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人膿漏症齒肉組織のAdenosinetriphosphataseに関する研究 III. 齒肉組織におけるGlycogenの組織化学的研究 利用統計を見る

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(1)

札幌早早 9(1},50〜54(1956)

人膿漏症歯肉組織のAdenosinettiphospha七ase

        に 関 す る 研 究

III,歯肉組織におけるGlycogenの組織化学的研究

       佐 蔵  寛

札幌医科大学口腔外科学教室 (主任 金森教授)

札幌医科大学生理学教室(指導永井教授・宮崎教授)

 S七udies on Adenosine七riphospha七ase in Human       Pyorrhoic Gingiva

III. Histochemical Studies on the Distribution of Glycogen       in the Gingival Tissue

       By       H:エROSI SATO

   Department of Orat Stergery 〈Chief: Prof. fll. KANAnforei)

DepαrtmentげPhysiology (Directed by Pγqプl T.2>2taAr&E・1匠■VA・ZA・Jft)

      SaPUPOTO Univers吻げMedicine

 近年,筋肉内におけるenergy代謝に関してAdeno−

sinetriphosphate(以下ATP)と, ATPaseの問題が大き く取りあげられ丁 ;一1),この分野における生物化学の研究は,

衣第に生物全般の代謝に関して」押し進められようとして いる3)。われわれは,これ等の問題を歯肉組織に適応し,

従来その生物化学的に未解決であった歯槽膿漏症の本態 追究のため,ATPaseに関して,種々の検索を行って来

た4 1・「 )。その結果膿漏症歯肉組織は,正常歯肉組織に比し,

多量のATPaseを含み,またt)・TPaseの増減は,炎症と 密接な関係にあることを知った。

 ATPaseの機能の一つとして,解糖作用と密接な関係に あることは知られており,われわれの研究においても,

ATPaseに対すべきglycogen(以下Go)の検索は,その energy代謝における関連性から,極めて重要なことと考

えられる。

 1848年にCI. Bernardによって,生体内貯蔵物質であ るGoの発見から, Goに関する業績は非常に多いが,口 腔領域,特に歯肉組織の病的状態におけるGoの検討は,

池永6),Forscher7)・・9)によって,わずかに行われているに すぎない。ここにおいて,粛肉組織のenergy代謝に関し て,ATPaseに関聯のあるGoの消長を見るべく,組織化

学的に検索を行った。なおわれわれの研究発表と同時に,

森9)がヂェランチン歯肉肥大症における,同歯肉組織につ いて,その生成機転から,Goの検索を報じており,歯肉 組織病変の解明に,以上の観点が璽要視される傾向にある。

実験材料及び方法

 実験材料の採取及び分類については,第1報に準じ,17

〜65歳のものについて,総数45例につき 検索した。得ら れた材料につぎ,無水alcohol,またはCamor代固定液 にて固曝し(30〜60分),包埋及び切片作製は,第2報に 準じた。染色はLillielo)氏法に従い,随峙唾液消化試験を 行い,常に対照と比較検討し,vangieson氏染色及び haematoxyline−eosin重染色を併用して参考に資した。

実駿成績

 顕微鏡所見として,陽性を示す部位は,深赤紫色の顯粒 状を塁するが,年令及び性別に関しては差は認められず,

また正常なものと,膿漏症においては,ATPase層ほど著し い差異は認められなかった。

 1)上皮部分:一般にGo穎粒は,上皮角化層及びそ の下部に当る町所層(移行層〉に著名に認められる。そし

÷:一一般にalcoho1系の固定では, Goは穎粒状を呈するが,凍結乾燥固定では禰散:性であり,固定法の種類によって,

 Goは異なった形を呈するといわれる11)。われわれの結果では,穎粒状を呈しており,唾液浩化試験によって,1省失す  るものをGo願粒と列証した。

      50

(2)

9巻1号 佐藤 入膿漏症禽肉組織のATPase III 51

Sites of inHammat{on

Intermediate stratum.

Germinative Stratutn.

Tunicate stratum.

Corncum stratum.

Fig. 1.

層       F

@       n・mlal typc.

[=]・…Plli・・yp・.凾堰E日・1一⁝y   噛       L

「       .

       .

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      (一}       (士}       〔十〕      (十十》      (十什・,

Distribution of glycogen in the normal and pyorrhea gingiva system

Go

獣∵

石州

Fig. Z. Distribution of glyeogen   of the normal type gingiva

Pietr.i. bution of gtycogen tn inflammated isJile

Fig. 3.

inflammatory type gingiva of pyorrhea

      羨・

     二二ζ欝準

     照尺㌧戴    瞬曝

      ・tt鋤入

Distribution of glycogen in the

      一         一

Fig.4. Dis七ribu七ion of glycogen   of the a七rophic type gingiva

Go

tti ws.x

Fig. 5. Distribution of glycogen    in the epithelium system

Go

(3)

52 佐藤一人膿漏症歯肉組織のATPase てこれの部分は,発芽層に向うに従い滅少を示すが,発芽

層にはほとんど認められなかった。従って乳頭部の固有層 に向ってのびる部分は,Go穎粒もこれにそって索状にの びるのが認められるFig.(5)。正常型はこれ等を含めたGo 穎粒の層がうすく,またその分布の巾もせまい。そして歯 肉頂縁に限局するのが認められた(Fig.②。膿漏症につい ては,炎症型と骨萎縮型の闇に差は認められなかったが,

その分布の巾は広く,また顕著であってFig.(3), Fig.(4),

発芽層にまで達する顯粒の層が認められるものもあった。

外縁上皮は,内縁上皮に比し反応は強いようである。

 2)固有層部分:固有層には,ほとんど認められなか った。しかし炎症の新鮮なところには,Goの反応が認め

られた。従って正常型では,この部分にGoの反応はなく,

炎症型では細胞滲油部にかなり認めら.れFig.(3),骨萎縮型 では炎症型程ではないが,炎症部には少量認められた。

総括並びに考案

従来,Goの組織化学的の検索には, Jod法, Ka㎜in 法が行われているが,最近Fuchsinを用うる方法があり,

われわれはこの方法につきLillie三法を用いて検索した。

 1)歯肉組織におけるGoの分布について:以上の dataを総括するに,歯肉組織内におけるGoの分布は,

角化層く中間層(移行層)<炎症部の順であり,発芽層,固 有層にはほとんど認めず,また膿漏症歯肉組織では炎症型 のGo発現が大であったFig.(1)。

 従来歯肉組織におけるGoの検索はあまり多くない。組 織化学的にはAndrewi2)は,正常人歯肉組織につき,池 永(J)は,月経周期と歯肉組織内Goとの関連から,また森9)

は,歯肉肥大症におけるGoを検索しており,これ等の業 績に従えば,角化層,中間層(移行層)にGoの出現を認め ている。しかし発芽層については,Andrewは欠乏した状 態を報じているが,池永は,発芽層にも存在するという。

この相異は,実験操作及び材料によって,異なるものと思 われる。固有層については,Andrew,池永は,言及して いないが,Miltoni3)によれば,歯肉組織固有層下部組織に 相当する歯根膜部にも,少量のGoを認めるといっている。

すなわちGoは上皮都,特に角化層,中一層(移行層)に多 く,固有層に少ない点は,他口腔領域における粘膜のGo 分布と同様であるが14),これは重層偏平上皮に見られる共 通な現象と思われる。

 以上と,われわれの成績を比較するに,正常歯肉組織で は,歯肉頂縁部にGoが強く発現しており,これは臨床的 に歯肉頂縁部より病変が始まるという事実より,正常歯肉 組織でも幾分かの病変を有しており,その関係から三部の Go発現は,膿漏症の出発点を示すものであろう。そして

       III       木[ノ幌日誌 1956

膿漏症歯肉組織では,歯肉組織上皮全体に,Go顯粒が広 がっており,これは正常型のGo分布とあわせ考えて,膿 漏の進行過程を示すものであろう。固有層については,前 述の如く,Goは認められなかった。われわれはAndrew,

池永,型押とほぼ一致した結果を得た。

 歯内組織Goの定量的の検索には, Chorni 5), OstromW>,

Bergi7), ForscheriS)等が,正常の人歩ひ補乳動物につい て行っており,各研究者によって差はあるけれども,O.1A・

0.4%の値を出している。しかし膿漏症に関するGoの定 量的の検索は見られないが,最近Forscher7!・8)は,人歯 肉組織について歯肉嚢の深度と,Go保有に関して報じて おり,これによれば歯肉嚢の浅いものは,深いものよりも Go保有において高値を示し,歯肉嚢の深度大なるほど正 常型の保有値に近ずくといい。また急性炎症のものは,慢 性のものよりも高い値を示すという。

 これをわれわれの成績と比較するに,炎症型はGo保有 大き く,骨萎縮型は,歯肉嚢の深度の割にGoの保有は,

前者に比し少なく大体一致する。家に炎症とGo保有につ いては池永,森等は言及していないが,われわれは炎症部 にGoの発現を見た。これについては佐藤〔9)が化膿疾患部 に大量のGoを保有する三門細胞を認めており,沖井20),

鷹lfx ]i)によれば炎症部のGo白血球のGo保有は,その喰 菌作用及び遊走能力に比例して増大すると報告している。

いずれにせよ炎症部のGo発現は,上皮細胞内のGoとは 異なり,遊走する白血球内のGoと見るべき であり,われ われの成績においても同様な結果を示した。

 2)歯肉組織におけるGoとATPaseの関蓮について:

 Lipmann22), Engelhardt23)によれば,諸種細胞の機能 に対するenergyは, ATPによって与えられ,また細胞 に認められる解糖及び呼吸はATPの再合成過逞であると いう。これ等の見解に従えばATPの代謝に関与する ATPaseとGoとは,密接な関係にあらねばならない。わ れわれの今回の成績及び前里の結果を綜合すれば,上皮組 織と炎症部に,GoとATPase4)・「))の発現を見,かつ膿漏 状態の歯肉組織においては,これ等の量的な増大を見た。

 上皮すなわち貢層偏平上皮におけ るGo出現の意義につ いて,Gierke24)は,当所に毛細血管に分布がほとんどな いために,酸素及び栄養の補給がとぼしいため,賦与され たものであろうといい,また最近Go出現の意義について,

7」〈ljL.「) )・L)6)は,心臓Go検索から,酸素消費の少ない部位

は,Goの保有大なることをのべて, Goが嫌気的代謝に関 連のあることを示唆している。すなわち上皮部分における Goの強度の発現は,上皮の構造上,酸素その他の補給少 なきため,代謝そのものが上皮下部組織と異なった系列に あるためと思われる。この点,上皮と固有層の中品層たる

(4)

9巻1号 佐藤一人膿漏症歯肉組織のATPase III 53 発芽層のGo発現が少ない事実は,たとえ当所にATPase5),

alkalinephospatase27), phosphorylase2・R)が著名に認めら れても,角化層,中間層(移行層)には,ATPaseのみ認 められて,alkalinephosphatase, phosphorylaseが少な い事実から,酵素的にも異なった代謝系列にあることを示 すもので,これは毛細血管による栄養補給が,発芽層まで 充分に行われているためと見るべきであろう。次に固有層 について見れば,血管からの栄養補給が良好なるために ATPase, alkalinephosphataseの発現はあっても, Goの 発現はないものと見るべき であろう。

一方炎症組織vaついて見れば,当所の滲1閏細胞その他va よるATPase, lakalinephospha七aseの発現の他に,遊走 白血球の保有するGoが加わり,かっこれ等の発現が著名 である事実は,これ等の関係が消炎,または修復機転に関 与したものと考えられよう。換言するならば,歯肉組織に おいて,ATPase及びGoが,上皮及び炎症部にほぼ一致        デして発現しており,そして膿漏症歯肉組織において,これ 等の発現が大であることは,修復機転によって,歯肉組織

の解糖,呼吸の代謝が増加するものと,見るべきであろう。

 代謝増加に関してはGlickmann29),川勝鋤等が,炎症・

膿漏症歯肉組織におけるQo,・が,正常よりも高い値を示す ことを報じており,これ等の関係に一連の示唆を与えるも のと思われる。そして歯肉組織における,この異常な代謝 の増加は,下部組織たる歯槽骨及び歯根膜部の代謝に変調 を来しめるものと考えるが,これについて前記膿漏症の2 つの型において,炎症型では,ATPase, Goが量的にほぼ 一致して発現しているが,骨萎縮型では,Goの発現の割 に,ATPaseの発現が強く認められる。この事実は即ち ATPaseとGoの量的の平行関係が,炎症型においては認 められるが,骨萎縮型では平行しない点より,炎症型の代 謝は,質的には正常の代謝に近いものではないかと考え る。これは臨床的にも炎症型は,予後良好であり,単なる 炎症性のものである点が考えられるが,これに反して骨萎 縮型は,代謝の変調度が大きく,従って隣接する歯槽骨の 代謝に及ぼす影響が大であるために,歯槽骨の破壊呼吸が,

炎症型に比し大きい結果を示すものではないかと考える。

即ち臨床的にもこの型は予後不良である点一致するところ である。 換言すれば,前報におけるATPasaの分布の相 異による歯櫓骨の破壊吸収の差異,即ち両者の型における 予後良,不良の問題に対し,歯肉組織の代謝の変調度もま た大きな一つのfac七〇rであると考える。代謝の変調度に 関しては,ふれていないが森脇は,肥大歯肉組織における Go, glycoprotein, Qo,・, Qco2の検索から, 同組織の代 謝増加について強調しており,膿漏症解明に当り,以上の       り

観点が節:視される現状にある。しかし膿漏そのものが複雑

であり,さらに研究の必要が感ぜられる。

 1)われわれは膿漏歯肉組織のglycogenを組織化学 的に検索した。

 2)glycogen発現は,上皮部及び炎症部に認められた。

 3)膿漏状態においては,該部のglycogenが増加する

のを見た。

 4)以上の成績を,ATPaseとの関連の面から考察し,

膿漏症と代謝との関係につき 論じた。

 稿を終るに当り,Lillie氏.法につき 御教示下された本学 病理学教室室谷助教授に感謝致します。

(昭和31.1.7受付)

1) Szent−Gy6日目y: Chem. of Mucul Cont. (1951).

2)永井:筋攻縮の物理化学(1956).

3)須田:生物化学最近の進歩.197(1955)。

4)佐藤:札幌医誌7,361(1955).

5)佐藤:札幌日誌 投稿中.

6)池永:日本口腔科学会雑誌3,160(1954).

7) Forseher, B. K.: J. Dent. Res. 32, 698 (1953).

8) Forscher, B. K.: J. Dent. Res. 33, 441 (1954).

9)森:目本口開科学会抄録9,71(1955).

10) Lille, R. D.: Am. J. Clin. Path. 21, 484 (1951).

11)中島:科学20,204(1950).

12) Andrew, M.: Oral Surg. 7, 763 (1953).

13) Milton, B. : J. Dent. Res. 27r, 681 (1948).

14) 功ll井: F「本口〕}空雅卜学会雑誌 2,5 (1953).

15)Chorn, B.:工Dent. Res.29,49(1950),

16) Ostrom: J. Dent Res. 29, 55 (1950).

17) Berg, M: J. Dent. Res. 26, 291 (1941).

18) Forscher, B. K.: J. Dent. Res. 34, 144 (1955).

19)佐藤:日本病理会誌23,905(1933).

20)沖井:計測紀要1,18(1850).

21)鷹取;熊本医誌8,905(1932).

22) Limpmann: Advances Enzymol. 1, 99 (1941).

23) Engelhardt: Advances Enzyrnol. 6, 147 (1946).

24) Gierke, E.: Beiter. path. Anat. 37, 502 (1905).

25)水原:札医紀要2,201(1951).

26)水原:札幌面謝6,336(1954)。

盟)松野:札幌医誌5,182(1954).

28) ik内: 東京医封羊新誌 72,15 (1955).

29) Glickman L: J. Dent. Res. 28, 83 (1949).

30) 力1勝: 日本口1}空和ト学.会料監誌3,185 (1954).

31)森こFl本歯科医師会雑;誌8,14(1955).

(5)

M 佐藤一一一人膿症漏歯肉組織のATPase III 札幌医誌1956

S mmary

, The distribution of glycogen in the normal and pyorrhoic gingiva was studied histochemically.

     1) Distribution of glycogen in the gingiva system is generally localised in the epith−

elium and inflammated sites.

     2) The glYcogen content increas es remarkably in  the presence of pyorrhea.

     3) From the above the relationship between pyorrhea and metabolism was studied from on ATPase and glycogen point of view.

      (Re¢eived Jan,7,ユ956)

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