平均(1)に「深い関係」,それぞれの(2)では

(4)

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

100

90

)  80

樋十

邑 70

60

60    70

95 9

95 9

91 3 97 87.8 96、

91.5 9 868 95.3 86.0 95.5

893 96.0 81.5 88.8

950

97.5 93.8 98

825

70.3

96.0 9 88.8 96.

778 91 0 90.0 95.0

790 888

89.0 955

94.3 9 91.3 97 56.5 76.8

89.8 95.5

77.5 88.3

943 97 943 9 91.3 97 61.3 88.3

95 5 91.3 82.8

96.

67.0

87.0 81.3 88.8

●9

80       90      100(%)

      Nα        99.

       98   1         5

.5  2

3

3

100 100  4

0

98.8  5

6 5

98    7

5    8

.5

985  9 0

99.  10 99

5    11

    上段1ウェール 中段:コース 図2 伸長回復率(%)(40%伸長)

   (3分および24時間以上経過)

相関係数r=一〇.66

1﹂

10  20  30  40  50  60  70  80  90  100(%)

32 43 30

33

59 33

39

78 41

21 40 31

5 90

21 19

51 26

22

90 31

14

97 41

20 19

一 18

14

94 40

24

100 44

下段:45バイアス方向

      図3 伸長率(5009荷重)

1碁    2     3     4     5

    Bagging性(mm)

伸長回復率(ウェール,3分)一Bag.

100

90

   80訳︶辮騨回唄量

70

図4−1

9

12

相関係数r=一〇.67

1﹂

       

        Bagging性(mm)

図4−2 伸長回復率

(ウェール・コースの平均,3分)一Bag

(5)

115 被服領域の諸問題(井上)

100

90

80

訳70

憤十60

 50

 40

30

20  ● 9

10

19

相関係数r=0.78

    11     ● 8

60

( 50

嶺十

 40

畢30

 9 ● 20

10

0●

相関係数r=0.71   」1

   1     2     3     4     5

     Bagging性(mm)

図4−3 伸長率(コース,3分)一Bag.

      

      Bagging性(mm)

図4−4 伸長率

(ウェール・コースの平均,3分)一Bag・

表2 実験値間の相関係数(r)

方   向 伸長回復率 伸 長 率 バイアス方向長回復率 バイア

方向

1 2 1 2 1 2 長率

バギング性 ウ  ェ  ー  ル 一〇.66 一〇.58 一〇.3 せん断変形

0.35 0.3 0.49 コ    ー    ス 一〇.4 一〇.31 0.78 0.59

バ  イ  ア  ス 一〇.63 一〇。4 0.3 ウェール・コースの平均 一〇.67 一〇.58 0.71 0.54

  1:伸長回復率 3分,伸長率 10秒,バギング 直後の組合わせ   2=24時間後(但し,せん断変形を除く)

「関係あり」の数値を示した。しかし,図4でみるように,概してM10,9,5は外れて いる。Nα5と10は伸長率でウェール,コースの差が甚だしいことがめだつが,Nα7もその傾 向があるのでそれのみとは言えない。No9は伸長率が何れの方向共最小を示していること が原因かとも思われるが,試料が1点のみでは何とも言えない。一応上記の項目について は相関があると言えるが,すべてが一致するものではない。

 せん断変形とバイアス方向の伸長回復率および伸長率は「やや関係がある」程度である。

バイアス方向とBagging性との関係も余り高くないので,せん断変形はBagging性の指 標とはならない。

 次にBaggingと官能検査および前記の物性中相関の高い二項(ウェール伸長回復率,

コース伸長率)との対応を表3に示した。

 官能との対応をみると,Bestでは2位と3位で逆になっているがかなりよく対応してい る。Worstでは,2位,3位の直後で逆になっているほか,1位が対応していない。しか し,Nα3はBag,24時間では2位になっているので,大体の対応はみられると言えよう。し

(6)

表3 Bagging性と官能検査および伸長率(コース),伸長回復率(ウェール)の対応

1 2 3

    事耐       項Bagging

官能 Bag. 伸長率 伸長

復率 官能 Bag。 伸長率 伸長

復率 官能 Bag, 伸長率 伸長

復率

Best

9︵53︶

9 9

4.1 1︵45︶

4 4

4︵30︶

1 1 9

9 4 4 1 1 9

Worst

3︵76︶

5 11 8 11︵48︶ 8

8

10 8︵29︶ 11 10 11

5 8 3 5 8 11

・事項の数字は試料Nα,( )は点数

・Bag.,伸長回復欄の上段は直後と3分後,下段は24時間後

かもNo5は,さきの物性値でも異常点を示しまた編地もたて編であることから見かけの判 定から外れたものと思われる。

 物性とBagging性の順位での対応では,Bestで伸長率(コース)とよく対応している が,Worstでは2位を除いては対応は悪い。伸長回復率(ウェール)では,Worstの3位 を除いて対応は悪い。このように見てくると,個々についてはむしろ官能との対応のほう が良いように思われる。

 官能の判定の方法については,殆んどが,たて,よこに引っぱって伸びを見ている。そ の中で,たての伸びまたはよこの伸びを重視したと答えている者が同数(約1/5)あった。

よこの伸びを重視と答えたことは,Bagging性とコースの伸び率が相関が高かったことか ら,妥当な判定であろう。球状に伸ばすというのも二,三あった。また材質から,薄い,

柔かい,しっかりしている,糸密度との答えもあった。

 ニットの伸縮性は着心地の良さで長所であるが,一方Baggingとなって短所となる。し かし,耐Baggingを重視して,着用感を軽視することはできない。両者の間の許容範囲を 知るためには,さらに着用実験により人体反応もとり入れねばならないであろう。

ま と め

 ニット地の伸縮性の良さは,一方ではひざ,ひじぬけ現象となって欠点となる。今回開 発された「Bagging性試験機」(円筒状反復屈曲法)を用いて,ニット11種類について測定

を行ない,三つの物性値(定伸長回復率,定荷重伸長率,せん断変形)との相関および官 能検査との対応を検討した。Bagging性との関係は

  1.コース方向の伸長率と深い関係がある。

 一2.伸長回復率では,ウェールとバイアスに関係がみられる。しかし,1.2.とも   特異点がある。

  3.せん断変形は指標とならない。

  4.官能検査は物性より良い指標となる。

引 用 文献

1)日本繊維製品消費科学会編,ニット衣料学,157〜158(1978)

2)井上栄:長崎大教育教科教育研報 5 159(1981)

参照

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