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膵炎・膵癌におけるserine protease inhibitor, Kazal type 1 (SPINK1)の役割

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Academic year: 2021

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熊本大学学術リポジトリ

膵炎・膵癌におけるserine protease inhibitor,

Kazal type 1 (SPINK1)の役割

著者 大村谷, 昌樹

発行年 2009‑03‑03

URL http://hdl.handle.net/2298/11075

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第5回生命資源研究・支援センターシンポジウム

日 時:2009年 3月 3日(火)

14:00〜16:50

場 所:熊本大学 生命資源研究・支援センター RIC/GTC棟 6階 講義室【602】

主 催:熊本大学 生命資源研究・支援センター プログラム

14:30〜14:40 センター長挨拶 浦野 徹

14:40〜15:20

『膵炎・膵癌における serine protease inhibitor,

Kazal type 1 (SPINK1)の役割』

熊本大学 大学院先導機構 特任助教 大村谷 昌樹

15:20〜16:00

『Sonic hedgehog (Shh)遺伝子の発現制御にかかわる

染色体ダイナミクス』

情報・システム研究機構国立遺伝学研究所 教授 城石 俊彦

16:00〜16:40

『誘導性腫瘍形成モデルを用いたがん幹細胞の解析』

慶應義塾大学 医学部 先端医科学研究所 教授 佐谷 秀行

16:40〜17:00 総合討論

(3)

第5回生命資源研究・支援センターシンポジウム

「膵炎・膵癌における serine protease inhibitor,Kazal type 1 (SPINK1)の役割」

大村谷 昌樹

(熊本大学 大学院先導機構 特任助教)

膵腺房細胞内におけるトリプシノーゲンの異所性活性化が引き金となって膵臓が自己消化さ れるのが、膵炎の病態である。1996 年に Whitcomb らは遺伝性膵炎患者のゲノム DNA よりカチ オニックトリプシノーゲン遺伝子の点突然変異を報告した。その後、遺伝性膵炎遺伝子の他の候 補として、我々は膵臓内在性のトリプシン・インヒビターである serine protease inhibitor, Kazal type 1 (SPINK1) に注目し、遺伝性膵炎患者ではアミノ酸置換を伴う点変異の頻度が高いことを 報告した(J Gastroenterol 2001;36:p612)。さらに膵炎発症を期待して Spink3 遺伝子 (SPINK1 のマ ウスホモログ) ノックアウトマウスを樹立した。このマウスでは形態的にほぼ成熟した膵腺房細 胞が形成される胎生 16.5 日から細胞質に変性が始まり、出生直後、急激にその変性が激しくな るが、電顕で観察すると、その変性の正体はほぼ細胞質を埋め尽くす多数の空胞であった。この 空胞の本体は意外にもオートファジーであった (Gastroenterology 2005;129:

p 696)。オートファジー(自食)とは細胞質成分をリソソームで分解するための主要な分解機構 で、飢餓や異常蛋白が細胞質内に蓄積した際に誘導され、生体の恒常性維持に深く関与している。

膵炎発症とオートファジーの関連を明らかにする目的で、まず実験性膵炎モデルでみられる空胞 がオートファジーに由来することを明らかにした。さらに膵臓特異的オートファジー欠損マウス を樹立し、膵炎惹起刺激を行ったところ、膵炎を発症しなかった。単離した腺房細胞にトリプシ ノーゲンの活性化刺激を行ったところ、活性化が見られなかったことから、オートファジーがト リプシノーゲンとリソソーム酵素との出会いを仲介することで異所性トリプシン生成にかかわ っていることを明らかにした (J Cell Biol 2008;181:p1065, Autophagy 2008;4:p1060)。

上記から、Spink3 がオートファジーの制御に関与していること、また実験性膵炎においてオ ートファジーが誘導されることが分かったが、そのシグナル伝達系については不明である。

SPINK1 は構造的に epidermal growth factor (EGF)に類似していることから EGF receptor (EGFR)

に着目して解析を行った。まず線維芽細胞及び乳癌、膵癌細胞株の増殖を EGF とほぼ同程度に

促進することが判明した。さらに、予想したように SPINK1 は EGFR をリン酸化し、PI3K, STAT,

RAS-MEK-ERK の 3 つの経路を介するシグナルが実際に動くことを明らかにした。興味深いこと

に、ヒト膵癌の前癌病変部ですでに SPINK1 は異所性に発現し、癌部では SPINK1 と EGFR が共発

現していることから、SPINK1 がオートクラインに EGFR に作用し、癌増殖を促進している可能性

が示唆された。この様に当初トリプシン・インヒビターとして同定された SPINK1 の多彩で意外

な機能が明らかとなった。

参照

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