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黄表紙の「大通」: その作品と用例

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

黄表紙の「大通」: その作品と用例

園田, 豊

北九州市立大学 : 名誉教授

https://doi.org/10.15017/4776828

出版情報:語文研究. 130/131, pp.213-225, 2021-06-02. 九州大学国語国文学会 バージョン:

権利関係:

(2)

はじめに

近世文学史上、黄表紙の嚆矢とされる『金 きん〳〵せんせいゑいぐわ』(安永四(一七七五)年刊)が、好評を以って迎えられた要因の一つとして、洒落本の絵双紙化という発想があったことは、今さら贅言を要すまい。しかし、周知のごとく、黄表紙は洒落本の絵双紙化にとどまらなかった。それ以前の絵双紙本来の幼童向けの金太郎や桃太郎、浦島太郎等の昔話や、見越入道、河童等の化物咄をはじめ、その他様々な題材も、黄表紙に多くの豊かな発想や趣向を与えた。ただ、こうした作品群も、その中に、洒落本の「通」や「大通」「野暮」を登場させることとなった。何しろ、当時は「大 通の世の中」「めつたむせうに大通〳〵」(ともに『菊寿草』(安永十(天明元・一七八一)年刊))といった、江戸の世情である。当世風俗を描く(うがつ)ことを主題とする、黄表紙を含む諸戯作の特性からしても、それは当然のことであり、それらの用例は、枚挙に暇ないことは想像に難くない。それ故であろうか、これまで、黄表紙に描かれる「通」や「大通」「野暮」について、実際に作品を調査し、考察を加えたものは無かったように思う (注。本稿は、その取り掛かりとして、「大通」の語が認められる黄表紙について、その作品名や用例を列記したものである。

園 田   豊 黄表紙の「大通」 ― その作品と用例 ―

(3)

一  「大通」の語が見られる黄表紙作品一覧

以下、外題・柱題および作品中に「大通」の語が見える作品名と用例を、刊行年順に列記してみる(これらは、あくまでも、管見の及ぶ範囲で集めたものであることを、お断りしておく)。さて、各作品に登場する「大通」の用例は想像以上に多様である。よって、紙数の許す限り、解説を加えることとした。なお、作品名を記すにあたり、①  角書のルビは〈  〉内に記した。②  題名について、原題簽がないものや原本が所蔵不明のものは、後題簽や柱題、小説年表類等 (注に記されるものを[  ]内に記した。③  作者・画工の署名がないものは、同じく小説年表類等に記されるものを〔  〕内に記した。④

◇をれが大通といふ男にしてやろう(元服を迎えた桃太        桃太郎後日噺朋誠堂喜三二作恋川春町画 もゝらうにちばなし 〇安永六(一七七七)年 字に直し、句読点を補った。   用例には、◇を冠した。原文は、平仮名書きを、適宜漢 〇安永七(一七七八)年 郎が、鬼にも元服させる場面)

お花半七かいてやうやくの遊合 あい

者張堂少通辺人  作   北尾政演  画◇詮議のため、大通となつて〇安永八(一七七九)年曲 すゞめだいつうせんせい   文渓堂  作   鳥居清経  画◇むす〳〵公も俺が大通に仕込んでやりましやう大 だいつうじんあなさがし   市場通笑  作   鳥居清長  画◇またその上を大通人となりて暮らしたき事を願ふ◇大通人の、とふり者の、といへば、博変でもしているか、遊んでばかりいる者の様に思ふ者あり◇大通といふは新しき事にあらず◇とかく、心に角なくして笑って暮らすを大通とも、通り者とも、いふなり〇安永九(一七八〇)年大 通一寸廓 くるわちやばん   作者不明

  〔勝川春朗

  画〕◇およそ昼三は昼三とし、座敷持ちはそれ同志に表向きは美しく、内心は良からぬものなりと、大通が言われしが、これも茶かしらん

  太郎兵衛りうぐうのまき   窪田春満  作   北尾政美  画

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始まりける〇安永十(天明元・一七八一)年

栄花程五十年蕎麥價五十銭みるがとくいつすいのゆめ〈ゑいぐはのほどはごじうねん  そばのあたへはごじつせん〉朋誠堂喜三二  作

  〔北尾重政

  画〕◇所がら世間の大通と出合もできず

圓通誓大通光うんはひらくあふぎのはな〈えんつうのちかひ  だいつうのひかり〉朋誠堂喜三二  作   北尾政演  画※書名の他には、文中に「大通」の語は見られない。

 つけ   當世  作   旭光  画◇大通出立をあつらゆる◇殿様もこれから大通だよ◇助六と改め、大通となつて

大通時代ちんの娵 よめいり〈だいつうじだい〉市場通笑  作

  〔鳥居清長

  画〕※書名の他には、文中に「大通」の語は見られない。大 たいつうしんなかいり   市場通笑  作   画工不明◇まこと有りて、天然と大通人の心意気、最もおびたゝしき大通人がた、この三人も仲間入り當 とうせいだいつうぶつかいてう   芝全交  作

  〔北尾重政

  画〕※書名の他には、文中に「大通」の語は見られない。 ◇こゝに浦山太郎兵衛とて大通人なる者(冒頭)金銀先生皆運先生ちうの印 ほしはなし〈きん〴〵せんせい  かいうんせんせい〉作者不明   勝川春章  画◇我こそわ、ちりすで天の大通星 ぼしよしなん星 せいといふ星なり(主人公の夢に、この星が出る)大 だいつうそのをもかけ   常盤松  作   鳥居清長  画◇今は吉原の大通にて、奈良茂と、もてはやしける◇いよ〳〵大通の悟りを開きけり◇三囲の社内へ石碑建立し、なをも大通の遊山所にもてはやし大 だいつうやまいり(袋入)   當世  作   菱川春童  画◇世に大通を十八と限る事、曽て知らず(中略)大通山入といふ事、絵草帋になそらへしも、十八大通の正真を知らしめんと(序文冒頭)※『大通太平記』と記された本箱の画。怪 ばけものひるねのいびき   市場通笑  作   鳥居清長  画◇お前は、是非、大通にしてあげやしやう おなかの中能 よひ〈もちとさけ〉女嬪堂  作

  〔鳥居清長

  画〕◇大通神これを聞き、知らぬふりにもなりがたく◇事まろくして角の取たる人を大通とは、この時よりぞ

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ほかにはなひぞやこくつうじんのゆらひ   伊庭可笑  作   鳥居清長  画◇極めて大通人にて洒落のめし◇今の世の中は酒屋の樽拾いまでも大通人なり◇大通人となりて親の勘気まで受け

本性酩暑ありかたいつうのいち〈ほんしやうめいしよ〉是和齋  作

  〔勝川春朗

  画〕◇抑 そも〳〵ゆびきりまるといふハ大 だいつう十八年ミへのエヽねエのとし◇大通納言金持 (注

もゝんぢいはなが挫 ひしげ   市場通笑  作   鳥居清長  画◇子ども衆までも、何の面白くもない化物と安くさせ、無性やたらに大通〳〵と洒落やがる◇近頃は、兎角大通とやらばかり、お慰みあそばし〇天明二(一七八二)年七 しちふくじんだいつうでん   伊庭可笑  作   北尾政演  画◇是を大通天と崇め奉る◇近い頃は大通大く、御山風にて、脂下りと言ふ事を流らせ給い◇大通天の御利益也けり四 てんわうだいつうたて   是和齋  作   勝川春朗  画◇四天王の大通を集め◇大通の内に飼はれし馬なれば 夫ハ小倉山是ハ鎌倉山かげきよひやくにん一首 しゆ〈それはおぐらやま  これはかまくらやま〉  朋誠堂喜三二  作

  〔北尾重政

  画〕◇大通にして不善をなすものをさして景清と称すること(序文の冒頭)◇今此太平大通の御代に◇円通百体と大通百人の出合はおもしろい擲 たゝきうちはなのうへ   岸田杜芳  作   勝春山國信  画◇大通は細見をかへりみずと申ます化 はけものつうじんのねごと   作者不明   北尾政美  画柱題は、上巻一丁のみに「ばけもの大通」とある。◇うつとしい程、大通の初物がぶらつく◇大通は使ひたくても、ちやんを一文もうける術を知りませぬ〇天明三(一七八三)年

昔時通神當時通神さんらうてんじやうめぐり〈いにしへのかよふかみ  いまのよのつうのかみ〉  朋誠堂喜三二  作

  〔北尾重政

  画〕◇世の中大通となりて◇いかに三太郎、汝、大通となりたくば(中略)兎角天上を見た上で無ければ大通にはなられぬ◇今、女郎買いをやめては、半通にて大通には、なし難し◇大通の講釈をして

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◇三太郎は大通の奥義を悟り、剃髪して[絵艸紙年代記 (注] 岸田杜芳  作   北尾政演  画◇いざ立寄て見て行ん、年経ぬる趣向と新しき大通と、合鏡のうら明々書写(序文の冒頭)◇大通に仕立てる

大通天皇野暮親王あやまつたか歟大 ひのもとの和功 いさをし〈だいつうてんわう  やぼしんわう〉朋誠堂喜三二  作   〔北尾重政  画〕◇人王大通六代の天子のいみ名をすごひとゝ申奉り(中略)すなわち大通天皇と申奉り(冒頭)◇もろこしの半通王、日本の大通天王大通を以て世を治め給ふことを伝へ聞き◇日本の大通、博奕を好むよし◇大通の公家たち通 つうじんこゝろちがひ   市場通笑  作   勝川春潮  画柱題「大つう」◇甚三衛門、大通の心持ち◇武家方の大通とはいふなり◇百姓の内の大通なり◇職人の大通なり◇商人の大通なり◇息子株の大通なり ◇娘の大通なり◇女郎買いの大通なり◇これ、この道の大通也(「この道」とは、祭りのこと)(主人公は様々に大通を説き、人々にもてはやされるが、最後は、若い通人にやり込められる)右通慥而うそしつかり多雁 がんとりてう〈みきのとをり  たしかに〉奈蒔野馬乎人  作   忍岡(喜多川)歌麿  画◇大通の仕舞は鈍通には劣つたものだ◇大通国には大やうに、銭金万とまき散らし模 もん   志水燕十  作   画工不明◇なま大通のなれのはて◇大通人おゝくの中で (注

〇天明四(一七八四)年狂 けうけんすきほなだいめう   岸田杜芳  作   北尾政美  画◇殿には大通の相が見へますれ共、あまり野暮にてわたらせ給ふ

生徳芋助見徳夢助ことぶきそふのみやうやく〈しようとくのいもすけ  けんとくのゆめすけ〉   古阿三蝶  作・画◇お頭大通人の仰せを受け、荘子が悟りし胡蝶の夢の気味合いに、夢を見せたは、おいらが狂言全 ぜんせいだいつう   櫻川杜芳  作   北尾政演  画

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◇されば将門が切りたる髻を所の人、神に祝ゐて、本田大通神と敬いける従 それから夫以 らい   竹杖為軽  作   喜多川歌麿  画◇大通来たつておはぎを食らふ◇末世にいたり大通の一式、両国にて開帳◇南無大通〳〵

夫は本歌是は狂哥まんざいしうちよらいれき   恋川春町  作・画◇おれも大通だわな

天竺本覺日本隨縁さんごくいちだいつうほん〈てんちくのほんかくは  につほんのいきま〉  飛田琴太  作   古阿三蝶  画◇佛に圓通あり(中略)凡夫に大通あり。亦有難と称す(中略)釈氏もいつしか大通の道に入給ふ(序文)◇今、日本にて大通の道を以て天下を治めしより新 につつうせん戦記    四方門生  紀定丸  作   喜多川歌麿  画◇ 大通といふ字を、国府の葉に、墨黒仕立てに書き付け

はちだいもゝろう〈さい〳〵はなにたり  とうねんつもって〉古阿三蝶  作・画◇似たやまは真通に至り、半可は大通に登り◇むかし大通天王の御宇に不 あんばいそくせきりやう   山東京伝  作   北尾政演  画◇忠信も大通ゆへ ◇(閻魔は)今は大通とならせられ能 よひこんたん   四方門人  新社  作   勝川春潮  画◇大通元年の頃かとよ(文頭)◇大通庵つうや(人物名)◇大通何ぞ細見を見ずとも昼三の事なり吉 よしわらだいつう   恋川春町  作・画◇知らぬ大通尋ね来たる◇当時、名ある大通を、天通が通力にて呼び集めければ、(中略)これをや、吉原大通會ともいふべけれども

料理献立あたまてん天 てんにくちあり〈りやうり  こんだて〉四方山人  作   勝川春潮  画◇高砂町に大通庵が讃めし

留守居大通家老大蔵それみたありかたやま〈るすいのたいつう  かろうのたいぞう〉  飛田琴太  作   古阿三蝶  画※書名の他には、文中に「大通」の語は見られない。〇天明五(一七八五)年元 ぐはん賣鋸 のこぎりあきない

恋川好町  作   歌麿門人千代女  画◇伴内が兄貴鷺坂左内は、たつた一字違つた斗で、とんだ大通なれば

爺山柴刈婆川洗濯おにがいわやだいつうはなし〈ぢゝはやまへしはかりに  ばゝはか

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はへせんたくに〉朋誠堂喜三二  作   喜多川行麿  画◇今では日本中が大通だから鬼の岩屋だとつて、まんざらの不通でもねへのさ◇久米の仙人の師匠かぶ、大通仙人、雲中に現れて曰く◇童子いよ〳〵身を慎しみ、真の大通となり、一期栄へける[大 だいつうはこいりかんしやく(注〔恋川春町  作・画〕〇天明六(一七八六)年

新建立忠臣蔵てんとうだいふくてう〈あらたにたつる  ちうしんくら〉朋誠堂喜三二  作   北尾政美  画◇天は是大通の親玉、御油断はなし、と云々〇天明七(一七八七)年亀 さんじんいへのばけもの   朋誠堂喜三二  作

  〔北尾重政

  画〕◇大通の美男と見ゆるゆへ、いよ〳〵うぬとなる茶 ちやちやのめのからかさ   芝全交  作

  〔北尾政演

  画〕◇大通初会に遊ばず。赤恥をかくに何ぞ武士の刀を用いん三 すじだちきやくのきうへ   山東京伝  作   北尾政演  画◇おそらくこれほど大通な客人はあるまいと〇天明八(一七八八)年 會 くわいつううぬ惚照 子   山東京伝  作   北尾政演  画◇それがすなはち通り者、此道の大通といふなるべし今 こんにちげんきんのゆしやう   山東鶏告  作   北尾政演  画◇その頃の髪も本田の大通天皇にてまし〳〵首尾松見越松ゆきおんなさとのはつさく朔〈しゆびのまつ  みこしのまつ〉山東唐洲  作   喜多川歌麿  画◇大通がたのお心には、まだ生息子の買習ひ仁田四郎ひとあなけんぶつ〈にたんの  しろう〉山東京伝  作   北尾政演  画◇大小名、我劣らじと、大通を行ひける中に◇大通にしてやりたきと◇かの男はいよ〳〵仁田を大通に仕立てんと〇寛政元(一七八九)年一 いつぴやくさんじやういもごく   山東京伝  作

  〔北尾政演

  画〕◇わいらは、大通の胸を焼けさせた罪で、こゝへ来たは。ちつと通り者になれ孔 こうじまときあいそめ   山東京伝  作   北尾政演  画◇大 だいつうの天 窓にひとしく、聖 せいだいの時 ときいたれるかな(序文)

甚句義経しんしつせいもんさくら〈そのくも  よしつね〉山東京伝  作   北尾政演  画

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◇源平、鎬を削つて、大通を好む折から〇寛政二(一七九〇)年

地獄一面かゞみの子浄 じやう〈ぢごく  いちめん〉山東京伝  作   北尾政演  画◇幸いこの度、娑婆から大通の罪人二人来りければ(中略)出来立てほや〳〵の珍説を聞給ふ

先時怪談はなはみよしいぬはぶち〈せんじ  くはいだん〉山東京伝  作   北尾政演  画◇大通は、くち (ママ・「ろ」か)仕立の犬となる[染直大名縞]  録山人信普  作   栄松斎長喜  画◇大通、小亭に遊ばずと云ふから、屋敷中の女どもを総揚げにして

太平記吾妻鑑たまみがくあをとかぜに   山東京伝  作   喜多川歌麿  画◇昼夜を分かず、万民、稼ぐを大通なりと流行りければ冷 ひやつこいくみたてせいすい   山東京伝  作   〔北尾政演  画〕◇平家方は都育ちゆへ、皆大通・色男なり〇寛政三(一七九一)年

勧請新神名帳はつひやくまんりやうこがねのかみはな〈きやうでんくはんじやう  しんじんめいちやう〉  山東京伝  作   北尾政美  画◇此時、縁の綱大きに短くなり、大通の羽織の紐ほどになる 世 よのなかしやけんのゑ   山東京伝  作   菊亭主人  画◇浮かれ出たる大通仏。大千世界の花道の壬生狂言唐本寝言なをしてよむけんだいはぎ〈みぶきやうげん  とうほんのねごと〉芝全交  作   式上亭柳郊  画◇如 何是 これ。西 せいらい。達 だるだいつうは九 ねんだんまり言の。其 それ勢。佛 ぶつほうの大 だいだうを悟 さとらしむ(序文の冒頭)〇寛政四(一七九二)年浮 うきからくりめんじうめん   芝全交  作   歌川豊国  画◇昔は大通、今は面 めんつう、汝 うぬは不通だ〇寛政六(一七九四)年

夫は水虎是は野狐なしぐさふでのわかばへ〈それはかつぱ  これはきつね〉山東京伝  作

  〔北尾重政

  画〕◇見倒地獄の古金買に見せても、大通と見へます工 くめんめん面壁 へき師大 だいつう   森羅亭  作   北尾政美  画◇達 だるたいつうあしの葉 ならぬ口 くちの端 に乗 のつて参 まいると云爾(序)◇直指人心、大通豪勢だらふ◇手前から大通と印果して◇大通小亭に遊ばすと〇享和元(一八〇一)年人 ひとこゝろりやうめんずり   十返舎一九  作

  〔十返舎一九

  画〕◇羽二重ずれの大通が(序文)

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〇享和二(一八〇二)年

市川團蔵的中狂言はやわざしちにんまへ〈いちかはだんぞう  あたりきやうげん〉山東京伝  作

  〔北尾重政

  画〕◇狐が大通と変はり〇刊年不詳(《  》内は、『改訂日本小説書目年表』に示される刊行年)大 おふこわばかしい   青楼白馬  作   北尾政演  画《安永八年刊か》◇大通にならん事を願ふべし◇いよ〳〵箱根の先に住んで、たゞ世を観じて暮らせしは大通〳〵大 通成茲止   二水山人  作   柳々山人郊子  画《天明五年刊か》◇当時、大通と申事、殊の外流行いたす(中略)以来、大通御法度が候間◇御寺には大通仏

からかさはじまり觴〈から  やまと〉  作者不明

  〔蘭徳

  画〕《天明八年刊か》◇大通時代の頃、唐土のずっと山奥に(冒頭)[兄弟大通榮 (注] 作者・画工ともに不明

  《天明三年刊か》

[金 (注] 伊庭可笑  作   勝川春常  画◇當世、大通の世の中に、強いものゝ親方と言っては、金銀より外なし◇なんぼ形、格好大通でも、無い奴は、本のない通なり(いずれも序文)[大通 (注]作者不明   勝川春常  画◇是は、大通散といふて、たちまち子をあらしむる◇夫婦とも大通散を飲み、若やぎ、男子出生する◇大のやの通太郎ゆへ、みな〳〵大通〳〵と呼ぶ[大つう (注

(注]社楽斎萬里  作   勝川春朗  画◇こゝに大通院祐呑とて尊き修験者あり。至って世間広く大通の付き合をしける(冒頭)[大通間違曾我 ((

(注]〔朋誠堂喜三二  作   北尾重政  画〕

  《安永九年刊か》

たるたいつうはなみのもうせん   桜川慈悲成  作   歌川豊国  画《寛政十年刊か》※書名の他には、文中に「大通」の語は見られない。[當世大通豆]  作者不明   蘭徳斎  画◇節分大通豆、言い売らせけるに

(11)

◇名代〳〵、評判の大通豆[化物大通記 (注

(注] 作者不明

  〔鳥居清長

  画〕《天明八年刊か》

見たきものばけもの物樂 がくてう   山東鶏告  作

  〔北尾政美

  画〕《天明七年刊か》◇それ、大通は狐と変はり、狐は大通と変はる理屈なり◇こんくはい、頻りに大通になりたくなり◇こんくはいが通を待ちかねて、この葉通一袋にて、大通を極めしより、化物ども大間違いになりたり無    恋川春町  作・画   天明元年刊か◇大通の羽織、長きこと、三尺八寸五六分◇武ザ客、大通となり、あさぎ裏、ふたゝび世にいづる

二  黄表紙評判記に見える「大通」の用例

中野三敏氏曰く、近世における戯作評判記というものは、それ自体が決して自律的な批評精神の発露によるものではなく、評判記そのものがすなわち一つの戯作であったと考えるべきなのであろう。(下略)すなわち近世における戯作評判記は、何よりもまずそれ 自体が一つの戯作として読まれるべきものであること (注

(注(下略)この意見に賛同する筆者としては、黄表紙評判記の「大通」についても、一覧に加えることとし、以下にその用例を挙げた。(その中で、第一章に挙げた用例と重複するものは省いた)。『菊寿草』(安永十(天明元・一七八一)年刊)・開口部にみられる「大通」〇それ鱗はこけ也。こけはすなはち不通なり。今天下に大通の道行はれ、こけはさら〳〵入用なし。〇貴賤上下ひつくるんで、皆大通へみちびかんと、こけやうろこは此方へせしめうるしと出かけたり。〇今われ鱗 うろこを得たるかはりに大通の奥 おう義をさづけん。〇この大通のまき物は、汝 なんぢがための天 てんげんつう、芝居通の頭取となつて、そのよしあしを定むべし。〇夢 ゆめさめて、かたへに一つの巻物あり。これ大通の巻物ならん(中略)これも又夢にして・『桃太郎一代記』を評して〇十八大つうのあまつ風、今吹 ふきかへす初 はつはるの新板、かはりませぬ一代記 、頭 とうどりせうよりことしの巻 くはんぢく、又と開 かいてうはかないませぬ。(「頭取」の言葉)

(12)

〇(右の「頭取」に対して)この大通の世の中へ、長〳〵と五冊ものゝもゝ太郎でもあるめェ。気がちがつたか頭取(「わる口」の言葉)〇(右の「わる口」に対して)御不 しんは御尤。それ絵 ざうは人のなぐさみ草 ぐさにして、よろづの子だからのおしえともなるべきを、めつたむせうに大通〳〵とて、間男のて引、女郎かいの伝授、芝 しばの穴しり、にくまれ口のしやればかり。(「頭取」の言葉)『岡目八目』(天明二(一七八二)年刊)・発端にみられる「大通」〇大通事〳〵とよぶ声なまりて、大通人〳〵とはねければ〇大通人答て曰、そのまあ主が高 かうまんの四角 かくな文 といふ奴 やつ

が、近 きんねんもつての外の禁 きんもつ、一たびその字 をよむ時は、大通変 へんじて不通 つうとなり、女郎にふられ、虱 しらみにたかられ、貧 びん

ぼうがみの氏子と成、出 しゆつせゑいぐはは思ひもよらず。〇論 ろんより證拠、大通の奥 おうをしるせしわれらが秘 しよ、色事でも甘 うまごとでも、何でもこつちへ黄 いろべう、凡 およそ一百廿有 ゆう八巻 くわん、天 てんもひゞけとよみ上たり。(ここで発端終わり)この『菊寿草』開口部、『岡目八目』発端には、「今天下に大通の道行はれ」「貴賤上下ひつくるんで、皆大通へみちびかんと」「大通の奥 おう義をさづけん」「この大通のまき物は、汝 なんぢが ための天 てんげんつう」「これ大通の巻物ならん」(以上、『菊寿草』)や、「大通の奥 おうをしるせしわれらが秘 しよ(中略)凡 およそ一百廿有 ゆう八巻 くわん、天 てんもひゞけとよみ上たり」(『岡目八目』)等の、一見、「大通」の批判、うがちを離れた、礼讃めいた言辞も見られるが、これは元来、温かさをもって対象を讃めることが基本姿勢である評判記であってみれば、特に矛盾を感じることはあるまい。なお、残る一つの黄表紙評判記『江戸土産』(天明四(一七八四)年刊)の序、跋には、「大通」の語は見られなかった。

三  『

すゞめだいつうせんせい』(文渓堂作、鳥居清経画、安永八(一七七九)年刊)について

この作品は、管見では、『大通人穴扖』とともに、外題に「大通」を付した最初の黄表紙である。『金々先生栄花夢』の好評を受けて、洒落本を粉本にして書かれた何作かの黄表紙の一つである。本作について、早くは、和田博通氏が「『菊寿草』前後」(浜田義一郎編『天明文学

資料と研究』(東京堂出版、一九七九年刊))の中で、「主要部分は『遊子方言 (注

(注』の全くの模倣に過ぎない」(五九頁)と、紹介されている様に、この作品に登

(13)

場する大通、令息株、女郎のせりふは『遊子方言』のものをそのまま使用している箇所がある。筋においてもそうで、主人公の千幸は、ろくでもない仲間たちから「通人の先生〳〵」と呼ばれ、「我こそ世界に一人の通と心得」、自らを大通と思い込んでいる半可通で、その彼が裕福な米商、八木屋の令息留三郎を大通に仕込んでやろうと吉原へ出かけ、千幸はやたらと通人ぶった挙げ句、女郎に大きに振られ、一方、留三郎は大いにもてる。ただ、この後は『遊子方言』とは違い、留三郎を恨んだ千幸が、地廻りに留三郎を思い切り打たせるが、たまたま通りかかった叔父が留三郎を救う。そして、最後は、留三郎が女郎を請け出し、夫婦となって、黄表紙風にめでたく終わる。一方、書名に「大通先生」とありながら、当の千幸は、その後、登場せぬままに終わる。このように、本作品は、洒落本を単に絵双紙化した、初期の黄表紙の一典型といえよう。ただ、第一章の用例からも分かるように、この後、黄表紙の中で、「大通」は多様な趣向を持って描かれるようになるのだが、それについては、今後、考察していきたい。

注1「「通」の発生」(中野三敏『戯作研究』(中央公論社、一九八一 年刊))三九三頁に、黄表紙の外題にある「通」「大通」についての言及がある。注2麓『』(⑥、房、刊)『黄  前・中・後・』(

注9本書は題名不詳のため、柱題を仮題とした。 注8本書は題名不詳のため、柱題を仮題とした。 書名が掲載される。 注7て、明。   重出版書目』および『黄表紙總覽前編』を参照)されている。 た、載( 注6本書について、原本は所在不明。『改訂日本小説書目年表』 の十丁ウラ末尾の翻刻から抜粋した。   注5て、は『』( 年代記』と記される。 注4は、詳。は『 の序文の翻刻および解説から抜粋した。   注3て、は『』( 一九八六~一九九四年刊)を参照した。 481)~(4)店、

10本書は題名不詳のため、柱題を仮題とした 書名が掲載される。 11て、明。 書名が掲載される。 12て、明。 三頁。 13中野三敏『江戸名物評判記案内』(岩波書店、一九八五年刊) 14田舎老人多田爺作、明和七(一七七〇)年刊。

(14)

参考文献〇幸堂得知校訂『校訂  黄表紙百種  全』(博文館、一九〇一年刊)注『』(

文学全集 〇浜田義一郎・鈴木勝忠・水野稔校注『黄表紙川柳狂歌』(日本古典 一九五八年刊) 59店、

  博『前・中・後・』(   〇『大田南畝全集第七巻』(岩波書店、一九八六年刊) 八二・一九八九年刊)   彦『巻・』(社、 〇中野三敏『江戸名物評判記案内』(岩波書店、一九八五年刊) 〇中野三敏『戯作研究』(中央公論社、一九八一年刊) ~(四)、続巻一・二』(社会思想社、一九八〇~一九八五年刊) 胤・宇彦・中尚・棚『江(一) 房、一九七七年刊) 麓『』(⑥、   記念文庫〇『 善本叢刊第五巻黄表紙集』(汲古書院、一九七六年刊)大東急 〇『青本絵外題集Ⅰ・Ⅱ』(貴重本刊行会、一九七四年刊) 46、小学館、一九七一年刊)

48

(1)~(4)、青裳堂書店、一九八六~一九九四年刊)〇『  』(社、二・九三・二〇〇一・二〇〇四年刊)子・彦・注『』(学大系

編『』( 83、岩波書店、一九九七年刊)

〇アダム・カバット『江戸化物の研究』(岩波書店、二〇一七年刊) 九九八年刊) 77店、 用させていただきました。御礼申し上げます。 加賀文庫所蔵本、国立国会図書館所蔵本等、諸機関の資料を利 稿り、に、館・

(そのだ  ゆたか・北九州市立大学名誉教授)

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