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結膜結核の一症例に就きて

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Academic year: 2021

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結膜結核の一症例に就きて

:東京女子讐面面門學校眼科學教室(主任 高辻教授)

松 本 ツ 子

緒 言 結膜結核は1873年Koester氏に依り始めて臨床的証明をされ,次でBaumgarten, Sattler氏等に依り組織學的に確認されて二二今H迄多数の報告に接すれど,樹稀有な る疾患の一つなり。温温我教室に於きて,局所塗抹標本により從來稀なりとされし結 核菌を誰明せし一例を得,その臨床的観察及び動物實験を合せ行ひたるを以て此塵に 追加報告せんとす。

實 駿 例

患者 0村○す○,12歳女子。

初診 昭和14年5月13日。

既往症及び家族歴 共に特記すべきものなし。 主訴 左眼上眼瞼腫脹。 二二歴数日前襲熱しその時左側二二淋巴腺の腫大せるに氣付く。次で眼瞼腫脹を 來したるにより一内科欝を訪れ,獲熱と淋巴腺腫大との治療をうけ眼瞼腫脹は結膜炎: のためならんとて洗蘇及び冷器法を施され居たるが,艦温は間もなく梢々正常に復し たるも淋巴腺腫大は何の攣りもなく且自畳症状少きため別に氣にも留めす自宅にて 「イヒチオール」の塗布を行ひ居たれど,限瞼腫脹は一向快方に向はす却って増悪の傾 向ありしため當眼科外來を訪れしものなり。 現症 全身的所見として,初診時禮温36・8。C,旧格榮養中等度なれど脂肪沈着少く, 顔面蒼白貧血。性にし七,ワッセルマン氏反慮及び村田氏反慮共に陰性,ピルケー氏反 慮彊陽性なり。胸部所見は打診にて異常無くi聴診にて一帯に呼吸音微弱なる他特筆す べきものなし。耳門的所見として,左側慢性中耳炎’あり。其他患側耳前淋巴腺(栂指 頭大1個),耳後腺(揖指頭大1個,碗豆大2個),顎下腺(小指頭大1個)の腫大を 認むれども自畳的症状及び炎衝症欺全く歓如す。 一一一第 101巷… 60 一_一._

(2)

松本=結膜結核の一症例に就きて 61 初診時眼部所見(附圖参照)。 結 膜 結 昭和十四年五月十三日 左上眼瞼結膜所見 メ

紳蘇曝靱

第一圖 初診時所見(13/5) 上眼瞼翻心:内皆に潰瘍及びトラコー マ様顎粒あP

噸聯纏

懸.鞍・} ・章 ン・

懸灘

t. ‘牽蓉、t 鑛灘蓼.』’ ・」u り 舞熱、

圃狸編 核 患者 ○村○すゑ 12歳女子 昭和十四年六月十三日 左上眼瞼結膜及び窓隆部結膜 第二圖 一ケ月後の再診時所見(13/6) 上眼瞼及び上弩隆部を趣度に醗韓せる圖、上 眼瞼結膜の上三分の一及び窓薩;部結膜;は一一ee: に潰瘍と化し友白色汚獄の苔にて掩はれる。 左下眼瞼及弩鰹部結膜並に眼球結膜所見 第こ圖の下眼瞼拾数箇のトラコ陣マ様願粒を 示す gS 視力右0.2(0,9×一1.5 D) 左0.3(0.7×一1.5D)にて旗影法にては爾眼共一2.0] Dなり。 左上眼険皮膚は輕度の獲赤と浮腫状腫脹を呈し瞼裂細く,上眼瞼結膜は禰蔓性に属 濁充血すれど血管の走行は比較酌明らかに認められ,内外皆には乳囁増殖し殊に外回 に4乃至5個の帽針頭大の三友白色に洞濁せる4i球状隆起物ありて1それに隣接せる 一第 10塗罫 61 一

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62 松本=結膜結核の一症例に就きて 内皆側に汚繊友白色の苔にて掩はれその底は凹凸不平比較的硬く縁邊は鋸歯状にて穿 繋し燭痛自獲痛なく僅かの堅痛のみある小潮重大の潰瘍を認む。該潰瘍より塗抹標本 を作製しチ・・ル氏染色法にて結核菌を誰明し得たり。 其他球結膜,輩膜,虹彩,透光艦及び眼底に異常を認めす。 経過及び治療 翻診當日5%「硫酸亜鉛」の黒占眼洗蘇後棚酸「ワゼリン」押入,翌 /日より患者再び稜熱し髄温38∼39。Cに及びしため來らす約1ケ月後解熱せりとて來 貌す,その間附近眼科留の診を乞ひ洗海及び冷器法を施され居たり。 再診時所見 艦温37.1。Cにて一見して繍痩せるかに見ゆれども初診時全身離塁と大 .差なく唯眼部所見に於きては非常なる悪化を認めたり。帥ち左上眼瞼皮膚の稜赤及び 浮腫状腫脹強く殆んど自然には開臆し得ざる状態にして分泌物多量なり。上眼瞼結膜 の禰蔓性潤濁及び充血強度にして血管の走行殆んど不明,瞼結膜の中央よ!少しく外 側にて瞼縁に近く汚繊友白色臨界より判然と匿別される米粒大の潰瘍2偶あり,内皆 …にも同様の粟粒大のもの5個認めらる。上眼瞼結膜瞼板部の上3分の1及びそれに漸 く愚輩部結膜は一面に友白色にして周圃より判然と事書され表面は取除き難き汚繊繊 維朕苔にて掩はれたる潰瘍にしてその底は凹凸不平網の目の如き感あり,外砦に近く 横位亜鈴1伏小豆大の周園に約2mm宛著明に穿聴したる深さ約1mmの潰瘍を認め, 紅痛及び自重痛なく座痛豆倒に誰明す。是等潰瘍部より初診時と同様塗抹標本を作製 し,テール氏染色法を施し鏡遷せるに結核菌を誰明せり。下眼瞼結膜は一ヒ眼瞼結膜に .比し一般に症歌輕微にして,外皆瞼縁に近く9乃至10個,弩幹部に数個の孚L荻白色の ・潤濁せる孚球歌隆起物を認む。角膜には所見なけれど粟粒大の邊縁「ブリクチン」3 ttツありて多少角膜に侵入せるを見る。 重日直ちに治療及び動物試験の目的のため外砦亜鈴状の潰瘍及び其附近の病竃浄写 婁除を4テひたり。 動物試験としては家兎前房内に切除せる組織片(米粒大)を移植せしものにして, .術後数日聞は手術そのものの刺戟蝉騒を呈ぜしが,次第に該症状も去り前房中に組織 片介在する外は殆んど正常に近き迄になりたるも,移植後三週目より諸症歌頓に増加 し定型的急性結核性虹彩炎生じ漸次短歌増悪し滲出物多量となり結節もその数を塘し 且眼球突出を起したるにより途に前房内移植後33日目に眼球を摘出せり。 病理組織學無主索として,組織の一片を「パラフtン」切片となし,他の一片を「ツェ ロイヂン」切片となし,「ヘマトキシリンJ「ヘマトキシリン,エオジン」染色法及び ・テール氏染色法等により鏡検せるに,乾酪心性,上皮様細胞,圓形細胞集團及び多形 __ 第 10 巷62 一一

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松本寓結膜結核の一症例に就きて・ 63

眼瞼結膜結核報告例一覧表

熱感酬性識核菌

齢 別li澄 明 (尊三略)

麟蜘3・1女:ny−

4 126i,男 ・ }・6i女・ 多 1171男i

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左上…露・一・鋤…剛耳瀧刈

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右下障瘍繊 1

右 下i潰瘍形成 …結核性臓膜炎

…購畑町同側輔腫知

右下球瀦露一マ」難 1

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左 上潰瘍形成 . !

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(5)

64 松本=結膜結核の一症例た就きて

[報告者1年

i(尊稻略) 1齢

中幕 削27

山下小富士114 夫島 イシE 鞠訊叉四郎 32 進藤 眞作i11 湖崎 清一 青山 茂吉 15 鍋島 種幸 16 河原 省:雫 6 111崎 政治 15 李里予 蓮 20

“ i、5

1』 4 .9 徳永 守成 16 4田善一郎」 20

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一. 119 田原 蓮也 23 有田 耕準 20 一.・ [24 一. 1241 一. 116

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I I I I l十 十 十 十 i十1

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保二122i男 男 女i 女1 女… 男1 女i 女… 女』 1 十 十 十 十 十 1+ j+ 1十 1 +1左 1左 i右 + 右 1 … + 右 1 … … … !右 上下、米粒大腫脹,潰瘍 上3結核性涙嚢炎.右

右下1醗織・

左下

ユ蕊藩罫

深部浸潤あり 1パリノー氏結膜炎 右 ’濠 上球!潰蕩,腫瘍朕 :左 ’rプラスモーム」様 上下:潰瘍(上だけ) 上1乳嚇,綱訣編裂

下1鵡臨難大

「トラコーマ」の治 上1療潰瘍 …+…右上下左.盤様肥厚肉芽腫 、 潰瘍,結節乳嚇表 1 上下 量器蔓牲角膜炎, 肉芽腫 結節,潰瘍

全身的所見

十 1 24i女:分泌物(+刺 61女. i

11湧1 i

北岡仁司換1121女1 …十 ト

謬 1・…+

’2 1女分泌物(+)1墜 下 左 1潰瘍3個 潰 腸 潰瘍4個 左 上下.潰瘍,結節

羅欝結灘腹1

膜炎 1 右陳奮肋膜炎 : 陳奮肺炎 肺結核,股關節結 核 1 滲出性肋膜炎,結 核性關節炎 二二fj二目二前月泉イヒ膿 ’ 肺浸潤,頸腺結核 結核性腹膜炎 1 頸腺結核,耳前腺i

駄騨核 1

な し i 亘氏反慮(+) 1 肺門陰影 i 肥前腺腫大 1 肺門浸潤,「ツベル タリン」(十),朽野

選奨鵬顎下1

耳前壁,顎下腺腫 大 1 他部に結核竈 1 一一 1

1,,こ I

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!粟粒結核 . I 11年後死亡 … 結核性肋膜炎の入1

薯囎数て死…

, 肺門腺浸潤,喉頭1 結核 :

講ト〔販卿

ピルケー氏反慮 1 (惜),一側同前,1 耳後・顎下腺の腫i フk:・ 呼吸暑微易勇 1 此外丈献中患者,性別;年齢,症温血認載不明のものS例あVo 一第 101倦… 64 一一

(6)

松本=結膜;結核の一症例に就きて 65 核白血球浸潤あり,ラングハンス氏:巨態紬胞のみは途に焚恕する能はぎりしも,結核 病竃は常に定型的構造を有するとは限らす或程度の結核冤疫を有する結核動物或は入 艦中(結核第2期患者或はその亜型たる青年結核患者)薪に成立せる病竈は小淋巴球 と上皮様細胞との不規則なる集合より成立ち,或は小淋巴球と多形核白血球のみの集 合より成る事もある(菅沼定男氏による)と言はれてるる故に本義に於きても以上の 所見に基きて結核なる事を確認し得べし。街組織内結核菌誰明は不成功に絡ゆたり。 手術後の治療及び経過 潰瘍及び附近病竈部切除定日は其部に50%乳酸塗布後「パクレン」烙白金iCて焼 灼一.青酸々化莱「ワゼリン」塗入,翌日よりは50%乳酸塗布による腐蝕と硝酸銀 (0.2∼0.4%)黒占眼とを交互隔日になし且局所の榮養を高め創口及び病竃部の治癒を促 すために「ハリバ」軟膏(Vitamin A及びD含有),「ゼコラ」軟膏の黒占断をなす。 全身的には,哺?「L動物の造血組織より抽出せる非特異的喰壁塗毒作用促進物質なりと 言はるs「ミノフ,一ゲン」A1 c.c。宛毎日皮下注射を行ひ,内服として孚L酸「カル シウム」及びドオリーゼ」を投黙す。 斯くする事40繋目にて眼瞼腫脹大いに去り瞼裂殆んど正常に復し,結膜の充血潤 濁非常に輕度となり,潰瘍部一帯滑らかとなIV汚稜友白色の苔全く浩失し一見ほとん ど正常結膜に近きかと思はる工期に輕魅するに至れり。縁漫「ブリクチン」又滑失す。 されど治療はこれを以て完了せるに思す進みで「レJ線照射及び其他の療法を施さん と思ひしに患者苦痛輕減せるを治癒せiJ)と思ひ誤りたるにや其後再び來院せす。 考 按 結膜結核は稀有なる疾患にして壌田氏によれば眼疾者千人につき1人の割合なりと 言ふ。本邦文職中過去3G敷年聞の報告例を槍索せるに本例共86例(内患者の年齢, 性別症歌’)記載不明のもの8例)にして報告せすして握れるものを加ふればより多数 に昇らん。之れを統計的に見れば,男子26例,女子39例にて女子遙かに多く,年 齢的には11歳より2G臆意の者最:も多く29例にて,最も少きは30歳以上の7例 なり。全身的には,肺臓自身の結核あるもの15例,身燈他部の結核あるもの16例 にして全報告話中35%に結核竈を誰明す。 結膜結核の陣立に溢しては,清澤氏の例D如く涙嚢結核叉は鼻粘膜結核より上行性 に來る事あり,叉限他部例へば脈狢膜,虹彩毛様膿,輩膜等に結核竈ありて績獲的に 護生する事あり,或は既こ身膿の何虞かに結核ありて所謂ランケ氏の分類による結核 一第 10≦蓋き 65 一一

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(6 松本;糊莫結核の一症例に就きで, 第二期に於きて血行又は淋巴道による再感染として内因的に起るもの少からず。或時 は自家傳染によ.り自己の結核菌叉は結核物質を手指,布等にて眼部に接鰯し結膜結核 を生する事あり。全く外因的にSch;nierer氏の例の如く直接局所に結核菌の傳染によ り(勿論自身には結核を誰明せす)本症を引起す事あり,此の場合は所属淋巴腺には 必ず:炎症一三を伶ふものなり。 從?て事例に於きても,上述の症歌及び淋巴腺腫大は全く炎衝症朕を歓如し,叉初 診時既に顔貌膣質等は一見結核ならすやと思はれ,小児科的には「レ」線撮影行はざ りしも唯呼吸音微弱なる事及びピルケー氏反側の強陽性なる事等よ診して何等かの結 核性病攣ありて再感染を回したるものに記すやと考へらる。 結 論 要するに本例は12歳の女子,生來登り健康ならざるも既往症及び家族歴には特筆 すべき事.ip K一・耳前腺腫脹と稜熱とを起し次で左上眼瞼腫脹を來し當限科外來を訪れ しものにて,局所所見,局所の塗抹標本より結核菌を誰明せし事及び病酌組織の家兎前 房内移植の陽性にして病理組織學的槍索に於きて結核病竈を誰明せし事等よりして, 結膜結梅の診断の下に局所療法及び全身療法により著しく快方に向ひし一症例なり。 自筆するにあたり終始御懇篤なる御指導と御高教を賜はりし槍師高辻教授に厚く御禮を申上 げますQ 参 考 書

1) Strgm.bu.rg., 1;1. M. .Bl.. f. A. Bd 10e.’ Januar 193S, p. 11.

2) Sehnii’e’rer; Kl. M.’Bl’f.’ A. Bd leO. 1938, p. 683. 3) Urbanek, kt. M. BL S. Av B} 98. 1937, p. 256. 4) Kreibig, Kl. M. Bl. C・./ 4;.Bd 88. 1932, p. 863. 5)Giani, K:L M. B}. f.ム..阜d IQO..1938, p,146. 6) Cosmetatos,’Zbl. f: d. GesAn3iOPh. Bd 22. 7) Stocker, Kl. M. Bl. f. A. Bd 95. Juli 1935.

8)菅沼定男,眼結核・ 9)菅沼定男,日眼。30巻,大正15年. 10.)進藤眞作,中眼・旱2巻,工2號 /1) 清澤又四良β, 日眼.33 管,.11・號。 12)徳永守成,中眼.24.雀,866:頁. 13)菅沼定男,申眼.23巷756頁. 一第 1q’:巷=−661一

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