論文内容要旨
論文題名 日本における医療経済性を考慮した抗がん薬治療選択に向けた 研究 ~大腸がん術後補助化学療法のレジメン別費用最小化分析および 認知機能低下の評価法確立について~
専攻科目名 薬学専攻 医薬品評価薬学 氏名 髙田 昂輔
内容要旨
日本の医療費は年々増加しており, 特にがんに対する医療費の増加が 著しい. がん薬物治療に関連する医療費には治療費だけでなく, 認知機能 の低下などの副作用が発現した際に生じる介護費があり, さらに家族が 介護する場合には経済損失もある. 認知機能低下の副作用に関しては, 海 外にて報告されているが, 具体的な抗がん薬や日本人でも起こり得るか は明らかではなく, さらに日本人に対する抗がん薬投与による認知機能 低下の評価法も確立されていない. 医療費増大の状況から, 抗がん薬の治 療選択の際に有効性と安全性に加え, 医療経済性も考慮することが推奨 されている. そこで本論文では大腸がん術後補助化学療法のレジメン別 費用最小化分析および抗がん薬投与に伴う認知機能低下の評価法確立に 向けた検証を実施した.
大腸がん術後補助化学療法に関する実際の医療現場の費用データを 収集し, 費用最小化分析を実施した. CapeOX 療法 (カペシタビンとオキ サリプラチン) と
mFOLFOX6
療法 (5-FU (フルオロウラシル), LV (ℓ-レ ボホリナート), およびオキサリプラチン) の総費用はオキサリプラチン を含まない5-FU/LV
療法, UFT (テガフール, ウラシル)/LV 療法, カペシ タビン療法, およびS-1 (テガフール,
ギメラシル, オテラシル) 療法より も100
万円以上高額であり, これはオキサリプラチンの副作用に対する薬 剤費よりも, オキサリプラチンの薬剤費に起因することがわかった. 費用 最小化分析の結果, 費用対効果はCapeOX
療法とmFOLFOX6
療法にお いては同等であり, S-1療法およびカペシタビン療法ではUFT/LV
療法よ り優れていることがわかった.日本人における抗がん薬と認知機能との関連性を調査するための認知 機能の評価法確立に向けて, 第一段階として健常な日本人を対象に海外 で推奨されている神経心理検査のウェクスラー成人知能検査第
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版, MiniMental State Examination, Trail Making Test A and B, Controlled Oral
Word Association Test,
および針溝ペグボード検査を臨床心理士などの専門家ではない検査者が実施し, 認知機能の評価法を検証した.
各検査の所要時間および複数検査時には
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分以内ならば集中して検査 を受けられることがわかった. 検査点数の結果より非専門家による検査 の実施においても専門家と同様の結果を得られる可能性のある検査方法 がわかった.本論文では大腸がん術後補助化学療法における実際の医療現場に基づ いた各レジメンの費用対効果を明らかにし, 抗がん薬投与と認知機能低 下との関連性を明らかにするための認知機能の評価法確立に向けた有用 な情報を示した. これらのことは日本における医療経済性を考慮した抗 がん薬治療選択のための新知見である.