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草場 麻里子 論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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草場 麻里子 論文内容の要旨

主 論 文

Abrogation of constitutive STAT3 activity sensitizes human hepatoma cells to TRAIL-mediated apoptosis

STAT3 恒常的活性化の阻害は、ヒト肝癌細胞の TRAIL 誘導アポトーシスへの感受性を高める

草場 麻里子、中尾 一彦、後藤 貴史、西村 大介、川下 浩、柴田 英貴、

本吉 康英、田浦 直太、市川 辰樹、濱崎 圭輔、江口 勝美

Journal of Hepatology・Volume 47, Issue 4, 546-555, 2007

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻

(主任指導教員:江口 勝美 教授)

緒 言

Signal transducer and activator of transcription 3 (STAT3)は、サイトカイン 等のシグナルを伝達する転写因子であり、細胞の増殖、生存、分化に関与している。

近年、STAT3 の恒常的活性化が種々の癌細胞の増殖やアポトーシス抵抗性に関与して いることが報告され、STAT3 やその活性化に関わるチロシンキナーゼは癌治療の分子 標的候補の一つと考えられている。本研究では、肝癌細胞における STAT3 の恒常的活 性化の有無、ならびに肝癌細胞の増殖、アポトーシス抵抗性における STAT3 の関与を 明らかにし、次に STAT3 の活性化を阻害することで肝癌細胞に対する抗腫瘍効果の検 討を行った。

方 法

ヒト肝癌細胞株 Huh-1, Huh-7, HepG2, Hep3B を用いた。恒常的 STAT3 リン酸化の 有無を western blot により確認し、JAK2/STAT の阻害剤である AG490 を添加し STAT3 のチロシン残基リン酸化、転写活性に与える影響を western blot, luciferase assay により検討した。AG490 による細胞増殖抑制、アポトーシス誘導の有無を生細胞数測 定と PI 染色により検討した。次に AG490 がアポトーシス関連蛋白(Bcl-xL, survivin, XIAP, Bax)や細胞周期蛋白(cyclinD1)の発現に及ぼす影響を western blot により検 討した。また、AG490 と TRAIL を併用し、アポトーシスや細胞周期に与える影響を PI

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染色で確認した。さらに、AG490, TRAIL の単独、併用治療による抗腫瘍効果を、ヌー ドマウス皮下腫瘍モデルを用いて検討した。

結 果

全ての肝癌細胞株において、STAT3 チロシン残基の強いリン酸化を認めた。一方、

SOCS3 の発現は低下ないし消失していた。AG490 は肝癌細胞株において STAT3 のリン 酸化と活性化を阻害した。AG490 は Huh-1, Huh-7, HepG2 において細胞周期停止(G0/G1 arrest)を引き起こし、Hep3B では著明なアポトーシスを誘導した。全ての肝癌細胞 株で AG490 は cyclin D1 の発現を抑制し、抗アポトーシス蛋白である Bcl-xL, survivin, XIAP の少なくとも1つの発現を抑制した。

AG490 は Huh-1, Huh-7, HepG2 の TRAIL 感受性を高め、著明なアポトーシスを誘導 した。AG490 により、これらの細胞株で TRAIL の death receptor である DR4,DR5 の発 現亢進が認められた。ヌードマウス皮下腫瘍モデルにおいて、AG490 の腹腔内投与は、

Huh-7 腫瘍の増大を抑制した。AG490 と TRAIL の併用投与はさらに強い抗腫瘍効果を 示した。

考 察

Huh-1,Hep3B における STAT3 の恒常的活性化はすでに報告されているが、本研究か ら Huh-7,HepG2 を含む4種のヒト肝癌細胞株において STAT3 の恒常的活性化が確認さ れた。これは JAK/STAT3 シグナル伝達系の negative regulator である SOCS3 の発現 がメチル化により低下しているためと考えられた。

AG490 はすべての肝癌細胞株で cyclinD1 の発現を抑制し、Huh-7 と Hep3B におい て Waf/p21 の発現を促進した。これらの変化が AG490 による肝癌細胞の G0/G1 arrest と関連していると考えられた。一方、Hep3B においては、AG490 により Bax の発現が 著明に増強し、この変化がアポトーシス誘導に繋がったと考えられた。また、AG490 は Bcl-xL, survivin, XIAP などの抗アポトーシス蛋白の発現を抑制しており、STAT3 の不活化によって、肝癌細胞はアポトーシスを起こしやすい状況に陥ると推測された。

よって、AG490 が肝癌細胞の TRAIL 誘導アポトーシスへの感受性を高めるかを検討 した。TRAIL は腫瘍特異的 death ligand として知られているが、肝癌細胞は TRAIL に抵抗性を示す。AG490 を TRAIL と併用することで Huh-1, Huh-7, HepG2 において著 明なアポトーシスが誘導された。また、Huh-7 移植ヌードマウスにおいて、AG490 と TRAIL の併用投与は強い抗腫瘍効果を示した。これらの増強効果は AG490 による TRAIL の death receptor(DR4,DR5)の発現誘導ならびに抗アポトーシス蛋白の発現抑制に よるものと考えられた。

本研究によって、JAK2 特異的阻害剤である AG490 を用いて肝癌細胞の STAT3 恒常的 活性化を阻害することで、正常肝細胞に影響することなく in vitro と in vivo の両 方において、TRAIL の抗腫瘍活性(アポトーシス誘導)が増強されることが明らかと なった。このことは、JAK/STAT3 が肝癌分子標的治療の候補となりうることを示唆す る。

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