Title
掌蹠膿疱症の臨床的および組織学的研究( 内容の要旨
(Summary) )
Author(s)
渡邊, 久代
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第906号
Issue Date
1994-03-16
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15366
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏名(本籍). 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 渡 連 久
代(岐阜県)
博
士(医学)
乙第
906号
平成
6年
3月16
日学位規則第4条第2項該当
掌破膿癌症の臨床的および組織学的研究
(主査)教授森
俊
二 (副査)教授高
見
剛 教授 野 間 昭 夫論
文内
容 の 要旨
掌舵膿癌症(pustulosispalmaris et plantaris,PPP)は日常よくみられる疾患で,手掌と足既に膿癌の発 生を繰り返し,しだいに小水癌や乾癖様の角質増殖を伴う紅斑を生じ慢性に経過する難治な皮膚疾患である。 臨床の特徴の1つは悪化と軽快を繰り返すことである。組織学的には,本症の特徴的皮疹である膿癌は湿疹性変 化と膿癌化の2相性変化によって形成される。本症の病因はいまだに不明であるが病巣感染説,金属アレルギー 説,限局性の膿癌性乾癖とする説が対立している。また,限局性の膿癌性乾癖であるとする説と,乾癖とは異な る独立した疾患であるとする説についてもはっきりした見解は得られていない。 そこで申請者はt1975年1月から岐阜大学皮膚科においてPPPの診断のもとに経過を観察した症例について, まず臨床的検討を行った。次にPPPの皮疹の病変成立過程を追求することを目的に組織学的検討を行い,異同 を論議されている乾病とも比較検討した。 Ⅰ.臨床的検討 まず全般的事項と病型を1975年1月から1990年5月までの謂2例について検討し,掌舵膿癌症性骨一関節炎(叩S tulotic arthro-OSteitis,PAO)については1975年1月から1990年10月までの391例について検討して以下の結果 を得た。 1)総数認2例中男性172例,女性210例で,その比は1:1.2であった。男女共に40歳台に最も多く発症していた。 2)発症時期は春から夏が多かった。3)病巣感染との関連については謂2例中99例に感染病巣を疑わせる121疾 患を認め,このうち扁桃炎および扁桃肥大が71%を占めていた。4)悪化原因の第1は季節(春から夏)であり, 高温多湿が本症を誘発する因子の1つと考えられ,発汗との関係も考慮された。また生活習慣では,健常人に比 較し本症患者に喫煙者が多いという海外の報告が見られるため喫煙歴に注目すると,喫煙の有無を調べた20歳以 上の患者164例中124例(75.6%)が喫煙歴を有することがわかった。性別でみると男性に95.9%,女性に59.3% の喫煙歴があり,昭和63年度に実施された喫煙に関する世論調査による国民の喫煙状況に比較するといずれも高 率であり,本邦例においても本症と喫煙との関連が示唆される結果を示した。5)病型は382例のうち葦政限局 型が256例,掌庶外皮疹を伴う型が115例,細菌疹型が11例であった。全症例の30%に掌虻外皮疹を認め,34%に 爪病変を認めた。6)PAOは391例(男性175例,女性216例)ヰ,10.2%の40例に認められた。 Ⅱ.組織学的検討 次に,PPPの皮疹の病変成立過程を追求することを目的として組織学的検討を行った。PPP26例(細菌疹型 を除く),30カ所の掌舵および薯故外の様々な病期を選び皮膚生検を行い,通常のHE染色の他に,好中球をみる ために組織化学的染色としてエステラーゼ染色を,T細胞B細胞をみるために抗ヒトTリンパ球抗体と抗ヒトB リンパ球抗体を用いた免疫組織染色法(avidin-biotin peroxidasecomplexを用いたABC法)を施行して,浸潤細胞の種類と程度およびその部位を検討した。対照として乾癖10例12カ所からも皮膚生検を行い,同様に比較
検討した。さらに掌故に肉眼的に水痘と認められる皮疹をもつPPP7例について水梅内容の塗抹標本を作成し, モノクローナル抗体(OKT4,OKT8)を用いた免疫組織染色(immunoperoxidase法)を施行して浸潤細胞の細胞診による検討を行った。 その結果,PPPのごく早期に表皮内に走入するのはT細胞であることが証明され,水痘内においてはヘルパー・ インデューサーT細胞が増加していることが確認された。このことより,CD4陽性細胞がPPPの初期病変形成 に深く関与していることが示唆された。組織学的に本症の典型疹である角層下腹癌を認めた19例においては.表 皮内腺病の形成が角層内角層下腺病の形成より多数にみられたのが特徴であった。 またPPPは全体的には乾癖に近い組織反応を示していたが,詳細に検討してみるとPPPと乾病では,表皮へ の浸潤細胞の走入部位に差がみられた。すなわちPPPではl好中球は真皮乳頭届からのみ走入するがT細胞は 真皮乳頭層と表皮稜の両方から走入し,一方乾掛こおいては.好中球もT細胞も真皮乳頭層の頂部からのみ走入 することがわかった。真皮においては血管周囲の細胞浸潤の程度もPPPの方がより高度であり,血管病変も深 部の血管にまで及んでいた。乾癖の近縁疾患であると考えられているPPPであるが,このように異なる点も多 いことが確認された。