ミクログリアは中枢神経系におけるマクロファージ様の性質をもった細胞で、活性化されることにより、 TNF-α、IL-1βといった炎症性サイトカインや一酸化窒素などの神経にとってtoxicな物質を産生する一方、神 経栄養因子、プラスミノーゲンのようなtrophicな物質を産生する二面性の性質をもっている。ミクログリアは 成人期においては通常休止型として存在し、神経系における監視役を務めるが、新生児期では刺激によって容 易に増殖、活性化されやすい。この時期におけるミクログリアが、神経傷害などにおいてneurotoxicにはたら くかあるいはneurotrophicにはたらくか大変興味のあるところである。 我々は以前に、新生児由来ミクログリアの増殖、活性化が神経変性疾患にどのような影響を及ぼすか、パーキ ンソン病モデルマウスを用いて実験を行った。マウスにドーパミン神経性毒物である1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)を投与すると、脳黒質におけるドーパミン神経細胞が特異的に減少した。我々は これを生後1週目の新生児マウスに投与し、さらにlipopolysaccharide(LPS)の併用投与によってミクログリア を増殖、活性化させた場合、MPTPの投与のみのマウスと比較するとドーパミン神経細胞の減少を抑制するこ とができた。つまり、この新生児モデルの実験では、ミクログリアの活性化がneurotrophicなはたらきをもっ ていると言える。 しかし、このMPTPモデルでは、マウスに対する神経傷害の程度は大きいとは言いにくいため、傷害の大き いモデルにおける検討も必要である。そこで、マウスの脳線条体にエタノール注入をすることによって、より 大きい脳傷害モデルの作成を行った。このモデルでは、エタノールによって線条体中心部は壊死を起こし、そ の正常との境界部の神経は傷害を受け、同部位にミクログリアの集積を認めた。本実験において、LPSを投与 しミクログリアを活性化した群では、生食のみを投与した対象群と比較して線条体壊死層および傷害層の面積 は明らかに増大していた。つまり傷害が大きくなると、ミクログリアはneurotoxicにはたらくことがわかった。 両者の実験におけるミクログリアの形態的変化、およびサイトカイン、神経栄養因子、その他のタンパク質 等の発現の違いを十分比較することによって、将来ミクログリアを用いた神経疾患治療への開発に役立つ可能 性があると考えられる。
新生児由来ミクログリアの神経変性疾患に対する防御機構の解明
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