Title
肝硬変における分枝鎖アミノ酸の代謝動態に関する研究( 内
容の要旨(Summary) )
Author(s)
山藤, 正廣
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第983号
Issue Date
1995-06-21
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15290
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏名(本籍)
学位の種類
学位授与番号
学位授与日付
学位授与の要件
学位論文題目
審
査
委
員
山
藤
正
廣(岐阜県)
博
士(医学)
乙第
983号
平成
7年
6月
21日
学位規則第4条第2項該当
肝硬変における分枝鎖アミノ酸の代謝動態に関する研究
(主査)教授
武
藤
泰
敏
(副査)教授
佐
治
重
豊
教授
野
間
昭
夫
論
文
内
容
の要
旨
肝硬変において血祭アミノ酸インバランス・すなわち分枝鎖アミノ酸(branched-Chainaminoacid;BCAA:Valine, 1eucine,isoleucine)の減少と芳香族アミノ酸(aromaticamino acid;AAA:tyrOSine,Phenylalanine)の増犯 そ の結果としてBCAA/AAAモル比(Fischer比)の減少が観察される。このアミノ酸インバランスと肝性脳症との間には密 接な関係があると考えられ,肝性脳症の改善を目的としてBCAAに富んだ肝不全用特殊組成アミノ酸輸液が汎用されている。 一方,肝硬変患者における低蛋白栄養状態と低BCAA血症あるいはFischer比の低下が密接に関連していることも見い出され ている。これらの知見をもとに,肝硬変患者に経口的にBCAAを投与することにより,低蛋白栄養状態の改善,さらに臨床的 予後の改善がもたらされることもすでに報告されている。しかし,肝硬変におけるアミノ酸インバランスの発生機序に関する詳細はなお不明のままである。そこで申請者は.肝硬変
におけるアミノ酸代謝異常の成因をアミノ酸クリアランスの面から解明するため,肝硬変患者および門脈一下大静脈吻合を造 設したEck凄犬を用いて検討を行った。 Ⅰ.肝硬変を含む慢性肝疾患におけるアミノ酸クリアランスの検討 対象肝硬変患者10例,慢性非肝硬変肝疾患患者5例および正常対照8例を対象とした。
方法総合アミノ酸製剤(プロテアミン12Ⅹ㊥)0・83ml/kg(アミノ酸として0.1g/kg)を早朝空腹時に5分間かけて静注し,
投与前,および投与終了後5,10,15分に肘静脈より採血した○自動アミノ酸分析装置を用い,14種類の血柴遊離アミノ酸濃 度(Ile,Leu,Val・Lys,Met,Phe,Thr,Trp,Arg,His,Ala,Pro,Ser,Tyr)を測定した。3群のアミノ酸クリア ランスを求め比較検討し,また肝機能障害を示す各種パラメーターとの相関を検討した。 結果 1)14種類すべてのアミノ酸(TAA),8種類の必須アミノ酸(EAA)およびBCAAに区別してクリアランスを検討した。 分枝鎖アミノ酸クリアランス(C-BCAA)は肝硬変群で37・5±1・6(M±SEM)ml/min/kg(正常対照群:33.7±2.2)と 高い傾向がみられた。総アミノ酸クリアランス(CLTAA)は・肝硬変群では158・3±8.5ml/min/kg(正常対照群:179.3 ±12・2)と有意に低下していた(P<0・01)○またC-BCAAのC-TAAに対する比率(C-BCAA/C-TAA)は肝硬変群で24. 0%(正常対照群:18.9)と有意に増加していた(P<0.05)。 2)肝硬変群においてC-BCAA/C-TAAとアンモニアとの間に正の相関がみられた(r=0.666,P<0.05)。肝硬変と非肝 硬変肝疾患とを合わせた群ではt C-BCAA/C-TAAとアンモニアとの間に正の(r=0.735,P<0.01),またアルブミンとの 間に負の相関が認められた(r=-0.511,P<0.05)。 Ⅱ・Eck凄犬におけるアミノ酸クリアランスの検討 対象 Eck痩犬14頭,Sham手術を行った対照犬8頭を対象とした。 方法 1)Eck凄犬の作製 雄性雑種成犬を用いt麻酔下に開腹した○門脈を肝門部で結紫,切断し,下大静脈と端側吻合を作製した。 2)対照犬の作製 下大静脈および門脈本幹にEck連作製時と同様な剥離操作を加えた○その後,門脈一下大静脈端側吻合に際して要する門脈 47血流遮断時間(平均14分間)に相当する門脈血流遮断を行った。術後処置は1)と同様に施行した。
3)術後14日目・24時間絶食後・研究Ⅰにおけるヒトの場合と同様に・総合アミノ酸製斉軋幻ml/kgを投与し採血した。14
種類の血穀遊離アミノ酸濃度を測定し,アミノ酸クリアランスを求めた0また.17項目の生化学的検査を実施した。得られた2群間の各種クリアランス値を統計学的に比較し・さらに肝機能障害を示す各種パラメーターとの相関を検討した。
結果 1)Eck痍犬群でアンモニアが146・3±74・7FLg/dl(対照犬群:54・5±37・8)と有意な上昇が見られた(P<0.05)。2)Eck庫犬群におけるVal,Ile・LeuおよびBCAA濃度は対照犬群に比し有意な減少が認められた(P<0.01,P<0.05,
P<0・05・P<0・01)0一方・Tyr・PheおよびAAA濃度は有意な増加がみられた(P<0.01,P<0.05,P<0.01)。 3)Ile・LeuのクリアランスがEck痩犬群において対照犬群に比し有意に増加していた(P<0.01,P<0.01)。Eck凄犬群に おいてC-BCAAが106・8±34・2ml/min/kg(対照犬群:65・4±24・6),C-BCAA/C-TAAが25.9±4.6%(対照犬群:20.6 ±3.6)と有意に増加していた(P<0.01,P<0.05)。4)C-BCAAとFischer比の間にr=-0・543(P<0・05)で.またアンモニアとの間にr=0.449(P<0.01)で有意な相関がみ
られたoC-BCAA/C-TAAとBCAAの間にr=-0・645(P<0・01)で,Fischer比との間にr=-0・592(P<0.01)で,さら
にアンモニアとの間にr=0.573(P<0.01)で有意な相関がみられた。
考察
本研究で実施した肝硬変におけるアミノ酸ク●)7ランスの成練では・正常対照群に比較しC-TAAは有意に低下し.一方C-BCAAは増加傾向にあったoC-BCAA/C-TAAをみると統計学的に有意に肝硬変群で増加がみられ.これは肝硬変ではBC
AAの消費が他のアミノ酸に比較し相対的に冗進していることを示すものである○さらにC-BCAA/C-TAAがアンモニアと
正の相関を示したことはt肝硬変におけるBCAAの消費冗進が高アンモニア血症と密接に関連することを示唆するものである。
これは肝硬変において・筋におけるアンモニアからのグルタミン合成の増加がBCAAの分枝鎖ケト酸への分解冗進をもたらす
とする報告を支持するものである。
さらに,Eck痍犬におけるアミノ酸クリアランスの成繊ではt
C-BCAAの絶対値そのものが対照犬群に比し有意に増加して
いた0またC-BCAA/C-TAAもEckdF犬群では有意な増加がみられ-ヒト肝硬変と同じくEc唖犬においてもBCAAの消費
の冗進が確認されたo高アンモニア血症をその病態の特徴とするEck痩犬においてC-BCAAあるいはC-BCAA/C-TAAとア
ンモニアの間に有意の相関が認められたことは・肝硬変患者において示唆された如く,高アンモニア血症がBCAAの消費冗進
をもたらし.その結果として低BCAA血症を惹起するものと考えられる。本研究から,肝硬変におけるアミノ酸インバランス(特にBCAAの減少)は,高アンモニア血症と強く関連することが立証
された0また高アンモニア血症に伴い消費されたBCAAを積極的に補充することばt肝硬変において肝性脳症を予防し,さら
に蛋白代謝を改善する上で有用であると考えられた。論文審査の結果の要旨
申請者山藤正廣はt肝硬変患者およびEc嬬犬においてアミノ酸クリアランスを検討し・肝硬変における低分枝鎖アミノ酸
血症の発生には高アンモニア血症が関与することを明らかにした0この研究成果は肝臓病学の進歩に少なからず寄与するもの
と認める。[主論文公表誌]
肝硬変における分枝鎖アミノ酸の代謝動態に関する研究
(Ⅰ)肝硬変における低分枝鎖アミノ酸血症の発生機序に関する研究 岐阜大医紀 43(1):1∼8,1995 (Ⅱ)Clearancerateofplasmabranched-Chainaminoacidscorrelatessignificantlywithblood ammonialevelin patients withliver cirrhosisInternationalHepatologyCommunications3:91∼96,1995