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細胞内シグナル伝達系の多安定性に関する網羅的解析

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Academic year: 2021

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(1)情報処理学会第 78 回全国大会. 4E-02. 細胞内シグナル伝達系の多安定性に関する網羅的解析 仲 隆‡. 末吉 智奈佐†. 九州産業大学 情報科学部‡. 九州産業大学 情報科学研究科†. 1. はじめに 細胞内シグナル伝達系は,細胞の増殖,自殺, 分化,恒常性を制御する機構として機能しており, その異常が細胞のがん化の原因と考えられてい るため,近年盛んに研究されている重要な生化学 反応系である.しかし,シグナル伝達系は複雑か つ非線形であるため,理論的解析手法の構築が困 難であり,系毎にパラメータを固定したシミュレ ーション解析が行われているのが現状である. 本研究では,シグナル伝達系を,伝達経路の酵素 のサイクル回路をノードとし,その制御関係をア ークとする制御ネットワークとして定式化する ことにより,系を系統的網羅的に生成し,多安定 性に関する解析を行う.基本的な生化学反応系や 転写制御を含む系の特性に関する網羅的解析は 既にある[1,2].また,本研究と同様の制御ネット ワークを用いた解析もなされている[3].本研究で は,制御ネットワークの隣接行列を用いた制御行 列表現を導入することにより,これらの解析手法 より見通しのよい網羅的解析の手法を提案し,そ れを用いて解析を行う. 解析には,数式処理・数値計算システムである Mathemathica を用いた[4].Mathemathica は, 数理モデルの構築やシミュレーション解析など に適している.また,プログラミング言語として 利用することで高度な処理を容易に実行するこ とが可能である.本研究では,Mathemathica 10.2 を用いた.. 図 1 制御ネットワーク. 制御していることになり,不活性化を触媒する場 合は負に制御していることになる.サイクル回路 での酵素の活性化および不活性化の反応機構は, 単純な質量作用の法則に従うと仮定し,反応速度 が基質濃度と酵素濃度のN乗の積に比例する場合 をN次制御と呼ぶ.各ノード,すなわちサイクル回 路は,活性化・不活性化の反応速度定数や酵素の 総濃度などのパラメータを持つが,定常状態のみ を問題にする場合は,最大濃度で正規化すること により,それらのパラメータは活性化と不活性化 の最大反応速度の比という1つのパラメータに 集約される. また,制御ネットワークは正のN次制御ではN, 負のN 次制御では−Nを要素とする隣接行列で表 現できる.図 2 は,代表的なシグナル伝達系であ る MAPK カスケードの制御ネットワークとその 行列表現である.MAPK カスケードの 3 段目と 4 段目の 2 重リン酸化の過程は,制御機構を二次と することで表現できる.行列表現を用いることに. 2. 制御ネットワーク 制御ネットワークのノードでは,酵素は活性型 と不活性型の 2 つの状態(図 1 の Piと Ui)を循 環する.このサイクル回路がノードとなる.酵素 の活性化と不活性化は,それぞれ,他のノードに ある活性型酵素により触媒される反応である.ノ ード A の活性型酵素がノード B の酵素の活性化 を触媒する場合は,ノード A がノード B を正に Exhaustive analysis for multistability in cellular signal transduction systems †Chinasa SUEYOSHI, Graduate School of Information Science, Kyushu Sangyo University, Fukuoka ‡Takashi NAKA, Faculty of Information Science, Kyushu Sangyo University, Fukuoka. 4-429. 0 0 0 −1. (a). 制御ネットワーク. 1 0 0 0. 0 2 0 0. 0 0 2 0. (b) 制御行列表現. 図 2 MAPK カスケード. Copyright 2016 Information Processing Society of Japan. All Rights Reserved..

(2) 情報処理学会第 78 回全国大会. 0 2 2 0. 0 2 −2 0. 0 −2 2 0. 0 −2 −2 0. (a)制御ネットワーク A. (b)制御ネットワーク D. 図 4 二次フィードバック制御ネットワークの双安定性 図 3 二次フィードバック制御ネットワーク(2 ノード). より,実質的に同一な制御ネットワークの同値類 への分類と系統的網羅的生成と解析が可能にな る. ノード𝑖をノード𝑗が𝑚次に正に,ノード𝑘が𝑛次 に負に制御しているとし,定常状態を仮定すると 各ノードの状態の関係は次式で表される.ただし, 𝑄𝑖 はノード i のサイクル回路の活性化状態酵素の 相対濃度(P/T)の逆数(T/P)である.. 𝑄𝑗𝑚 𝑑𝑇𝑛𝑘 𝑄𝑖 = 1 + 𝐾𝑖 𝑛 , 𝐾𝑖 = 𝑚 𝑄𝑘 𝑎𝑇𝑗. …式 1. 𝐾𝑖 はノード𝑖 の唯一のパラメータである.𝑇は 当該サイクル回路の酵素の総濃度であり,𝑎と𝑑 は,それぞれ活性化,不活性化の反応速度定数 である.制御行列を𝑀,それぞれのノード𝑄𝑖 を要 素とする縦ベクトルを𝑄とすると,制御ネットワ ークの定常状態値は,行列の積の定義を式 1 とし て,式 2 を解くことにより得ることができる.式 1 の𝑚および𝑛が制御行列の要素である.. 𝑄 = 𝑀𝑄. …式 2. 3. 多安定性の網羅的解析 先行研究に倣い,以下の制約条件を満たす 2 ノ ードおよび 3 ノードの制御ネットワークを解析対 象とした[3].1)ノード 1 を出力ノードとする.2) 各ノードは他の一つのノードを制御する.3) 各ノ ードは他のノードから高々一つの負の制御と一 つの正の制御を受ける.4) フィードバック制御は 高々ノード 1 からの一つのみとする. 2 ノードの制御ネットワークの総数は 6 個で, その内フィードバック制御のあるものは図 3 に示 す 4 個である. →は正の制御,⊣は負の制御を表す. 各制御行列は各ネットワークと対応している.全 てのパラメータ値を 1 とした予備解析では,全て のノードが 1 次制御の場合は多安定性が出現しな いこと,および,全てのノードを二次制御とした 場合でも,2 ノードおよび 3 ノードの場合は多安 定性が出現しないということが分かっている.そ こで,本研究では,全てのノードを一次制御およ. び二次制御とした場合に関して,各ノードの𝐾𝑖 を 2−10 ~210 の範囲で独立に変化させてパラメータ 値に関しても網羅的に解析を行った. 2 ノードでは,二次制御とした場合の図 3 の A および D で双安定性が出現した.図 4 は,制御ネ ットワーク A および D において,2 つのパラメー タに対する出力ノードの活性化酵素の相対濃度 をグラフにしたものである.3 ノードでも双安定 性が出現し,2 ノードの制御ネットワーク D を含 む 2 つの制御ネットワークにおいて双安定性の出 現率が最大となった.出現率とはパラメータの組 合せ総数に対する多安定性が出現したパラメー タの組合せの数の比である.. 4. まとめ 細胞内シグナル伝達系をサイクル回路をノー ド,制御関係をアークとする制御ネットワークと して表現し,その行列表現を用いた解析手法を提 案し,ネットワークの制御関係に加え,各ノード のパラメータについても網羅的な解析を行った. 全てのパラメータ値を 1 以外に設定すると 2 ノ ードでも,多安定性が出現した.3 ノードでは, 多安定性が出現した制御ネットワークは,多安定 性を示した 2 ノードネットワークを部分ネットワ ークとして含むことが示された.. 参考文献 [1] Ramakrishnan, N. and U. S. Bhalla: Memory Switches in Chemical Reaction Space. PLOS Computational Biology, Vol.4, No7: e1000122 (2008). [2] Shah, N. A. and C. A. Sarkar: Robust network topologies for generating switchlike cellular responses. PLOS Computational Biology, Vol.7, No 6: e1002085 (2011). [3] Kuwahara, H. and X. Gao: Stochasticeffects as a force to increase the complexity of signaling networks. Scientific Reports, Vol.3:2297 (2013) [4] WolframResearch : Mathemaica, http://www.wolfram.com/. 4-430. Copyright 2016 Information Processing Society of Japan. All Rights Reserved..

(3)

図 1 制御ネットワーク  (a)  制御ネットワーク            (b)  制御行列表現    図 2 MAPK カスケード     0 10 0 0 02 0 00−1 00 20 0

参照

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