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Questionnaire Newest Information Technique up-to-date 1 2 3 4 5 6 Interview Complication 整形外科診療のNBM 7 7 8 「運動器の10年」世界運動 “汗牛充棟”この一冊 科研製薬からのお知らせ

2010

総括コメント

堂前 洋一郎

(新潟県立新発田病院副院長) 1 4 2 3 10 8 9 6 7

[症例]

[回答者からのコメント] 5

Q

uestionnaire

・調査対象:全国の整形外科診療に携わる勤務医・開業医 ・調査方法:郵送調査 ・有効回収数:50票(100%) ・設問法:定量調査 ・調査実施日:2009年10月20日∼11月25日

下記,

大腿骨近位部骨折の

治療法選択についてお答えください

調

全国の整形外科医

50

名に聞いた,アンケート調査による診療の実態

93 歳,女性。腰椎の後弯が強いが特記すべき内科疾患はない。受傷前は, 外出はできないが,屋内では ADL は自立していた。深夜トイレにいこうとして 転倒し受傷した。 右大腿骨頸部外側骨折と思われます。ご高齢ですが屋内で はADLは自立していたようですので,骨接合術施行により 早期離床を考えます。CHSかガンマネイルかは術者の慣 れているほうでよいと思います。 CT所見より,大転子部の粉砕骨折の可能性のある大腿骨 転子部骨折と診断されます。受傷前のADL状況より,強固 な固定と早期歩行訓練が好ましいと判断され,かつできる だけ侵襲度の低い手術方法が好ましく,腰椎麻酔下でのガ ンマネイル固定を選択します(手術時間20分程度)。ただ し,大腿骨近位部の骨梁欠損が広範であれば,ネイル周囲 に骨セメント注入の併施も考えます。 骨粗鬆症が強い症例であり,基本的に内固定が難しい症 例と考えられます。X線所見では頸部骨折のように思われ ますが,CT所見では内側は転子部に達し,外側は骨頭下 での骨折であり,いわゆる内外側の骨折と考えます。当院 では,角度可変式のヒップスクリューを用いており,その つば付きのものを用いて骨折部および骨頭内へも人工骨 移植を行います。さらにCCS(cannulated cancellous screw)を追加して回旋を制限するようにしています。ガ ンマネイルはこういった症例では用いません。ラグスクリュー が1本であり,すぐに回旋してあっという間にcut outし ます。高齢ですが全身的に許されるなら人工骨頭置換術 を選択するのもよいと考えます。ただし,大転子に骨折が 及んでいることが多いので大転子部をワイヤーで締結す ることが必要です。手術的には内側骨折に行う人工骨頭 置換術よりも難しいですが,術後は痛みが早くとれてリハ ビリが容易でしょう。結論としては,CCS+つば付き角度 可変式ヒップスクリュー(骨頭,骨折部人工骨移植)または, 大転子の締結あるいはケーブルプレートなどを用意して のセメント型人工骨頭置換術となります。骨粗鬆症が強い のでノンセメントは使いません。 大腿骨転子部骨折不安定型であり,大腿骨近位ネイルに よる骨接合術を選択します。亀背が強いようですが,通常 の牽引手術台で対応できると思います。骨折部からネイル を入れることになるので,中枢骨片を押しやらずに,刺入 部のリーミングをするように注意が必要です。牽引手術台 でも整復不良の場合や骨折部の破壊が強い場合は人工骨 頭置換術を選択しますが,出血量が増えるなど全身への 影響が心配です。 骨折は大腿骨頸部から頸基部にかけて及んでおり,CT 所 見では小 転 子 の 高さまで及 んでいるようで P F N A (proximal femoral nail antirotation)など,2本スク リューを挿入できるガンマネイルによる骨接合術を選択 します。Multiple Pinningは刺入部での骨折や過度の telescoping が心配で CHS+CCS(cannulated cancellous screw)でもよいと思いますが,ガンマネイ ルのほうが手術時間も短いですし,telescopingも少な いのではないかと考えます。人工骨頭は骨盤後傾も強く, 大転子の骨折もありそうなので,体力的に可能であれば ツバイミューラータイプのものを選択するでしょう。 人工骨頭置換術を選択しましたが,合併症がある場合に は手術を行いません。 転子間骨折ですが,ほとんど内側骨折に近く大腿骨頭の 骨壊死の可能性があり,高齢のため早期離床が必要なこ とが人工骨頭置換術を選択した理由です。骨粗鬆症が高 度のため骨セメントを使用すべきです。 93歳ですが,ADLが自立していたとのことなので,早期 離床,ADL の再獲得を目標に,手術療法を第一選択とす べきでしょう。不安定な骨折型と,CT所見での骨質の低下 から強固な内固定は期待できないと考え,人工骨頭置換術 がよいと思います。ただし,内側の欠損が遠位に及んでい る可能性もあり,機種などの選択には注意を要するでしょう。 特記すべき内科疾患がなく屋内ではADLが自立していた とのことで,可及的早急に手術を行い,自分で動ける状況 にしてあげることがまず大切と考えます。その方法として, 骨セメントを使った人工骨頭置換術を選択します。1時間 前後で手術が終わり,翌日から全荷重可能であり,人工股 関節置換術(THA)よりも脱臼しにくく,それほど活動性 が高くないと思われることがその理由です。術中に臼蓋側 をみて悪いようならTHAでもよいかもしれません。 一般状態・家族の希望により治療法を選択します。一般状 態はよさそうなので手術とするか,あるいは侵襲を考えて ピンニングによる固定か(あまり効かないと思われますが) といった選択になると思います。  大腿骨近位部骨折は,社会の高齢化に伴ってその数は 増加しており,また,その発生率も増加してきている。寝た きり原因の第 2 位を占めており,その発生予防と治療につい ては多くの整形外科医が関心をもつ必要がある。治療に関 しては 2005 年に日本整形外科学会から『大腿骨頚部 / 転 子部骨折診療ガイドライン』が刊行され,参考にされる方が 多くなってきた。これらの骨折の治療原則は受傷前の状態 にいかに早く戻すかということである。成績を上げるには手 術方法の検討,手術時期の問題,固定器具の選択にかかっ ていると思われる。  今回のアンケート結果で,保存的治療を選択する方がい なかったのは 93 歳と比較的高齢であるにもかかわらず,合 併症がなく受傷前は ADL が自立していたことが大きな理 由であろう(コメント  )。また,保存的治療を選択すると疼痛 が残って歩行能力が低下し,ADLの再獲得は難しいと考え, 積極的に手術療法の選択をしたと思われる。  この症例の骨折型を頸部骨折とみるか,転子部骨折とみる かが手術方法の選択に大きくかかわると思われる。CT所見で は関節内から関節外にかけての骨折線があり,転子部骨折と とった方が多く,64%の方が骨接合術を選択したものと思われ る。骨接合術の方法として3/4の方が大腿骨近位ネイルを選 択し,残りの1/4の方がCHSを選択されたのは近年の傾向で あろう。前述のガイドラインによれば固定器具による術後の成 績に差はなく(EV level Ⅰ b),術者の習熟度の高い固定器具 を選択すればよいと思われる(コメント  )。骨粗鬆症が強く, ネイルが効かない場合にはセメントなどの補てん材料を使用 した骨接合術を選択するか(コメント  ),整復位が保てない 場合や,骨折部が粉砕されていて不安定なためネイルのcut out が起こりやすいなどの状況によって,人工骨頭置換術を 選択される方もいた(コメント    )。  一方,頸部骨折とした方のなかで,骨接合術を勧めると いう方もおられ,ピンニングなどでは侵襲は少ないものの固 定性に問題があると考えていた(コメント  )。また,合併症 として大腿骨頭壊死の発生を考慮しなければならない。多 くの方は人工骨頭置換術を選択していた(コメント   )。 当初から人工股関節置換術(THA)を選択している方はな く,その理由としてTHAは人工骨頭置換術より脱臼しやす い,手術侵襲が大きいなどを挙げられていた(コメント  )。 臼蓋側を観察して悪いようならTHAでもよいとの意見もあっ た(コメント  )。機種の選択においては,多くの方は骨粗 鬆症があるためにセメント使用の人工骨頭を選択していた。 セメントレスタイプでは遠位固定型のステムを選択する方も いた(コメント  )。  いずれの選択肢を選ばれた方も,大腿骨近位部骨折の治 療原則(なるべく早期に受傷前の状態に戻し,寝たきりにさせ ないこと)を踏襲しており,患者さんのために最善の治療を選 択する臨床医の気持ちを感じることができた。アンケートにご協 力いただいた先生方に深謝いたします。 1 10 2 5 3 4 7 9 9 8 9 6 図1. X線写真(正面像) 図2. X線写真(側面像) 図3. CT どのような治療を行うか? 骨接合手術では どの方法を選択するか? 人工骨頭置換術

34

64

骨接合術 2% その他 0% 保存的治療 0% 0% 人工股関節置換術 27% 73% CHS (Compression Hip Screw)など 大腿骨近位ネイル (ガンマネイルなど) Multiple Pinning

(2)

 抗血栓薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を内服し ている患者では手術前に休薬期間が必要とされ ており,多くの施設では術前待機期間を設けざる を得ないのが現状である。我々は骨折手術につ いて2007 年 1月より抗血栓薬の内服の有無に関 わらず,入院後早期に手術を行うようにしている。  2005 年 1 月∼ 2008 年 12 月の期間でガンマネ イルによる骨接合術を施行した大腿骨転子部骨 折症例 477 例中,抗血栓薬を内服していた94 例 (19.7%)を,術前休薬期間を設けた31 例(A 群) と術前休薬期間を設けなかった 63 例(B 群)に 分け,周術期ヘモグロビン値の推移,術中出血量, 手術時間,輸血量,輸血率,在院日数について 比較検討した。  平均年齢は A 群 85.1 歳,B 群 86.7 歳で有意 差を認めなかった。手術までの待機期間は,A 群が平均7.9日,B群が2.3日で有意差(p<0.0001) を認めた。術前のプロトロンビン時間国際標準比 (PT-INR)は,A 群で平均 1.08,B 群で1.20と 有意差を認めなかった。術中出血量は,A 群で 平均51.9mL,B群で53.2mLと有意差を認めなかっ た。周術期における輸血量は,A 群で平均 0.83 単位,B 群で0.38 単位と有意差を認めなかった。 しかし,輸血率ではA群で31例中10例の32.3%, B 群で63 例中 8 例の 12.7%の確率で,A 群のほ うが有意に(p < 0.05)輸血率が高かった。周術 期のヘモグロビン値の推移では,術前・術直後・ 術翌日・術後 5日・術後 10日それぞれで有意差 を認めなかった。在院日数では,A 群が平均 25.8 日,B 群で22.5日と有意差(p <0.05)を認めた。  抗凝固薬のワルファリンに関しては,手術当日 にPT-INR が正常化するように(1.5 以下),術前 3 ∼ 4日間中止するというように中止時期・基準が 明確となっている1)。しかし,抗血小板薬の術前 休薬期間に関しては,5 ∼ 15日間といったあいま いな表現の報告が多く,さらに PT-INR のように 抗血栓機能を客観的に評価できる検査法が普及 していないため,各医療機関により中止時期・基 準がまちまちとなってしまっているのが現状である。  また,麻酔科医・内科医の早期骨折治療に対 しての理解が得られていないことが多いこと,術 前の合併症精査に時間がかかってしまうこと,手 術室を自由に使用できる施設が少ないことや,手 術機材が常備されている施設が限られていること も早期手術を困難にしている原因と考えられる。  抗血栓薬内服症例の早期手術において,最も 危惧されるものは出血に関する合併症であろう。 しかし,抗血栓薬内服患者の早期手術における 出血に関する合併症の報告をまとめると,有意に 輸血量が多かったとの報告はあるが,出血に関 する合併症で死亡したという報告は渉猟し得た 範囲では存在しなかった。  それに対して休 薬そのものの危 険 性として, Wahl2 )の,歯科治療のために抗血栓薬を休薬 した 493 例中の 5 例に重症塞栓症が発症し 4 例 が死 亡したとの報 告がある。また,アスピリン・ ヘパリン・ワルファリンは投与中止により凝固系 が活 性 化するというリバウンド現 象があることも 明らかになっており,加えて手術侵襲は凝固系 を活性化するため,安易な投与中止は慎むべき との報告3 )もある。  我々は,これらの報告と今回の自験例を踏まえ, 大腿骨転子部骨折手術では早期手術における 失血死の危険性よりも,休薬による塞栓症・手術 待機による肺炎・褥瘡感染等の合併症による死 亡の危険性のほうが高いと考え,待機期間を設 けない早期手術を実施している。

N

ewest

I

nformation

第42回日本整形外科学会 骨・軟部腫瘍学会学術集会

図1.

silenced Yamato-SSの多分化能(間葉系・血球系分化実験)

大阪府立成人病センター整形外科 

中 紀文

「滑膜肉腫は幹細胞性疾患か?」

 滑膜肉腫は若年成人の四肢関節近傍に好発し, 軟部肉腫の10%を占める比較的頻度の高い悪性 腫瘍である。組織型は大部分が biphasic typeと monophasic fibrous typeに分類され,biphasic typeでは肉腫でありながら上皮様の腺腔構造を 併せもつことから,carcinosarcomaとも呼ばれて いる。18 番染色体とX 染色体の相互転座が特徴 的な異常で,その結果生じる融合遺伝子 SS18-SSX が滑膜肉腫の主たる発症要因と考えられて いる。滑膜肉腫という名称は組織像が滑膜と似て いたことから命名されたが,病理学的に滑膜由来 説は否定され,その組織起源は不明とされてきた。  新規に樹立した2つの滑膜肉腫細胞株に対し, RNAi(RNA干渉)の手法を用いて融合遺伝子 SS18-SSX の発現を低下させることでその機能 を抑 制し ,滑 膜 肉 腫 の 起 源 細 胞 の 探 索を試 みた。  初診時より肺転移を有する青年男性患者の滑 膜肉腫 2 例から倫理委員会の承認下でインフォー ムドコンセントを得て ,新 規 滑 膜 肉 腫 細 胞 株 Yamato-SSとAska-SSを樹立した。SS18-SSXに 特異的な2種類のsiRNA(small interfering RNA)

を化学合成して導入し,SS18-SSX silencingに伴 う滑膜肉腫細胞株の形態変化,多分化能の変化 を観察した。  2 つの細胞株はいずれも10%FBS mediumで 紡錘型細胞が接着形態をとって増殖するが,20% FBS,非接着性プレート上では浮遊状態となり, sarcosphereを形成した。SS18-SSX silencingに より,細胞形態は浮遊系から接着系に変化した。 spheroidを形成する能力は自己複製能の指標と されることから,滑膜肉腫の癌化過程において, SS18-SSXは起源細胞の自己複製能を高めている と考えられた。  間葉系への分化実験で2 つの細胞株は骨・軟 骨への分化能を示したが,脂肪への分化能は観 察できなかった。SS18-SSX silencingにより,いず れの細胞株も骨・軟骨への分化能が増強し,新 たに脂肪・マクロファージへの分化能が観察され た(図 1)。このことから,滑膜肉腫の起源細胞が 間葉 系 幹細胞よりも少し上位の多 能 性幹 細 胞 (multipotent stem cell)であり,滑膜肉腫が幹 細胞に融合遺伝子SS18-SSXが発現することで生 じた悪性腫瘍である可能性が示唆された。

第35回日本骨折治療学会

小島 岳史

宮崎大学医学部整形外科1)

森 治樹

1)/社団法人宮崎市郡医師会病院2)

福元 洋一

2)

柏木 輝行

2)/医療法人社団橘会橘病院3)

帖佐 悦男

1) 3)

背 景

対象と方法

結 果

考 察

背 景

目 的

対象と方法

結果と考察

「抗凝固薬・抗血小板薬内服患者の大腿骨転子部骨折に対する早期手術療法」

文 献 1)青崎正彦:抗凝固薬・抗血小板薬を服用中の患者に外科的処置 をするには.JIM 3:419-421,1993

2)Wahl MJ : Dental surgery in anticoagulated patients. Arch Intern Med 158 : 1610-1616, 1998 3)並木昭義,他 編:日常診療に役立つ血小板・血液凝固線溶と周 術期管理.東京,真興交易株式会社医書出版部,137-156, 2004 骨への分化 軟骨への分化 脂肪への分化 マクロファージへの分化

「抗凝固薬・抗血小板薬内服患者の大腿骨転子部骨折に対する早期手術療法」

「滑膜肉腫は幹細胞性疾患か?」

(3)

図1 ソフトウェアでの三次元形状評価

技術の解説

技術の解説

注意点

注意点

成果と成績

成果と成績

適応と禁忌

適応と禁忌

図3 回旋角度の自動算出 図4 術中写真

Technique up-to-date

 人工膝関節置換術(total knee arthroplasty;TKA)では,正確なインプ ラント設置が臨床成績における最重要因子となる。従来のインプラント設置は 標準的な骨形状をベースとした画一的な角度設定が一般的であったが,我々 は以前からTKAの三次元設置位置評価および術前計画を行ってきた経験から, 日本人の骨形状は多様であり,画一的な設置概念・設置法では目標設置角度 が得られない症例が多く存在することを認識して報告してきた。今回,我々はコ ンピュータを用いて術前に詳細な骨形状を把握し,おのおのの骨形状に合っ た設置角度をオーダーメイド的に決定する術前計画システムと,術前に決定し た設置角度を術中に正確に再現する手術支援システムを開発し臨床応用して いるので,その実際について解説する。 新潟医療センター整形外科診療部長 

佐藤 卓

ソフトウェアでの術前手術器械シミュレーション画像

TKAにおける

手術器械連携型三次元術前計画システム

A:各スライス画像と三次元画像により,骨立体形状の詳細な評価が可能 B:インプラントを設置した状態の三次元画像。 任意の角度から形状適合性の確認が可能 IM ロッドに垂直な仮想平面に投影された後顆軸と インプラント横 軸 のなす角が手 術 器 械に設 定する 回旋角度となる。 A:IMロッド刺入点決定 B:指定の深度までIMロッド挿入 C:3DアライメントガイドをIMロッドに通し,後顆パドルで後顆軸 を参照した状態で回旋角度をインジケータで決定 A:IMロッドの挿入シミュレーション。内外反角と挿入深度が算出される B:IMロッド刺入点決定用ターゲットデバイス C:3D アライメントガイドの設置シミュレーション。予定アライメントで挿入 されたIMロッドに通した状態で回旋角度をインジケータで指定すると,内外 反・屈曲伸展・回旋すべてのアライメントが決定する D:解析パラメータの詳細 図2 A C B 大腿骨 IMロッド インプラント 横軸 横軸 インプラント 横軸 外旋角 後顆軸 IMロッドに対する垂直平面 大腿骨インプラント A B A B C D 1.本法の特長・利点 ①個々の骨形状に合わせた三次元的なインプラ ント設置角度が設定できる。 ②専用手術器械を術前計画と連携させ,その制 御(器械の設置状態・角度調整)も個々の骨 形状と予定インプラント設置角度に合わせて計 画し,術中にはそれを計画通りに使用するオー ダーメイド型手術である。 ③従来のナビゲーション手術に要した特殊な光 学器械・トラッカーピン,さらにそれらによる手 術時間の延長や不要な侵襲の増大がない。 ④市販のナビゲーションシステムに比べて大幅に 安価である。 2.手順(必要機器・施行風景) (1)CT撮影∼術前計画(インプラント設置位置決定)  術前にCT撮影を行い,画像データを専用ソフト (JIGENTM,レキシー社)にダウンロードする。画面 には各スライス画像と三次元画像が表示され,骨 の立体形状を把握する(図 1A)。この骨表面上 の指定された何点かの特徴点を任意の画面上で 指定することで,インプラント設置角度決定の基準 となる参照軸(各機能軸,transepicondylar axisなど)が自動的にインストールされる。次にイ ンプラントの種類とサイズを選択すると,すでに 標準的位置に設置された状態で画面に表示さ れるので,そこから個々の骨形状に合わせて操 作者がアライメントを三次元的に調整し決定す る(図 1B)。 (2)術前計画(手術器械制御)  インプラント設置位置が決定すると,大腿骨の 髄内アライメントロッド(IMロッド)の挿入シミュレー ションを行う。この際,従来は画一的な方法で挿 入していたIMロッドを,本法では決定したインプ ラントの設置角度に合わせて挿入する。すなわち, 矢状面ではIMロッドは予定の遠位骨切り面と常 に垂直となるように自動設定されており,冠状面 では髄腔形状に合わせて内外反角度を調節する。 そして先端が髄腔の前方皮質と接触するまで挿 入し,その位置での刺入点と挿入深度,遠位骨 切り面に対する内外反角が自動算出され保存さ れる(図 2A,B,D)。実際には,この操作のほと んどが自動で行われ,操作者が要する時間は慣 れれば数分である。回旋角度決定に際しては, 画面に表示された IMロッドに垂直な平面上で, 大腿骨内外側後顆の参照点 2 点のみを指定す ることで,大腿骨後顆軸と大腿骨インプラントの 横軸のなす角が自動算出され保存される(図 3)。 これにより,後顆軸を参照して同軸からIMロッド の回りに予定の角度外旋させることができる器械 (図 2C)を用いることで計画通りの回旋設置角 度が得られる。 (3)手術  上記の各算出値を術中に再現する専用器械 (図 2A∼C)の調整値をあらかじめ個々の術前 計画通りに設定しておき,術中はそれに従って器 械を骨に設置することで術前計画通りの骨切り が可能となる(図 4)。  本法はほぼすべての TKA 症例に適応され, 特に大腿骨の bowing が強い症例でもロッド深 度の調整によって正確な骨切りと前方ノッチの予 防が可能である。しかし,骨幹部に高度な変形 があり,IMロッドの挿入が不可能な症例は原則 禁忌となる。  変形性膝関節症症例 30 膝を対象として本法 を用いて TKAを行い,術後は三次元下肢アラ イメント測定システム(KneeCASTM,レキシー社) により三次元設置角度評価を行ったところ,術 前の目標設置角度と術後測定角度の平均誤差 は内外反で 1.2±0.5 度(最大 1.8 度),屈曲伸 展で0.8±0.5 度(最大 1.5 度),回旋で1.6±1.0 度(最大 2.8 度)であった。なお,前方ノッチを 生じた症例はなく,全膝で術前の計画通りのサ イズであった。この結果は,これまで報告されて いるナビゲーションシステムによるTKAの三次元 設置位置成績と比較しても全く遜色なく,むしろ 優位であった。  CTを用いたシステムすべてにいえることである が,CT 情報は関節の残存軟骨の存在が加味さ れていない。後顆関節面を参照した大腿骨イン プラントの回旋角度決定においては,内外側い ずれかの後顆に軟骨が多く残存している場合, 予定角度より1 ∼ 2 度過外旋(もしくは過内旋)と なることがある。その際は,残存軟骨を除去する か器械の設定外旋角度を1 ∼ 2 度増減するなど の対処が必要となる。

(4)

 当院では,膝・股関節疾患に特に力を入れて 診療を行っています。  手術は膝・股関節疾患を中心に年間約 900 件行っております。人工膝関節置換術が年間約 170 件,膝前十字靱帯再建術が年間約 150 件で, 膝蓋骨脱臼・半月板手術など膝に関する手術が 全体の 95%を超えます。手術件数は年々増加し, 今では 3ヵ月先まで予約待ちの状態です。  一方,下肢(股・膝・足)以外の手術は行っ ていません。脊椎や手など膝以外の疾患で受診 する患者さんも多数いらっしゃいますが,手術の 適応と考えられる患者さんは我々の知り得る人脈 を生かし,市内・県内はもちろんのこと,全国の スペシャリストに紹介しています。「我々自身がで きる最高の医療」ではなく,「患者さんにとっての 最高の医療」を提供する担い手として,各分野 の専門医と連携した医療を実践したいと考えて いるのです。また,救急医療も行っていません。 市内近隣に,救急医療を得意とする医療機関が 複数存在しているためです。  外来診療は主治医制とし,全経過を通して同 じ医師が治療にあたるのを原則としています。数 年経って他の部位の疾患で再受診された患者さ んでも,可能な限り前回と同じ医師が担当するよ うにしています。気心の知れた同じ医師に診ても らえることが患者さんにとっては話しやすく安心で きるようです。  このように,当院では専門的な医療を提供す る一方で,大きな総合病院などでは難しい「ホー ムドクター」的な要素も合わせもつ医療機関を目 指しています。これは,私の祖父・父・兄たちが 個人の開業医で,親身になって患者さんの話を 聞く医師の姿を子どものころから理想としてきた ことによります。  また,当院では患者さんと医療スタッフの間が 他人行儀にならないよう「患者様」ではなく「患 者さん」と呼ぶよう徹底しています。「患者様」「○ ○様」などと呼ぶ医療機関も増えているようです が,私どもは「○○さん」と呼ばれたほうが,患 者さんが打ち解けて親しく話をしてくれるように 感じています。  当院の 2 人の医師がサッカー部出身という縁も あって,仙台市に本拠地を置きJリーグに加盟し ているプロサッカーチーム『ベガルタ仙台』のチー ムドクターを任されています。シーズン前には当院 で選手全員のメディカルチェックを行い,ホーム・ アウェイを問わず担当医が試合に帯同しています。  また,プロ野球チーム『東北楽天ゴールデンイー グルス』のチームドクターも務めています。  負傷したプロスポーツ選手が治療のため来院 することが多いのですが,院内ではスター選手だ からといって特別扱いしないようスタッフには徹底 していますし,患者さんにも協力いただいて,選 手たちが治療に専念できる環境を整えています。  当院では手術を下肢に限定しており,特に膝 関節の手術が圧倒的に多いのが特徴です。そ のため,看護師・リハビリテーションスタッフともに 膝疾患の患者さんの病態や治療に習熟しており, 各医師の治療方針もよく理解していますので,素 晴らしい医療チームが形成されていると思ってい ます。手術では,同一手術(例えば人工関節置 換術)であっても,用いる手術器具には医師ごと に好みや癖があります。当院手術室の看護師は, 医師によって異なる手術機械を誤りなく準備し, 医師達が最高の手術を遂行できるよう気配りをし てくれます。  さらに,手術に際しては機械出しの看護師が 各医師の手順を知ったうえで,阿吽の呼吸で必 要とする機械を渡してくれます。  病棟の看護師は,下肢手術患者の看護をよく 理解しており,術前術後の指導・観察に万全な 体制を心がけています。リハビリテーションスタッ フは医師ごとの術後のリハビリプログラムを熟知 したうえで,各々の患者さんに合った丁寧なリハ ビリを提供してくれます。なお,スポーツ選手など の場合はスポーツジムのトレーナーが参加し,筋 力トレーニングの指導を行うこともあります。  このようにパラメディカルスタッフが優れた力を 発揮できるのは,やはり当院が下肢の治療に特 化した医療機関だからだと思います。あえて狭い 領域の治療に特化することにより,外来・手術室・ 病棟・リハビリのスタッフも,下肢疾患に対する深 い理解と知識を得ることができるのだと思います。  また,医師らによる月2 回のレクチャー(血栓症 の予防・リハビリ指導の実際など)もスタッフのス キルアップに大いに役立っています。  仙台市は東北大学のお膝元であり,市内には 公立・私立ともに大きな総合病院が多く,整形 外科領域でも脊椎・手・肩・外傷などの分野に 優秀な専門医が集まっているという恵まれた医療 環境にあるため,当院では我々の専門領域に集 中することができます。当院には医師・看護師・ リハビリスタッフ・その他医療スタッフのいずれも, 膝・股疾患に関しては最高のメンバーが揃って いると自負しています。この素晴らしいスタッフとと もに,これからも専門性を追求してスキルを磨き, 患者さんにとって最良の医療を提供できるチーム を目指したいと思っています。

下肢疾患に精通したパラメディカルスタッフ

本間記念 東北整形外科(医療法人社団 杏泉堂) 仙台市北部に位置する「本間記念 東北整形外科」には, 高度な下肢手 術( 特に人 工 関 節・靭 帯 再 建 術 )を 求 めて 全 国 から患 者が 来 院 する。 2006年9月には同院の隣に「本間記念 仙台北整形外科」を開院して 外来診療を拡充するなど, 地域医療へのさらなる貢献を目指す。 〒981-3121 宮城県仙台市泉区上谷刈4-9-22 TEL:022-371-5511 http://www.tohokuseikei.com/ 院長 院長 本間 哲夫氏

下肢領域に特化した「専門医療」と

主治医制による「かかりつけ医療」の両立

プロスポーツチームの

チームドクターとして地域に貢献

エキスパートなスタッフとともに

最高の医療を提供する

(宮城県仙台市

宮城県仙台市)

杉田 健彦先生 佐々木 啓先生 活気があり, 明るいリハビリ室  院長の本間哲夫先生(写真)は,東北大学整形外科講師を経て,1993 年 12 月まで NTT 東北病院整形 外科部長として活躍された後,手術療法を中心とする「本間記念 東北整形外科」を設立した。開院当時は 故 若松英吉先生(東北大学名誉教授)を名誉院長に迎え,医師 3 名による専門性の高い整形外科診療を スタートさせた。開院から 16 年余り過ぎた現在も,整形外科医 5 名と麻酔科医 1 名,さらに熟練した医療 スタッフが卓越した専門医療を続けている。温かい人柄で患者さんやスタッフが厚い信頼を寄せる本間院長 に,病院の特長や取り組みについてお話を伺った。 院長 本間 哲夫氏

(宮城県仙台市)

小暮 敦史先生 前田 郁雄先生 兼子 忠延先生 杉田 健彦 (前・仙台整形外科病院副院長) (元・東北大学整形外科助教授)   前田 郁雄 (前・宮城社会保険病院整形外科部長) 佐々木 啓 (前・東北厚生年金病院整形外科部長) 小暮 敦史 (前・平鹿総合病院整形外科) 兼子 忠延 (前・東北労災病院麻酔科部長) (元・東北大学麻酔科助教授) 当院の常勤医師 整形外科 麻 酔 科

(5)

医療法人行岡医学研究会行岡病院理事長

行岡 正雄

線維筋痛症患者におけるしびれおよび知覚障害

FMのしびれ

はじめに

下肢のしびれ

 FMの上肢(手)のしびれの原因として頸椎疾患のみなら ずTOS, DP, ENが複合して病態を複雑にし, double crush, triple crushとして強い臨床症状を呈していることが多い。  下肢のしびれも同様に, 胸腰部疾患に加えて梨状筋症候 群, ENが複合して症状を呈していることが多い。

図1.

FMの診断基準(米国リウマチ学会,

1990)

1)松本美富士:線維筋痛症の疫学. 線維筋痛症ハンドブック, 西岡久寿樹 編. 東京, 日本医事新報社, 56-69, 2007 2)行岡正雄, 他:結合識炎症候群を伴った絞扼性神経障害. 日手の外科会誌9:433-436, 1992 3)行岡正雄, 他:Fibromyalgiaを合併した胸郭出口症候群. 日手の外科会誌14:472-475, 1997 4)行岡正雄:線維筋痛症における上肢(手)のしびれについての検討. 厚生労働科学研究費(免疫アレルギー疾患予防・ 治療研究事業)研究報告書:58-59, 2005 5)行岡正雄:Primary Careからの病態解析に関する研究. 厚生労働科学研究費補助金(線維筋痛症研究事業)分担 研究報告書:26-27, 2004 文 献

上肢のしびれ

FMの治療

 線維筋痛症(fibromyalgia syndrome;FM)は,全身の広範囲の疼痛と 特徴的な圧痛点を有する原因不明の疼痛疾患である。図 1に米国リウマチ学 会(1990)のFM 診断基準(分類基準)を示す。FMは,理論的にはあらゆる 整形外科疾患に随伴し,疼痛,抑うつ状態,睡眠障害,疲労,過敏性腸症候 群,しびれなどの様々な不定愁訴を伴うことが多い。本稿のテーマはFMのしび れであるが,例えば正中神経領域のしびれがあり,手根管症候群の臨床所見 を呈している症例で,同時に上半身や下半身に疼痛症状(例えば強い肩凝り 症状や腰痛など)が存在し,加えて不定愁訴が合併していれば,FMに随伴し た手根管症候群を念頭に置き治療戦略を考える必要がある。  FMの随伴症状としてしびれを訴える頻度は高い。松本によるFMの全国疫 学調査では64.8%にしびれを合併していた1)。しびれを訴えるFMではまず頭部, 頸部 MRIなどの精査を行うことが必要である。次いで末梢の精査に移る。FM では原因不明のしびれも存在するが,詳細な検索でしびれの原因が特定できる 場合も多い。  1988∼2002年の間に当院を受診した上肢(手)に明確なしびれ(知覚異常) を呈した FM 症例を検討したところ,しびれの原因として,絞扼性神経障害 (entrapment neuropathy;EN),胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome;

TOS)およびその合併例が高頻度に認められることが判明した2)3)。そこで2003 年当院を受診したFM55 例中しびれを呈した18 例(32.7%)についてその原因 を検討した。 1.対象・方法  FM55例中しびれを呈した症例は18例であった。このうち頸椎疾患によりしび れを呈した3例,知覚神経損傷によりしびれを呈した1例を除いた14例において, EN,TOS,下垂肩症候群(droopy shoulder;DP),ならびにその合併例の 出現頻度および治療成績について調査した。 E N の 診 断:神経伝導速度(inching法)にて診断を行った。 TOS の診断:自覚症状を有し,TOS の誘発テストで2 つ以上陽性のものを TOSと診断した。 DPの診断:頸椎側面にて第2胸椎が撮影されているものをDPとした。  また,全例に99mTc骨シンチグラフィーを施行した。 2.結 果 ① 14 例中11 例はDP,TOS,ENの単独または重複合併をしており,3 例(21.4 %)は原因不明であった。 ②11 例中6 例は単独で,内訳はDP 3 例,TOS 2 例,EN 1 例であった。他の 5 例の重複例の内訳はDP+TOS 2 例,TOS+EN 2 例,DP+EN 1 例で あった。 ③ ENは4 例すべて手根管症候群であった。そのうち2 例に手術を行い,手根 管内の滑膜所見は1例がfibrosis,1例が炎症所見を呈していた。 ④99mTc 骨シンチグラフィーを施行したところ,主として胸肋鎖骨部への異常集 積は14例中10例(71.4%)に認められ,EN症例4例では全例に異常集積を 認めた。 ⑤治療成績:1 例を除き,全例に非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の投与を 行い,症例によってワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピ ン®),抗うつ薬,サラゾスルファピリジン,クロナゼパムなどの投与を行った。 TOSには3 例にTOSバンドを使用し,2 例に手根管解放術を行った。また全 例に運動療法を奨励した。平均16.3ヵ月の追跡調査期間で,評価を【優:疼 痛消失またはほとんど消失】,【良:Visual analog scale(VAS)2分の1以 上の改善】,【可:VAS 2 分の1 以下の改善】,【不可:不変および悪化】と すると,優3例,良9例,可2例,不可0例という成績であった3)。  下肢のしびれも上肢と同様に血行障害や胸腰部疾患(腰椎椎間板ヘルニア, 腰部脊椎管狭窄症など)のほか,梨状筋症候群や足根管症候群などのENの 合併を念頭に置き診断を進める。梨状筋症候群については,2003 年度に当院 を受診したFM64 例中9 例(14.1%)に坐骨神経痛症状とFreiberg 症候陽性 所見を認め,梨状筋症候群を合併したFMと診断した。2例は腰椎椎間板ヘル ニアの術後に出現しており再発が疑われたが,MRI所見では特に問題がなかっ た。他の7例はMRIにて圧迫所見があったが,MRI所見から推測される症状よ り非常に強い下肢症状を呈していた。FMは2例が関節リウマチ,1例が強直性 脊椎肥厚症,1 例が多発性付着部炎の二次性 FMで,残り5 例は一次性 FM と思われた。治療は全例にFMの治療を行い,3例に坐骨神経ブロックを行った。 結果は2例で疼痛はほぼ消失し,残りの7例はVAS 2分の1以上の改善をみた。 FMに合併した梨状筋症候群の治療はFMの治療と坐骨神経ブロックなどの保 存療法を,まず最初に行うことが重要と思われる。  表 1にFMの治療を列記したが,FMに合併したしびれの場合,FMの治療 を行いながら同時にしびれの治療を行う。99mTcにて異常集積を呈するFMの 治療では,FMには効果がないとされるNSAIDsやサラゾスルファピリジンの投 与が効果的な場合がある。 ①NSAIDs, ステロイドなどは無効 ②抗うつ薬(特にアミトリプチリン塩酸塩にエビデンスがある) ③ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン® ④トラマドール塩酸塩筋注+アセトアミノフェン内服 ⑤トロピセトロン塩酸塩 ⑥クロナゼパム ⑦ガバペンチン ⑧pregabalin(日本にて治験中) ⑨その他, 抗不安薬, 漢方薬などもエビデンスはないがよく使用される ①運動 ②self-efficacy ③認知行動療法

表1.

FMの治療

●薬物療法 ●非薬物療法 1.3ヵ月以上続く上半身,下半身を含めた対側性の広範囲の疼 痛と頸椎,前胸部,胸椎,腰椎のいずれかの疼痛,いわゆる axial skeletal painが存在する。

2.全身 18ヵ所の圧痛点のうち11ヵ所以上に圧痛が存在する。 圧痛点(18ヵ所):圧迫の強さは4kgで行う 後 頭 部 : 下 顎 部 : 僧 帽 筋 : 棘 上 筋 : 第 2 肋骨: 外側上顆: 臀 部 : 大 転 子 :   膝   : 後頭下筋付着部(左右) C5-C7における横突起間の前面(左右) 上縁の中央部(左右) 起始部で肩甲棘内側縁付近の上部(左右) 第 2 肋骨軟骨接合部。接合部上面の外側(左右) 上顆から2cm 遠位(左右) 臀部の上外側 1/4 部で筋肉の前方部 大転子突起の後部(左右) 関節裂隙近位の内側脂肪体(左右)

Wolfe F, et al : The American College of Rheumatology 1990 Criteria for the Classification of Fibromyalgia. Arthritis Rheum 33 : 160-172, 1990

(6)

整形外科診療の

こ ん な 時 は こう 答 え る

[骨粗鬆症と骨密度 編]

患者さんの背景

患者さんが期待していること

患者さんの背景

どのような心構えでお話しするか

整形外科診療の

POINT

!

骨密度は骨粗鬆症の薬物治療開

始の判断や,骨折しやすさの判断

および治療効果を判定する際に必

要となることをご理解いただくよう

説明します。

POINT

!

骨粗鬆症治療の目標は骨折防止で

す。骨折は骨強度の低下で起こりま

すが,

骨強度は骨密度と骨質からな

ります。骨質の概念を「鉄筋コンクリー

トの耐震性」にたとえて理解いただ

くよう説明することが大事です。

東京慈恵会医科大学整形外科学講座講師

斎藤 充

養老整形外科クリニック院長 

石井 光一

 65歳,女性。1年前に骨密度が若年成人平均値(YAM) の 65%で骨粗鬆症との診断を受けました。その後,骨吸 収抑制薬であるビスフォスフォネートをしっかり内服していま した。内服 1 年後の検査では,骨密度値に明らかな変化 はありません。  患者さんは,「骨粗鬆症=骨密度が低下して骨折しや すくなっている」と考えています。このため,患者さんは治 療開始後の骨密度測定では,「私はまじめに内服してきた のだから,骨密度が上がっているはず」と思っています。ま た「骨密度=カルシウム=骨の強さ」,「骨粗鬆症の治療 =骨密度が上がらなければ骨折するのでは」という考えもベー スにあります。  まず大事なことは,「骨密度=骨強度」という概念がすべ ての症例に当てはまらないことを知っていただくことです。最 近,骨強度を規定する因子として,「骨質」という概念が提 唱され,国内外の骨粗鬆症の定義に盛り込まれるようになっ てきました。  骨質とは,以下のように考えると理解しやすくなります。骨 は「鉄筋コンクリート」の建造物によく似た構造をもっています。 鉄筋に相当するのが骨に含まれるコラーゲンで,コンクリート に相当するのがカルシウムからなるハイドロキシアパタイトです。 「骨質」とは骨を構成する成分(コラーゲンやハイドロキシア パタイト)の「素材の善し悪し」といえます。例えば,単価の 高い鉄筋(コラーゲン)やコンクリート(ハイドロキシアパタイト) を使って作り上げられた壁は,粗悪な鉄筋やコンクリートから なる壁に比べて耐震強度が強くなります。両者の壁の厚さ が同じでも粗悪な素材からなる壁の強度は当然弱くなる,こ うした建造物の概念を骨に当てはめることで,一般の患者さ んには骨質の重要性の理解を深めてもらうことができます。 骨を鉄筋コンクリートに見立てた患者指導用資材は製薬メー カーなどで取り扱っていますので,こうしたものを活用するの も1 つの方法です。これまでの研究から,原発性骨粗鬆症 では鉄筋に相当するコラーゲンの過剰老化が骨強度を低下 させる独立した要因となることが明らかとなっています1)。また, 高骨密度でも骨折リスクが高いことが問題視されている糖尿 病や動脈硬化などでも,骨質の異常により骨の脆弱性が高 まることが明らかとなりました1)2)。すべての骨粗鬆症治療薬 には,骨密度の増加とは独立した機序(骨質改善)によっ て骨強度を改善する効果があることも明らかにされつつあり ます1)。興味深いことに,Wattsらはリセドロネート投与 3 年ま での症例 2,561 名の検討から,同薬剤による非椎体骨折防 止効果は骨密度変化に依存しなかったと報告しています3)。 驚くべきことに,骨密度(腰椎,大腿骨頸部)が5%程度減 少した例でも,骨密度が増加した例と同等の骨折防止効果 が確認されました。これを裏付けるように,同薬剤の投与前 後に骨生検をした検討では,骨質(コラーゲン,ハイドロキシ アパタイト)が閉経前の健常者と同程度に改善することが明 らかにされています4)。すなわち,骨粗鬆症治療薬による骨 密度の増加を唯一のよりどころとして患者さんに説明するより は,「いかにしっかり飲めているかで勝負が決まってくる」と思っ ていただくことが大事だと考えます。また,私は初診時に以 下のようにお話をします5)。「このお薬を1 年間内服しても骨 密度が増えない方もいらっしゃいますが,骨折防止効果は十 分認められることが報告されています。これは,骨の質(鉄 筋コンクリートの概念を説明)を改善するからです。ですので, 1 年後,骨密度が変化しなかったり,もしくは減少してしまっ た場合でも,お薬を飲めていたという自負があれば,同じ骨 密度で薬を飲んでいない方と比べて骨の素材がお薬によっ て良いものに入れ替わっていますので心配しないでください」。 こう説明すると,2 回目以降の骨密度測定の際に,たとえ骨 密度が増加していなくても説明に困ることは少なくなります。 現在,骨質を具体的に評価することが可能なマーカーを指 標として,骨粗鬆症の病名で保険適応になっているものはあ りませんが,エビデンスが国内外から集積されつつあります。 今後は,骨密度測定と同時に,非侵襲的な骨質マーカーを 測定することにより,骨密度・骨質をより明確に患者さんに 説明することが可能となるかもしれません1)6)。  60 歳の女性。腰痛のため受診し,腰椎レントゲン検 査で椎体の骨粗鬆症化があることがわかり,骨密度の 測定を勧めたところ検査の必要性を尋ねられました。  患者さんは骨粗鬆症という言葉は知っていますが,骨粗 鬆症と骨折,骨密度との関係を正しく理解している方は多 くありません。基本的なところからわかりやすく説明すること が大切です。  患者さんに理解していただくポイントを以下に列挙します。 ①骨粗鬆症治療の目標は生活の質(QOL)の改善であり, その第一歩が骨折の予防です。②骨強度(骨の折れにく さ)は骨密度と骨質により決定されます。そのうち骨密度 が骨強度の70%を説明するといわれています。③骨密度 は現在,1∼3%の測定精度で測れるようになりました。④ 骨密度が1標準偏差(SD)低いと(若年成人平均値(YAM) の80%がおおむね−1.5SD,70%が−2.5SD),男女とも骨 折リスクは1.5 ∼2 倍となります。⑤骨密度により薬物治療 開始を判断(表 1)するとともに,半年に1 回程度,骨密 度を繰り返し測定することにより薬物治療による効果の判 定の一助となります。⑥高齢になれば同じ骨密度でも骨 折しやすくなります。⑦ステロイドの使用は骨折リスクを2 ∼ 4 倍にします。骨密度が YAM の 70%の原発性骨粗 鬆 症の方と,骨 密 度が Y A M の 8 0%でプレドニゾロン 5mg/日服用している方の骨折のしやすさはほぼ同じです。 ⑧薬物の種類および測定部位により骨密度の増加効果 は異なりますから,治療開始前に無治療の場合と薬物治 療の際の平均的な変化を説明しておくことが必要です。 特に,骨密度の値にこだわる患者さんの場合は事前に十 分な説明が重要です。  脆弱性既存骨折がない場合は,表1を用いて骨粗鬆症 の薬物治療開始の決定に骨密度測定が必要であることを 説明します。既存骨折がある場合は,骨密度により骨の折 れやすさが異なることを説明し,また,治療効果をみるため の有用な情報であることを説明します。経過の説明には, 骨密度測定値をグラフにしたもの(未治療の場合と当該薬 剤を用いた場合の平均的な変化がベースに書かれたもの) を用いるとわかりやすいでしょう。

骨粗鬆症の薬物治療を続けてきた患者さんから

「骨密度が上がってないということは,

これまで

飲んできた薬の効果がなかったのでしょうか?」

と聞かれたらどう答えますか?

文 献 1)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編:骨粗鬆症の 予防と治療ガイドライン2006 年版,東京,ライフサイエンス,2006 文 献

1)Saito M, et al : Collagen cross-links as a determinant of bone quality : a possible explanation for bone fragility in aging, osteoporosis, and diabetes mellitus. Osteoporos Int(REVIEW) : 2009[Epub ahead of print]

2)斎藤 充:糖尿病と骨;糖尿病・動脈硬化における骨質劣化機構. Clin Calcium 19:1257-1268,2009

3)Watts NB,et al : Relationship between changes in BMD and nonvertebral fracture incidence associated with risedronate ; reduction in risk of nonvertebral fracture is not related to change in BMD. J Bone Miner Res 20 : 2097-2104, 2005 4)Durchschlag E, et al : Bone material properties in trabecular

bone from human iliac crest biopsies after 3- and 5-year treatment with risedronate. J Bone Miner Res 21 : 1581-1590, 2006 5)東 京 慈 恵 会 医 科 大 学 整 形 外 科 骨 代 謝 班 ホーム ペ ージ: http://www.jikeiseikei.com/04rinsho/0409.html 6)斎藤 充:骨コラーゲン代謝;コラーゲンの老化マーカーの骨粗 鬆症への応用.Clin Calcium 19:1110-1117,2009

骨粗鬆症の患者さんから

「どうして骨密度を測定しないといけない

のでしょうか?」

と聞かれたらどう答えますか?

どのようなことに気をつけるか

いかに答えるか

50歳以上(男女とも) 脆弱性 既存 骨折あり 50歳未満(男女とも) 若年成人平均の70%未満 いずれもなし 骨 密 度 脆 弱 性 既 存 骨 折 な し 閉経前女性・50歳未満男性 若年成人平均の80%以上 若年成人平均の 70%以上 80%未満 閉経後女性 および 50歳以上男性 ・過度のアルコール (1日2単位以上) ・現在の喫煙 ・大腿骨頸部骨折 の家族歴 のいずれか1つ有り 表1.骨粗鬆症薬物治療開始基準 薬物治療を開始する

説明のポイント

骨質の説明には…鉄筋コンクリートを代用

骨粗鬆症の薬物治療を続けてきた患者さんから

「骨密度が上がってないということは,

これまで

飲んできた薬の効果がなかったのでしょうか?」

と聞かれたらどう答えますか?

骨粗鬆症の患者さんから

「どうして骨密度を測定しないといけない

のでしょうか?」

と聞かれたらどう答えますか?

(7)

「運動器の10年

(Bone and Joint Decade)

」世界運動

『動く喜び 動ける幸せ 』

「運動器の10年」世界運動が97ヵ国で進められています。

2000−2010年の10年間は

BJD 国際運営委員会委員 

国分 正一

 2009年のWorld Network Conference(WNC) は米国の Washington DCで10月23日・24日 の両日,Global Network Conference(GNC) として開催された。主催するUSBJDはBush 前 大 統 領 が サインした 2 0 0 2 年 からの 1 0 年を Decadeとしており,Globalを冠してその独自性 を主張した。54ヵ国から300 名近く(米国から 約半数)の医師,医療関係者,患者代表が参 加した。日本 BJD からは運営委員会委員長の 松下 隆先生(帝京大学教授)と筆者,加えて 同時開催の内反足 Ponseti 法の普及を目的と するPonseti International Associationの会 議と併せて後藤昌子先生(仙台赤十字病院) の3名が出席した。  例年のように患者代表の啓蒙的会議(Patient Advocacy Meeting)が先立って2日間催された。 22日の午前中,米国議会議事堂で下院議員3 名の講演が,昼食時も上・下院議員5名からの 話に耳を傾けた。内容は米国における個人と 社会への運動器疾患の影響あるいは政策化 プロセスなどであった。午後,各国大使館への 訪問の時間が組まれており,松下委員長と筆 者は日本大使館を訪れて厚生労働省から出向 の水谷忠由氏に面会し,外傷センター設置の 緊急性を本省に伝えてくださるよう要請した。  G N C は,前 半がパネルディスカッションで, ①骨関節症,②リウマチ疾患,③腰痛,④骨粗 鬆症,⑤外傷のそれぞれについて米国におけ る疫学,医療供給と経費の現状が報告された。 後半は 2010 年以降の戦略の立案であった。 USBJDは①関節疾患,②骨粗鬆症,③小児疾 患,④研究,⑤脊椎疾患・腰痛,⑥外傷の6つ

の Strategic Planning Specialty Groupを組 織し,すでに予備的報告書を用意していた。参 加者がいずれかの groupの breakout session に参加し,課題を3つに絞って,どう展開すべき かを討議した。その後,参加者は7つの地域に 分かれて,各々の優先課題について語り合った。 アジアでは外傷とリウマチ疾患の重要性を確認 した。  2010年の最終WNCは9月10日・11日にスウェー デンの Lundで開催される。

BJD Global Network Conference 2009, Washington DC:

2010年以降の戦略を討議

柳川リハビリテーション病院院長 

井上 明生

『銃と十字架 』

遠藤周作 著

 中公文庫,1982年初版

信じるもののために生命を捧げた日本人

 16世紀の終わりから約300年間,支配者が変わっ ても日本の国是として引き継がれてきたキリシタン 禁制は,多くの殉教者を生みました。全国各地に キリシタン遺跡を残しましたが,とりわけ遺跡が多 いのは九州地方です。  2008 年 11月24日,長崎でローマ教皇庁がバチ カン以外での開催は珍しい列福式を執り行いました。 日本のキリシタン禁制時代,その信仰のために殉 教した人たち188 人を福者(聖者に次ぐ称号)に 列する式典です。その筆頭が大分県国東半島 岐部出身のペトロ岐部でした。遠藤周作著の『銃 と十字架』は,そのペトロ岐部の生涯を記した歴 史小説です。中公文庫の初版刊行は1982 年,こ の本を読むまで彼のことは知りませんでした。我が 国のキリスト教にとっては暗黒の時代に,自分の信 じるもののために,生命をかけて闘ったこのような すばらしい日本人がいたのか,と畏敬の念をもって 足跡を辿りたいと思いました。  ペトロ岐部は禁教令が出たあとも有馬神学校で 学び続けましたが,徳川家康の時代,宣教師や キリシタンが国外追放になったときマカオに追放さ れます。  そこから彼は一念発起し,インドのゴアにいき, アラビア人の隊商に加わってシリア砂漠を踏破して イスラエルからローマに達し,そこで神学院で学ん だあと神父になりました。日本人としては3人目です。 彼がラテン語で書いた文書は,今もローマにあるイ エズス会の文書館に保存されています。  彼はその後,タイのアユタヤから日本に向かう船 に紛れ込んで鹿児島に潜入しますが,追われて 東北にまで移動しました。しかし,そこで信者の密 告で捕らえられ,江戸キリシタン牢まで運ばれ,穴 吊りの拷問に遭います。一緒に捕らえられた 2 人 の神父は「南無阿弥陀仏」と呟いて転びますが, ペトロ岐部は信仰を貫き通して殉教しました。江戸 幕府の公文書に「ペトロ岐部転び申さず候」とい う有名な言葉が残っています。  遠藤周作の小説は,信じるもののためにいかな る迫害にも耐えたペトロ岐部を称えると同時に,そ の苦しさのために棄教した人たちをも温かく思いやっ ていることに私は惹かれました。  国東半島の漁村,岐部にはペトロ・カスイ岐部 神父記念公園に舟越保武氏による銅像(写真) と記 念の 教 会 ,資 料館があります。私 は2 度訪問し,彼が 学んだ有馬神学校 跡,彼が捕らえられ た仙 台 領 水 沢 ,そ して殉 教した 東 京 小伝馬町のキリシタ ン牢跡にまで足を延 ばし,彼の足跡に思 いを馳せました。 くにさき きべ セミナリオ 歓迎の挨拶を述べるGNC Co-Chairの Stuart Weinstein教授(Iowa大学, 米国)と BJD国際運営委員長のLars Lidgren教授(Lund大学, スウェーデン)

(8)

編集アドバイザー(五十音順):  井樋 栄二 (東北大学大学院 医学系研究科 整形外科学 教授)  遠藤 直人 (新潟大学大学院 医歯学総合研究科 整形外科学 教授)  黒坂 昌弘 (神戸大学大学院 医学研究科 整形外科学 教授)  戸山 芳昭 (慶應義塾大学医学部 整形外科学 教授)

2010 Vol.

04

No.

01

年4回(季刊発行) 発行:科研製薬株式会社 〒113-8650 東京都文京区本駒込2-28-8 TEL:03-5977-5001(代表) 企画・製作:株式会社メディカルレビュー社 TEL:06-6223-1468(代表) TEL:03-3835-3041(代表) 大阪本社 〒541-0045 大阪市中央区道修町1-5-18 朝日生命道修町ビル 東京本社 〒113-0034 東京都文京区湯島3-19-11 湯島ファーストビル ●本紙掲載内容の無断複製・転載は固くお断りいたします。 ARD235-10A-21-MR

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(2009年9月作成)

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