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中国大連市の代表事例における修繕プロセスから見た関連主体

4−1 調査概要

4−2 各代表事例の修繕プロセス分析 4−3 各代表事例の関連主体の協力関係 4−4 修繕工事の実態と法規定の異同 4−5 まとめ

本章の目的

管理会社、管理組合の有無によって中国の修繕プロセスを 3 種類に分け、それぞれの 特徴を。本章は 3 種類からそれぞれ 代表事例を抽出し、修繕プロセス内の各段階で の関連主体の協力関係を明確にする。

具体的には、まず第三章の調査事例から、代表事例の管理主体にヒアリング調査を行 うことにより、各関連主体の修繕プロセスでの役割分担を把握し、さらに各関連主体の 協力関係を明らかにする。

4−1 調査概要

第 3 章で取り上げた事例1(事例 A)、事例 9(事例 B)、事例 13(事例 C)につい て、関連主体(管理主体・設計者・施工者)に対し、修繕のプロセス及び関連主体の協 力関係の実態についてヒアリングを行い、そこから取得した内容を分析する。

まず、3 事例の基本情報を団地基本状況、修繕に関する実態、管理会社状況の観点か

表 4-1 調査代表 3 事例の概要

事例番号 事例 A 事例 B 事例 C

団地基 本属性

竣工年 2005 年 2003 年 1989 年

総棟数 28 棟 12 棟 33 棟

総戸数 約 1,700 世帯 約 1,500 世帯 約 1,400 世帯 平均販売価

14,000 人民元/㎡ 12,000 人民元/㎡ 8,000 人民元/㎡

住民組織 管理組合/理事会あり (2010 年設立)

なし なし

修繕に 関する 実態

修繕棟数 4 棟 2 棟 13 棟

関係戸数 38 世帯 24 世帯 468 世帯 住戸状態

●居住用(分譲)

●入居者(所有者)は高 所得層が多い

●居住用(分譲)

●入居者(所有者は)は 中高所得層が多い

●居住用(賃貸、分譲)、

●住民は低所得層が多

工事内容 外壁断熱 外壁断熱 外壁断熱、複層窓、安

全ドア、共用設備交換 工事時期 2013 年 11 月〜2014 年 5

月(約 7 ケ月)

2010 年 11 月〜2011 年 6 月(約 8 ケ月)

2008 年 11 月〜2013 年 11 月(約 5 年) 使用資金 積立金 所有者自己資金 政府補助金

構造形式 RC 造 RC 造 S 造

総階数 6階 11 階 7 階

外壁材料 塗装とタイル 塗装 塗装

修繕費用

約 20 万人民元 (戸あたりで 5200 人民 元)

約 10 万人民元 (戸あたりで 4100 人民 元)

約 100 万人民元 (戸あたりで 2100 人民 元)

管理会 社状況

主体 A ディベロッパー 管理部

B 管理会社 C 社区サービス部 成立時期 1984 年 2008 年 2003 年

特徴

●大手会社、中国 10 大 ディベロッパー

●大連市内の 9 つの高 級団地を建設した。自 社物件の管理を担当。

●中小企業

●大連市内の 3 つの中 規模団地を管理。

●政府の末端組織社 区、サービス部は 2003 年に設立。

●大連市内の 33 の房 改房物件の日常管理等 を担当。

ら整理し、表 4-1 に示す。

① 団地の基本状況について、A と B 事例はそれぞれ築年数 12 年、14 年であり、不 動産会社が開発した商品房に属する。C 事例は築年数38年、政府が建設した公有住宅 であり、90 年代初期に一括して所有者に払い下げられ、2003 年から社区が日常管理及 び修繕工事を引継いた。3つの団地では現在、事例 A のみ管理組合が存在する。

② 修繕に関する実態について、修繕された棟数は、事例 C が 13 棟を見ると、比較 的に規模の大きな修繕を行っている。住民構成から見ると、事例 A と B ともに居住用(分 譲)であり、入居者(所有者)は高所得層が多い。事例 C は居住用(賃貸、分譲兼用)

であるが、住民は低所得層が多い。3事例ともに外壁修繕がメインの内容であるが、事 例 C は修繕程度が高く、複層窓、安全ドアなどの共用設備交換も含んでいる。

③ 管理会社の状況から見ると、3 事例それぞれ異なる管理主体となっており、事例 A は大手のディベロッパー、大連市内の 9 つの高級団地を建設し、自社物件の管理を担 当している。事例 B 独立系の管理会社であり、大連市内の 3 つの中規模団地を管理して いる。事例 C 社区であり、管轄内の 33 の房改房物件の日常管理等を担当している。

上記から、3 事例の特徴を洗い出し、表4−2に示す。

表 4-2 調査代表 3 事例の特徴

事例 A 事例 B 事例 C

管理会社あり、管理組合あり 管理会社あり、管理組合なし 管理会社なし、管理組合なし 大手ディベロッパー管理 独立系管理会社管理 社区管理

修繕規模:大規模修繕 修繕規模:中規模修繕 修繕規模:大規模修繕 修繕使う資金:積立金 修繕使う資金:所有者自己資金 修繕使う資金:政府補助金

4−2 各代表事例の修繕プロセス分析

4−2−1 ディベロッパー系管理会社による修繕工事のプロセス(表4−3)

事例 A は、大手ディベロッパーA 社が 2005 年に開発し竣工した。1,700 世帯が入居し ており、高層ビルや中層ビルを含む計 28 棟がある。平均販売価格は 14,000 人民元/㎡

の高級マンションである。2010 年に A 社ディベロッパーの管理部の協力で、管理組合 と理事会が設立されたが、日常維持管理と修繕工事は、前述の管理部の主導のもとで行 われている。2013 年 11 月から 2014 年 5 月までの 7 ヶ月間で団地内 4 棟の外壁防水と 断熱などの修繕工事を行った。工事自体が 2014 年 4 月からのわずか 1 ヶ月間だが、積 立金運用の議決とその支出申請手続きに関しては、全工事期間の 1/3 弱を要した。

(1) 発意提案

修繕工事の「発意提案」段階では、A 社管理部に外壁の断熱性低下に関する苦情が上が っていたため、担当部署が該当所有者の苦情を記録し、ヒアリングを行ったことを契機 としている。その後、同社の補修部門が当該 4 棟に現地調査を行った結果、修繕を要す る箇所は約 38 住戸に関連することが明らかとなり、修繕工事を実施することを理事会 で議決した。

(2) 資金調達

次に、資金調達の「見積もり」段階では、保証期間が切れており(築 8 年経過)、か つ共用部分の修繕にあたるため、「法 OS5」における「所有者の負担すべき範囲」につ いて積立金の支出による修繕が可能であると同社サービス部が判断した。また、施工会 社から約 20 万人民元を要するとの見積もり額が出され、A 社が理事会を召集し、「法 MF12」に基づき投票・決議を経て修繕内容案を可決した。「積立金の支出議決」では、

「法 MF10」に基づき団地全体区分所有権者の 3 分の 2 以上の同意かつ理事会の署名が 必要でるため、所有者投票を行い 4 棟を修繕することになった。「積立金の申請」につ いて、「法 MF13」に基づき、A 社が申請に必要な書類を準備し、国土資源局傘下の補修 管理センターに提出した。更に、政府担当部署職員による修繕対象への現地審査が行わ れ、積立金支給の手続きを採った(「法 MF18」)。

(3) 計画作成

「計画作成」については、A 社が主導を取りながら施工会社の修繕意見を参考に、修繕

表 4-3 事例 A の修繕工事のプロセスと各主体の参加状態

2014.4. 着工中(写真) 2014.11. 竣工後(写真)

所有者

内容、材料、工法などを A 社が決定した。

(4) 施工

「施工」の「施工発注」については、A 社の提携施工会社が提出した工期と見積りを総 合的に判断し、「法 CQ5」に基づき A 社と施工会社が「契約締結」を結んだ。「工事説明」

については、A 社がビラ配布、掲示板で工事の影響などを該当所有者に説明した。「工 事実施」には、同社の建設施工部が現場監督を行った。「竣工検収」では「法 CQ3」に基 づき A 社の建設施工部が実施し、修繕工事の情報を整理、保管した。「フィードバック」

については、工事終了後 A 社が満足度について、アンケート調査を行っており、満足度 は 80%以上であるが一部の該当所有者には修繕後の外壁の色に不満があると言う意見 があった。

4−2−2 独立系管理会社による修繕工事のプロセス(表4−4)

事例 B は、2003 年に竣工し 2008 年までにはディベロッパー傘下の管理部が管理して いたが、2008 年以降は外部の管理会社 B が引き継いで管理することになった。1,500 世 帯が入居しており、高層マンション 12 棟で構成されている。平均販売価格は 12,000 人 民元/㎡の団地である。2010 年 11 月〜2011 年 6 月の 8 ヶ月間にかけて団地内 2 棟の外 壁断熱工事の修繕を行った。工事自体が 2012 年 6 月からのわずか 15 日間だが、資金調 達段階で管理会社と該当所有者との共同出資をめぐる協議が、全工期の約 1/3 の約 3 ヶ 月間を費やした。

(1) 発意提案

「発意提案」段階では、外壁断熱性の低下に関する苦情が上がっていたことをきっか けとしている。「実施可能の判断」については、B 社と該当所有者が共同協議し、修繕の 範囲を特定した。

(2) 資金調達

「資金調達」の「見積もり」では、「法 OS5」における所有者の負担すべき範囲にあた ると判断された。しかし、B 団地には理事会が設立されておらず、「法 MF12」による積 立金の運用ができないため、B 社と該当所有者が投票協議し、それぞれ 50%を出資する ことで合意に至った。

表 4-4 事例 B の修繕工事のプロセスと各主体の参加状態

2014.11. 竣工後(写真)

所有者

(3) 計画作成

「計画作成」の「計画提案」について、B 社が施工会社の意見を参考に断熱材の施工方 法と材料を 2 案を提案した。これを受け「修繕内容、材料、工法の決定」では、B 社が 該当所有者(専有部分が修繕部分にあたる 24 住戸の所有者)を召集、投票協議した結果、

安価の材料を使用することに取り決めた。

(4) 施工

「施工」の「施工発注」については、管理会社が直ちに長年提携している施工会社に発 注した。「工事実施」については、比較的小規模だったため、現場監督を B 社自らが行っ た。「竣工検収」については事例 A と同様、B 社の建設施工部が竣工検収を行った上、該 当所有者の満足度について、アンケート調査を行っている。

4−2−3 社区による修繕工事のプロセス(表4−5)

C 団地は、ディベロッパーC 社による開発で 1989 年に竣工したが、現在は社区による 管理となっている。1,400 世帯が入居しており、低層棟を含む計 33 棟がある。平均販 売価格は 8,000 人民元/㎡の集合住宅である。2008 年 11 月から 2013 年 11 月までの 5 年間にかけて団地内 13 棟の大規模総合修繕を行った。工事自体は 2013 年 5 月からの 6 ヶ月間だが、発意段階において行政側が住民の意向や住宅の現状を把握するのに約 3 年 半を費やした。

(1) 発意提案

「発意提案」について、2008 年から 2012 年の冬にかけ、多くの所有者による外壁断熱 性の不足や漏水に関する苦情があり、社区が苦情を記録し、その修繕要望についてもヒ アリングをした上で、国土資源局に報告した。「実施可能の判断」は国土資源局が現地調 査を行ったが、住民構成が複雑で理事会も設立されておらず、「法 MF12」による積立 金の支出が認められないため、修繕補助金プランの適用を決定した(「法 OS6」)。

(2) 資金調達

「資金調達」は、補助金の運用を踏まえ、国土資源局が「見積もり」を行い、約 100 万人民元の工事費が発生すると予測された。その後、社区経由し補助金計画を所有者に 通知した。