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各種アディポカインの血中及び骨髄液中濃度の比較検討 

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各種アディポカインの血中及び骨髄液中濃度の比較検討 

     

福島  達也、穂積  晃、千葉  恒、前田  純一郎、尾﨑  誠 

(長崎大学大学院医歯薬総合研究科医療科学専攻  展開医療講座  整形外科) 

         

これまでの研究で In vitro における骨髄脂肪細胞に Dexamethasone を負荷すると PAI-1 の遺伝子発現、分泌量が著明 に増加することが明らかになった。本研究の目的は in  vivo におけるヒトの骨髄内、および血液中の PAI-1をはじめとする 各種アディポカインの分泌量を測定し、さらにステロイド環境下におけるアディポカイン分泌の変化を検討することである。 

人工股関節手術の際にステロイド内服群とコントロール群におけるヒト血液及び骨髄液を採取し、Adiponectin、Leptin、

PAI-1 (plasminogen activator inhibitor 1)  の量を Enzyme Liked Solvent Assay (ELISA)を用いて測定した。血液と骨髄液中 の濃度を比較すると Adiponectin、Leptin には有意差を認めなかったが、PAI-1 では明らかに骨髄液中の量が多かった。

また Leptin と PAI-1 は血液中、骨髄液中ともステロイド内服群の方がコントロール群より高濃度であった。  PAI-1 は閉鎖 環境である骨髄内において高濃度で存在し、ステロイドによる影響を受けさらに高濃度となり、骨内血行動態への関与し ている可能性がある。 

 

1. 研究目的   

ステロイド投与群と非投与群において、ヒト同一個 体内における血液中及び骨髄液中のアディポカイン 濃度の比較検討を行い、体内のアディポカイン濃度 の及ぼすステロイド投与の影響について調査するこ と。 

2. 研究方法 

  対象は大腿骨人工骨頭置換術あるいは人工股関 節置換術を受けた患者 35 名で、特発性大腿骨頭壊 死患者のうちステロイド投与中の 15 例( S 群  )、およ びコントロールとしてステロイド服用のない変形性股 関節症患者 20 例の 35 例(C 群)である。なお関節リウ マチ、脂質代謝異常、B 型及び C 型肝炎ウイルス陽 性、CRP2.1 以上の患者は除外した。S 群は男性 3 例、

女性 12 例で平均年齢 57(29〜80)歳、Body mass  index (BMI)は  22.9(16.7〜29.1)kg/m2、ステロイド内 服量はプレドニゾロン換算で平均 10.5(2.5〜22.5)mg、

全例特発性大腿骨頭壊死症であった。C 群は男性 5 例、女性 14 例で平均年齢 63(43〜76)歳、BMI 23.5

(18.2〜28.5)kg/m2、全例変形性股関節症であった。 

一定の時間帯に行われた大腿骨人工骨頭置換術も しくは人工股関節置換術の手術中に静脈血及び骨 髄液をほぼ同時刻に採取し、3.2%クエン酸ナトリウム 0.2ml に血液、もしくは骨髄液 1.8ml の割合で混合し

た。それぞれの検体をすみやかに 4℃で遠心分離に て血漿分離し(3000rpm、15min)、-80℃にて冷凍保管 した。それらを検査時に解凍し、plasminogen 

activator inhibitor-1(  PAI-1  )、adiponectin、Leptin の各種アディポカイン分泌量を Enzyme Liked Solvent  Assay (ELISA)を用いて行った。各種アディポカイン 測定については以下の方法で行った。PAI-1 につい ては t-PA・PAI-1 複合体(検査方法;EIA、キット試薬;

LPIA・tPAI test、測定機器;ELISA・F300、販売元;シ スメックス株式会社  )及び total PAI-1(検査方法;ラテ ックス凝集法、キット試薬;LPIA・tPAI test、測定機 器;STACIA、販売元;三菱化学メディエンス株式会 社  )を用いて測定した。アディポネクチン(検査方法;

ラテックス凝集比濁法、キット試薬;ヒトアディポネクチ ンラテックス、測定機器;日本電子 BM-9030、販売 元;三菱化学メディエンス株式会社)、レプチン(検査 方法;二抗体法、キット試薬;HUMAN LEPTIN RIA  KIT、測定機器;γ-カウンター  AccuFLEX  γ-7010、

販売元;株式会社ミリアコーポレション)についても同 様に ELISA にて測定した。なお実験途中での ELISA キット販売中止のため t-PA・PAI-1 複合体について のみ S 群 13 例、C 群 19 例で調査した。 

なお PAI-1 については炎症が影響する可能性を考 慮して、CRP 陰性群(0.17 未満)のみについて同様に

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C-S 群間及び血液-骨髄液間において比較検討し

た。 

これらの測定結果を用いて血液中と骨髄液中それぞ れでの C-S 群間の比較検討、また C 群、S 群それぞ れにおいて血液-骨髄液間の比較検討を行った。統 計学的には血液-骨髄液間比較に Wilcoxon signed  –  rank test、C-S 群間の比較検討に Mann-Whitney  U test を用い比較検討し、危険率 5%未満を有意差 ありとした。 

3. 研究結果 

  血液と骨髄液中の Adiponectin を計測した結果、C 群では血液が平均 9.3(2.8-17.3)μg/ml、骨髄液が平 均 8.9(2.6-19.1)μg/ml であった。S 群では血液が平 均 9.3(3.1-22.8)μg/ml、骨髄液が平均 8.4(3.0-22.8)  μg/ml であり、血液-骨髄液間、C-S 群間比較にお いていずれも有意差を認めなかった(Fig1)。 

Leptin を計測した結果、C 群では血液が平均 5.6(1.1-25.9) ng/ml、骨髄液が平均 4.8(1.4-20.8)  ng/ml であった。S 群では血液が平均 13.2(3.4-40.5)  ng/ml、骨髄液が平均 11.2(4.2-32.8)  ng/ml であった。

血液及び骨髄液ともに S 群が C 群より 2 倍以上で有 意差を認めた(Fig2)。 

血液-骨髄液間においては C 群及び S 群とも有意差 を認めなかった。 

PAI-1 を t-PA/PAI-1 complex で計測した結果、C 群 では血液が平均 12.2(2.0-23.6) ng/ml、骨髄液が平 均 43.8(24.6-91.5) ng/ml、S 群では血液が平均 21.4(7.1-45.4) ng/ml、骨髄液が平均 67.8(23.3-100)  ng/ml であり、C 群及び S 群とも骨髄液中の濃度は血 液中の濃度に比べ、約 3 倍と著明に高値を示した。

C-S 群間比較ではともに有意差をもって S 群が高く、

S 群の骨髄液中の PAI-1 濃度が最も高い値を示す結 果となった(Fig3a)。 

  Total PAI-1 を計測した結果、C 群では血液が平均 17.4 (10-50) ng/ml、骨髄液が平均 81.7 (46-118)  ng/ml であった。S 群では血液が平均 35.1(10-79)  ng/ml、骨髄液が平均 90.8(42-173) ng/ml であった。

t-PA/PAI-1 complex 同様に Total PAI-1 では骨髄液 中の濃度は血液中の濃度に比べ約 4 倍と著明に高 値を示し、S 群の骨髄液中の濃度が最も高い濃度を 示した(Fig3b)。 

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また CRP 陰性群においては検体数が減少したことで C-S 群間での有意差は得られなかったが、血液中の 濃度に比較して骨髄液中の濃度は有意に上昇して おり、S 群の骨髄液中の濃度が最も高値を示し、CRP を考慮しなかった結果とほぼ同様の結果が得られた

(Fig4a,4b)。 

 

 

  4. 考察 

  近年 Adiponectin、Leptin、PAI-1 などの各種アディ ポカインの生理作用について様々な報告がなされて

いる。Adiponectin は脂肪細胞に特異的に発現してい る分泌蛋白で、2 型糖尿病発生抑制、動脈硬化抑制 作用8)を有し、メタボリックシンドロームと関連している ことが示されている20)。骨代謝において Adiponectin は破骨細胞の分化を抑制し、骨芽細胞の分化を促進 することが示されている9)。一方で Adiponectin は骨量 に負の影響を与え、高 Adiponectin は骨折リスク上昇 させ、また脂肪細胞の分化がステロイドにより増強し、

ステロイドと骨粗鬆性骨折の関連性を示唆する報告 などがある。Leptin は脂肪細胞により分泌される代表 的な摂食調節ホルモンであり、摂食抑制効果とエネ ルギー消費増加効果を示す21)。骨代謝においては Adiponectin 同様に骨芽細胞への作用による石灰化 や増殖分化を促進するとされる11)。PAI-1 は血栓症 や心血管疾患との関連性があるといわれ12)、骨への 影響については大腿骨頭壊死の危険因子で13)、グ ルココルチコイドが高いほど PAI-1 が増加し骨壊死の 要因となっていると報告されている14)。 

本研究では Adiponectin、Leptin のいずれも血液-骨 髄液間で差はなく、血液内と骨内環境に大きな差は ないと推測された。しかし Leptin については血液、骨 髄液とも明らかに S 群で高値を示しており、ステロイド による影響で何らかの全身的作用を及ぼしている可 能性が考えられる。レプチンは末梢では活性酸素種 の産生促進、血管新生作用など動脈効果促進作用 があるとされ10)、微小血管である糖尿病性網膜症に おいて血中及び硝子体中のレプチン濃度が上昇す ることが判明している22)。今回の結果では特に高値を 示すことはなかったが、硝子体同様に閉鎖環境であ る骨髄内ではステロイドによる影響や様々な細胞間 相互作用により微小動脈動態に関与している可能性 も否定はできない。詳細な作用機序解明には今後さ らなる検討が必要である。 

PAI-1 は tPA・PAI-1 複合体、Total AI-1 とも他のアデ ィポカインとくらべて明らかに血液-骨髄液間で骨髄 液中濃度が高く、さらに S 群が C 群より高値を示した。

肥満ラットにおいて血中 PAI-1 レベルは皮下脂肪より も内蔵脂肪蓄積量を反映すると報告されているが 23)、 今回の結果では血液よりも骨髄液において PAI-1 レ ベルは著明に高値を示すことが判明し、骨内におい ては骨髄脂肪細胞が影響している可能性が示唆され た。ヒト骨髄脂肪細胞において高濃度デキサメサゾン による骨髄脂肪細胞径が増大することが報告されて

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おり24)、ステロイドによる骨頭内圧上昇、毛細血管圧

迫等が骨壊死発生に関与している可能性が考えられ る。我々は閉鎖空間である骨髄内微小環境では血液 中と比較し、より循環動態の変化やステロイドによる 影響を受けやすく、骨髄脂肪細胞由来の PAI-1 が骨 壊死に関与していると考えている。今回の結果もその 仮説に矛盾しなかった。Ibrahim らはマウスによる放射 線照射後の活性 PAI-1 量を骨髄及び血漿において 検討しているが、閉鎖空間である骨髄の方が血漿より も PAI-1 の増加率が顕著であったことを示しており15)、 我々の仮説を支持するものであった。また Johnson ら の研究では28)マウスの骨髄間葉系細胞を分化させて 成熟脂肪細胞を発現させ、デキサメサゾンを添加した ところ骨芽細胞同化・破骨細胞抑制に働くとされてい る Leptin は減少し、骨量に負の影響を与えるとされる Adiponectin は増加し、脂肪細胞からの分泌が骨頭 壊死に関与している可能性がある PAI-1 は著明に増 加したと報告している。我々の結果では S 群で Adiponectin はわずかに減少し、Leptin は増加すると いう逆の結果であった。しかし PAI-1 は S 群で増加す るという同様の結果を認め、骨頭壊死に関与している 可能性が高いアディポカインであると思われる。 

本研究の限界としては手術時の検体採取のため検 体数に限りがあり、性差、BMI、日内変動、炎症値に より母集団を細かく区分できていないため、いくらか のバイアスがかかっている可能性は否定できない。し かし性差、BMI による検体間の大きな差は認めず、検 体採取時間は全例ほぼ同一時間に血液と骨髄液を 採取することで日内変動の影響を極力少なくした。ま た炎症性疾患が PAI-1 値に影響することも知られて おり、関節リウマチや肝炎ウイルス陽性患者、CRP2.1 以上、MRI 画像での骨髄浮腫を認める患者は除外し ており、炎症の関与を極力排除した。同一個体にお ける血液-骨髄液間において全例骨髄液の方が高値 を示し、CRP 陰性群のみの比較でも C 群より S 群が 高値を示した(Fig4a,b)。このことから PAI-1 濃度上昇 に炎症の関与はあるが、PAI-1 が微小空間である骨 髄内においてステロイドによる影響を受けやすいとい う我々の仮説を否定するものではないと考える。 

一方骨髄液採取に関しての手技的な問題として髄内 リーミングによる骨髄内出血による血液が骨髄液に混 入している可能性は否定できない。しかし血液が混 入して骨髄液濃度が希釈された状態において、血液

と比較して PAI-1 濃度が高いということは、純粋な骨 髄液であれば PAI-1 濃度がより高いことが推察できる。

また PAI-1 は骨髄脂肪細胞以外にも皮下脂肪、内蔵 脂肪、肝臓、血管内皮細胞等から産生され25)-27)、今 回骨髄から採取したものが全て骨髄脂肪細胞由来の ものを測定したものではない。しかし血液-骨髄液間 の比較において明らかな差を認めており、骨髄内の 脂肪占拠率や我々のこれまでの研究を考慮すると骨 髄脂肪細胞由来による差が生じた可能性が高いと考 える。 

5. 結論 

  ヒト骨髄液と血液中の各種アディポカインについて 比較検討を行った。ヒト in vivo 生体において、

Adiponectin と Leptin の血液中と骨髄液中の濃度は 同等であったが、PAI-1 は骨髄液中の濃度は血液中 より有意に高かった。ステロイド投与によりレプチンと PAI-1 は血液、骨髄液ともに増加していた。PAI-1 の 増加は血栓症や心血管疾患と関連することより、ステ ロイドによる骨内の PAI-1 増加は骨壊死発生の重要 な因子であるかもしれない。 

6. 研究発表  1. 論文発表 

なし  2. 学会発表 

なし 

7. 知的所有権の取得状況  1. 特許の取得 

なし 

2. 実用新案登録  なし 

3. その他  なし   

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