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必須アミノ酸プロファイルにおける 小腸と肝臓の生理的役割

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Academic year: 2021

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(1)

東北女子大学 紀要 No.58:17 〜 20 2020

*東北女子大学

**愛媛大学

必須アミノ酸プロファイルにおける 小腸と肝臓の生理的役割

出口佳奈絵

・前田 朝美

・亀田 健治

**

・加藤 秀夫

The physiological role of small intestine and liver on essential amino acid profile in rats Kanae IDEGUCHI

・Asami MAEDA

・Kenji KAMEDA

**

・Hideo KATO

Key word : 必須アミノ酸      essential amino acid   アミノ酸プロファイル  amino acid profile   タンパク質栄養     nutrition of protein

はじめに

血漿中の遊離アミノ酸組成は,健康増進および 生活習慣病との関連性について数多く報告

1〜5)

さ れており,臨床科学的な指標として重要視されて いる。生化学的な側面から,アミノ酸代謝におけ る内分泌系,自律神経系などによる調節とその制 御により,血漿中のアミノ酸プロファイルが恒常 的に維持されている

6)

。しかし,タンパク質の量 や質が異なる食餌を摂取した場合のアミノ酸プロ ファイルと代謝臓器の特異性はほとんど明らかに されていない。食餌由来のタンパク質は,小腸で アミノ酸として吸収され,門脈を経由して肝臓で 代謝された後に肝静脈を介して全身へと運ばれ,

生体の構成成分やエネルギー源として利用され る。門脈と肝静脈血中のアミノ酸プロファイルか ら,食餌タンパク質の小腸と肝臓での栄養生理学 的意義だけでなく,生体とアミノ酸栄養の関連性 について明確にすることが可能である。

体内で合成できない必須アミノ酸は食餌タンパ ク質で影響されることから,血漿中の必須アミノ 酸プロファイルは生体の栄養と健康状態の指標に なると考えられる。

本研究では,量と質の異なる食餌タンパク質を ラットに摂取させて,消化器系の小腸と肝臓にお ける必須アミノ酸プロファイルの相違とタンパク

質栄養の意義を検討した。

方法

Wistar 系9週齢の雄ラットを用いて,活動期 である暗期を9:00 〜 21:00 とする 12 時間の明暗 サイクルで約1週間の予備飼育をした。食餌は,

暗期の 10:00 〜 16:00 に自由摂食させた。

実験1の実験食エネルギー比を図1に示した。

アミノ酸スコアの高い食餌タンパク質のカゼイン 量を変えて,低カゼイン食,標準カゼイン食,高 カゼイン食の3群に分けた。食餌組成のタンパク 質エネルギー比は5%,20%,35%である。脂肪 のエネルギー比はいずれの群も 20%とし,残り のエネルギー源は糖質で調整した。

実験2の実験食エネルギー比を図2に示した。

摂取タンパク質の種類の違いにより,カゼイン 食,小麦タンパク質食,混合食(カゼイン:小麦 タンパク質=1:1)の3群に分け,食餌のエネ ルギー比率は,タンパク質 20%,脂肪 20%,糖 質 60%に設定した。

各実験食で飼育後,空腹時の8:00 と摂食開始

から3時間後の 13:00 に各群5匹ずつ麻酔下で解

剖し,門脈と肝静脈からの同時採血を行った。血

漿中遊離アミノ酸の分析は,愛媛大学学術支援セ

ンター病態機能解析部門に依頼し,全自動アミノ

酸分析器(日本電子 JLC-500)を用いて分析・測

定し,アミノ酸プロファイルを提示した。

(2)

18 出口佳奈絵・前田 朝美・亀田 健治・加藤 秀夫

結果

タンパク質の消化吸収は約 97%と高く,小腸 を消化吸収の機能に限定すると,門脈血中のアミ ノ酸プロファイルは食餌中のアミノ酸組成に依存 していると想定される。アミノ酸代謝における小 腸の特性を調べるために,3種類の食餌タンパク 質のアミノ酸組成と各実験食を摂取した後の門脈 血中必須アミノ酸濃度を比較した(図3)。いず れも空腹時の門脈血中濃度の高いアミノ酸から順 に横軸に並べてアミノ酸プロファイルを示した。

カゼイン食と混合食のアミノ酸組成が異なるにも かかわらず,門脈血中の必須アミノ酸プロファイ ルは類似していた(図3A, C)。一方,リジンの 少ない小麦タンパク質食では,門脈血中リジン濃 度が低いままのアミノ酸プロファイルを示した

(図3B)。

食餌摂取の影響がほとんどない空腹時(8時)

と摂取してから3時間後の摂食時(13 時)にお いて,食餌タンパク質の量と質の違いによる門脈

及び肝静脈血中の必須アミノ酸プロファイルを図 4と図5に示した。いずれの群も空腹時では,小 腸を経由した門脈と肝臓を経由した肝静脈血中の 必須アミノ酸プロファイルはほぼ同じパターンで あった。腸管を経由した必須アミノ酸は肝臓で代 謝されずそのまま素通りしていることが考えられ た。摂食時では,タンパク質の量と種類によって 門脈血中アミノ酸濃度は異なっていた。血中のア ミノ酸濃度が門脈よりも肝静脈で低くなると,肝 臓でのアミノ酸利用が亢進した。いずれの実験食 群においても,小腸で典型的なアミノ酸プロファ イルを維持し,肝臓ではアミノ酸プロファイルの 量的な調節が行われていると考えられる。

考察

食餌タンパク質の栄養価は,必須アミノ酸の組 成により評価され,摂取したタンパク質の消化吸 収率やアミノ酸の体内利用も考慮されている。腸 管より吸収されたアミノ酸は門脈を経て肝臓に入

図2 実験食のエネルギー比(実験2)

図1 実験食のエネルギー比(実験1)

図3 食餌中アミノ酸組成および摂食後の    門脈血中必須アミノ酸プロファイル

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(3)

19 必須アミノ酸プロファイルにおける小腸と肝臓の生理的役割

図4 食餌タンパク質量の違いによる    必須アミノ酸プロファイル(実験1)

図5 食餌タンパク質の違いによる    必須アミノ酸プロファイル(実験2)

り,大部分はそのまま血液中に放出される。血中 アミノ酸は,組織タンパク質の供給源として,ま た,ホルモンや生理活性物質,核酸の構成成分と なる。過去のタンパク質栄養に関する有力な知

7,  8)

から,生体内におけるアミノ酸代謝の臓器

間の流れは,タンパク質栄養だけでなく外傷や術 後の早期改善,アミノ酸輸液組成など臨床的に有 用な指標である。今回,食餌組成を変えながら,

肝臓に入る前の門脈血液と肝臓から放出された肝 静脈血液の同時採血を行い,血漿中の必須アミノ 酸プロファイルの相違を検討した。

門脈および肝静脈血中の必須アミノ酸プロファ イルは,空腹時において食餌タンパク質の量と質 の違いに関係なく,一定のパターンを維持してい た。カゼインを含んだ食餌群では,食餌中のタン パク質量に関係なく典型的なアミノ酸プロファイ ルを示した。一方,リジンを第一制限アミノ酸と する小麦タンパク質食群では,食後の門脈血中リ ジン濃度が空腹時よりも著しく低下した。この理 由として,小麦タンパク質食のリジン含量が少な いだけでなく,摂食後に小腸でのアミノ酸の相対 的な利用が増加したと考えられる。つまり,タン パク質の量と質の異なる食餌を摂取しても,小腸 はタンパク質の消化吸収だけでなく,生体に適応 したアミノ酸プロファイルの形成に関与してい

た。また,食餌タンパク質中に不足しているアミ ノ酸を補足する機能がないことも考えられる。

従って,典型的な生体固有のアミノ酸プロファイ ルを示す “ 空腹時 ” の情報と併せて,タンパク質 栄養を反映する “ 摂食時 ” のアミノ酸プロファイ ルを評価することは,栄養と健康状態の把握に有 効である。

Elvehjem ら

9)

は,門脈中の遊離アミノ酸量の 増加は食餌タンパク質の摂食量を反映していると 報告している。今回,食餌タンパク質の摂取量と 種類によって門脈血中アミノ酸濃度は増減した。

また,小腸で形成されたアミノ酸プロファイルは 維持しながら,肝臓ではアミノ酸プロファイルの 量的な調節が考えられた。食餌タンパク質の量と 種類の違いに関係なく,アミノ酸プロファイルの 形成には,小腸の質的な調節と肝臓の量的な調節 の双方によって生体固有の血漿中アミノ酸動態が 決定されることを示唆した。これらのことから,

生体に必要なアミノ酸レベルを維持するうえで,

腸管を経由したタンパク質の摂取,つまり,口か ら食べる重要性を浮き彫りにした。食餌由来のタ ンパク質が生体で無駄なく活用されるためには,

小腸と肝臓の栄養生理学的役割が重要である。

今後は疾患モデルラットにおける生体固有のア ミノ酸プロファイルを解明すれば,適正なタンパ

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(4)

20 出口佳奈絵・前田 朝美・亀田 健治・加藤 秀夫

ク質摂取と疾患予防に対応した栄養管理の実用化 にも応用できると考えられる。

参考文献

1)Yamakado  M,  Tanaka  T,  et  al:Plasma  amino  acid  profile  is  associated  with  visceral  fat  accumulation  in  obese  Japanese  subjects.  Clin  Obes, 2: 29‒40(2012)

2)Shingyoji  M,  Iizasa  T,  et  al:The  significance  and  robustness  of  a  plasma  free  amino  acid 

(PFAA) profile-based  multiplex  function  for  detecting lung cancer. BMC Cancer, 13: 77(2013)

3)Fukutake N, Ueno M, et al:A Novel Multivariate  Index  for  Pancreatic  Cancer  Detection  Based  On  the  Plasma  Free  Amino  Acid  Profile.  PLoS  One, 10: e0132223(2015)

4)Yamakado  M,  Nagao  K,  et  al:Plasma  Free  Amino  Acid  Profiles  Predict  Four-Year  Risk  of  Developing  Diabetes,  Metabolic  Syndrome,  Dyslipidemia,  and  Hypertension  in  Japanese  Population. Sci Rep, 5: 11918(2015)

5)Tochikubo  O,  Nakamura  H,  et  al:Weight  loss  is  associated  with  plasma  free  amino  acid  alterations in subjects with metabolic syndrome. 

Nutr Diabetes, 6: e197(2016)

6)安東敏彦,化学と工業,60, 40(2007)

7)石川榮治:高等動物におけるアミノ酸代謝の全体 像.化学と生物,10, 831‒837(1972)

8)吉田昭:タンパク質,アミノ酸栄養の最近の問題 から.栄養と食糧,23, 583‒597(1970)

9)Denton,  A.  E.,  Elvehjem,  C.  A.  :  Availability  of  amino  acids  in  vivo.  J  Biol  Chem,  206,  449‒454

(1954)

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