金沢大学 十 全 医学 会 椎誌 第1 0 2巻 第6 号 1 02 1 ‑1 03 2 (1 9 9 3)
イ ヌ 生 体 内 局 所 膵 潅 流 実 験 に お け る
2
‑デ オ キ シ グ ル
コ ース に よ る 膵 内 分泌 応 答
一
局 所 神 経 系
の関 与
‑金沢 大 学 医学 部 内 科学 第二詩 座 ( 主 任: 竹田亮祐 教 授)
高 桑 健
1 0 2 1
近 年, 血糖括 抗 性 調 節 (glu c o s e c o u nte rr egulatio n,G C R) における膵ホ ル モ ンの重 要性が示さ れ てきている・ 2
‑
デ オ キシグルコ ー ス (2
‑
de o xy glu c o s e, 2r
D G) の全身 投 与は, 他 魁織と同様に, 中枢 神経 系お よ び内分 泌 脚こおいてもグルコ ー ス欠乏をひきお こす. 本 実 験で ほ, 2‑D G の膵 動 脈 内 局 所 投 与が, イ ン ス リ ン (im m u n o r e a ctiv e in s ulin,I R I), グル カ ゴ ン
(im m u n o r e a ctiv e glu c ago n,I R G) お よ び膵 静脈血流 量 (血流 量) にお よ ぼす 効 果を,
ベ ントバルビ タ ール麻 酔 下に, 正常イヌ ,
( 横 隔 膜下) 迷 走 神 経 切 断イヌ , 内 臓 神経 切 断イヌ, お よ び膵 除 神 経イ ヌ に おいて検 討し た・ 結 果と し て, 1) 正常イヌ に 2‑D G l Omg
/
kg を1 0分 間にわ た り膵 動 脈 内に注入 し た時, 全 身血( 大腿 動 脈血) の2‑
D G 濃 度は 6m g/
dl と低 値であり, こ の投 与 量で ほ, 2‑D G の膵 局所における効 果だけを み ていること が 示酸された.膵
静 脈血 I R I 濃 度は, 前 値 平均1 41 ±2 8FLU/
ml( 平 均 値土標 準 誤 差) よ り, 注入開 始 後2 分には11 9 ±3 1 と 一 旦前 借よ り低 下 軋 5 分と1 0分に頂 値をもつ増 加を 示 し, 1 5分にほ前 値に復し た. 膵 静 脈血 I R G 濃 度は, 前値 平 均5 3 3 土1 2 2p g/
ml か ら∴注入開始1 分後には▲8 8 7 士1 6 3 へ と急 峻に上昇し, その後
2‑D G 注入中にもか か わ らず5分には前 値に復し た. 血流 量お よ び動 脈血 血糖 値 (血糖 値) は, 注入中は わずかに増 加を み た が有 意で は な かった. 2‑
D G l O Om g/
kg( 大 量) を同様に注入する と,I RI,I R G ほ, 同 様で しかも少 量 注入時に比し有 意に大 きく 反 応し, 血流 量は注入中ほ有 意に増 加し た. 血糖 値は少量 注入時に比し大 きく 増 加し た. 2) 両側 迷 走 神 経 切 断イヌに, 少 量 2‑D G を同 様に注入する と,I R I,I R G , 血流 量は 正常イヌと同 様 同 程度の増 加反 応を 示 し た. し か し血糖 値は 2‑
D G 注入中か ら 3 0分にかけ 有 意に低下し た. 大 量2◆
D G 注入によ り I R I,I R G, 血流 量は 正常イヌと同様で, し かも少 量 注入時に比し大 きく 増 加し た. 3) 両 側 内臓 神 経 切 断 犬に少量2‑
D G を注入する と, I R I は 正常イヌと同程 度に反 応し,I R G は増 加傾 向を 示 し た が 有 意で なく, 正常イヌお よ び迷 走 神 経切 断イヌに比し有 意の低 反 応であった. 血流量の増加ほ. 正常イヌ お よ び迷 走 神 経 切断 イヌに比し増 大 傾 向を 示 した. 血糖 値ほ, 注入終 了後 有 意に低下した. 大 量2‑
D G 注入時には,I RI の増 加は遷 延し, その増加は少 量 注入時に比し大 きかった.I R G ほ増 加 傾 向を 示 し た が有 意でな く. 正常イヌお よ び迷 走 神 経 切 断イ 封こ比し有 意の低反 応であっ た. 血流 増 加 量ほ 正常イヌお よ び迷 走 神 経 切 断イヌに比し高 値 憤 向を 示 し た. 血糖 値は注入終了後 も 増 加し な かっ た. 4) 膵 除神 経イヌでは, 2
‑
D G l Omg/
kg 注入時, 血流 量, 血糖 胤 I RI お よ び I R G の変 動ほ, 内 臓神 経 切 断イヌとほぼ同 様, 同 程 度だっ た. 以 上の成 績は 2‑
D G の膵 局所 投 与ほ, 外 来性 膵 支 配 神経に依 存し ないI R I の ユ ニ ー クな増 加 反 応を惹 起し たこと, お よ び交感 神 経 節 前 線 椎に依 存 する I R G 反 応を促 進 すること を 示す・ こ の こと は, G C R における グル カ ゴンお よ び イン スリソの変 動には膵 支 配 神 経が重要な役 割を果たすこと を 示唆 する.Key w o rds 2‑de oxy glu c os e,ins ulin, g lu c ago n, blood flo w, panC r eatic in ne r vation
生 体にとって血糖レ ベ ルを 一定に保つ こと は, 生命 維 持 ある
いは中枢 神 経 機 構 維持の観 点よ り極め て重 要である. 糖 尿 病患 者において, 薬 物 治療に伴う低血糖お よ び急 激な 血糖 降 下が出 現し た際に, ま た 正常 人において 正常血糖域 内で の血糖 降 下を み る際にも, 内分 泌 性 ( 液 性) お よ び神経 性 調 節 機 構か ら な る,
いわゆる 血糖 括 抗 性 調 節 (glu c o s e c o u nte r r egulatio n, G C R)l )と 称さ れ る防御 機 構が作 働する. 近 年, と り わ け内分 泌 性調 節 機 構が重 要 視さ れ, その中のグル カ ゴソ分 泌 (と グル カ ゴソのな
い場 合ほカ テ コ ラ ミン分 泌) が重 要視さ れて いる. ま た, 正常 血糖 域 内の血糖 降下の際には インスリン分 泌 抑制2)も 重 要 性を
平 成
5年
1 1月
2 2 日受付
,平 成
5年
1 2月
22 日受 理
A b bre viatio n s : B F , pa n C reatic v e n o u s blood持つ こと が知ら れて いる.
こ の防御 機 構の解明のた めに は, ど う しても血中お よ び細胞 内のグル コ ー ス欠 乏状 態を作り だすこと が 必要で, 従来以下の よ う な手段 が 用いら れ てきた. イン ス リン投 与ほ, そ れによっ
て惹起さ れ る 血糖 値の変 動が そのま ま グルコ ー ス欠 乏程 度の指 標と な る利 点があが . し か し一方で, 外 因 性イ ン ス リ ン投 与
によ る 血中イン スリソ濃度上昇 自 体が膵か らの グル カ ゴゾ)お よ び イン スリソ5)分 泌に抑制 的な効果をもた らすと ともに , イ
ン スリンが中枢 神 経系に働 き自 律 神 経 系を統 括さ せ る 可能性が ある6 )こと な ど を考 慮に いれ なくて は な ら ない. フ ロリ ジンほ
王lo w r ate; 2‑D G, 2‑deoxy glu c o se; G C R, glu c o s e co unte rregulatio n; G R P, gaStrin rele a sing poly pep tide;I R G ,im m u nor e a ctiv e glu c ago n; IR I・im m u n o r e a ctiv e
in s ulin; N A d, n O r adren alin; N P Y , n e u r Opep tide Y; P S , plasm a s uga r; V IP・ V a SO aCtive inte stinal poly pep tide
1 0 2 2 商
腎での糖 再 吸収を抑 制 することによ り 血糖 降 下を誘 発できる が, 急性の低血糖は作りだせ ない7).
そこで グル コ ー ス燥 似 体である 2‑デオ キシ グル コ ー ス (2
‑
de o xy glu c o s e,2‑D G) が従 来G C R の研 究におい て頻 用さ れ て きた. なぜな ら, 2‑D G は グル コ ー ス の燐酸 化 段 階におい てグル コ ー スと競 合 する8】結 果, 細 胞 内グルコ ース欠 乏 状 態を引 き 起こすか ら である. こ のた め 2
‑
D G 投 与によ り中 枢神 経 系お よび自 律 神経 系は グル コ ー ス 欠乏 状態 (n e u r oglu c ope nia) と な り 種々 の応 答を 示すが, と りわけ 交感 神 経 系を中心 と し た自 律 神 経 賦 活 効 果が出現し, さ らにその結 果と して膵 島ホ ルモ ン分 泌 も 影 響を受け る9 ). 一方で,2‑D G は同時に膵 島細 胞に直接 作用 し, 膵 島ホ ル モ ン分 泌に影 響を 及 ぼすと考え ら れ る. 従 って 2‑D G を用いた場 合には▲ その神 経を介 する効果と膵 島 細 胞へ
の直接 効 果をいかに分 離し, G C R の磯 序を どのよ うによ り明 らかにする か はこ の方 面の研 究上重 要である.
以 下∴実験シス テムご と に,2
‑
D G の膵 内 分 泌に対 する作用 機 序の観 点か ら みてみ る.遊 離膵 島 周辺 潅 流お よ び遊 離 膵 液 流 実 験は, 膵 濯 流 液 中の 2
‑
D G の膵 島細 胞へ の直 接 効 果 と膵 局所 神 経を介 する効 果を み るものである. これ らのシ ス テ ムを 用いた 2‑D G 使 用 成 績には 種 差その他によ り報 告 間の不 一致が み ら れ る. ラッ ト1 0 卜 1 4), ウ サギ1 5)の遊 離膵 島周 辺 濯 流で ほ▲ 2‑
D G ほ グル コ ー ス によ る イン スリソ(irn m u n O r e a Ctiv ein s ulin,I R I) 分 泌を抑 制 する か, ま
た ほ影響を与えないと報 告されて いる. し かも, ラッ ト1 叩 3 ), ウ
サギ1 5〉でほ, グルコ ー スが高 濃度にな る とこ の抑制 もみ ら れな くな る. 一方, 2‑D G ほ グル カ ゴ ソ (im m u n o r e a ctiv e glu c a
‑
go n,I R G )分 泌に影 響を与え ない1 1 )と報 告さ れ ている. ラッ ト遊 離 膵 濯流 実 験に おいて, 2
‑
D G は グル コ ー ス存在 下で は I RI 分 泌を抑制 する1 6}か, ま た ほ影 響をあた えず†), ま た 2‑
D G 自 体はⅠⅢ 分 泌を引 き起こさ ない1 T 〉.
一 方,2
‑
D G は I R G 分 泌を刺激 する1 8 ) と報 告さ れて い る. イ ヌ遊 離
膵
潅 流 実 験にお い て はW a s ada らI g )ほ, 2
‑
D G のI R I 分 泌促 進 効 果は み と め ら れ な かった と結 論している(成 績の詳 細は 不明). 一方, 硬 骨 魚類である ナ マズ(c atfish) の内分 泌 細 胞は ブロ ッ クマ ン体を形成 する が,
こ の遊 離膵 液 流 実験で ば0), 2‑D G 投 与によ る I R I 分 泌の充 進と I R G 分泌の不変が報 告さ れて いる.
生 体 内局 所 膵 潅 流シ ステムを用いる と, 膵動 脈 内2‑D G 投 与 は, 2‑D G の膵 島細 胞への直 接効 果と膵局 所 神 経機 構を介 する 効 果を み ること に な る. K ilo ら1 8 )は, イヌ におい て膵 動 脈 内に 4 5〜1 0 0 0m g
/
kg の 2‑
D G を注入 し た が イン スリン分 泌ほ刺 激さ れ な かっ た と報 告して いる. しか し当時は, イ ン スリソ測 定 法と して脂 肪織を用い る生物 活 性を用い てお り2‑ ), 精 度の高い イン スリソ分泌 評 価ができな かった た め, そのま ま現 在の成 績
と比 較することには困 難がある.
2‑D G の脳 室 内投 与は, その中枢 自 律 神 経 系の興 奮を介 する 効 果を み ることにな る2 2 ). 本 法で は, 膵お よ び肝の自 律 神 経 系
の活 動 先進, 副 腎髄 質か らの カ テ コ ラ ミソ分 泌 促 進が み ら れ る. その結 果血糖値ほ 上昇 する が, こ の機 序と し て ほ肝 交 感 神 経 系の興 奮によ る肝か らの糖 放 出の増 加2制 , 膵 交 感 神 経 系 活 動 増 加に よ る I R G 分 泌 促進2 5)お よ び I R I 分 泌の抑 制 傾 向, さ ら に放 出さ れ た 血中カ テ コ ラミソを介する肝か らの糖 放 出と膵 内 分 泌に対 する効 果, が関与 するものと考 えられ る. な お, こ の
際のI m 分泌はl 血
糖値
上昇に よ る効 果が前 面に で て, むし ろ 若干 充 進 する幻).2
‑
D G を末梢 静 脈よ り全 身 投 与し た場 合は, その膵 島細 胞への直 接 効 果と, 中 枢お よ び膵 局所の自律 神 経 系の興 奮を介 する 効 果を み ることにな る. 従 来の報告でほ, 主 に I R G 分 泌 克 進に 加え, 血糖上昇に伴う と考え ら れ る緩 徐な ⅠⅢ 分 泌が示されて
いる2 即.
さ て, 膵 島周 囲に豊 富に存 在 する自律 神 経 網は2 T ),
膵
島 周 閉 血管のみ な らず, その 一 部ほ島 内 毛細血管 壁にも 神 経 終 末を送り,
一 掛ま島細 胞に直 接 到 達し2 8), そ れぞれ遠心性に血流お よ び膵 島ホ ル モ ン分泌に影 響を与え ること が知られて いる. 交 感 神 経 系は視 床 下 部腹 内側 核の支 配を う け, その節 前 線 維は大 内 臓神 経を な し, 腹腔 神 経 節で節 後 神 経と な り膵に到 達 する. 一 方, 副交 感 神経 系は視床 下 部 外 側 野の支 配をう け, その節 前 線 維は迷 走 神 経を な し, 膵 内 神 経 節で節 後 神 経と な り膵 島に至 る. 交感 神 経 節 後線 維の代 表 的神 経 伝 達 物 質はノ ル アドレ ナリ
ン(n o r adr e n alin,N A d) であり, 膵ホ ル モ ン分 泌には, α2受 容 体 を介し I RI 分泌にほ抑 制 的に( と くに サブタイ プ α2 A を介 す る), I R G 分泌には促 進 的に作用する 一 方で, β2受 容 体を介し I R I お よ び I R G 分 泌を促 進さ せ る2 g ). ま た, 膵血流 量は,
N A d の αl 受 容体を介 する作用 で減 少し, β2受 容 体を介する作 用では増 加する. 迷 走 神 経節 後線 椎の代 表 的 神 経 伝 達物 質はア
セ チ ル コ リンであり, ムス カ リ ソ受 容 体を介し I R I 分 泌には促 進 的に,I R G 分 泌には促 進 的に作 用 する( あるいは作 用しな
い) と言わ れ, 膵血沈 量をも 増 加さ せ る3 0 ト 3 2). ま た, これ らの神 経 内には, 上記の古 典 的 神 経 伝 達物 質のほ か, さ まざま な神経
ペプチド, ア ミン, プ リン体が存 在し, 神 経 伝 達 物 質 あるいは 神 経 調 節 物質と して作 用 すること が知られて いる. そ れ らのう ち, 膵 内 交 感 神 経 系 ペ プチ ド と して , 神 経 ペ プチ ド Y (n e u r opep tide Y,N P Y) お よ び ガラニ ン(gala nin) が挙 げら れ
る. N P Y ほ グルコ ー ス によ る I m 分 泌を抑 制 する3 3). 一方, ガ ラニ ンは, イヌ膵 動 脈 内投 与によ り ⅠⅢ 分泌を抑 制しI R G 分 泌 を促 進さ せ ること が知ら れて いる3 4 ). 副 交 感 神経 系ペ プチド と し て挙 げら れ る 血管 作 動 性 腸 管ポリ ペ プチ ド(v a s o a ctiv e
inte stinal poly pep ti de,ⅤIP)3 5)お よ び ガス トリン遊 離ポ リペプチ ド(ga strin r ele a sing poly pep tide,G R P)3 6 )は, 膵 内 神経 節お よ び 膵 島に存 在し, 迷 走 神経の電 気 刺 激によ り放 出さ れ る. V IP3 71 お よ び G R P3 8 )は, 共に,I RI お よ び I R G の分 泌を促 進し, さ ら
に V I P ほ膵血流 量を増 加さ せ る3 9).
ところで, 2
‑
D G 全 身 投 与 時に , 上述の血糖上昇に並 行ま たほ後 発 する イ ン スリン分 泌と は異な る, 比較 的早 期のI R I 分泌 克 進 成 績が報 告さ れて いる1 8) 4 0 ト 4 2 )
. 2
‑
D G にI R I分 泌 促 進 効 果は ないとする従 来の報 告とあわ せ る と, こ の早 期ⅠⅢ 反 応が, 大 量2‑D G 投 与によ り膵に到 達 する 2‑
D G の膵局 所へ の作用によ る か, 中 枢神 経 系を介 する神 経性 作用によ る か は興 味 ある点で ある. そこ で著 者は, G C R の機 序を追 及 する 一 環と し て, 中枢 神 経 系を含め た全 身 効 果が発 現し ないと考え ら れ る少 量の 2,
D G を膵 動 脈 内に局 所 的に投 与 すること に よ り,2‑
D G の膵局 所へ の作 用, すな わ ち膵 島細 胞への直 接作 用と膵 内神 経 機 構を 介する作 用を分離 評 価し ようと し た. さ らに, 惹 起された反応 に対する外 来性 自律 神 経 故 構の関 与を検 討 する た め, 正常イヌ, 迷 走 神 経 切 断イヌ, 内臓 神 経 切 断イヌお よ び膵 除 神 経イヌ を用いた検 討を行 ない, ま た, その用 量 依 存 性を み る た め,( 全 身 効果 も 発 現さ せ る と考え られる) 大 量の 2‑D G を膵 動 脈 内に 局 所 的に投 与し た. その結 果 ∴膵 外 来 性 神 経機 構と ほ独立する
膵
内在 性 神 経 機 構に よ る特 徴 ある早 期膵
I R I,I R G 分 泌を見 出i
‑Il一lt・‑‑・
i ・
l‑l‑‑
・I・ ・
‑
tt 一.
t1 一
‑Ti
..t.‑ .
2‑デ オ キシグルコ ー ス によ る膵 内 分 泌応 答 10 23
i
‑Il一lt‑・‑・
i ・
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‑Ti
..t.‑ .
し たので報 告 する.
対 象 お よび 方 法
Ⅰ. 実 験動 物と実 験 前の処 置
体 重1 5 〜2 0 kg の雑 種 成 熟イヌを 用い, 1 2〜1 6時 間絶 食 軋
ベ ン ト パ ル ビター ル(3 0mg
/
kg) 静 脈 内麻 酔 下に開腹し, 上膵 十二指 腸 動 脈の十二指 腸枝に 2‑D G 注入 用の, 同静 脈に膵 静 脈血 採血用の カ テ ーテ ルを挿入 した. ま た, 膵 静脈血流 量 測定用に 超 音 波血流 計 T
‑
2 0 1(Tr a n s o nicSyste m ,Ne w Yo rk,U・S■A・) の ブロ ー べを留 置し, その後 閉鎖した. さ らに, 動脈血採血用カテ ー テ ルを大腿 動 脈に挿入 し た. 加え て, 以 下の いずれ かの手 術を行なっ た. A . 正常 対 照 群: 上記 手 術のみ を施 行し た・ B . 迷 走 神 経 切 断 群:腹 側お よ び背 側の迷 走 神 経 幹を横 隔 膜 直 下にて切 断し た. C . 内臓 神 経 切 断 群: 両側 背 部 切 開到 達 法に ょ り 両側 大 内 臓 神 経を切断した. D . 膵 除神 経 群: 脾臓 部 膵に
っいて は牌 動 脈の起 始 部お よ び その膵 流入部と膵 遠 位 端 乱 十
二指 腸部 膵につ い ては, 上
膵
十二指 腸 動 脈 起 始部お よ び下膵 十二指 腸 動脈 流入部で, それ ぞれ随 伴 する静 脈周囲をも 含め 血管 周 囲 神 経 組織を剥 離し切 断し た. こ の際, 脾 動 脈起 始 部 以 外の 腹 腔 動 脈周囲神 経 組 織に損 傷を与え ぬ よ う細心の注 意を払っ た. さ らに ,
膵
周囲結 合 組 織を 可及 的に離 断した. 以上の各 神 経 切 断の完 全 性は, 実験 終 了 後 剖 検にて確 認した・Ⅱ. 実 験 実 施
2
‑
D G (gr ade Ⅲ,S igm a,St.Lo uis, U・S ・A)・ の1 0m g/
kg ま たは 1 0 0m g
/
kg を生理的食 塩 水1 0ml に溶 解し,膵 動 脈 注入用カテ ー テルから,1 ml
/
mi n の速 度で 1 0分 間で走 速 注入 し た一 な お, 2‑
D G 注入前 後には生理的 食 塩 水を 1ml/
min の速 度で注入した. ま た対 照と して2‑D G 溶液と同量の生理食 塩水 を終 始 注 入 した. 採血 は膵 静脈血 用カ テ ー テ ルお よ び大 腿 動 脈カ テ ーテ
ルよ り, 2‑D G 注入前,
一
‑ 5 , 0 分, 注入開 始 後1 , 2 , 3 ,5, 7.5, 1 0, 1 5, 2 0, 3 0, 4 5, 6 0分 (0 〜1 0分2
‑
D G 注入) に2.5mI ずつ採 取し, 同時に膵血流 量を測 定した. 採 取し た 血液 は直ちに血液1ml あた りに アブロ チニ ン ( Baye r, Le v e rku s e n,
Ge r m a ny)1 0 00 単 位とエ チレ ンジア ミ ン四酢 酸ニ ナ ト リウム
(Ethyle n edia min etetr a a c etic a cid, dis odiu m s alt,E D T A
,
2 Na, 和 光, 大 阪)1.2m g を含む水 冷試 験 管に移した後, 冷却 遠心 を 行ない血紫を分 離し た. こ の血渠ほホ ル モン測 定ま で ‑2 0 ℃で保 存した.
Ⅲ. 測 定 法
血中I RI 濃 度ほ, イヌ ・ イン ス リン標 準 品( Lo t No・ H75 7 4,
L. Hed ing 博士 よ り提 供, No v o, Cope nhage n, De n ma rk ) を 用 いる4 3l, 血中I R G 濃 度は抗 体3 0 K ( R. H. U nge r 博士 よ り提 供, Te x a s 大 学, U.S, A). を用いる4 4 ) 4 5), そ れぞれ既 報の ラジ オイム ノ アッ セ イ法で測 定し た. 血祭グル コ ー ス 壊 度は グル
コ ー スオ キシダー ゼ法によ り測定し た が, 本 法で ほ, 交差 反 応 性のた め 2‑D G の1 7% が グル コ ー ス と して測 定さ れ た. 血旅 2
‑
D G 濃 度ほ A kabaya sh i ら4 6)の変 法に よ る酵 素法によ り測定し た. 本法ほ グル コ ー スの4% を 2‑D G と して認 識 するのみで優 れ た特 異 性を 示 し た. 血中N A d 濃 度は, 高速 液 体クロ マ ト グラ フ ・ カテコラミ ソ分 析シス テム( 島津, 京 都) によ り分 離し,
電 気 的 化学 検 出器ク ー ロ ケム 51 0 0 A 塾 (二光バイオ サイ エ ン
ス , 東 京) にて検 出した.
Ⅳ. 統
計
学 的処 理成 績は平 均 値士標 準誤 差 (m e a n士 S E M) で表わ し, 推計 学 的
検 討は F ishe r の多重 比 較 検定を用い て危 険 率5 % 以 下を有 意 と判定した.
成 績
Ⅰ. 正常イ ヌ に お け る 2‑D G 膵 動 脈 内注入 に よ る膵 静 脈血流 量, 動 脈血血 糖値, 血中I R I,I R G 濃 度の変動 1 . 2‑D G l Om g
/
kg 注入時の変 動 ( 図1)2‑D G l Omg
/
kg を1 0分 間にわ た り膵 動 脈 内に 注入する と (n =4), 膵 動脈血流 量 (血流 量) は前借 平均3 3 士 5mV
min よ り, 注入中のみ約5% 増 加し, 実 験 後 半の30, 4 5分には前 備に比し 有 意の低 下を 示 し た , 動 脈血 血糖 値 (血糖 値) は前 値 平 均 8 6 ±2皿g/
dl で, 注入中は わずかに増 加を 示 し た だけで, 注入 終 了 後の3 0分には有意の頂値を 示 した, 膵 静 脈血 I RI 濃 度は前 借 平 均1 41 ±2紬U/
ml よ り, 注入開 始後2分にほ1 1 9 ±3 1 と 一 旦前 値の8 4% に低 下し た. その後, 3分よ り急 峻に上昇し, 5 分には2 91 ±2 0 と前 値の2 0 6% に達し, 7.5分に25 6 土5 0 と 一 旦 わ ずかに下 降し た が,1 0分にほ再 度5 5 7 土1 9 6 と3 9 5% の頂 値を 示 す2峰 性 分 泌を見た. 2‑
D G 注入終了後はよ1 5分で1 27 ±3 1 と ほ(
u
苫 二
言
」 瓜
( 一
P
、
ぎ
)旨 晋
s
・
d
(
】
∈
、
⊃ 占
】
∝
一
5 0 1 0 3 0 2 0 1 0 0 1 0 0
9 0
8 0 0 0 0 8 0 0 6 0 0 4 0 0 2 0 0 1
圃
2・D G.5 0 5 1 0 1 5 2 0 3 0 45 6 0
T im e(min)
F ig.1. E ffe ct of 2‑de o xy glu c o s einfu sio nintothe pa n c r e atic a rte ryin n o r m al dog
ヲ
・ 2‑
de o xy glu c o s e(2‑D G ) (1 0 mg/
kgbody w eight) w a s l nje cted into the pa n c r e atic a rte ry thr o ugho ut l O min, a nd its effe ct w a s e x a min ed o n the
le v els of pa n c r e atic blo od flo w r ate (B F), a rte rial pla s m a s uga r (P S), Pa n C r e atic v e n o u s pla s m a in s ulin (I RI), a nd glLI C agO n (I R G) (n =4). Ea ch point with v e rtic al ba r r epr e s e nts the m e a n ± S E M . En cir cled points ind ic ate signific a nt d iffe r e n c e s 缶o m the m e a n ba s al v alu e s
(p< 0.0 5). qL indic ate s the 2‑D G infu sio n・
1 0 2 4 鳥
ぼ前 値に復し た. 動 脈血 ⅠⅢ 濃 度は, 前値 平 均1 5 ±3〟U
/
ml より, 有意に変 動し な かっ た. 膵 静 脈血 I R G 濃 度ほ, 前 借 平 均 5 3 3 土1 2 2p g
/
ml か ら, 注入開 始1 分後にほ,8 8 7 ±1 6 3 と前値の 1 6 6% へと急 峻に上昇し, その後2‑D G 注入中にもか か わ らず 5 分には前 借に復し た. 以後, 有 意で は ないが漸増 傾 向を 示 し た. 動 脈血 I R G 濃 度は前 値 平 均1 1 4 士17 p g/
ml で, 3分で1 3 0±3 4 と や や増 加し た.
2 . 2
‑
D G l O Om g/
kg 注入時の変 動 ( 図2)2‑D G l O Or ng
/
kg を 1 0分 間に わ た り膵 動 脈 内に注入する と (n =4), 血流 量は前 値 平 均2 7 ±2ml/
血n で, 3 〜1 0分にかけ (5分で頂値3 6 ± 4 と前 便の13 2% を と る) 有意な増 加を 示 し た 後, 漸減した. 血糖値は前借 平 均91 ±3m g/
d l よ り, グルコ ースオ キシダ ー ゼ法における 2‑D G の交 差 反 応性のた め(7.5分に 最 高1 0 2 ± 2 と1 1) 注入中ほ増 加した. 膵 静 脈血 ⅠⅢ 濃 度は前 借 平 均1 3 5 ±42〟U
/
皿1 よ り, 注入開始 後1 分でほ6 8 ±2 5 と 一旦前 値の50% に低 下し た後, 3 〜1 0分にかけて 5 分で 5 9 1 ±8 4 と前 値の43 7% , 1 0分で4 3 6 ±8 7 と前値の3 2 3% の頂 億を と る や は り 2 峰 性の有 意 な増 加を み た. こ の反 応は▲1 0mg/
kg 注入時と同 様で, しかもその前 僅か らの増 加 量ほ 1 0mg/
kg に比し有 意に 大 きかった. 動脈血 I RI 濃 度ほ▲ 前億 平 均1 4 ±7/心/
ml よ り,∧
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2・D G・5 0 5 1 0 1 5 2 0 3 0 4 5 6 0
Tim ¢(m 油)
F ig・2・ E ffe ct of 2‑de o xy glu c o s einfu sio n into the pa n c r e atic a rte ry
.
in n o r m al dogs・ 2‑D G (1 0 0 m g
/
kg body w eight)W a SinJe Cted into the pa n c r e atic a rte ry thr o ugho utl O min,
a nd its effe ct w a s e x ami n ed o n thele v els of B F,P S,I R I,
a nd J R G (n = 4)・ Fo r othe r symbol畠, fefe r to the lege nds Of F ig.l.
桑
注入後 半には, 7・5分で頂値2 9 ± 7 と有意な増 加を示し た. 膵 静脈血 I R G 濃 度は, 前 値 平 均4 7 7 土3 9p g
/
ml か ら, 1 〜 3分に かけて▲ 2 分に1 1 2 8 土2 0 9 と前値の2 3 6% へ と急 峻に上昇し, そ の後2‑D G 注入中にもか か わ らず5 分にほ前値に復し た. こ の反応は1 1 0mg
/
kg 注入時と同様で, し かもその前 値か らの増 加 量ほ 1 0mg/
kg に比し有 意に大 きかっ た. 動 脈血 I R G 濃 度ほ前 値平 均 92 土2 9p g/
ml で, 注入中は 5 分に頂 値1 1 3 ±3 6 を み た が 有意な増 加で ほ な か った.Ⅰ・ 両 側迷 走 神 経 切 断イ ヌ に おける2‑D G 膵 動 脈 内注 入 に よ る膵 静 脈血流 量, 動 脈血 血糖 値, 血中I R I,I R G 濃 度の 変 動
1 . 2‑D G l Om g
/
kg 注入時の変 動 ( 図3)2‑D G l Om g
/
kg 注入時 (n =4), 血流 量は前借 平 均2 5 ± 5ml/
min よ り∴注入中のみ約1 2% 増 加し, 実 験 後 半の6 0分にほ前値
に比し有 意の低 下を 示 し た. 血糖 値は前 値 平 均9 3 ± 2mg
/
dl より低 下 傾 向を 示 し, 7.5 〜3 0分には(1 5分で低 値8 7 ± 2 を と る) 有意な低 下を
タ
た軋 上昇し た. 膵 静 脈血 I RI 濃 度ほ前値 平均 1 5 9 ±5 2FLU/
ml よ り, 2‑
D G 注入直 後よ り増 加傾 向を 示 し, 5 分で4 1 3 ±7 1 と前 値の2 6 0% , 1 0分で7 2 3 ±2 3 1 と前 借の4 5 5% の頂 値を と る や は り 2 峰 性の有 意な増 加 反 応を 示 し た. 動 脈血 I RI
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T ime(mh)
F ig・3・ E ffe ct of 2‑de o xy glu c o s e in fu sio ninto the pa n c r e atic a rte ry in v agoto miz ed dogs. 2‑D G (1 0 m g
/
kg body W eigh t) w a s inje cted into the pa ndc r e atic a rte ry thr o ugh‑
O utl O mi n. a nd its effe ct w a s e x ami n ed o n the le v els of B・F,P S,I RI,a nd I R G (n = 4). Fo r othe r symboIs,r efe rto thelege nds of Fig.1.