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松本 章子 論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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松本 章子 論文内容の要旨

主 論 文

Helicobacter pylori

VacA reduces the cellular expression of STAT3 and pro-survival Bcl-2 family proteins, Bcl-2 and Bcl-XL, leading to apoptosis in gastric epithelial cells

H.pylori

空胞化毒素 VacA は胃上皮細胞の STAT3 と Bcl-2/Bcl-XL発現を減弱させ アポトーシスを誘導する

(共著者名)

松本 章子、磯本 一、中山 真彰、久恒 順三、西 義人、中島 悠史郎、松島 加 代子、倉園 久生、中尾 一彦、平山 壽哉、河野 茂

Digestive Diseases and Sciences (in press)

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科新興感染症病態制御学系専攻 感染免疫学講座

(主任指導教員:河野 茂教授)

緒 言

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は胃炎や消化性潰瘍の起病性が明らかな新興感染症であ り、胃発癌の重大な病原因子とされている。全ゲノム解析で本菌が多型性に富むことが明らかに されているが、中でも cagA 遺伝子と vacA 遺伝子を有する菌株は病原性が強いとされている。

空胞化毒素(vacuolating cytotoxin)と呼ばれる VacA は、菌体外に分泌され胃上皮細胞に空 胞変性を引き起こし胃粘膜傷害や潰瘍性病変を惹起する。また空胞形成作用とは無関係に胃上皮 を細胞死(アポトーシス)に至らしめる。VacA 誘発アポトーシスの機序としては、催アポトーシ ス分子である Bax (Bcl-2-associated X protein)/Bak (Bcl-2 homologous antagonist/killer) の活性化に基づくミトコンドリア膜透過性亢進などが報告されている。

我々は、抗アポトーシス分子である Bcl-2 サブファミリータンパク質(Bcl-2、Bcl-XL Mcl[myeloid cell leukemia]-1)、さらにはその転写調節を担う STAT3(signal transducer and activator of transcription 3)蛋白の発現の変化が、VacA 誘発アポトーシスに関与している可 能性を検討した。

(2)

対象と方法

ヒト胃上皮由来腺癌細胞株である AZ-521・AGS を使用した。既報(J Biol Chem 1999;274:36693)

に基づき精製した VacA を添加し、経時的にタンパク質を抽出して Western blot に供した。VacA 添加後の各の STAT3、Bcl-2、Bcl-XL、Mcl-1 発現の経時的変化を調べた。用量依存性も併せて確 認した。VacA によるそれぞれのmRNA の発現変化は、real time PCR で確認した。

アポトーシスは、DAPI 染色による細胞核の形態学的変化と細胞質に放出されたヌクレオソーム を検出する ELISA キットを用いて調べた。

STAT3、Bcl-2、Bcl-XL、Mcl-1 各々の発現を抑制する small interfering RNA (siRNA)を細胞導 入し、アポトーシスを定量した。

結 果

VacA 添加後、STAT3 蛋白の発現は用量依存的に低下した。STAT3 蛋白発現は VacA(120nM)添 加後早期に認められた。realtime PCR では、STAT3 mRNA が低下していることが判明した。一方、

VacA 中和抗体の前処理或いは熱処理した VacA を添加した際には STAT3 の減少を認めなかった。

VacA 投与により Bcl-2、Bcl-XL、Mcl-1 の発現が減少した。特に、Bcl-2 と Bcl-XLの mRNA 発現低 下には有意差がみられた。VacA による STAT3 発現の低下と空胞形成との関連性を調べるため、

bafilomycin の前処理を行った。bafilomycin は VacA による STAT3 及び Bcl-2・Bcl-XLの発現に 影響を与えなかった。VacA は mitogen-activated protein kinase (MAPK) signaling pathway を 活性化するが、各 MAPK 阻害剤のうち、JNK(c-JUN NH2-terminal kinase)阻害剤を用いた場合に のみ VacA による STAT3 減弱がみられなかった。同様に、PI-PLC (phosphatidylinositol-specific phospholipase C)・MCD (methyl-β-cyclodextrin)の前処理により、VacA による STAT3 発現低下 を抑止した。STAT3 siRNA は VacA 120nM と同程度のアポトーシスを惹起した。また、Bcl-2、Bcl-XL siRNA もアポトーシスを有意に増加させた。

考 察

我々の実験結果は、VacA 本来の空胞活性には無関係に、本毒素が胃上皮細胞の STAT3 発現を低 下させ、その結果転写下流の Bcl-2、Bcl-XLなどの抗アポトーシス分子の発現減弱が起きること を示している。VacA によるアポトーシス誘発効果の機序の1つと考える。JNK 阻害剤がこの VacA による STAT3 分子の発現低下を阻止できる知見を得たが、実際 VacA は JNK を活性化(リン酸化)

す る 作 用 が あ る 。 PI-PLC や MCD は VacA と そ の 受 容 体 RPTP (receptor-protein-tyrosine phosphatase) βの lipid raft への移行を阻害するため、本過程が VacA による STAT3 発現減弱に 関与していると考えられた。

参照

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