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首都大学東京 都市環境科学研究科 建築学域 14986454 崔 学琪

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2017 年度博士論文

中国集合住宅における共用部分修繕プロセスから見た 関連主体の協力関係に関する研究

首都大学東京 都市環境科学研究科 建築学域 14986454 崔 学琪

指導教授 角田 誠

(2)

索引

索引 ... I

第1章 序論 ... 1

1−1

研究の背景

... 3

1−1−1 中国集合住宅市場形成の発展史 ... 3

1−1−2

住宅市場の発展に伴う所有形態の変遷と割合

... 5

1−1−3

住宅市場の供給過剰問題

... 6

1−1−4 集合住宅老朽化に伴う修繕問題 ... 8

1−1−5

対象地域と研究対象

... 9

1−2

研究の課題と目的

... 12

1−2−1 研究の課題 ... 12

1−2−2

研究の目的

... 12

1−3

研究の流れと研究方法

... 13

1−3−1 研究の流れ ... 13

1−3−2

研究の方法

... 15

1−4

既往研究と研究の位置づけ

... 17

1−4−1 集合住宅の維持・修繕の関連法律に対する既往研究 ... 17

1−4−2

集合住宅の維持・修繕の実態に対する既往研究

... 18

1−4−3

本論文の位置づけ

... 20

第2章 中国の集合住宅共用部分の修繕に関する法律及び日本との比較 22 2−1 用語定義 ... 24

2−2

中国の集合住宅共用部分における修繕に関する法律の変遷

... 25

2−2−1 修繕責任者に関連する法律の変遷 ... 25

2−2−2

修繕資金に関連する法律の変遷

... 26

2−2−3

修繕施工に関連する法律の変遷

... 28

2−3

中国と日本の集合住宅共用部分における修繕に関する法整備の相違

... 30

2−3−1

専有部分と共用部分の区分所有

... 30

2−3−2

修繕の関連主体の役割分担に関する法律の日中比較

... 31

2−4

まとめ

... 36

第3章 中国大連市の集合住宅共用部分における修繕工事の現状 ... 37

3−1

調査概要

... 39

(3)

3−2

集合住宅共用部分修繕業務の責任担当

... 40

3−3

所有者から見た集合住宅共用部分の修繕現状

... 41

3−3−1

調査対象

... 41

3−3−2 所有者の意識 ... 43

3−3−3 共用部分の管理状態 ... 44

3−3−4

問題点総括

... 46

3−4

管理会社から見た集合住宅共用部分の修繕現状

... 47

3−4−1 調査概要 ... 47

3−4−2

事例による共用部分の修繕現状総括

... 48

3−4−3 管理不全とその原因 ... 53

3−4−4 管理不全による修繕プロセスの分類 ... 53

3−5 まとめ ... 55

第4章 中国大連市の代表事例における修繕プロセスから見た関連主体 の協力関係 ... 56

4−1 調査概要 ... 58

4−2

各代表事例の修繕プロセス分析

... 60

4−2−1 ディベロッパー系管理会社による修繕工事のプロセス(表4−3) ... 60

4−2−2

独立系管理会社による修繕工事のプロセス

(

表4

) ... 62

4−2−3 社区による修繕工事のプロセス(表4−5) ... 64

4−3

各代表事例の関連主体の協力関係

... 67

4−3−1

関連主体の参加状態

... 67

4−3−2 関連主体の意思決定 ... 68

4−3−3 管理会社の主導方式 ... 70

4−4 修繕工事の実態と法規定の異同 ... 72

4−5

まとめ

... 74

第5章 中国の集合住宅おける共用部分修繕工事に関する改善策 ... 75

5−1 調査概要 ... 77

5−2

集合住宅共用部分修繕の関連主体の日中比較

... 79

5−2−1 関連主体の種類と業務 ... 79

5−2−2

発注主体

... 80

5−2−3 中国集合住宅の共用部分修繕に関わる関連主体自身問題の改善策 ... 82

5−3

集合住宅共用部分の修繕プロセスの日中比較

... 83

5−3−1

日本の集合住宅共用部分の修繕プロセス

... 83

(4)

5−3−2 中国集合住宅の共用部分修繕プロセスの問題点 ... 85

5−3−3 中国集合住宅の共用部分修繕プロセスの改善策 ... 89

5−4 集合住宅共用部分の修繕に関わる関連主体の協力関係の日中比較 ... 91

5−4−1 中国集合住宅の共用部分修繕における関連主体の役割分担の問題点 ... 91

5−4−2 中国集合住宅の共用部分修繕に関わる所有者関与方式の問題点 ... 92

5−4−3

中国集合住宅の共用部分修繕に関わる関連主体の協力関係の改善策

... 93

5 − 5

まとめ

... 97

第6章 総括結論 ... 99

6−1 本論文の成果 ... 100

6−2

今後の研究課題

... 101

付録 ... 102

表一覧 ... 115

図一覧 ... 117

謝辞 ... 118

(5)

第1章 序論

1-1 研究の背景

1−2 研究の課題と目的 1−3 研究の流れと研究方法 1−4 既往研究と研究の位置づけ

(6)

本章の目的

本章は序論であり、中国の集合住宅の共用部分修繕工事に関する既往研究を概観し、

中国における修繕工事の問題点解決の重要性・喫緊性を示すとともに、修繕工事に必要 な関連主体の整理及び検討事項の抽出を行うことで本研究の目的を述べている。

(7)

1−1 研究の背景

1−1−1 中国集合住宅市場形成の発展史

中国の住宅市場の形成は、図1−1によって、大きく四つの段階に分けられる。

図 1-1 中国集合住宅市場形成の4段階

第一段階は、1949 年の建国初期から 1978 年までの期間で、中国は当時毛沢東1)の指 導の下での計画経済である。当時の都市住宅は、計画経済の中、国営企業の社宅では、

投資・建設・供給及び維持管理などは、国の統一的な計画の下で実施された。

第二段階は、1978 から 1989 年までの期間で、不動産業の初歩発展期である。改革開 放後、建築物の売買及び賃貸を主要構成要素とする不動産市場は、住宅所有制及び分配 制度の改革とともに形成され、発展してきた。この期間中、住宅の商品化と不動産市場、

そして不動産業の初歩的な発展段階に入った。1978 年、「経済改革開放」と呼ばれる 中国特有の社会主義市場経済体制がトウ小平2)の指導の下で導入された。1978 年まで中 国都市の公有住宅は都市住宅の 74.8%を占めていた3)。社会主義市場経済制度の下で国 営企業は経済利益を重視することになり、企業間の競争力を高めるために、今まで管理 運営してきた社宅を手放すことが必要となった。そのため、1980 年代から、社宅に関 する新たな制度・政策が試行されたことを皮切りに、1994 年 11 月に都市住宅制度改革

1) 毛沢東 (1893 〜 1976): 中国の政治家、思想家、戦略家で、初代中華人民共和国主席である。マルクス主 義・ソ連型社会主義を中国社会に導入した。

2) トウ小平 (1904 〜 1997): 中国の政治 家で、毛沢東の死後、事実上の中華人 民共和国の最高指導者とな った。中国の改革開放を行い中国の経済成長を築いた。

3) 国務院住宅制度改革領導小組,国務院住宅制度改革研究会:中国住宅制度改革,北京改革出版社,1996.12, pp.608(中国語)

(8)

4)が全国範囲で実施され、福祉的な社宅制度は廃止される方向になった。この都市住宅 制度改革によって、住宅及び社宅の建設事業・取得方法・所有形態・維持管理体制など における大きな変化が現れた。従来の国や企業による統一的な建設や管理・所有された 社宅は、企業と切り離され、企業社員でもある所有者に払い下げられた。このような住 宅は中国で社宅から商品住宅に化する意味で「房改房」と呼ばれる。つまり、「社宅供 給」のような福祉目的の住宅供給形式が市場化され、国民がより自由的に住宅取得でき る形式へ転換された。

第三段階は、1990~97 年の間の不動産業の膨張期である。1990 年代から不動産業が 急速に発展するとともに、住宅改革も加速した。一方、この時期には、「商品房」5)な る民間開発の集合住宅が多くなってきている。1990 年には、住宅公積金(住宅財形)制度 が全面的に施行され、1991 年上半期には、国務院住宅制度改革指導所が住宅制度改革 の大きな方向を決定する「關于深化住房制度改革的決定」(住宅制度改革を深めること に関する決定)を発表した。一方、この時期には、不動産開発企業が過度に膨張し、一部 地域に深刻な不動産投機と価格暴騰現象が発生した。これに対し、1993 年 6月、国務院 はマクロ調整政策を発表し、銀行の緊縮融資と金融秩序の整理を実行し、不動産開発 に投資された大量の資金を引き上げさせた。また、行政と司法部門で違 法 行 為 を 大 々 的に取り締まり、過熱現象を沈静化させた。その結果、1994 年からは不動産市場と不動 産業が新たな秩序の下で、規範化された発展軌道に入った。

第四段階は、1998年以降であり、不動産業の繁栄期である。1998 年初めに中国共産 党中央と国務院は、全国的に住宅配給制度を完全に停止し、漸進的に住宅購買補助金制 度を決定した。1998 年 7 月 3日に国務院が発表した「都市住宅制度改革深化と住宅建 設加速化に関する通知」(住宅制度改革を深めることと住宅建設早めることに関する決 定)では、1998 年下半期から中国各地の住宅実物配給を中止して、住宅購買補助金制度 を実現するよう求めた。1998年の国務院通知の後続措置として、中国の各地方において

4) 1994 年 11 月に、中国国務院が公布した「都市住宅制度改革の全面的推進についての答申」には、住宅制度 改革の目標を「所有者が住宅購入して所有権を取得することにより、住宅が商品化し不動産市場に参入する。」こと が挙げられており、その改革に伴い、本来国有、公有の集合住宅(社宅)をその所有者に払い下げ、現在は「房改 房」となっている。

5 ) 市場メカニズムに基づいて民間事業者が自由販売を目的とした集合住宅で、原則として分譲方式である。これ らの物件は、ディベロッパー自身による管理と外注である管理会社による管理がある。

(9)

住宅実物分配が中止され、商品としての住宅が流通する住宅市場中心のシステムに転 換するための一連の関連施策が推進された。これにより、住宅資金貸付業務が銀行間 の主要な競争業務になり、個人の住宅購入が継続的に増加した。それに伴い、商業銀行 の個人に対する住宅資金貸付総量も爆発的に増加し、貸付条件も徐々に緩和されてきた。

1−1−2 住宅市場の発展に伴う所有形態の変遷と割合

1-1-1 の通り、中国の集合住宅の所有形態6)は資本主義国とは違い、中国の社宅は経 済改革開放の影響を受け、国営企業改革の一環として企業から切り離れ、本来社宅の持 つ生活保障という性質の変化を余儀なくされた。特に、90 年代からの都市住宅制度改 革は、社宅が実物配給から貨幣補助に転換され、所有権の払い下げによって、これまで 使用権及び占有権のみを有していた社宅を所有者が私有することが認められるように なった。

都市住宅制度が住宅の所有形態に与えた変化を図 1-2 に示した。

1995 年から 2008 年まで、払い下げ社宅を含め、私有住宅の形態が上昇し、個人が所 有権を持つ住宅は都市住宅のかなりの比率を占めていることが分かる。

赤枠の通り、1995 年公有住宅は全体の 57.1%として大半を占め、その中、企業が管 理運営する社宅 45.9%であることと対照的に、2002 年まで、公有住宅は賃貸房改房(一 部所有者は購入能力がないため、企業に家賃を支払うことにより引き続き居住する形態)

として、16.6%のみになり、私有住宅の中で、私有房改房(元企業社宅)が 65.6%であ る。2008 年には公有住宅は賃貸房改房という特殊形態であるが、わずか1割未満で、

私有房改房が 41.6%になった。中国の住宅私有化が完成したと言える。

また、青枠の通り、2005 年にはまだ少ないですが、1995 年にない商品住宅枠が生ま れた。2008 年には、商品住宅は 34.9%まで上昇し、民間開発による商品住宅の大量建設 が分かった。

6) 「中国城鎮国有土地使用権出讓と転讓暫行条例」の第 12 条により、通常の住宅地に対し、国は所有権を保有 したまま所有者(もしくは開発者)に対して 70 年間の「建設用地使用権」を付与している。その土地に付着する工作 物、建造物など不動産の所有権は「建設用地使用権」を持つ所有者(もしくは開発者)に属する。これは日本におけ る地上権に類似する概念である。また、70 年間の期限到来後の「建設用地使用権」の扱いについて、現在の中国 政府では具体的な対策を示していない。なぜなら中国の不動産市場における「分譲住宅」の出現は 1990 年代以降 のもので、その中で最も古いものでも「建設用地使用権」の年数はまだ 30 年弱しか経っておらず、それに関する議 論自体が未だに問題意識として持たれていない。

(10)

従来、企業が全て維持管理を行なっていた社宅は、現在、ほとんど個人所有のものと なっていることがわかる。そのため、住宅の修繕管理、団地の日常清掃、住戸の暖房費 用などは、企業がマネジメントするかたちから所有者に任せざるを得ない状況となって きた。

1−1−3 住宅市場の供給過剰問題

1990 年代から中国には、民間による不動産建設ブームは始まり、「商品房」なる民間 開発の分譲向けの商品住宅が多くなってきている。

図 1-3 を示す通り,2000 年から 2011 年の間に,年毎の商品住宅の新築床面積は穏や

出典:

(1995、2002年のデーター:中国社会科学研究院、城市住房抽様調査結果(1995, 2002 年)より作成)

(2008年のデーター:中華人民共和国国家統計局:http://www.stats.gov.cn/)

図 1-2 1995 年〜2008 年 中国集合住宅所有形態の割合変遷

図 1-3 2000〜2011 年中国城鎮部新築住宅面積総計

(11)

かに増える一方、商品住宅の割合は 37.5%から 78.3%まで倍以上に成長してきた。そ れで中国の商品住宅の建設は住宅建設を押し上げる原動力になったことがわかった。

そして、表 1-1 示す通り、2010 年には、1 世帯当たりの住宅数が 1.2 戸で、1 人当た りの住宅面積が 30.3 ㎡に達している。

一方、都市部の商品住宅売買成約量は図 1-4 示す通り、むしろ減ってきたことがわか り、商品住宅の過熱開発により、住宅市場は供給過剰の現状を示している。

以上からみると、昔中国の住宅面積不足の問題は既に解消され、住宅建設はそもそも 以前のように必要でなくなると言える。

表 1-1 2010 年中国住宅建築面積総計 人口数

(億人)

総計 (億平米)

一人当たり住宅面積

(平米)

2000 2010 2000 2010 2000 2010 全国 12.4 13.3 282.3 413.3 22.8 31.1

2.9 4.0

102.8 203.0 22.4 30.3 1.7 2.7

農村 7.8 6.6 179.4 210.3 23.0 31.7 出典:中華人民共和国国家統計局:http://www.stats.gov.cn/

出典:中華人民共和国国家統計局:http://www.stats.gov.cn/

図 1-4 2005〜2011 年中国商品住宅販売面積・成約率

(12)

1−1−4 集合住宅老朽化に伴う修繕問題

中国では、住宅私有化の改革と合わせて、国が住宅の修繕に関する「物権法」などの 法改正に着手し、各地方においても積立金の納付や維持管理について更に細かく明文化 した。中国現在の集合住宅の管理方式は「物権法」の第 70 条から 83 条において、所有 者の役割として「所有者は専有部分の所有権を持ち、それ以外の共用部分について共同 管理の権利がある」とされる。しかし、それにより改革まで政府や企業による維持管理 や整備が中止され、都市住宅制度改革によって払い下げられた社宅および長年修理を怠 っていた商品住宅は、共用施設の整備不良、建物や設備の老朽化が深刻になった。その 原因の一つは建築の技術レベルが低いことである。特に民間の建設会社に建設された早 期の商品住宅は手抜き工事が多く、「豆腐のおから」と呼ばれるように劣悪な品質であ った。もう一つの重要の原因としては、中国には、日本のような定期修繕はあまり実施 されていなかった。文献 1.1

集合住宅における共用部分の修繕には様々の問題点がある。

まずは客観的に言えば管理状態の不良と挙げられる。特に元公有住宅は住宅改革によ り私有化になったが、維持管理の体制はそのまま企業側が担当した。1998 年企業改革 による国有企業が大量倒産の後、所有者の管理体制が追いつかなく、管理の手が一気に なくなり、修繕ともかく、維持管理も困難である。

次は、近年大手デッペロッパーに開発された大規模団地は管理状態がいいものも出て きた。そして、所有者自身の問題もある。中国には従来、国や企業は全て修繕を担当し ましたので、所有者自身による修繕の意識はあまりなかった。特に共用部分を所有する 意識が低下であるので、修繕にあたり、管理者や所有者間の資金調達などの合意確保が 難しいなどの問題が目立てる。

以上の通り、管理状態と関連主体間の協力関係は修繕の影響要因とを分かったので、

今日の中国の都市居住や都市住宅整備における喫緊的課題であると指摘できる。

(13)

1−1−5 対象地域と研究対象

(1)中国都市大連市位置づけ

本論文では、中国遼寧省大連市を対象とした。図1−5の通り、大連市は中国東北部 遼寧省の南部に位置する地級市で、日本、韓国、北朝鮮とロシア極東地方に近接する。

経済的重要性から省クラスの自主権をもつ副省級市にも指定されている。

大連は全国 15 個の副省級都市で、5 つの計画単列市の中にある。中国東北の対外開 放の窓口、東北地区の最大の港灣都市であり、中国の沿海開放 14 都市の 1 つである。

2016 年に国家統計局が発表した人口ランキングでは、大連は全国 47 位、東北三省4位 にランクインした。人口吸引力ランキングについて、大連市は全国 23 位、東北三省ト ップとして君臨した。全国総生産 GDP ランキングでは、大連市は 8150 億人民元で全国 17 位、同様に東北三省トップの座を占めた。7)

以上の通り、大連市は全国経済建設発展改革のモデル都市というのは過言ではない。

(2)大連市の研究対象

大連市の総面積は 12,574 平方キロであり、うち旧市街区の面積は 2,415 平方キロで

7)出典:大連市国土資源と房屋局: http://www.gtfwj.dl.gov.cn/

図 1-5 中国大連市の位置づけ

(14)

ある。大連市総人口は約 600 万人超。(市区人口は 211 万、都市的地域の人口は 325 万 人であり、遼寧省では省都の瀋陽市に次ぐ大都市である8)

大連市地形は日本と似ており、山地丘陵が多く、平坦地や低地が少ないの特徴がある。

大連の中心区は広くなく、しかも丘陵の地形は坂が多いことが決まり、住宅の多くは地 形に沿って建てた。

表1−2の通り、大連市は 7 市轄区・2 県級市・1 県から構成されている。本論文は「市 内 4 区」(中山、西岡、沙河口、甘井子)の集合住宅を対象とする。

中山区、沙河口区と西岡区商業街を除くほとんど旧市街であり、かつ政策や軍用地な どの影響を受け、新房ストックは非常に小さく、しかも所有者の高齢化が進む問題があ

8)出典:大連市国土資源と房屋局: http://www.gtfwj.dl.gov.cn/

表 1-2 2007 年大連市市内4区の面積と人口統計

名称 面積(平方キロメートル) 戸籍人口(人)

①中山区 40.10 353,775

②西崗区 23.94 307,123

③沙河口区 34.71 642,954

④甘井子区 451.52 704,356

出典:大連市国土資源と房屋局: http://www.gtfwj.dl.gov.cn/

(15)

る。一方、甘井子区外来人口が多く、収入が高く、大連新築販売の主要地域でもある。

そこで本稿の研究対象として選択した事例は市内4区ともにあり、築年数によりさまざ まな管理形態が含まれている。

(3)大連市集合住宅の修繕状態

大連理工大学の索建教授は「大連既存住宅病理現象のライブラリと初歩的な診断テン プレート構築方法の研究」の論文に、大連市住宅のメンテナンス効率と品質は高くない が、多くの住宅に長年修繕を放置されていると指摘した。大連市既存住宅の修繕問題に ついて、「大連市は都市発展に伴って、居住品質の劣悪な住宅が数多く見られる、修繕 工事が必要である。しかし、現在は簡単な部位の修繕に偏りがちであり、実施されてい る修繕工事は住戸専有部分と簡単な共用部分で多く見られ、共用部分の修繕がうまくな されていない。」を指摘した。文献 1.2

大連市の集合住宅における現在でよく問題になる箇所について、表 1-3に示すよう に、棟共用部分の躯体と外壁の問題がよく発生している。それぞれは柱礎欠損、壁の土 台欠損、排水配管ひび割れ、軒下漏水、外壁漏水、外壁ひび割れ、ベランダタイル剥落 等です。

表 1-3 大連市の集合住宅共用部分で問題になる箇所

部位 問題点

柱礎欠

壁の土 台欠損

排水配 管ひび 割れ

軒下漏

外壁漏

外壁ひ び割れ

ベラン ダタイ ル剥落

屋上漏

団地共 用部分 の利用

階段ひ び割れ

(16)

1−2 研究の課題と目的

1−2−1 研究の課題

本研究は集合住宅共用部分の修繕における関連主体の協力関係に着目している。

研究背景に記述した通り、中国の住宅市場は供給過剰の状況の中、管理・修繕に関す る制度の整備は、加速する建設スピードに追いついておらず、様々な課題が現れている。

特に集合住宅の共用部分の修繕においては、建物としての管理不全、所有者の共用部分 に対する修繕意識の低下、さらに管理組合もうまく機能していない、今後の老朽化、陳 腐化に対して現実に則したより効果的な方策の構築が急務といえる。

そのためにも、中国の集合住宅の供給体制や維持管理に関わる諸法律、さらには修繕 工事の実施体制などの実態を把握し、さらに集合住宅の大規模修繕の経験が豊富な日本 の事例との比較検討を行い、中国の実情に適合した新たな修繕方法のあり方を導きだす ことは有用である。

1−2−2 研究の目的

本論文は、中国大連市の集合住宅の共用部分の修繕工事に着目し、修繕工事実施に関 わる法律の整理、工事に関与する関連主体の役割の解明から、日本の修繕体制との比較 を通じて、中国の修繕制度の問題点を明らかにすることを目的とする。

さらに、修繕工事プロセスにおける各関連主体の関与体制の分析を通じて、関連主体 の望ましい協力関係を導きだし、改善策構築の可能性について提示することを最終的な 目的としている。

(17)

1−3 研究の流れと研究方法

1−3−1 研究の流れ

本論文の研究の流れは、表 1-4 にその内容を示す通りである。

第1章は序論であり、中国の集合住宅の共用部分修繕工事に関する既往研究を概観し、

中国における修繕工事の重要性・喫緊性を示すとともに、修繕工事に必要な関連主体の 体制の整理及び検討事項の抽出を行うことで本研究の目的を述べている。

第2章では、中国の集合住宅共用部分の修繕に関する法律の内容把握を行うとともに、

日本の関連法律との比較から修繕工事の相違点を明らかにしている。具体的には、集合 住宅の共用部分の修繕に関する法規定では、責任者(責任団体の成立・開催・議決)、

資金(積立金の徴収・管理・使用手続)、施工(工事請負の条件・資質など)に着目し、

中国の法制度に関する問題点を明らかにする。

第3章では、中国大連市の集合住宅共用部分における修繕工事の実態調査に基づき、

修繕プロセスの全体の傾向を明らかにしている。具体的には、中国の集合住宅の共用部 分の修繕がうまく進められていない理由を解明した上、修繕プロセスの影響要因を明ら かにする。

第4章では、大連市の集合住宅共用部分の修繕プロセスにおける関連主体の協力関係 を分析し、その問題点を明らかにしている。具体的は、代表事例の修繕プロセスに沿っ て関連主体の参加状況と各プロセスにおける意思決定の実態分析から、関連法律との適 合性の要因を把握した。

第5章では、日本の修繕工事における関連主体の協力関係の実態を参考に、中国の関 連主体の協力方式の問題を解決する手法を導き出している。具体的には、日本の集合住 宅修繕工事における関連業者にヒアリングの結果と比較し、中国の修繕プロセスは関連 主体の協力関係に問題があることがわかった。さらに、これらの問題を解決するために 関連主体そのもののあり方や取りまとめる主体の位置づけなどが有用であることを提 言する。

第6章では、本論文のまとめとして、各章ごとの研究成果を示し、中国の集合住宅共 用部分修繕工事の問題解決策および今後関連主体の協力方法を提出している。また、今 後の展望及び研究課題について述べている。

(18)

表 1-4 研究の流れ

(19)

1−3−2 研究の方法

研究方法としては、は表 1-5 に示すように、まず文献調査(調査1)を通じ、日本と 中国の集合住宅修繕に関する諸法律の相違点を整理することにより、中国住宅修繕体制 上の不足点を抽出する。

また中国の修繕制度上の法現象を分析した後に、中国の集合住宅修繕工事の現状を 把握するために、中国東北部の最も重要な都市である大連市の 60 棟の集合住宅を対象 とし、基本的な状況についてのアンケート調査(調査 2)を行う。そして、中国住宅修 繕の基本状況と問題点を洗い出す。更に大連市の管理会社と設計会社へ修繕のプロセス

表 1-5 研究方法

調

調査1

調査対象 日本と中国の集合住宅修繕に関する諸法律 調査方法 文献調査

調査内容 1.日中集合住宅共用部分の定義 2.日中住宅修繕に関する制度の比較

調

調査2

調査対象 中国大連市の都市部における集合住宅団地60 調査時間 20159

調査方法 アンケート

調査内容

1.管理組合と管理会社の有無 2.棟数と比率

3.築年数

4.よく問題になる箇所

調査3

調査対象 中国大連市の管理会社の調査

調査時間 一回目:20159月/二回目: 20167 調査方法 ヒアリング

調査内容

1.管理会社の規模、種類 2.管理費の収集、使用状況 3.修繕費の使用条件及び修繕計画 4.修繕工事の履歴

5.修繕工事のプロセス 6.修繕の関連主体の協力関係

調査4

調査対象 中国大連市の修繕設計会社の調査 調査時間 201612

調査方法 ヒアリング

調査内容 1.工事業者の規模と業務

2.工事業者の施工周期・住民への影響の調査

調査5

調査対象 日本の修繕に関する管理業者・コンサルタント 調査時間 20175

調査方法 ヒアリング

調査内容

1.修繕の関係主体 2.修繕の発注方式 3.修繕のプロセス

4.修繕の関連主体の協力関係

(20)

と関連主体の協力実態についてヒアリングを行い、そこから取得した修繕実例を分類し 分析する(調査 3、4)。更に日本の修繕に関する管理業者・コンサルタントにヒアリ ング調査を行い(調査 5)、中国の修繕実例を適用することで、中国住宅修繕の関連主 体の協力関係における問題点を洗い出することにより、最適な協力関係を勘案する。

(21)

1−4 既往研究と研究の位置づけ

近年、中国の住宅建設量の増加に伴い住宅の維持・修繕に関する問題が浮き彫りにな ってきた。中国の国情に適した住宅修繕策を探るべく、多くの研究が行われている。

1−4−1 集合住宅の維持・修繕の関連法律に対する既往研究

日中の集合住宅維持・修繕の関連法律に対する既往研究を調査した結果を表1−6に 示した。

邱剛は、不動産管理の理論基礎研究をした上で、中国の国内外のいくつかの管理経験 を纏めた結果、中国は不動産管理に関する法律法規はまだ完備ではないため、維持管理 問題を法律で良く解決できない場合があり、所有者達の利益も破壊され、救済できない

現状を指摘した。そして、「行政主管部門が管理企業の管理を強化すべく」など、中 国が完備な不動産管理の法律仕組みを構築することが急務であると提言した。

闕小虎は中国武漢市 10 年間住宅特別維持資金の全体状況を研究した上で、住宅特別 維持資金徴収額は年々増加したのに、資金の使用率が依然と低いことを指摘した。そし て、中国の維持修繕資金を国によるの統一管理の法律に対し、維持修繕資金管理権限を 住民に次第に戻すべくと提言した。

鞏従容は、中国の都市住宅制度改革による住宅管理体制の変化について研究し、公有 住宅売却後の維持管理の問題点を論じている。住宅の管理体制が政府・企業の管理から、

表 1-6 維持・修繕制度を対象にした研究論文 カテ

ゴリ

表題 著者/主典 発表年 参考

中国 現状

1 不動産管理法律制度に関する研究(中国語) 邱剛/中国吉林大学法

学院 2013.2 文献1.3) 住宅特別メンテナンス資金の管理権限につい

ての考え――武漢市を例に(中国語)

闕 小 虎 / 中 国 房 地 産 報

2011 文献

1.4)

上海における住宅制度の転換と住宅市場化- 住宅開発に着目して

中岡深雪/大阪市立大

学経済学研究科 2006 文献

1.5)

中国の都市住宅制度改革に伴う住宅管理体制 の変化に関する研究

鞏従容/日本建築学会

計画系論文集 2003.11 文献1.6) 日中

比較

5 マンション管理制度の日中比較 権 承 文 / 千 葉 大 学 人 文

社会科学研究 2008.3 文献1.7) 日中比較よる現代中国の集合住宅における区

分所有権及び住宅管理法制度の考察

何昕/日本建築学会計

画系論文集 2013. 5 文献

1.8)

(22)

専門的な管理会社による維持管理に転換したことについて、深圳市、上海市、北京市、

大連市を対象に、ディベロッパー・管理会社・所有者に対するヒアリングおよび住環境 の実態調査を行った。所有権が公有から私有になった住宅の維持管理事業の実態を俯瞰 的に把握した。維持管理の経費について、ディベロッパーが大規模開発・販売を継続し 管理資金の補填を行うことで、入居初期の管理費が低く抑えられた事例も多い。管理会 社では、長期的な修繕資金を積み立てる仕組みが十分ではないことを提示している。ま た、共有・共同空間の維持管理に対する所有者の主体的な関わりを難しくしていること が指摘されている。

権承文の論文は、日本と中国のマンション管理制度を比較した上で、中国における マンション管理制度の本質を明らかにした。具体的には、区分所有建物の管理を行う 主体、規約の位置づけ、集会の位置づけ、集会の決議や規約の定めを実行する実行機 関などの視点からマンション管理制度の比較法的考察を行っている。

何昕の論文は、日本法との比較を通して、中国の集合住宅における専有部分と共用部 分の区分所有権制度、さらには共用部分の管理に関する中国的な特徴と問題点を明らか にした。特に、1)法制度の構成、2)土地と区分所有建物の所有権、3) 専有部分と共用部 分のそれぞれに含まれる範囲の違い、4)管理方式 の実態と区分所有者団体の位置づけ の違い、5)普通決議と特別決議 の決議事項の違い、6)管理規約の設定と段階的方法、

7)集合住宅 の修繕と修繕金制度の違い、に焦点を絞って考察を行っている。

1−4−2 集合住宅の維持・修繕の実態に対する既往研究

日中の集合住宅維持・修繕の実態に対する既往研究を調査した結果を表1−7に示し た。

耿宏兵の研究では、都市住宅団地の更新手法では、保存や修繕などより、完全な建替 え手法が推進されている。このような結果となった原因の一つは、不動産ディベロッパ ーが各自の業績を伸ばそうとしたためであると述べた。また、CIAM が提唱した機能主 義理論を受け、大規模の建替手法が各地の都市建設や住宅更新に広がって、旧都市が新 たな都市環境に更新されていると記述している。90 年代後半から中国の学術界では大 規模建替の手法に対する議論が始まった。

郭晋生の研究では、中国における住宅修繕の歴史に着目し、中国の住宅の老朽化が早

(23)

い理由として、中国の住宅管理と修繕体制が他の先進国に比べ遅れているため住宅の寿 命も短いことを指摘した。また、中国では老朽化住宅に対し、建替えが主流であり修繕 はあまり行われていないのが現状であると述べている。更に、修繕の体制に問題がある とも指摘しているが具体的な対策を提示していない。また、中国の住宅修繕に関する研 究の多くは中国政府主導のもとで実施した省エネ修繕が対象である。

張違芹は中国都市部の老朽住宅の修繕に関する設計方法について研究を行った。張瓊、

李旎の研究では、大連市の典型的な住宅の修繕の実例を把握した上で、修繕後の住宅性 能の効果に対し評価している。既往研究では、住宅の修繕についてその設計、施工に着 目するものが多いが、修繕の関連法や関連業者の役割に関する研究蓄積が殆ど見られな い。

索健は実態調査、現場撮影、観測を通じ、大連で既存の住宅修繕状況を分析した上で、

住宅使用中よくある病理現象を収集、定量化した。当研究は住宅再生法の基礎研究にな った。

梶浦恒男は、中国 1995 年まで北京を対象とし中国の集合住宅管理システムおよび、

修繕費、維持管理などの問題を考察した結果、中国当時の修繕金不足と管理不全が住宅 の修繕を妨げていることを深刻な問題として指摘した。

湯璐璐の論文、中国の旧住宅制度における社宅事情の概説と事例紹介から社宅の特徴

表 1-7 維持・修繕実態を対象にした研究論文

表題 著者/主典 発表年 参考

1 90 年代中国大都市更新における特徴(中国語) 耿宏兵/中国都市計

画学会都市計画 1999.7 文献 1.9)

2 我が国の都市住宅改修に関する歴史と現状(中国語) 郭晋生/城市建築 2008.1 文献 1.10)

大連市既存住宅の持続可能な更新に関する研究(中 国語)

張違芹/大連理工大

学修士論文 2011.6 文献 1.11)

4 我が国の都市更新建設体系と発展モデル(中国語) 張瓊/大連理工大学

修士論文 2013.6 文献 1.12) 都市既存住宅省エネ改修工事実態研究——大連市中山

区の事例をとした(中国語) 李旎/建築と文化 2013.1 文献 1.13)

大連市の住宅病理現象ライブラリと初歩診断モデル の構築方法の研究

索健/大連理工大学

修士論文 2012.6 文献 1.14)

7 中国の集合住宅管理システムの研究 梶浦恒男/日本住宅

総合財団研究年報 1995 文献 1.15)

中国都市住宅制度改革により更新された社宅団地の 所有者要求と住環境計画に関する研究

湯璐璐/北海道大学

工学院博士論文 2014.12 文献 1.16)

(24)

を整理し、経済体制の変化と企業経営の変化による社宅改革及び都市住宅制度改革の経 緯を整理し、都市住宅制度改革の試験地である瀋陽市において、更新された社宅団地の 特徴と都市型集合住宅団地の近代化について記述する。さらに瀋陽市において、初めて の都市住宅制度改革に沿って建替えられた社宅団地を研究対象に選定し、住宅の取得方 法・所有形態・維持管理・建替えによる物理的環境の変化・団地の現状と居住環境など の変化を考察している。

1−4−3 本論文の位置づけ

集合住宅の維持・修繕の関連法律に対する既往研究では、主に供給政策と管理体制に 関する研究が多く、住宅修繕制度に着目している研究は少ない。

集合住宅の維持・修繕の実態に対する既往研究では、住宅建替え・修繕の設計手法、

住宅更新による社会的問題、住戸内のリフォーム工事などの研究が多く、住宅の共用部 分の修繕及び関連主体の協力関係などに関する研究は少ない。

これらの既往研究を踏まえ、本研究は、中国の集合住宅の修繕に関する関連主体の役 割を明らかにするとともに、関連主体の協力関係及び抱える課題を分析することを通し て、今後の修繕計画を検討するものと位置づける。更に、今後の大規模集合住宅団地に おける修繕のあり方を探ろうとするための基礎的研究である。

(25)

第一章の参考文献

文献 1.1):韓毅:旧住宅区更新改造模式的探究 , 安徽建筑 ,2005 年 05 期 ,安徽省建 筑科学研究設計院,安徽土木建筑学会,pp.10 ~ 13,2005.12(中国語)

文献 1.2):大連市の住宅病理現象ライブラリと初歩診断モデルの構築方法の研究、索 健/大連理工大学修士論文、2012.6(中国語)

文献 1.3)不動産管理法律制度に関する研究、邱剛/中国吉林大学法学院、2013.2 文献 1.4)住宅特別メンテナンス資金の管理権限についての考え――武漢市を例に、闕 小虎/中国房地産報告、2011

文献 1.5)上海における住宅制度の転換と住宅市場化-住宅開発に着目して、中岡深雪

/大阪市立大学経済学研究科、2006

文献 1.6)中国の都市住宅制度改革に伴う住宅管理体制の変化に関する研究、鞏従容/

日本建築学会計画系論文集、2003.11

文献 1.7)マンション管理制度の日中比較、権承文/千葉大学人文社会科学研究、2008.3 文献 1.8)日中比較よる現代中国の集合住宅における区分所有権及び住宅管理法制度の 考察、何昕/日本建築学会計画系論文集 2013. 5

文献 1.9)90 年代中国大都市更新における特徴(中国語)、耿宏兵/中国都市計画学会 都市計画、1999.7

文献 1.10)我が国の都市住宅改修に関する歴史と現状(中国語)、郭晋生/城市建築、

2008.1

文献 1.11)大連市既存住宅の持続可能な更新に関する研究(中国語)、張違芹/大連理 工大学修士論文、2011.6

文献 1.12)我が国の都市更新建設体系と発展モデル(中国語)、張瓊/大連理工大学修 士論文、2013.6

文献 1.13)都市既存住宅省エネ改修工事実態研究——大連市中山区の事例をとした(中 国語)、李旎/建築と文化、2013.1

文献 1.14)大連市の住宅病理現象ライブラリと初歩診断モデルの構築方法の研究、索 健/大連理工大学修士論文、2012.6

文献 1.15)中国の集合住宅管理システムの研究、梶浦恒男/日本住宅総合財団研究年報、

1995

文献 1.16)中国都市住宅制度改革により更新された社宅団地の居住者要求と住環境計 画に関する研究、湯璐璐/北海道大学工学院博士論文、2014.12

(26)

第2章 中国の集合住宅共用部分の修繕に関する法律及び 日本との比較

2−1 用語定義

2−2 中国の集合住宅共用部分における修繕に関する法律の 変遷

2−3 中国と日本の集合住宅共用部分における修繕に関する 法整備の相違

2−4 まとめ

(27)

本章の目的

本章は、中国の集合住宅共用部分の修繕に関する法律の内容把握を行うとともに、日 本の関連法律との比較から相違点を明らかにすることを目的とする。

具体的には、中国の集合住宅の共用部分の修繕に関する法規定では、責任者、資金、

施工に着目し、日本の区分所有法及び修繕工事に関する法律と中国の関連諸法と比較し た上で、中国の法制度に関する問題点を明らかにする。そして、今後の中国の法制度の 整備や、広くは日本の法制度の整備にも示唆を与えるものと考えられる。

(28)

2−1 用語定義

表 2-1 に示すように、中国と日本の集合住宅共用部分修繕に関する用語には相違性が ある。その中で、社区と国土資源局は中国特有の政府機関である。それ以外の概念は表 中の日本の用語を用いることとする。

2-1 集合住宅に関する用語の定義

日本の用語 中国の用語 用語の解釈

集合住宅 商品房

市場経済の中で、経営資格を持つ不動産開発企業(外商投資企業 を含む)が譲渡を通じて土地使用権を取得し、経営している住宅 を指す)。

区分所有者 業主 分譲マンションの各住戸の所有者など区分所有権を有する者。

管理組合 業主大会 建物の区分所有等に関する法律に基づき区分所有建物を区分所有 する区分所有者によって構成される団体である。

管理会社 物業管理 分譲マンションの管理組合から委託を受けて管理事務を行う日本 の企業。

理事会 業主委員会 通常マンションに居住する区分所有者の中から選任される理事で 構成されている意思決定機関。

国土資源局

大連市は 2011 年までに住宅管理と土地管理の業務がそれぞれ「房 産局」と「国土局」の二つの政府部門が担当したが、2011 年が統 合され、新たな「国土資源局」になった。15 個の下級部門があり、

その中に住宅関連の部門は6つである。それぞれ住宅保障、不動 産登記、住宅の安全鑑定、住宅の積立金管理、賃貸不動産登記、

不動産謄本の管理の業務を遂行する。

社区

中国の行政の末端組織であり、管轄内所有者の各種事務処理を行 う日本の自治会に類似する位置づけである。また、現在国の政策 に基づく「房改房」の集合住宅の管理主体は、基本的に社区である。

日常的な維持管理や非定期的な修繕は、毎月徴収する 1 戸当たり 数十人民元(円に換算するおよそ千円)程度の管理費でカバーされ ている。また、国が提供する大規模修繕の補助金を利用した修繕 事業については、基本的には社区が窓口となり、国と所有者の間 に立ってやりとりをする役割も担っている

(29)

2−2 中国の集合住宅共用部分における修繕に関する法律の変遷

中国では法律の展開について、まず、中央政府が法律の大枠を公布し、北京、上海の ような主要都市から詳細化し試行する。そして、全国の各地方に展開する。それゆえ、

各地域の法律は、地域の特徴によって、細かいところで異なるが、内容の大筋はがほぼ 同様追えることができる。

1990 年代からの住宅体制の改革に伴い、それまでの計画経済体制下での国・事業会 社が建設、所有していた住宅は、市場経済体制下の「房改房」と称される所有者所有の体 制に変わっていた。近年導入された中国版の区分所有法とも言える「物権法」(2007 年) とそれを補足する「物業管理条例」(2003 年)の施行後に、集合住宅管理・修繕に関す る規定が規範化された。また、房改房の老朽化問題に対応するため、「都市住宅修繕規 定」などの修繕に関する法律が次々と制定された。と同時に、大連市は国の指針のもと で、更に詳しい積立金徴収及び使用監理暫定規定を制定した。

本稿では集合住宅共用部分の修繕工事プロセスにおいて欠くことのできない責任者

(RE:Responsibility)、資金(MF:Maintenance fee)、施工(CQ:Construction Quality) に分類し、法律の内容を整理した。

2−2−1 修繕責任者に関連する法律の変遷

修繕責任者に関連する法律の変遷は表 2-2 に示した。時間順で RE1 から RE6 まで記述 し、さらに変遷内容を「責任担当」と「組織主体」に分類した。「責任担当」は修繕の 責任者に関する内容であり、「組織主体」は修繕工事の発起者、主導者に関する内容で ある。

修繕部分の責任担当については、1983 年[RE1]の規定によれば当時の所有者である政 府と所有者による共同負担とされている。2000 年[RE5]には保証期間の概念が示され、

保証期間内はディベロッパー、保証期間後は所有者が担当することになった。

修繕の組織主体については、1991 年[RE2]に、政府が住宅の修繕管理の行政分野を担 当するとされている。住宅改革に伴い、1992 年[RE3]では、修繕を管理する住民団体と して管理組合の組織化が示されている。1994 年[RE4]では、管理主体である管理会社を 監督するために理事会を設置すべきであるとされた。2013 年[RE6]からは、管理会社に

(30)

よって管理されていない老朽化した住宅(主に社区管理の住宅)について、所有者の申 請に基づいて政府の補助を受け修繕を行うことができるようになった。

2−2−2 修繕資金に関連する法律の変遷

修繕資金に関連する法律の変遷は表 2-3 に示した。時系列順で MF1から MF14 まで記 述し、さらに変遷内容を「積立金の徴収」、「積立金の管理」、「積立金の使用決議」

と「積立金の申請」に分類した。中国は日本と異なり、積立金の管理、徴収は政府が行 うため、その使用に当たって政府への申請が必要である。「積立金の徴収」は積立金の 納付に関する内容であり、「積立金の管理」は積立金資金の日常管理に関する内容であ る。また、「積立金の使用決議」は使用に当たって所有者の承認、決定に関して、さら に「積立金の申請」は、議決後、管理者の政府へ積立金の使用申請に関する内容である。

積立金の徴収については 1992 年[MF3]から、徴収金額は政府規定に従うべきとされた。

1994 年[MF5]では積立金納付のタイミングを分譲後直ちに所有者が拠出すべきであると

表 2-2 中国及び大連市の修繕における「責任者」に関する法律の整備 実施開

始時点 法律

番号 小分類 具体的な内容 法制度

(条項) 1983.12 RE1 責任担当 設備及び構造の修繕は所有者の責任で

ある 都市私有住宅管理条例(19)

1991.8 RE2 組織主体 政府が住宅の修繕工事を担当する。 都市住宅修繕規定(6)

1992.6 RE3 組織主体 管理組合が修繕工事を担当する。 公有住宅販売後修繕保養管 理暫定方案(14)

1994.3 RE4 組織主体

新築はディベロッパー会社が修繕工事 を担当し、工事管理は管理会社が担当 する。管理会社を監督するために理事 会を設置すべきである。

都市団地管理新法(5)(6)

2000.1 RE5 責任担当

保証期間は屋根と外壁は 5 年、設備 2 年、構造部分は永久で、保証期間内の 修繕は建設者、それ以降は所有者の責 任である。

建設工程品質管理条例(40)

(41)

2013.2 RE6 組織主体

管理会社で管理されていない老朽化住 宅(主に社区管理の住宅)について、

所有者の申請に基づき、政府の補助に よって修繕を担当する。

大連市既存住宅の省エネ修

繕工事計画

注:無印は国の法律で、※は大連市の条例である

(31)

表 2-3 中国及び大連市の修繕における「資金」に関する法律の整備 実施開

始時点 法律

番号 小分類 具体的な内容 法制度(条項)

1983.12 MF1 積立金の管理 政府/国営企業と所有者が修繕資金 を共同管理する。

都市私有住宅管理条 例(19)

1991.8 MF2 積立金の管理 積立金の概念が初めて示され、政府

が保管、管理する 都市住宅修繕規定(7)

1992.6 MF3 積立金の徴収 徴収金額の基準は政府の規定に従

う。 公有住宅販売後修繕

保養管理暫定方案(7)

1992.6 MF4 積立金の管理 専用の銀行口座を使って所有者ら が共同管理する。

1994.7 MF5 積立金の徴収 分譲後、所有者がすぐに拠出すべ き。

住宅制度改革の推進 に関する決定(23)

1998.3 MF6 積立金の管理

管理組合・理事会が積立金を管理 し、或いは管理会社が積立金を代行 管理し、所有者の監督を受ける。

ディベロッパー管理 企業財務管理規定(4)

1998.12 MF7 積立金の徴収 住宅積立金の納付が初めて法令化 されたが、非強制的である。

住宅共用部分及び共 用施設設備修繕金管 理方針(4)(10)(11) 2000.2

MF8 積立金の申請 使用の際に理事会が国の主管機関 である房産局に申請する。

大連市都市住宅販売 後修繕金徴収及び使 用監理暫定規定 (12)(13)

2000.2

MF9 積立金の管理 房産局の管理・監督責任を明確にし た。

2003.6 MF10 積立金の使用 決議

所有者の共同決定を必要とし、建築 面積合計 2/3 かつ所有者人数計 2/3 以上の同意が必要。

物業管理条例

(11-12)、同 2003 年 の所有者大会規程

(17)、同 2007 年の 物権法(76)

2007.12 MF11 積立金の管理 管理組合・理事会設立前は房産局が 代行管理を行う。

住宅専用修繕資金管 理方針(10)

2009.12 MF12 積立金の使用 決議

所有者による議決以外に、理事会に よる議決も必要である。

所有者大会及び所有 者委員会指導規則

(17)

2013.1 MF13 積立金の申請 管理組合・理事会による計 5 種類の 必要書類の提出が定められている。

大連市積立金支給、使 用手続に関する若干 規定(2)

注:無印は国の法律で、※は大連市の条例である 房産局は現在の国土資源局を目指す。

(32)

した。しかし、所有者の積立金納付の実態が必ずしも芳しくなかったため、1998 年[MF7]

から住宅積立金納付規定が初めて法令化されたが、強制力を伴うものではなかった。

積立金の管理に関しては、1991 年までの殆どの住宅所有者は政府と国営企業であっ たため、1983 年[MF1]では修繕時に所有者(政府)と所有者が分担し拠出すると規定され ている。1991 年[MF2]には修繕前に納付しておく「積立金」の概念が提示されたが、初 期段階なので政府が保管することになった。1992 年[MF4]から、所有者らが積立金を専 用の銀行口座を使って共同管理すべきと規定されている。1998 年[MF6]から、理事会が 積立金を管理する、或いは管理会社が積立金を代行管理し、所有者の監督を受けること になった。2000 年[MF9]には国土資源局が積立金の管理と監督責任を負うこととした。

また、理事会が存在しない団地が多かったため、2007 年[MF11]では理事会が設立され るまでは積立金は国土資源局が代行管理することになった。

積立金の使用決議については、2003 年[MF10]により、建築面積合計の 2/3、かつ所有 者人数 2/3 以上の同意がなければならないとされた。更に、2009 年[MF12]によると所 有者の議決に加え、理事会による議決も必要となった。

積立金の申請については、2000 年に国土資源局が積立への管理と監督を強化したこ とにより、使用の際に理事会が国土資源局に申請するようになった。それを受けて 2013 年[MF13]では積立金使用申請時に 5 つの必要提出書類が示された。

2−2−3 修繕施工に関連する法律の変遷

修繕施工に関連する法律の変遷は表 2-4 に示した。時間順で CQ1から CQ6 まで記述 し、さらに変遷内容を「施工発注」、「契約締結」、「工事監督」と「竣工検収」に分 類した。「施工発注」は修繕工事を施工会社への発注に関する分類であり、「契約締結」

は契約に関する分類である。また、「工事監督」は工事の監理に関して、「竣工検収」

は竣工後の検収に関する内容である。

施工発注については、1995 年[CQ1]以降、第三者による品質検査・監督の実施により、

建築物修繕の品質を確保と定められている。2000 年[CQ6]以降、積立金を使用・運用の 際には、入札によって施工会社を決めるべきと定められている。

修繕工事契約の締結について、2013 年[CQ6]に、管理会社がある場合は管理会社が施 工会社と工事契約を締結し、ない場合には理事会或いは所有者の 2/3 以上が合意署名し

(33)

た上で、適当な管理会社或いは施工会社と工事契約を締結すべきとされている。

工事監督については、[CQ1]と[CQ3]では、2000 年以前、政府機関が修繕の安全監督 だったが、2000 年以降は民間監督機関が監督を担当するようになった。2000 年[CQ5]

以降、工事の品質確保のために、建設技術者の資質が重要であると定められている。2002 年[CQ7]以降、工事現場には、技術資格の要件を満たす技術者を置いて施工管理を行う ことが必要と規定されている。

竣工検収についても 2000 年以降、建設者やその所有者によって竣工の品質を確認す べきとなっている[CQ3]。

表 2-4 中国及び大連市の修繕における「施工」に関する法律の整備 実施開始

時点 法律

番号 小分類 具体的な内容 法制度(条項)

1991.8 CQ1 工事監督 中規模以上の修繕、政府が監督する。 都市住宅修繕規定(7,23,24)

1995.7 CQ2 施工発注 第三者による品質検査・監督の実施に

より、建築物修繕の品質を確保する。 建設工程監理制度 2000.1 CQ3 工事監督 修繕は民間監督機関が監督を担当す

る。 建設工程品質管理条例(40)、

同 2000.6 住宅建築工程品質 保証方針(11)

2000.6 CQ4 竣工検収 建設者や建物の所有者が完成品質を確 認。

2000.1 CQ5 工事監督 工事の品質確保のために、建設技術者

の資質が重要である。 建設工程品質管理条例

2000.2 CQ6 施工発注 積立金使用の際に、入札制で最良の施 行会社を決定すべきである。

大連市都市住宅販売後修繕 金徴収及び使用監理暫定規 定 (11)

2002.12 CQ7 工事監督

工事現場には、技術資格の要件を満た す技術者を置いて施工管理を行うこと が必要と規定されている。

建造師資格制度暫定規定

2013.1 CQ6 契約締結

管理会社がある場合:管理会社は施工 会社と施工契約を締結する。

管理会社がない場合:理事会或いは所 有者の 2/3 以上が合意署名したうえ で、資格ありの管理会社或いは施工会 社と施工契約を締結する。

大連市積立金支給、使用手続 に関する若干規定(5)

注:無印は国の法律で、※は大連市の条例である

表 1-4  研究の流れ
表 2-3  中国及び大連市の修繕における「資金」に関する法律の整備  実施開 始時点  法律 番号  小分類  具体的な内容  法制度(条項)  1983.12  MF1  積立金の管理  政府/国営企業と所有者が修繕資金 を共同管理する。  都市私有住宅管理条例(19)  1991.8  MF2  積立金の管理  積立金の概念が初めて示され、政府 が保管、管理する  都市住宅修繕規定(7)   1992.6  MF3  積立金の徴収  徴収金額の基準は政府の規定に従 う。  公有住宅販売後修繕 保養管理
表 3-4    16 件事例調査結果-2  (修繕履歴) 時期  修繕内容と規模  資金源  金額  組織者  施工者  対象 1  2005~今(毎年)  共用設備修繕  小  管理費  約 5000 人民元/毎年  管理会社  管理会社 2013~今(毎年)  屋上漏水修繕 大  積立金 約80 万人民元/毎年  管理会社  専門屋上漏水修繕業者  2013~今(毎年)  外壁ひび割れ、断熱 修繕  大  積立金  約 300 万人民元/毎年  管理会社  専門外壁断熱修繕業者  対象 2  2002
表 4-5  事例 C の修繕工事のプロセスと各主体の参加状態
+2

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ダムを用途とする RCD 用コンクリートや、舗装を用途とする RCCP

以上、環境白書等の記載から、環境行政における都市整備・まちづくりの方向性は、 1990 年代の「快適性の確保」から、 2000

A Study of the Regional Structure of Metropolitan Area in the Existing Condominium Market —— A Case Study in Kinki Metropolitan Area ——.