6−1 本論文の成果 6−2 今後の研究課題
6−1 本論文の成果
本論文は、中国大連市の集合住宅の共用部分の修繕工事に着目し、修繕工事実施に関 わる法律の整理、工事に関与する関連主体の役割の解明から、日本の修繕体制との比較 を通じて、中国の修繕制度の問題点を明らかにした。さらに、修繕工事プロセスにおけ る各関連主体の関与体制の分析を通じて、関連主体の望ましい協力関係を導きだし、改 善策構築の可能性を提言した。
第2章は、中国の集合住宅共用部分の修繕に関する法律の内容把握を行うとともに、
日本の関連法律との比較から修繕工事の相違点を明らかにした。中国の集合住宅の共用 部分の修繕に関する法規定では、責任者(責任団体の成立・開催・議決)、資金(積立 金の徴収・管理・使用手続)、施工(工事請負の条件・資質など)の3つが関連した厳 しい設定がなされており、大規模修繕の円滑な実施を阻害する要因になっていることを 示した。
第3章は、中国大連市の集合住宅共用部分における修繕工事の実態調査に基づき、修 繕プロセスの全体の傾向を明らかにした。
調査した 60 事例の多くでは管理不全、所有者の修繕意識低下が散見され、修繕が効 果的に進まない理由として、管理組合の未設立と管理会社が修繕に関わっていないこと があげられ、管理組合の有無、管理会社の有無により、現状の修繕方式を3つのプロセ スで捉えることができた。
第4章は、大連市の集合住宅共用部分の修繕プロセスにおける関連主体の協力関係を 分析し、その問題点を明らかにした。3つの事例の修繕プロセスに沿って関連主体の参 加状況と各プロセスにおける意思決定の実態から、関連法律との適合性を把握し、さら に協力関係における問題点を抽出した。問題点として、①中国の法律は関連主体の関与 に制限性があり、実際のプロセスは法律と不適合の場合があること、②管理会社の主導 性が強く、所有者の立場が弱いこと、③管理会社の種類は他関連主体の関与状況影響す ることを示した。
第5章は、日本の修繕工事における関連主体の協力関係の実態を参考に、中国の関連 主体の協力方式の問題を解決する手法を導き出した。関連主体の種類は、日本ほど多く なく、特にコンサルタントが存在していないことから、管理会社の業務拡充、設計会社 の業務転換が急務であることを指摘した。修繕工事全体の流れについては、資金の問題
に対しての改善策として、政府の合理的な指導や多方面融資を通じ修繕資金を確保する ことを示した。調査診断問題については、管理と技術の分離を通じて、民間技術会社の 発展を促進させることの必要性を述べた。さらに、修繕計画内容の不十分に対しては、
政府は設計会社と管理会社コンサルタントへの転換を促進させることで解決可能であ ることを示した。関連主体の協力関係について、理想的な状態としては社区と管理会社 をサポートサービスの拠点を捉え、所有者及びその他の関連主体との関係性より高め、
所有者の自発的修繕意識の向上に資する体制につなげること提言した。
6−2 今後の研究課題
集合住宅の共用部分の修繕は復雑な工程であるため、政府の協力、所有者の意識、社 会環境など多くの方面は欠かせない。筆者の研究能力や条件に限度があるため、長時間 の探究と思考をしたとは言え、まだ多くの欠如と不足がある。今後さらに下記の内容を 展開すべくと考えている。
(1)本文は 3 つの代表事例を通して、住宅修繕の問題点を検討した。今後は更に調 査事例を増やすことにより、各改修プロセスの特徴を客観的に検証する必要である。ま た、所有者の修繕工事への参加に対する影響要因は、法律や関連主体の他にも存在する と考えられるため、団地の規模や所有者の属性などの複合的な視点から、住宅修繕にお ける関連主体の協力関係あり方を明らかにしたい。
(2)住宅修繕の中で最大の問題である資金源に対し、どのように市場化の方法を探 索することにより政府鼓励引導及び企業投資受益の方式を形成させるかは未だ検討す る必要がある。具体的には、財政政策手段を通じて市場化の多元化の資金を介入させ、
消費者指向の住宅修繕方式を確立することが考えられる。
(3)中国の住宅修繕中でどのように所有者の参加を高める問題点に対し、現在はイ ンターネットの時代として、携帯アプリの開発と普及により各種サービスをさらに便利 かつ柔軟な方式で各関連主体に提供し、迅速な交流を実現する。主導者としてもよりタ イムリーと信頼性の高い情報を集めることにより、住宅修繕プロセスの進化を推進する ことができるのは望ましい。
付録
付 録 1 共 用 部 分 修 繕 の 業 務 担 当 の ヒ ア リ ン グ 調 査
実 施 内 容 実 施 責 任 担 当
屋 外
部 分 環 境 景 観
歩 道 の 掃 除 〇 管 理 会 社
歩 道 の 緑 化 〇 管 理 会 社
歩 道 の 舗 装 工 事 〇 管 理 会 社
公 共 施 設 を 増 や す 〇 管 理 会 社
公 共 街 燈 の 修 繕 〇 管 理 会 社
建 物 本 体
パ ブ リ ッ ク 安 全
公 有 安 全 ゲ ー ト の 修 繕 〇 所 有 者
防 火 施 設 や 消 防 設 備 を 増 や す 〇 所 有 者 バ リ ア フ リ ー 施 設 を 増 や す X
公 有 施 設 階 段 と 踊 り 場 の 修 繕 〇 所 有 者
公 共 ド ア の 修 繕 〇 所 有 者
外 壁 修缮
外 壁 の 掃 除 〇 所 有 者
外 壁 漏 寒 気 の 修 繕 〇 所 有 者
外 壁 保 温 の 修 繕 〇 所 有 者
外 壁 漏 水 の 修 繕 〇 所 有 者
エ レ ベ ー タ ー 修 繕 X
建 築 設 備
供 水 設 備
・ 消 防 設 備
水 槽 と 配 管 性 能 と 機 能 劣 化 〇 水 道 会 社 高 位 水 槽 ・ 消 防 水 槽
と 配 管 圧 力 ・ 水 量 異 常 〇 水 道 会 社 圧 力 ポ ン プ ・ 吸 い 上
げ ポ ン プ ・ 消 防 ポ ン プ
材 料 の 腐 食 ・ 保 温 材
料 が 脱 落 〇 水 道 会 社
警 報 制 御 盤 錆 ・ 赤 水 〇 水 道 会 社
水 管 ・ 消 防 管 赤 水 〇 水 道 会 社
排 水 設 備
排 水 溝 ・ 汚 水 槽 性 能 と 機 能 劣 化 〇 水 道 会 社 排 水 ポ ン プ 材 料 の 腐 食 ・ 保 温 材
料 が 脱 落 〇 水 道 会 社
浄 化 槽 赤 水 〇 水 道 会 社
水 管 ・ 其 他 排 水 管 及
接 口 堵 塞 〇 水 道 会 社
暖 水 設 備
供 水 机 性 能 と 機 能 劣 化 〇 暖 房 会 社 供 水 配 管 材 料 の 腐 食 ・ 保 温 材
料 が 脱 落 〇 暖 房 会 社
汚 水 管 ・ そ の 他 排 水
管 の イ ン タ フ ェ ー ス 赤 水 〇 暖 房 会 社 ガ ス 設 備 ガ ス 管 材 料 の 腐 食 ・ 保 温 材
料 が 脱 落 〇 ガ ス 会 社
ガ ス メ ー タ ー 漏 れ る 〇 ガ ス 会 社
換 気 設 備
換 気 扇 性 能 と 機 能 劣 化 X ダ ン パ 異 常 発 熱 ・ 異 常 雑 音 X 制 御 盤 材 料 の 腐 食 ・ 保 温 材
料 が 脱 落 X
電 気 設 備
受 変 電 設 備 性 能 と 機 能 劣 化 〇 電 力 会 社 配 電 盤 異 常 発 熱 ・ 異 常 雑 音 〇 電 力 会 社 配 線 設 備 材 料 の 腐 食 ・ 保 温 材
料 が 脱 落 〇 電 力 会 社
コ ン セ ン ト 設 備 漏 れ る 〇 電 力 会 社
付 録 2 所 有 者 に よ る 修 繕 意 識 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査
私は日本首都大学東京博士課程一年生です。現在研究している論文テーマは「中国集合住宅における 共用部分修繕プロセスから見た関連主体の協力関係に関する研究」。
貴重な時間をこの調査にご協力いただきまして誠にありがとうございました。
(1) あなたの基本調査
1.あなたの年齢は_________________
○10 代 ○20 代 ○30 代 ○40 代 ○50 代 ○60 代 2.あなたの性別は______________________________
○ 男 ○女
3.あなたの職業は______________________________
○技術的職業 ○サービス ○自営業 ○販売 ○生産工程
○管理的職業 ○運送・運転 ○無職 ○退職 (2) 今住んでいる集合住宅の状況調査
4.竣工年は__________
○1980~1984(築 31〜35 年) ○1985~1989(築 26〜30 年) ○1990~1994(築 21〜25 年)
○1995~1999(築 16〜20 年) ○2000~2004(築 11〜15 年) ○2005~2009(築 6〜10 年)
○2010~2015(築 5 年以内) 5.管理会社の有無?
○ ある ○ なし 6.管理組合の有無?
○ ある ○ なし
7.積立金について、あなたはどのくらい把握しますか?
○積立金を知らない
○積立金を知るが、役割を知らない
○積立金と修繕積立金の役割共に知る
8.管理組合について、あなたはどのくらい把握しますか?
○ 修繕積立金を知らない
○ 修繕積立金を知るが、役割を知らない
○ 修繕積立金と修繕積立金の役割共に知る
9. 現在の居住環境について、よく問題になる箇所はどこですか?
□ 団地の緑化とイベントの器械は整備していない
□ 駐車場不足
□ 安全ドア、階段が悪い □ 共用設備の問題 □ 屋根漏水
□ 外壁のひび割れ
□ 外壁漏水□ 他の________________________
付 録 3 管 理 会 社 に よ る 住 宅 修 繕 履 歴 に 関 す る ヒ ア リ ン グ 調 査
(1) 建設状態の調査
1.住所と名前______________________________
2. 竣工年__________入居年__________総住宅数__________
3. マンションの構造形式
○ 鉄筋コンクリート造 ○レンガ造 4. エレベーターの有無
○ 有 ○ 无
(2) 諸費用納付状態および管理状態 5.管理費の納付状況
○初期納付あり,追加納付もあり,追加周期は_______________
○初期納付のみである ○納付なし
6. 管理費の金額
○ 0~0.6 元/平米/月 ○ 0.7~1.4 元/平米/月 ○ 1.5~2 元/平米/月 ○ 2.1 元以上/平米/月 7.修繕積立金の納付状況
○ 初期納付あり,追加納付もある ○ 初期納付のみである
○ 納付なし
8.管理組合総会の有無?
○ ある ○ なし 9.所有者の交流方式
___________________________________________________________________________________
(3) 修繕状態(管理会社へのヒアリングが必要です)
10.各管理会社の管理期間に、どの修繕状況がありますか?
① 修繕時期はいつですか?どのお金を使いますか?
② 合意形成のプロセス?(三分の二以上の区分所有者の同意を求めますか?/失敗例の理由は?)
③ 修繕積立金管理センターの決議プロセス?(失敗例の理由は?)
④ 施工会社の選択理由
⑤ 修繕後に管理会社と修繕管理センターの検査が必要ですか?