論文内容要旨
Uncommon associations with cleft palate: Plausibility of postclosure opening as a cause of cleft palate
(非典型的な口蓋裂の発生学的検討)
Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology 29巻 1号 1-5頁 2017年 掲載
外科系形成外科学(形成外科学分野) 土屋 壮登
【背景】口蓋裂の発生機序は多くの動物実験で明らかになってきている。
口蓋は左右にそれぞれ存在する二次口蓋の口蓋棚より発生する。口蓋棚が 垂直方向に拡大成長し(Stage1:vertical phase),水平方向に回転挙上し (Stage2: elevation),2つの口蓋が接着(Stage3: adhesion), 癒合(Stage4:
fusion)することにより口蓋が形成される。口蓋裂の発生はこれらの発生過 程が障害され,口蓋の癒合不全が起こることが原因とされている。しかし ながらepithelial remnantsをもつ口蓋裂や,perforation typeの口蓋裂は 口蓋の癒合不全では発生が説明できない非特異的な口蓋裂の症例として 報告さ れて おり , これら はい ずれ も 口蓋が 癒合 後に 再 離開し たもの
postclosure opening として報告されている。また我々も自験例から口蓋
裂に分離母斑を認める症例を認め postclosure opening として報告して いる。我々はこれらの非典型的な口蓋裂の報告を渉猟するとともに,自験 例から同様の症例をretrospectiveに検討した。
【方法】昭和大学での1300例の治療例の中から epithelial remnant,
分離母斑を認めた症例,perforation typeの口蓋裂の症例を抽出した。ま た Pubmed を用いて epithelial remnants, perforation type, divided
nevusで検索し,抽出された文献を検討した。
【結果】Postclosure openingを示唆する症例は12例であった。そのう ち5例がepithelial remnant,6例がperforation type, 1例が分離母斑の 症例であった。Epithelial remnantに関する文献は3つ認め,全23症例 であった。Perforation typeの口蓋裂の報告は7つの報告があり全28症 例であった。分離母斑の報告は認めなかった。
【考察】Epithelial remnantは口蓋が癒合時に生じる上皮の迷入である
とされ,これをもつ口蓋裂の存在はpostclosure opening を示唆するとさ れる。しかしながらこれは正常児にも多く認められることが分かっており
postclosure openingを示唆するものとは考えられない。Perforation type は文献としては粘膜下口蓋裂部に認めるものと硬口蓋部に認めるものが 報告されている。粘膜下口蓋裂に伴うものは幼児または成人例での報告が 多くもともとの菲薄部が頭蓋の成長に伴い断裂した可能性が示唆される。
一方で硬口蓋部に認めるものは軟口蓋部が正常であるにもかかわらず硬 口蓋に裂が存在する。これは口蓋が前方から後方へ癒合するという点から は癒合後に再離開したと考えられる。また口蓋が胎生12 週で完成する一 方でメラノサイトの遊走が12 週で起こることを考慮すると口蓋の分離母 斑は癒合後に再離開が起きた根拠と考えられる。