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・㊨讐⑳ 藤沢正也

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(1)

一85一

W.F.ペ イ シ ュ著

『イ ン フ レ ー シ ョン 経 済 の 研 究 』

F.W.Paish,Stuaiesinaninflationαay Economγ(Macmillan,1962).Pp.336.

藤 沢 正 也

本 書は現 代 イギ リス経済 の不 安定要因 とな ってい るイ ンフレー ショ ンに焦点 をお 齢 て,最 近執筆 され た諸論文 を と りま とめた もの であ る。 とはい え本 書の研 究対 象 は多岐 にわた り,所 得分析 のみな らず国際金融 や企 業金融 の検討 まで及 んでい るの で,総 括 的に紹介 す る ことは難 しい。私 は ここでは ラ ドク リフ論争の 的 とな った イ ンフ レの貨 幣的 要因 に しぼ って,著 者 の見解 を トレースす るに とどめ る。

1.マ ネ ー ・ フ ロ ー の 決 定 要 因

著 者 は まず マ ネ ー ・フ ローの簡 単 な 見取 図か ら出発す る。そ れ に よ る と, 貨 幣 ス トックは価 値 保 蔵 と して用 い られ る遊 休残 高 と近 い将 来 に支 出 を予 定

され た活 動 残 高 に 分 け られ,後 者 は さ らに所 得流 通 と資 本流 通 の セ ク ターに 分 け られ る。所 得流 通 の貨 幣 は 人 々や 資 産 のサ ・一ビス対 価 と して用 い られ, 賃 銀 俸給,使 用料,利 潤,地 代,利 子,配 当 等 の形 態 を と って受 取 人 の所 得

を形 成 す る。 これ に 対 して 資本 流 通 の 貨幣 は 既 存 資産 の取 引 また は移 転 に 用 炉 られ るのみ で,新 規所 得 を形 成 しな い。 以 上 三 つ のセ クタ ーに貨 幣 を移 動 さ せ る決 定 要 因 は下 図 の如 く貯 蓄,投 資,及 び 資本形 成 で あ る。

貨幣消却 ↑ ↓ 貨幣創造

・ ㊨ 讐 ⑳

\\雛 成 謄//

資本消耗\\\⑱//負 貯蓄

(2)

さ て 著 者 に よ る と,イ ン フ レー シ ョ ソは 本 質 的 に は 貨 幣 現 象(monetary phenQmenon)で あ っ て,単 な る物 価 騰 貴 で は な い とい う。 イ ン フ レは 一一般

に 貨 幣 所 得 が 実 質 所 得 を 超 過 す る とい う現 象 を 呈 す るが,こ れ は 支 出 が 所 得 を 上 回 る か ら と い よ よ りは,総 貨 幣 支 出 が 総 貨 幣 収 入 を 上 回 る こ とに よ っ て

お こ る。 だ が この貨 幣 支 出超過 は 直 ち に イ ソフ レ圧 力 に は な らない 。貨 幣 が 既 存 の 実 物 資産 や 金 融 資産 に 支 出 され,資 本 流 通 に滞 留 す るな らば,貨 幣所 得 の増 加函 数 には な らな い 。貨 幣所 得 を膨 脹 させ るイ ンフ レ圧 力 は,貨 幣 が 人 々や 資 産 のサ ー ビス に 支 出 され,所 得流 通 に付 加 され る ことに よ って発 生 す る。 以 上 が彼 の 基本 的命 題 で あ る。

で は そ の貨 幣 は い か な る プ ロセ スで所 得流 通 に流 入 す るか 。 近 代 的 マ ネ ダ リー ・シ ス テ ムの も とでは,銀 行 が貨 幣 の主 た る創 造 者 で あ るか ら,そ れ は 銀 行 の授 信 業 務 に よ って造 出 され,受 信業 務 に よ って消 却 され る。銀 行 信 用 は まず 資 本流 通 の貨 幣 量 を左 右 す るが,銀 行 の貨 幣 供 給 が 所 得 流 通 の貨 幣量 を増 加 させ るか ど うか は,貸 出 と 証 券 投 資 の 選 択 に よる とこ ろが 少 な くな い。 とい うのは,銀 行 貸 出 に依 存 す る ものは,そ の 資金 を新 た な資 産 形成 に使 用 しが ち で あ るが,銀 行 に証 券 を 売 却 して 資金 を入 手 した ものは,そ れ を他 の既 存 資産 に乗 換 え るた めに使 用 す るか,ま た は遊 休 残 高 と して保 蔵 す る傾

く ラ

向 が あ るか らで あ る。 とは い え,貨 幣供 給 の所 得 効 果 は,根 本 的 に は 景気 の状 況(stateoftrade)に 左 右 され る。 不況 期(不 完全雇用)の 投 資 支出 は 新 た な実 物 資産 づ く りに よ る よ りは 既 存 資産 の 買付 に よ る方 が有 利 だか ら,貨 幣 の所 得 流通 へ の滲 透 は 遅れ るが,好 況 期(完 全雇用)に は逆 の事 情 に よ って, 速 か に 滲透 しが ち で あ る。

国 民所 得 の変 動 は所 得 流 通 の貨 幣量 と密 接 な 関連 を もっ て い る。す な わ ち・

あ る期 間 を 超 え た総 所 得 の変 動 は,所 得流 通 の貨 幣量 にそ の流 通速 度 を乗 じ

た も の に 等 しい と い う。こ の 想 定 は フ イ ィ ツ シ ャー 流 の 貨 幣 数 量 説 で は な く,,

(1)PP.31〜2.

{2)P,7.

(3)PP.8〜9.

(3)

F.W.ペ イ シ ュ 著 「イ ン フ レ ー シ ョ ン 経 済 の 研 究 」(藤 沢) 一87‑・

ヶ ガ リ・ジ耀 式(N・‑h.y)ま た は … 一 トソ ン流 の所 徽 量 説(P一 轟 に よ って い る。 と ころで貯 蓄,投 資 お よび 資本 形 成 は貨 幣 の流 れ を どの よ う に規制 す るか 。実 質所 得 に 不釣 合 な貨 幣所 得 の上 昇 は,企 業 と政 府 の貯 蓄 を増 加 させ る 可 能 性 が あ るが,そ れ に よって 物価 水 準 が 個 人 の 可 処 分 所 得 よ り 上 昇 す る と,消 費 支 出は抑 制 され よ う。 これ は いわ ゆ る強制 貯蓄(forced saving)で あ る。 しか し,こ うした 方 法 に よる貯 蓄 と投 資 の均 衡 に は限 界 が あ る。 公 衆 が長 期 に わ た って物 価 水 準 の上 昇 を確 信 す る よ うに な る と,「総所 得 は所 得 流 通 の安 定倍 数 で あ る との仮 設 は 崩 れ て,流 通 速 度 は 限 りな く上 昇

くの

し,結 局貨 幣 の受 取 は拒 絶 され る こ とに な る。 」 これ に反 して,貨 幣所 得 の 上 昇 が 実 質所 得 の増 加 を伴 うな らば,企 業 や 政 府 の貯 蓄 のみ な らず 個 人 の 貯 蓄 も促 進 され よ う。 この過 程 は イ ギ リスで は1952年 頃 か ら始 った が,か か る 貯 蓄 水 準 の上 昇 が 金 利 の引上 げ に よる ものか ど うか は 疑 問 だ とい う。 そ うだ とす る と,物 価 水 準 や 物 価 体 系 の変 動 が,マ ネ ー ・フ ローや イ ソフ レの 消 長 に 重 要 な意 味 を もつ こ とに な るだ ろ うが,残 念 なが らこの 点に 関す る立 入 った 分析 は本 書 には 欠 け て い る。 いず れ にせ よ,貯 蓄 の増 加は 実 質所 得(産 出高) の増 大 に よる もので,マ ネ ー ・フ ローを決 定す る要 因 と しては 不 確 実 で あ る1

とみ られ て い る。

貯 蓄 に よって造 成 され た遊 休 残 高 が 投 資 に よって 資本 流 通 に シ フ トす るか ど うか は,現 金 を 保 蔵 しよ うとす る意 慾(流 動性選好)と 既 存 資産 に支 出 す る こ とに よ って 得 られ る利 益(利 子)の 評 価 にか か る。 既 存 資 産 の 期 待 収 益 がン 上 昇 す れ ばす るほ ど,「 遊 休 残高 を保 有 す る機 会 費 用 は 大 とな り,し たが って

よ り多 くの貨 幣 が遊 休 残 高 か ら資 本 流 通 に 移動 す る もの とみ て よい」 。 また,(2)

資本 流 通 の貨 幣 が所 得流 通 に シ フ トす るか ど うか は,一 方で は 既 存 資産 の市 場価 格 とそ の期 待 収 益,他 方 で は 新 た な実物 資 産 の 生 産 費 とそ の期 待 収 益 の 関 係 に よ って決 まる。既 存 資産 価格 の上 昇 が 資本 形 成 を 刺激 す る傾 向が あ る・

ωP.9.

(2)P.11.

(4)

とい うの は,貨 幣 の 支払 慣 習 に は 依存 しな い 。社 会 に貨 幣 と実 物 資 産 しか 存 在 せ ず,実 物 資産 しか サ ー ビスを 生 まな い と仮 定 す れ ば,既 存 資 産 の価 格 が そ の 生産 費 を超 えれ ば 資 産 づ く りを 促進 して貨 幣所 得 水準 を上 昇 させ る とい う。 こ こで 注 意 しな けれ ぽ な らぬ こ とは,彼 は 実物 資 産 に対 す る支 出 も金 融 資 産 に対 す る支 出 も無差 別 に投 資 と規 定 し,ま た投 資に よる資 産価 格 の上 昇 を金 利 の低 下 と同 一 視 して い る こ とで あ る。 現 実 の資 本 主義 経 済 で は,金 融 資 産 は貨 幣 や 実 物 資 産 とは異 な った機 能 を演 ず る。 彼 は 自由 市 場 で は 各種 資 産 の期 待 収 益 は均 等 化 され,確 定利 付 債 券 の利 回 りに代 表 的 に 反 映 され る と 簡 単 に述 べ て い るが,利 潤 率 と利 子率 の範 疇 的相 違 は無 視 され るべ きで は な

い。 貨 幣 と実 物 資 産 の ほ か に金 融 資産 を 加 え た モ デ ルを設 定 しな けれ ば,金 利 の マ ネ ー ・フ ローに及 ぼす 影 響 は 明 らか に され まい。

しか し著 者 は マ ネ ー ・フ ローの諸 決 定 要 因 が いか な る相 関 関 係 に たつ か を 追 求 す る こ とに よって,金 融 的 モ ーチ ブの一 半 に は触 れ て い る。将 来 の所 得 確 保 を 目的 とす る個 人 の 自発 的貯 蓄 は,投 資及 び 資 本形 成 と密 接 に絡 み 合 っ て い る。 貯 蓄銀 行 や建 築 組 合 の如 き借 手 機 関(institntionalborrower)の 在 は,貨 幣 と引 き換 え に 高 度 の 流 動 資 産 を 提 供 す るか ら,個 人貯 蓄 に おけ

くめ

る遊 休 残 高 の比 重 を 全般 的 に低 下 させ る傾 向が あ る。保 険 金 や定 期 積 金 の如 き契 約 貯 蓄 は,投 資 の決 定 と相 互 依 存 性 が あ る。 も っ と も,そ の投 資 決 定 は

貨 幣 を所 得流 通 に還 流 させ る決 定 とは 独 立 で あ るb企 業 の場 合,貯 蓄 と投 資 の連 関 は 企業 形 態 に よ って異 な る。所 有 と経 営 の分離 した企 業 は,追 加貯 蓄 が で き るか ら資本 形 成 を行 な お うとす る し,資 本形 成 を賄 うた め に配 当制 限 等社 内留 保 もす る。 この意 味 で は 貯蓄 と投 資 は相 互依 存 的 で あ るが,資 本 形 成 の ため の追 加貯蓄 を必 要 と しな い際 で さ え,配 当 を 引下 げ た り,ま た証 券 発 行 に よって 資本 形 成 を行 な う場 合 もあ る。 これ に対 して所 有 と経 営 の不 可 分 な企 業 は,外 部 か ら長 期 資 金 を導 入 す る こ とは 困難 だ か ら,極 力 利潤 の大 半 を社 内留保 す る。す なわ ち貯 蓄 と投 資 の決 意 は 固 く結 びつ い て い る。 イギ

(1)p.21.

(5)

F.W.ペ イシュ著 『イ ンフ レー ショ ン経済 の研究 」(藤 沢)‑89一

リ ス で は 最 近,政 府 の 貯 蓄 は増 加 して い る が,投 資 と の リ ソ クは 弱 ま っ て い る 。 こ れ は 画 線 上 の 黒 字 幅 が 公 共 投 資 に よ っ て 左 右 され る の で は な く,総 要 を 調 整 し よ う とす る政 府 の意 図 的 な 政 策 に よ っ て 左 右 さ れ る よ うに な っ た か らで あ る 。 一 般 に 貨 幣 所 得 の 膨 脹 が 実 質 所 得 の増 加 を 伴 う場 合 に は,政 は 貯 蓄 と資 本 形 成 を 拡 大 均 衡(資 本蓄積)さ せ る こ とは で き るが,貨 幣 所 得 と 実 資 所 得 の 変 動 が 一 致 しな い 場 合 に は,政 府 の 貯 蓄 と投 資 も ア ソバ ラ ンス に な る 。 彼 は 以 上 の よ うに 貯 蓄 と 投 資(な か んず く資本形成)決 意 の リ ソ クは, 経 済 主 体 の 性 格 や ビヘ ィビ ァに よ っ て 異 な る と述 べ て い る。 した が っ て 貯 蓄

の 増 強 が マ ネ ー ・フ ロ ー を 減 退 させ て,イ ソ フ レを 制 御 す る効 果 が あ るか ど う か は 不 確 実 で あ る と示 唆 して い る 。

皿.イ ソ フ レ ー シ ョ ソ と 金 利

著 者 は他 の ケイ ンジ ァ ソと異 な って イ ソフ レの貨 幣 的 要 因 を重 視 しては い るが,そ の論 拠 は曖 昧 な所 得 数量 説 の域 を 出 な い 。 マ ネ ー ・フ ロー と貨 幣所 得 の 関連 に つ い て,彼 は述 べ てい る。 「貨 幣 量 が 増 加 して も,そ れ は遊 休残 高 の 活動 化 と同様 に,個 人所 得 を 引 き上 げ は じめ る まで は イ ソフ レ的 で は ない 。 そ れ らの影 響 が 既存 資産 の需 要 に 限 られ て い る間 は,金 利 を引 き下 げ るだ け

で あ る。 …… これ に反 して,企 業 が 新 たな 生産 を賄 った り,政 府 が 新 た な 財 貨 の 生産 や サ ー ビス の支払 に あ て るた め に,追 加 的 貨 幣 の貸 付 を行 な うよ う

くり

な場 合 に は,所 得 効 果 はそ くざ に あ らわ れ よ う。 」貨 幣所 得 の膨 脹 が実 質所 得 の伸 び と均 衡 して い る限 りは,流 通 速 度 は略 々安 定 して い るが,イ ソフ レ が 表 面化 して くる と,流 通 速 度 の上 昇 に よ って貨 幣 所 得 は 貨 幣 供給 よ りは速

か に膨 脹 し,イ ソフ レの末 期 では マ ネ ー・フ ライ トを お こす 。政 府 は手 も とに 遊休 残 高 が な い場 合 に は,最 初 か ら貨 幣 創造 に よ って所 得 を増 加 させ るが,

民 間 の所 得 膨脹 は た い てい まず 遊 休 残高 の動 員 に よ って 発 足 し,あ る期 間 を 経 て か ら貨 幣 創 造 に訴 え る。 「しか し貨 幣所 得 の 増 加が 顕 著 な イ ソフ レを 展

、(重)P.40.

(6)

開 しが ちな の は,そ れ が政 府 の利 益 のた め に 貨 幣量 の拡 張 に よ って 支 え られ る場 合 に 限 られ る。 これ は一 部 には 政 府 の み が借 手 と貨 幣 当 局 の役 割 を兼 ね

くユラ

て い るか らで あ る。」 以上 の 引用 文 は イ ソ フ レを お こす 場 合 の貨 幣 の性 格 規 定 に重 要 な示 唆 を与 え る もの で あ るが,彼 は この ア イ デ アを発 展 させ る こ と な く,そ こで は流 通 速 度 の上 昇 は貨 幣 供 給 の増 加 とは 異 って イ ンフ レの原 因 で は な く,加 速 度 要 因 で あ る と示 唆 して い るに過 ぎな い。

ペ イ シ ュは ラ ドク リフ,レ ポ ー トと同様 に,金 融 資 産 や金 融機 関 の ビヘ ィ ビ ァを重 視 して い るが,後 者 の よ うにそ れ を一 般 流 動性 へ の 作 用 に解 消 させ る こ とな く,信 用 の イ ン フ レ圧 力 は貨 幣 的 要 因 に よって テ ス トされ なけ れ ぽ な らな い と強 調 して い る。金 融 資産 の流動 性 が質 的 に強 化 され れ ぽ,よ り少 な い貨 幣 量 で 一定 の 総 流動 性 は 確保 し得 る。 した が って 「非貨 幣 的流 動 性 の 増 加 は形 式 的 な意 味 で は流 動 性 選 好 の減 退 を惹 起 す る し,非 貨 幣 的流 動 性 の 減 少 は流 動 性 選 好 を 強 化 しよ う。か くて非 貨 幣 的流 動 性 の 増 加 は貨 幣 量 の増 加 と同様 の効 果 を もつ 。 なぜ な ら非 貨 幣 的 流 動 性 の増 加 に よ って 解放 され た 貨 幣 は 資産 へ の追 加 的 支 出に 用 い られ て金 利 を低 下 させ るか,そ れ と もサ ー

(2)

ビスへ の支 出 に用 い られ て,一 国 の 貨幣 所 得 を上昇 させ るか らで あ る。 」 だ が 金 融 資産 の量 的 増 加 の一 般 流 動 性 効 果 は 不 確 実 で あ る。金 融 資産 は 価値 保 蔵 手 段 と して 貨 幣 に代 用 され る とい う意 味 で は,貨 幣需 要 を満 足 させ る こ と

は で きをが,交 換 手 段 と して機 能 す る こ とは で きな い 。 「あ らゆ る資 産 は 価 値 保 蔵 の能 力 に おい て あ る程 度 の貨 幣 性(moneyneSS)を もっ て い るが,い か な る時 と場 所 にお い て も,債 務 の 支払 い にお い て 広 く一 般 的 に受 領 され る

資産 と,そ うで な い 資 産 の間 に は 明確 な一 線 を画 す る こ とが で き る。 貨 幣 は 交 換 手 段 と して 独 自な サ ー ビスを 提 供 す る。 こ うした サ ー ビス の需 要 は 特 に

 の

金 融 資 産 の量 的 増大 に よ って増 加 す る。」 した が って手 形 や 債 券 の如 き金 融

(1)pp.4・2〜3.' (2)PP.72〜3.

(3)P.74.

(7)

F.W.ペ イ シ ュ 著 『イ ン フ レ ー シ ョ ン 経 済 の 研 究 」(藤 沢) 一91一

資 産 の膨 脹 は,金 融 流 通 に必 要 な貨 幣量 を 増加 させ る こ とに よって,一 般 流 動 性 を 逼 迫 させ る可 能 性 もあ る とい うわ け で あ る。

しか し著者 は貨 幣 供 給 の作 用 に つ い て は,そ れ が 直接 に所 得 を膨 脹 させ る とい うよ りは,投 資 を誘 発す る効 果 を重 視 して い る節 もあ るCr一 般理論」に 追従)。 彼 は 第3章 で,貨 幣 供 給 と金 縁 証券 の利 回 り(長 期金利)の 関 係 を 統 計 的 に観 察 して,銀 行預 金 の増 加 及 び 国民 所 得 の減 退 は長 期 金利 を 低 下 さ せ る傾 向が あ り,銀 行 預 金 の減 少及 び 国民 所 得 の増 加 は長 期 金 利 を 上昇 させ

る傾 向が あ る と述 べ て い る。 これ に対 して銀 行 券 の国 民所 得 に対 す る比 率 は 長 期 的 に安定 して い る し,そ れ は金 利 の変 動 と も一 致 して い な い 。 これ は 彼 の解 釈 に よ る と,銀 行 券 は専 ら所 得 流 通 に使 用 され るに反 して,銀 行 預 金 は 資 本 流 通 に用 い られ てい るか らで あ る。 「貨 幣 が 資 本流 通 に導 入 され る と, 資 産 価格 を上 昇 させ る傾 向が あ る。 資産 が 確定 利 付 債券 の形 態 を と る場 合 に は,そ の価格 上 昇 は利 回 り及 び長 期 金 利 を低 下 させ る。 … … 若 干 の銀 行 券 は 所 得 流 通 の一 部 を形 成 し,銀 行 券 と同様 に そ の 絶 対量 は 国民 所 得 に比 例 して 変 動 す るで あ ろ うが,銀 行 預 金 の大 半 はそ れ 自体 投 資 と して資 本 流 通 に とど ま るか,資 本取 引 きの金 融 をつ け るた め に 資 本 流 通 に と ど ま って い るの で あ

くユ 

る。 した が って金 利 に 直接 影 響 を与 え るのは 銀 行 預金 の変 動 に限 られ る。 で は 金 利 の変 動 は なぜ 国民 所 得 の増 減 と一 致す るか 。 そ れ は 第一 に所 得 が 増 加す る場 合 に は,そ の流通 に 必 要 な貨 幣 量 も増 加す るか ら,銀 行 預 金 は所 得 流 通 か ら資 本 流 通 に シ フ トし,し た が って 資産 価 格 が 下 落す る か らで あ る。 第 二 に,所 得増 加 の プ ロセ スで 資産 価 格 が 全般 的 に上昇 す る と して も, 期 待 の状 況 に よ って,金 融資 産 なか んず く確 定 利付 債券 の価 格 上 昇 は 実物 資 産 のそれ に立 遅れ る傾 向が あ るか らで あ る。所 得 膨 脹 は当 初,遊 休残 高 の動 員 に よ って 支 え られ る と して も,そ の た め に は,ま ず 金 利 の上 昇 に よ って, 遊 休残 高 の コス トが 増 加 しな け れ ば な らな い。 彼 は 国 民所 得 と薄 期 金 利 の関 係 を 以 上 の よ うに 考 察 して い るが,そ こで は 次 の よ うに 重 要 な ポ イ ソ トが 見

(1)P.63.

(8)

逃 され て い る よ うに 思わ れ る。す なわ ち 国民 所 得 の 増 加が 利 潤 率 の上 昇 と密 接 な関 係が あ る とす れ ば,予 想 利 潤 率 の上 昇 は 金利 の引 き上 げ要 因 とな るだ ろ う。 また 国民 所 得 が減 退 す る よ うな不 況 期 には,予 想 利 潤 率 は 低 下す るが, 資産 価 値 の確 実 な債 券 な ら,そ の利 回 りも低 下 す るだ ろ う。 これ は金 利 が 究 極 に お い て利 潤 率 に 規制 され ざ るを得 な いか らで あ る。 だが この 点 に関 す る ペ イ シ ュの ア プ ロー チは 次 の通 りで あ る。す なわ ち実物 資 産 所 有 か ら得 られ る所 得 が増 加 して い る とす れ ば,そ の 期待 も強 化 され るか ら,右 資 産価 格 は 従 来 の所 得 ベ ー ス に よ る利 回 りを遙 か に下 回 るほ ど上 昇 す るが,債 券 価 格 は 下 落 して,そ の市 場 利 回 りも上 昇 し続 け る と。 この よ うに 所 得 と金利 の背 反

く  

運 動 は,各 種 資 産 の相 対 価格 の変 動 に還 元 され て い る。

した が って 国民 所 得が安 定 して い る場 合 に は,銀 行 預 金量 を 増 減 させ る こ とに よって,金 利 を上 下 させ る こ とが で き る。 しか しそ の金 利 が 所 期 の よ う に保 合 し安 定 す るか ど うか は,投 資 及 び 消 費 支 出 の動 向 にか か る 。好 況 期 に は 金利 の低 下 は,遙 か に実物 資 産 や サ ー ビス に対 す る支 出及 び 国 民 所 得 の増 加 とい う反 応 を 招 くが,所 得膨 脹 が 自発 貯 蓄 や 財政 支 出 の引 き締 め等 に よって チ エ ックされ な けれ ば,銀 行 の預 金 創 造 に よ る以外 は,低 金 利 政 策 を 継 続す る こ とが で きな い 。 これ に反 して 不況 期 に は,金 利 の低 下 が 投 資 や 消費 支 出 を 刺 激 す る速 度 は 弱 く,一 般 に所 得減 退 を ス ロー ダ ウソさせ る程 度 の効 果 が認 め られ るに過 ぎな い 。 したが っ て 以上 の説 明 で は,金 利 が 景 気 を本 源 的 に 刺 激 す るか 抑制 して,イ ソフ レ ・デ フ レを制 御 す る力 を も って い るか ど うか は 不 明確 で あ る。 彼 は前 述 の よ うに,イ ソ フ レ ・デ フレを貨 幣 現 象 で あ る と規 定 して い るが,そ れ に は積 極 的 な論 証 を 欠 い て い る。 第7章 で は,1950年 代 に お け る イギ リス の イ ソフ レ要 因が 実 証 的に 分 析 され て い るが,そ こで は む し ろ コス ト 。プ ッシ ュか デマ ソ ド ・プ ルか とい うよ うな リア ル ・フ ァク ターが マ ネ ダ リー ・フ ァ ク ター と独 立 に分 析 され て い るに過 ぎ な い。

イ ギ リスで は 実 質所 得 に対 す る名 目所 得 の比 率 は1951年 か ら1957年 にか け

(1)P.64.

(9)

F・W・ ペ イ シ ュ 著 『イ ン フ レー シ ョ ン 経 済 の 研 究 』(藤 沢)‑93一

て27.2%(年 率4%)上 昇 し,消 費 者 物 価 指 数 も25%上 昇 した 。 これ は通 説 に よ る と,労 働 組 合 の賃 上 げ 運 動 に よ る もの といわ れ て い るが,実 際 は1953〜

55年 に か け て賃 銀所 得 の上 昇率17%に 対 して,会 社 の粗 利潤 上 昇率 は24%で あ った 。 「賃 銀 が 利 潤 を 犠 牲 に して増 加 した とい う証 拠 は な い 。む しろ企 業 の収 益 が 増 加 した か ら,利 潤 マ ージ ンを大 幅 に 引上 げ なが ら,同 時 に賃 銀 や

   

俸 給 の 支払 い を 増 加 させ る こ とが で きた ので あ る。 」 これ は,出 来 高 払 いや 超勤 手 当 の増 加 に よる実収 賃 銀 の上 昇 が 団体 協 約 に よ る賃 銀 ベ ース の上 昇 を 超 過 した とい う事 実 とと もに,賃 銀 及 び物 価 水 準 の上昇 が 組 合 の圧 力 よ りは 企 業 の 支払 い 能 力 の上昇 に よ って 支 え られ た こ とを 立証 す る もので あ る。 し た が って50年 代 の イ ン フ レ圧 力 は 明 らか に デマ ン ドの推 進 力 に よ る もので あ

る。 しか も個 人 の 消 費 支 出 は 自発 貯 蓄 の増 強 に よ り,政 府 支出 は財 政 の 引 き 締 め に よって,そ れ ぞれ 総 支出 に 対 す る 比 重 の 低 下 を 来 して い るのに反 し て,民 間 投 資 支 出,特 に設 備 投 資 の比 重 は一 方 的 に上昇 して い る。 した が っ て,こ の間 の イ ンフ レ圧 力 は も っぱ ら設備 投 資 需 要 に よ る もので あ る と彼 は 述 べ て い る。 こ うした投 資 需 要 が 貨 幣 創 造 に裏 付 け られ た 金 融機 関 の低 利 資 金 供 給 と密接 な 関連 のあ る こ とは疑 の余 地 が な い が,ペ イ シ ュの理 論 体 系 は そ の よ うな線 で 問題 を 解決 す る説 明 の筋途 を 閉 して い る よ うに 思わ れ る。

租.イ ン フ レ対 策 と して の 財 政 金融 措 置

イ ンフ レ対 策 の 目的 は貨 幣 所 得 の膨 脹 を阻 止 す る こ とで あ っ て,そ の政 策 手 段 は 直接 統制,財 政 操 作,金 融措 置 の三 つ に大 別 され る。 い ず れ も貨 幣が 所 得 流 通 に滲 透 す るの を チ ユ ックす る効 果 が あ るが,厳 密 な意 味 の金 融政 策 (mOnetarypOliCy)は 総 貨 幣 供 給 を 間接 に 規 制 す る 金 融措 置 に 限 られ る。

イギ リスで は終 戦 直後 イ ソフ レ対 策 と して は もっぽ ら直接 統制 に 依存 して い た 。 そ れ は 最高 価 格 の公 定 とか 重 要物 資 の 配給 割 当,設 備 投 資 の規 制 等 の実 物 面 に対 す る 統 制 ρみ な らず ・ 証 券 発 行 や 銀行 借 入(貸 出)の 規制 等 金 融 面

(1)p.107.

(10)

に対 す る統制 に まで 及 んで いた 。 こ うした 直接 統制 は有 効 需 要 を凍 結 して 所 得 膨 脹 の悪 循環 を た ち切 る と と もに,貨 幣 の流 通 速 度 を ス ロー ・ダ ウ ソさせ て,イ ソフ レの表 面 化 を 抑 え る効 果 は あ った が,そ れ のみ で は貨 幣供 給 の増 加 に よ るイ ソフ レ圧 力 を根 本 的 に除 去 す る こ とは で きなか った 。194《)年代 末 期 か ら行 な われ た 政 府 支 出 の削 減,増 税 等 に よ る黒 字 財政 は民 間 の 自発 貯 蓄 とあ い ま って貨 幣 供 給 を 直接 制 限す る とい う意 味 で,イ ンフ レ対 策 と して 重 要 性 が あ った。

しか し財 政 当 局 が 画線 上 の黒 字 を計 上す る こ とが で きて も,剰 余 金 の 処 理 い か ん に よ っては,デ イ ス ・イ ソフ レ効 果 は変 わ って くる。 そ れ は 中 央 銀行 の金 融 措 置 と不 可 分 の関 連 を もつ が,著 者 は方 法 論 的 に次 の三 つ に分 け て, こ の問題 を 考察 して い る。 第 一に所 得流 通 か ら貨 幣 を 引 き揚 げ るが,資 本 支 出 の増 加 を放 任す る場 合 。 当 局 は剰 余 金 に よ って市 中銀 行 の手 持 ち国債 や 国 有 産 業 に対 す る貸 出 を 償 還 す る。 これ に よっ て銀 行 の現 金 準 備 そ の他 の流 動 資産 は増 加 す るが,収 益 資 産 は 低下 す るか ら,銀 行 の貸 出 及 び 証 券 投 資 の意 慾 と能 力 は 強 化 され る。 これ は 財 政 引 き 締 め に よって 惹 起 され る 期 待 収 益

 の

の 低下 とあ い まって 長期 金利 を 引 き下 げ る傾 向が あ る とい う。 第 二 に所 得流 通,資 本 流 通 の両 面 か ら財 政 黒 字分 だ け貨 幣 を 引 き揚 げ る場 合 。 当 局 は剰 余 金 に よっ て 中央銀 行 の政 府 債 務 を償 還 し,か つ 市 中 保 有 の大 蔵 省 証券 を消 却 す る。 これ に よって 中央 銀 行 の 資産 は市 中銀 行 の現 金 準備 の減 退 と同額 だ け 減 少 す る。 そ こで市 中銀 行 は割 引市 場 か ら コール を 回収 す るか ら,後 者 は 公 定 歩 合 に よ る借 入 に お い こまれ る。 した が って市 中 の短期 金 利 は 全 般 的 に上 昇 す る と と もに,銀 行 の流 動 性 比 率 は 低下 す る。 だ が 実際 は,財 政 当 局 は剰 余 金 に よって大 蔵 省 証 券 の発行 を減 少 させ る こ とが で き る場 合 は,直 接 に 中 央 銀 行 の大 蔵 省 証 券 を償 還 しな い で,満 期 に な って も新規 発 行 を しない とい う措 置 を とを。 そ れ は短 期 市 場 に 資 金 を注 入 す る と と もに,大 蔵 省 証 券 を減 少 させ る こ とに な るか ら,短 期 金 利 は 二 重 に 低下 す る。 しか し銀 行 や 市 場 の

(1)PP.130〜1.

(11)

F・W・ ペ イ シ ュ 著 『イ ン フ レ ー シ ョ ン 経 済 の 研 究 』(藤 沢) 一95一

大 蔵 省 証 券取 り分 が 減 少す れ ぽ

,銀 行 の流 動 性比 率 の低 下 は まぬ がれ な い。

銀 行 は この よ うな流 動 資 産 の減 退 に 直 面 して,収 益 資産 を 引 き締 め な け れ ば な らない が,銀 行 の預 貸率 は不 当 に低 下 して い る現 状 だ か ら,銀 行 は 貸 出 よ りは む しろ証券 投 資 を抑制 す る傾 向が あ る。 か か る銀 行 の態 度 は 証券 価 格 を 下 落 させ(長 期金利を上昇 させ),長 短 の金 利 隔差 を 拡大 す る。 こ うして 証 券 市 場 が悪 化 す る一 方,銀 行 の短 期 債 も澗渇 す れ ば,銀 行 は 資本 の減価 損 を か ぶ って まで,長 期 証 券 を売 処分 して貸 付 資 金 をつ くる よ りは,貸 出を制 限 す るだ ろ う。 この 『ローザ効 果』 は ラ ドク リフ報 告 の キイ ・ポイ ソ トで もあ る が,著 者 はそ れが 所 得 を減 退 させ る意 義 が あ る と して も,金 利 に対 す る影 響

は 「新 た な実 物 資産 の期 待 収 益 の減 退 に よって 惹起 され る 投 資 需 要 の 低 下 が,投 資 に利 用 され る資 金 供 給 の減 退 を ど の程 度相 殺 し超 過 す るか に依 存 す

くり

る」 とい う不 確 実 性 が あ る と指 摘 してい る。

しか し この 国 で は,1948〜50年 に 超均 衡 予 算 が編 成 され た だけ で,そ れ 以 後 は 今 日に い た る まで 予 算 外 の支 出 を上 回 るほ どの経 常 収 支 の黒 字 は 計 上 さ れ ず,し た が って 国債 残 高 は ネ ッ トで は 殆 ん ど減 少 して い な い。 だ が 国債 の 借 換 え(funding)は,金 融 引 き締 め の重要 な 武 器 とな って い る。 そ れ は まず 資 本 流 通 か ら貨 幣 を 引 き揚 げ て 金利 を上 昇 させ,投 資 を 抑制 しよ うとす る も ので あ る。 イ ギ リスで は預 金通 貨 が 貨 幣 供 給 の大 半 を 占め,し か も預 金 通 貨 の創 造 は,中 央 銀 行 の 適格 資 産 た る大 蔵 省 証 券 の供 給 と密接 な関 連 が あ る 。し た が って 公 定歩 合 の 引 き上 げ は,貨 幣 供 給 の制 限 に は確 か に有 効 で あ るが,そ れ は 国債 費 の増 加 とい う高 価 な犠 牲 が避 け られ な い た め,ま た イ ソフ レ対策

と して は短 期 金 利 よ りは長 期 金 利 の 引 き上 げ の方 が 重要 で あ る とい う観 点 か ら,「最近 で は他 の流 動 資 産 に 比 して現 金 を 不足 させ る よ うにす るば か りで な く,銀 行 に対 す るあ らゆ る流 動 資 産 の供 給 を ま とめ て減 少 させ る可 能 性 が 注

月 を ひ い て い る 。 」 そ の 手 段 と して は,1.大 蔵 省 証 券 の 発 行 残 高 は 不 変 と

(1)p、130.

(2)p.133.

(12)

一96一 商 学 討 究 第13巻 第4号

して も,よ り多 くを銀 行 以外 の買手 に 保有 させ る,2.銀 行 に大 蔵 省 証 券 の 償 還 手 取 金 を もって政 府 証 券(債 券)に 投 資 させ る,3.銀 行 以外 の買 手 に 政 府 証 券 を 売 出 して,そ の 資 金 で大 蔵 省 証 券 を償 還す る。 以 上 の三 つ が 考 え られ る。だ が 著 者 に よ る と,1は 金 融 が 逼 迫す るに と もな って,大 蔵 省 証 券 の レー トを益 々引 き上 げ な けれ ぽ な らな い か ら,そ の犠 牲 は高 価 な もの に な る。2は 銀 行 の流 動 性 比率 が 低 下す るに と もな って 実 行 困難 に な る。3そ で本 格 的 に金 融 を 引 き締 め るた め に は,公 衆 に対 して 政府 証 券 を売 出 し,こ れ を 保有 させ なけ れば な らな い。

この本 格 的 な売 オ ペ レー シ コンは,証 券 市 場 に 対す る定期 的 発行 に よって 行 なわ れ て い るが,全 額 消化 され な い場 合 に は,中 央 銀行 をふ くむ 政府 機 関 に よって 下 引 受 され,時 機 をみ て証 券 市 場 に放 出 され る。 した が って 政 府 証 券 はた えず 市 場 レー トで 公衆 に提 供 され るわ け で あ る。 だ が この 方法 に よ る

と,財 政 当 局 は大 蔵 省証 券 の償 還 資金 を 入 手 す る前 に 政府 の所 要 資金 を手 当 しなけ れ ば な らな い ぼ か りで な く,毎 年満 期 とな る数 億 ポ ソ ドに上 る中期 債 の償 還 資金 も し くは借 換 資金 を用 意 しなけ れ ば な らな い 。 「したが って 資本 流 通 の貨 幣 量 が あ る程 度制 限 され て くる と,財 政 当 局 は いわ ゆ る借 換 操 作 に よ って金 融 引 き締 め を 一 段 と強 化 した り,銀 行 の流 動 資 産 及 び 預 金 の再 上昇

(1)

を阻 止 す る こ とさえ 益 々困難 に な る。 」 ま こ とに この 国 は1951年 以降 フ レキ シ ブル な金 融 政 策 に 転換 した といわ れ て い るに もか か わ らず,イ ンブ レ対 策 と して の金 融 引 き締 め は貸 出規 制 の如 き直接 統 制 や 支 払 準 備 制 度 に依 存 せ ざ るを 得 なか った の は,借 換 え操 作 の限 界 を 示す もの にほ か な らない と著 者 は 断定 して い る。

ペ イ シ ュは 以上 の よ うに 財 政 金 融 措置 の デ イ ス ・イ ン フ レ効 果 は単 に貨 幣 供 給 の制 限 のみ な らず,金 利 の変 動 に 左右 され る と ころが 少 な くな い と示 唆 して い るが,金 利 の上 昇 は どの よ うな プ ロセ スで 貨 幣所 得 の膨 脹 を阻 止 す る だ ろ うか 。彼 は前 述 の よ うに金利 引 き上 げ の 消費 支 出 また は 貯 蓄 に及 ぼす 影

(1)p.134.

(13)

F.W.ペ イ シ ュ 著 「イ ン フ レ ー シ ョ ン 経 済 の 研 究 」(藤 沢) 一97一

響 は不 確 実 で あ る と して,そ の効 果 を疑 間 視 して い るが,資 本 支 出,特 に新 た な実 物 資 産形 成 の た め の貨 幣 支 出 に作 用す る こ とは 認 めて い る。 「金 利 の 上 昇 は二 つ の作 用 を もつ 。 そ れ は 一 方 で は 投 資 を制 約 し,貨 弊 が 資本 流 通 か ら所 得流 通 に 流 入 す るの を 緩和 し,他 方 で は 遊 休 残 高 の 機 会 費 用 を 引 き上

(1)

げ,し たが って流 通 速 度 を 促進 させ る。」 流 通 速 度 の上 昇 は 金 利 引 き上 げ の 効 果 を相 殺す るか にみ え るが,こ の 場合,遊 休 残 高 の動 員 に は限 度が あ るか ら,資 本 流 通 の逼 迫 に と もな って 金利 は上 昇 を 続 け,つ い に貨 幣所 得 の膨 脹 は 終始 符 を うつ とい う。 な お所 得膨 脹 を チ エ ックす るの に どれ ほ どの高 金 利 を要 す るか は期 待 の形状 に依 存 す る。 イ ン フ レの初期 に は,企 業 家 の予 想 収 益 が 重 要 で あ って,比 較 的控 え 目な金 利 上 昇 で も,投 資採 算 を 悪化 させ て, 貨 幣 の 資本 流 通 か ら所 得流 通 へ の シ ブ トを制 約 す る。 しか しイ ンフ レの末 期 に は,消 費 者 の物 価 に 対す る予 想 が ものを い う。 彼 に よ る と,消 費 者 が 毎 週

100%の 物 価 上 昇 を 予 想 す れ ば,消 費 支 出の増 加 を 抑 え るに は毎 週100%の 金 利 引 き上げ が 必 要 だ とい う。 け れ ど も著 者が 金 利 に弾 力 的 な投 資 と して 重 要 視 して い るの は,や は り在庫 投 資 よ りは設 備 投 資 であ る。 した が って 政 策 的 に は 長期 金 利 の操 作 が 重 要 で あ る。 「一般 的 に 金利 の 引 き上 げ に よって相 対 的 に不 利 とな るの は耐 久 資 産 の 造成 で あ る。 なぜ な ら耐 用 期 間 のな が い 資 産 ほ ど金 利 コス トの比 重 は高 く,諸 資本 費 の なか で 減価 償 却 引当 金 の 比 重 は

  ラ

低 くい か らで あ る。」 つ ま り金利 の上 昇 は機 械 や 車 輔 の如 き,資 本 の 回転期 間 や 資本 価値 に不 安 のあ る固 定 資産 よ りは,建 物 の如 き耐 用 期 間 のな が い安 全 な設 備 資産 に強 い影 響 を及 ぼす とい う。

しか し金 利 の 引 き上 げ に よって 設 備 投 資 を ス 召一 。ダ ウ ン させ る た め に は,長 期 金利 が 上 昇 す るだ け で は 不十 分 で あ る。 た とえぽ 社 債 の発 行 条件 が 現 在 悪 化 した と して も,、それ は近 い将 来 に好 転 す る もの と予 想 されれ ば,短 期 の繋 ぎ資 金(社 債前借)に 相 当 な高 利 を 支払 うこ とが で き る。金 融市 場が 単

(1)p.112〜3.

(2)p114.

/

(14)

一 で 借手 ,貸 手 とも資金 を 自由 に選 択 的 に貸 借 し得 るシ ス テ ムの も とで は,

「長 期 金 利 の引 き上 げ に よ って設 備 投 資を効 果 的 に阻 止 す るた め に は,短 期 金 利 の相 当 大 幅 な 上 昇 か,そ れ と も短 期 資金 の供 給 を量 的 に制 限 す る必 要 が

くわ

あ る。 」 著 者 は この 点 を第10章 で さ らに展 開 して,次 の如 く述 べ て い る。金 本 位 制 度 を通 貨 の価 値 が 金単 位 も し くは金 単 位 で 固定 され た他 国通 貨 に リソ

クされ て い る制 度 で あ る と規 定す れ ば,イ ギ リス現 行 の シ ス テ ム も金本 位制 度 に近 い 。だ が 新 本 位 制 度 は 旧本 位 制 度 とは違 って,金 利 政 策 の一 義 的 目標 が 直接 に 国際 収 支 を 調 整 して 正 貨 準備 を 防衛 す る こ とに あ るので はな く,貨

幣 所 得 の調 整,な か んず くイ ソフ レ対 策 に あ る。 したが って 旧本 位 制 度 に お い て は短 期 金利 の操 作 に 重 点が おか れ,長 期 金 利 は放 任 され た が,し か も長 期 的 に は安 定 して い た 。 これ に対 して 新 本位 制 度 の 政 策 目的が 貨 幣所 得 の安 定 に あ る とす れ ば,設 備 投 資 に作 用 す る長 期 金 利 の操 作 に 重 点 を お か な けれ ば な らな い 。 「金 利 の 引 き上 げ に よって 高 度 耐 用 資産 の造成 を十 分 に阻 止 す る た め には,次 の 二 つ の条件 の いず れ か が満 た され な けれ ば な らな い。 あ らゆ る金 利(金 利体系)が 同様 に 引続 き上 昇 す る もの と期 待 され る(長 期金利の上昇 が,短 期金利の大幅な上昇をともな う)か,そ れ と も 追 加 的短 期 資金 は いか な る

くの

条 件 で も入 手 で き な くな るか い ずれ か で あ る。 」 短 期 金 利 の上 昇 は前 述 の よ うに 財 政 負 担 や 国際 収 支 負担 を 加 重す る と す れ ば,短 期 金利 の 引 き上 げ に よ って 金 利 体 系 を 全 般 的 に 上 昇 させ よ う とす る オ ー ソ ドッ クスな 金 融 措 置 くbillsonlydoctorine)は 好 ま し くな い 。 そ れ に この 国で は,市 中 銀行 は従 来 か ら貸 出 の制 限 を 金利 の引 き上 げ に よる よ りは量 的 な制 限(選 別融資)に 依 存 して い る し,金 利 に敏 感 な手 形 金 融 も衰 頽 して い る実情 で あ る。 「銀 行 の 許 容 す る限 度 内 の短 期 金 利 の変 動 は投 資決 定 には 僅 か な作 用 しか 与 え て い な い 。 … …短 期 金 利 上 昇 の影 響 力 は主 と して心 理 的 に 発揮 され て い る よ うに 思 わ れ る。す なわ ち当 局 の意 図を 示 す もの と して か,ま たは 長期 金 利 に対す る影

(1)P.114.

《2)p.183.

(15)

F・W・ ペ イ シ ュ 著 「イ ン フ レ ー シ ョ ン 経 済 の 研 究 』(藤 沢) 一99一

響 を通 じて。だか ら今や信 用制 限の投 資決定 に作 用す る二つの主要な手段 は

(1)

短 期 資金 の量 的制 限 と長期 金 利 の 引 き上 げ に よ る もので あ る」 。 したが って この 問題 に関 す るペ イ シ ュの見 解 は 本 質 的 に は ラ ドク リフ ・ドク トリ ソに近 い といわ なけれ ば な らな い。 私 は この よ うな政 策 論 に は大 きな 疑 問 を 招 い て

い るが ,その批 判 的 考 察 は 別 の雑 誌 に発 表 した か ら,それ らを 参 照 され た い 。(2)

(1)P.184.

(2)「 銀 行 研 究 」353〜8号(昭 和36年7月 〜12月)。 『バ ン キ ン グ 」172号(昭 和37年 7月).

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