松本 耕輔 論文内容の要旨
主 論 文
The impact of single-nucleotide polymorphisms on liver stiffness and controlled attenuation parameter in patients treated with direct-acting antiviral drugs
for hepatitis C infection
C 型肝炎患者に対する DAA 治療が肝硬度、CAP の変化に及ぼす遺伝子多型の影響
松本 耕輔、宮明 寿光、福島 真典、佐々木 龍、原口 雅史、三馬 聡、
中尾 一彦
Biomedical Reports, in press
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻
(主任指導教員:中尾一彦教授)
緒 言
C 型慢性肝炎に対する DAA(direct-acting antiviral)治療後に、肝硬度の改善、肝脂 肪化の増悪を認めることが報告されている。今回我々は DAA 治療前後の肝硬度、肝脂 肪化の変化を超音波イメージングである Virtual Touch Tissue Quantification
(VTTQ)と FibroScan(Liver stiffness measurement:LS、Controlled Attenuation Parameter:CAP)を用いて評価し、既報にて慢性肝疾患における線維化や脂肪化と関 連が報告された PNPLA3 (rs738409)、TLL-1(rs17047200)、IL28(rs809917)の遺伝子多 型との関連性について検討した。
対象と方法
対象は当院にて C 型慢性肝炎に対して DAA を導入し、投与終了後 12 週まで観察を行 い肝硬度測定、遺伝子多型を測定しえた 77 症例(男性 38 例、女性 39 例、平均年齢 68 歳、rs738409 CC/CG/GG:32/30/15、 rs17047200 AA/AT/TT:57/20/0、rs809917 GG/GT/TT:2/18/57)。肝硬度と肝脂肪化の評価には VTTQ と Fibroscan を使用した。
VTTQ は収束超音波パルス(プッシュパルス)の照射によって発生した横波の弾性波(剪 断弾性波)を超音波パルスで追跡し、その伝播速度を計測することによって組織硬度 を評価する検査法である。Fibroscan は、専用プローブによって発生された単回の剪 断波が伝播する速度を計測することによって肝臓の弾性値を測定し、また肝臓内を通 過する超音波の減衰量を計測することで脂肪量を CAP として評価する検査法である。
遺伝子多型毎の DAA 導入前と投与終了 12 週以降の VTTQ で測定した肝硬度(LS(VTTQ))、 Fibroscan で測定した肝硬度、肝脂肪化の値(LS(Fibroscan)、CAP)の変化を比較した。
結 果
全体では、DAA 治療前後で LS(VTTQ)は有意に低下(前 1.33m/s, 後 1.21m/s, p=0.006)、 LS(Fibroscan)も有意に低下(前 6.10kPa, 後 5.80kPa, p=0.017)、CAP は有意に上昇
(前 210, 後 226dB/m, p=0.048)した。遺伝子多型毎での比較としては、LS(VTTQ)は PNPLA3 の CC 群は有意に低下(前 1.39 m/s, 後 1.19m/s, P=0.035)していたが、CG/GG 群では有意差は認めなかった。TLL1 の AA 群は有意に低下(前 1.31 m/s, 後 1.19m/s, p=0.011)していたが、AT 群では有意差は認めなかった。IL28B の TT 群は有意に低下(前 1.36 m/s, 後 1.19m/s, p=0.005)していたが、TG/GG 群では有意差は認めなかった。
LS(Fibroscan)は PNPLA3 の CC 群では有意差は認めなかったが低下傾向にあると思わ れ(前 6.15 kPa, 後 5.75kPa, p=0.057)、CG/GG 群では有意差は認めなかった。TLL1 の AA 群は有意に低下(前 6.10kPa, 後 5.75kPa, p=0.028)していたが、AT 群では有意 差は認めなかった。IL28B の TT 群は有意に低下(前 6.10 kPa, 後 5.50kPa, p=0.032) していたが、TG/GG 群では有意差は認めなかった。CAP は PNPLA3 の CC 群は有意差を 認めなかったが、CG/GG 群では優位に上昇(前 204dB/m, 後 233dB/m, p=0.004)してい た。TLL1 は AA 群、AT 群ともに有意差は認めなかった。IL28B は TT 群は有意に上昇(前 213, 後 226dB/m, p=0.014)していたが、TG/GG では有意差は認めなかった。
考 察
既報にて C 型慢性肝炎に対する DAA 治療後に肝硬度が改善、肝脂肪化が増悪すること が報告されており、本研究も同様の結果となった。PNPLA3 は慢性肝疾患において肝線 維化、脂肪化との関連が報告されている遺伝子多型であり、TLL1 は線維化と、IL28B は線維化、脂肪化との関連が報告されている。遺伝子多型毎に比較した調査では、
PNPLA3 の CG/GG、TLL1 の AT、IL28B の TG/GG の患者群では DAA 治療後の肝硬度の改善 に乏しく、また PNPLA3 の CG/GG、IL28B の TT 患者群で肝脂肪化が増悪しており、DAA 治療後の肝硬度や肝脂肪化の変化に遺伝子多型が関与している可能性が示唆された。