論文内容要旨
題名:集中治療センターにおける作業療法的介入に関する研究 -質的調査を通じて-
所属領域名:精神障害リハビリテーションとケア領域専攻 氏名:駒場 一貴
目的:集中治療センターにおいて、心身の安静が必要であり、意識障害や種々の禁忌事項 のある事例に対し、作業療法士はどのように作業療法を展開し、期待する作業療法の特有 な介入方法はどのようなものかを聞き出し、救急医療の中で働く作業療法士の現状を把握 することである。
方法:東京都、神奈川県に所属する三次救急医療病院において、集中治療センターに従事 した経験のある作業療法士 8 名に半構造的面接を実施した。収集したデータを、グラウン デッド・セオリー・アプローチを参考に質的帰納的に継続的比較分析を行った。
結果:【機能面に視点を置く、理学療法士と相似した関わり方】を中心とするカテゴリーと し、《患者との関わりの困難さ》、《目に見えにくい作業療法の特色とその期待》、《医師・看 護師・患者・家族からの期待》、《作業療法士としてのアイデンティティを見出すことへの 葛藤や諦め》、《できることへの対応》、《医療者としてのアイデンティティの確立》という7 つのカテゴリーが抽出された。集中治療センターで働く作業療法士は《患者との関わりの 困難さ》がある状況で、患者に対し【機能面に視点を置く、理学療法士と相似した関わり 方】にて訓練を展開していた。作業療法士は《目に見えにくい作業療法の特色とその期待》
と《医師・看護師・患者・家族からの期待》とを考慮し、配慮しなければならなく、理想 と現実のギャップを経験し《作業療法士としてのアイデンティティを見出すことへの葛藤 や諦め》を感じながら働いていた。そして作業療法士は患者に対し今《できることへの対 応》をし、一方で《医療者としてのアイデンティティの確立》を新たに見出していた。
結論:【機能面に視点を置く、理学療法士と相似した関わり方】という現象は、作業療法士 の職業アイデンティティ喪失に繋がるものであり、作業の視点のない介入はアイデンティ ティの構築に悪循環を及ぼしている現状がある。これらの改善のためには、作業療法の有 用性に関するエビデンスの構築が必要であるが、作業の視点が基盤にあることを忘れては いけない。そのため、まず作業療法士養成課程時の教育法の見直しを検討し、呼吸・循環 機能の教育強化から、作業療法士が何をする職種であるのかを明確に教育していくことが 大切である。更に救急指定病院で働く作業療法士の育成から、作業の視点の見える化を図 った、救急医療に携わるために必要な作業療法独自の評価、訓練プログラムの作成が必要 である。