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松 下 慎 也

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図 書 館 と 展

鬼 云臣‑=‑ .,,6

1.  図書館における展覧会の意義 2.  展覧会の企画

2‑1  企画・テーマの選定 2‑2 出品資料の選択 2‑3  展示のレイアウト 2‑4  解題執籠• 目録作成 2‑5  広報

3.  展覧会の運営 3‑1  資料の搬送 3‑2  会場の設営 3‑3  会場運営 3‑4  展覧会と資料保存 4.  早稲田大学図書館と展覧会

付. 早稲田大学図書館展覧会年表

松 下 慎 也

図書館において、展覧会は重要な意味を持つ行事のひとつである。 本来、図書館は資料や情報を提供し、学習や研究を支援するための施設 であるが、大学図書館や公共図書館には、展示のためのスペースや設備が 用意されているところが多い。本格的な展示設備を備えた「ギャラリー」

と呼んでいいような立派なものから、会議室やイベントスペースと兼用で きる多目的な空間まで、図書館により仕様はさまざまであるが、展覧会と いうものが、図書館の行うパブリック・サービスの一つとして意識されて いることは間違いない。

早稲田大学図書館においても、 1991年の中央図書館開館以後、 2階の利 用者入口の手前右奥の位置に、やや狭い憾みはあるが一応専用の展示室を 設け、各種の展示会を開催してきた。また、大学共用の施設として、旧図

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書館である 2号館1階に大隈記念展示室があり、やや規模の大きな展買会 に使用されている。

旧館時代には、 7号館2階に大隈記念室があり、図書館や大学主催の展 覧会に使用されていた。本学にはこのほかに、坪内逍遥博士を記念する演 劇博物館があり、常設展示や企画展示を随時開催していることは言うまで

もない。

展覧会とは、ある特定のテーマや趣旨にもとづいて、関連する資料を一 堂に集めて陳列し、参観者の観覚に供するものである。もとより博物館や 美術館はそれを日常業務としており、博物館学芸員のような専門職がその

企画運営にあたっているわけであるが、図書館において展覧会はメインの 業務とはいえない。図書館で展覧会をひらく場合、その業務を担当するの は、司書や一般事務系の職員であり、しかもその多くは、本来業務を持っ たまま、臨時業務として担当することになる。

展覧会準備業務は、以下に述べるように、きわめて労働集約型となりや すい業務であるといえる。しかし、図書館の行うべきサービス、文化事業 の一環として、展覧会が位置づけられている以上、まして早稲田大学図書 館のように、初代市島春城館長時代から数多くのきわめて充実した展覧会 を催してきている歴史のある固書館においては、今後とも多くの展覧会を ひらかねばならないだろうし、 内容、運営方法とも充実させ改善してゆか ねばなるまい。

筆者は旧館時代、特別資料室に在籍していた関係上、さまざまな規模の 展覧会業務を経験してきた。ここでは、それらの経験と反省にもとづいて、

図書館における展覧会開催にあたってのノウハウや注意事項、望ましい運 営法などについていささかの管見を述べ、よりよい展覧会のありかたを考 えてみたいと思う。

はじめにお断りしておくが、 以下はあくまで図書館において行う展覧会 についての見解であり、展示業務を専門とする博物館や美術館の立場に 立ったものではないことを申し添えたい。

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図柑館と展笈会

図書館における展覧会の意義

図書館は言うまでもなく、基本的には図書(書籍、図画)を集める施設 であるから、そこで行う展覧会も、おもな資料としては図書が中心である。

書物の歴史をひもとけばよくわかるが、図書というものは時代が下るほ ど、展示するには不向きな形態となってゆく。製本された本というものは 一箇所しかひらけないので、たとえば非常に珍しい本でタイトルページの

木口木版の絵が重要な書誌学的価値を持ち、なおかつ見返しに著者自筆の 献辞があるというような場合でも、どちらか一箇所しか展示できない。そ の点、書物の古い形態である折本や巻物、コデックスやフォリオのような ものは、もっと多くを展示することができるわけである。

もともと、本がこんにちのような形態を得たのは、読みやすさ=機能性 を追求した結果であるから、本が展示に向かないのは当然である。本は手 にとって読むためにこそあるのであって、ガラスケースの中に飾るために つくられているわけではない。

図書館における展覧会は、その目的を分類すると、次のようにだいたい 4つに分けられると思われる。

1) メモリアル ・セレモニーとしての展覧会 2)  教育・ 研究目的の展覧会

3)  図書館の広報 ・利用者教育の一環としての展覧会 4)  エンターテインメントとしての展覧会

展覧会のタイトルは、「何々記念」と銘打たれることが多い。1)のメモ リアル・セレモニーとしての展覧会は、大学の行事とも結びついている場 合が多い。最近のでは「大隈重信侯生誕150 年記念」とか「雑誌 早稲 田文学創刊100年記念」といったようなものや、「追悼 井伏鱒二」などと いった展覧会がそれである。図書館が主催する展覧会の中で、この種の展

‑ 3 ‑

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覧会の比重はきわめて重い。

早稲田大学を会場として各種学会が随時開かれているが、それを記念し て展覧会を開催するよう、学会から要望されることも多い。この場合、上 記1)よりも2)の意味合いの方が強くなる。というのも、学会記念の展覧会 で要求されるのは、決まって、その学問分野における早稲田大学図書館所 蔵の貴重書の展示であるからである。本図書館には国宝2点、重要文化財 5点をはじめ、学術的価値のある貴重・ 稀糀な文献資料が数多くある。こ れらは、普段は特別資料室内の貴重書庫に厳重に保管され、よほどのこと がないかぎり自由に閲覧できない。利用はほとんどの場合写真複製により、

展覧会にさえレプリカを展示する場合もある。しかし、固書館における展 示の大半は、まずこのような貴重書・稀餓資料を用いた展示であるといっ てよいだろう。普段めったに拝めないそれらの資料を展示することには、

むろんそれなりの意味はあるが、取扱いに注意すべきことも多い。 図書館で収集した特殊コレクションなどの整理が終了したとき、新収資 料のいわば「お披露目」の意味で展覧会を行うことがある。これは、上記 2)と3)の意義と目的をあわせ持っている。この場合でも多くは貴重書が中 心となる。

そのほかに考えられるのは、図書館の広報活動の一環として展示を行う 場合である。利用指導もしくは利用者教育の目的を持った展覧会も、数は 少ないがときどき行われている。最近では明治期資科のマイクロ化事業に ついての展覧会や、図書の劣化とその対策についての展覧会などが行われ た。前者は当時の明治期資料マイクロ化事業室、後者は資料保存部会が企 画主宰したもので、図書館の行っている事業や、現在図書館界で問題に なっていることを、展覧会のかたちで伝えようとしたものである。さらに たとえば、 一般的な図書館の利用法とか文献の探索法、現在図書館が考え ている図書館の未来像などといったテーマについても、展覧会という形式 でメッセージを伝えることができるし、かなり有効ではないかと思われる。

さらに考えられるのは、 4)の利用者の娯楽のための展覧会である。小稿

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図困館と展買会

の末尾に付した展覧会年表でも窺えるように、当図書館で行われてきた展 覧会は圧倒的に1)および2)の、いわば固苦しい展覧会が多く、一般の利用 者が興味を持ちそうなテーマで行われたことはほとんどない。もとより大 学図書館は学習 ・研究のための施設ではあるが、息抜き、ゆとりの空間を 提供して、利用空間のアメニティ(快適性)に配慮することも、また必要 ではないかと思われる。良識と節度は必要としても、見てたのしいもの、

目に快いものを並べ、学生向けのエンターテインメントとしての展覧会も、

当然企画されてよいのではないかと考える。

展覧会の企画

2‑1  企画・テーマの選定

展覧会はまず企画をたてるところから始まる。 企画をたてる際に最低限必要なことは、

・展覧会のテーマ、タイトル(仮題でも よい)

• 開催期間

・会場

• 主催者、実務担当者

が明確になっていることである。これらが決定していなければ、具体的 な企画の検討に入ることができない。つまり、だれが、いつまでに、なに を、どこに、どのように準備すればよいかが明確になっていなければなら ず、それらに関する意思決定のシステムが確立していなければならない。 大抵の展覧会は、きわめて漠然とし、曖昧なところからスタートする。 たとえば、今年は誰々の生誕100年にあたるからその記念の展覧会を行い たい、とか、これこれの学会が開催されるのにあわせて展覧会をひらきた い、というように。これらの漠然としたテーマに形をあたえ、曖昧なコン セプトを明確にしてゆくのが、企画という作業である。

その展覧会が固書館独自の企画か、大学主催のものか、学会や他機関等 と共催のものかによって、その内容や意思決定のプロセスが異なる。また

‑ 5 ‑

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予算規模によっても異なるが、とりわけ注意すべき点は、その展覧会の実 質的な主体はどこにあるかという点である。図書館で行う展覧会といって も、実際には固書館外の人の意向が大きく関わる可能性がある場合がきわ めて多い。たとえば、つぎのような場合が考えられる。

1)  学内・学外の組織・機関と共催の場合

2)  ある人物の回顧展などで、本人や遺族、研究者などが関与している 場合

3)  ある特定分野(たとえば、日本近代文学といったような)に関する 展覧会で、学内の教員、学外の研究者が監修にあたっている場合 4)  陳列すべき資料が固書館所蔵のものでは足りず、 他機関や個人の協

力を必要とする場合

5 )  

図書館以外の会場(たとえば、デパー トの催事場など)を借りて行 う場合

これらのどれかに該当するような場合は、企画段階での意思決定が曖昧 になってしまうことが多い。囮書館の担当者が最適と考えたことであって も、監修者や研究者、その他の関係者が同じ判断をするとは限らない。こ ういう場合、とにかく恐ろしいのは、準備がかなり進行したあとで、それ らの判断のくいちがいが明らかになり、部分的にやりなおしになってしま うことである。そうしたことを防ぐためにも、図書館外の関係者との十分 なコミュニケーション、信頼関係を確立しておく必要がある。

早稲田大学固書館では十年くらい前から、展覧会の企画を決定するのに ともない、必ず責任者と担当スタッフを決め、いわばプロジェクトチーム を組む形で展覧会準備作業を行ってきたが、それ以前は特定の課や係の業 務として位置づけられていたこともある。どちらの方法がよいのかはいち がいには言えないが、その都度、適任者を選んでスタッフとするプロジェ クト方式の方が、館員の研修的側面からも、よいように思われる。

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図書館と展翌会

現在、早稲田大学固書館では「広報委員会」の下に「展示部会」を設け、

図書館主催の展覧会の年間計画や担当スタッフの選任、会期・会場の設定 や予算の運用などを行っている。

ある展覧会の企画を決定した場合、本来はその企画が適切かどうかを チェックする機能が館内になければならない。早稲田大学図書館では、展 示部会で企画案をつくり、広報委員会でそれを審議して、課長会で承認す るという形をとっているが、実際には最初の企画段階からすでに形骸化し ており、実際の具体的な企画は、選任された展示担当スタッフにまった<

委されることが多い。展示部会で示すことができるのは、せいぜい実施ス ケジュールと使用可能な予算の枠組くらいであり、こまかい点まで具体的 に企画するわけではない。

テーマとスケジュールが決まった段階で、担当スタッフは企画概要を策 定し、できればそれを企画書としてまとめ、館内および関係者に周知して おくことが望ましい。また、その際、展示会場の詳細図(展示ケース、壁 面などの実寸入り)を付しておくとよい。

企画書に書くべき必要事項はつぎのようなものである。

・展覧会の名称

• その展覧会の目的、趣旨

・スケジュール(会期)

• 会場(詳細固)

• 担当責任者、スタッフ、監修者、協力者

・予算の見積り

• おもな出品資料、概数

• 必要となる印刷物(展示目録、ポスター、ハガキなど)

これらの事項はスタッフ間で十分検討し、監修者 ・関係者とも協議の上 で決定する。とくに、その展示会の目的・趣旨について、担当スタッフ全

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員が明確に認識していることが重要である。

予算については担当者に見積りを示しておく必要がある。大規模な展覧 会の場合には、事前に予算申請をしておくことが必要である。

また、企画書とは別に「趣意書」のようなものを作成して、関係機関に 協力を依頼する必要がある場合もある。たとえば平成5年 (1993) 7月に 校友作家で第1回の大学の芸術功労者受賞者である井伏鱒二氏が亡くなっ たとき、大学では翌年1月に同氏の追悼展覧会を開くことを決め、つぎの ような趣意書を作成して関係者・関係諸機関に発送した。

「 追悼 井伏鱒二展」へのご協力のお願い

現代日本を代表する作家であった井伏鱒二氏が、本年七月、九 十五歳の天寿を完うされて永眠されました。

氏は、その若き日を早稲田の学窓に学び、また早稲田界隈で青 春時代を送られました。早稲田大学では、さきに昭和六十年、そ の年より新たに設けた「早稲田大学芸術功労者」の第一回受賞者 として、ためらうことなく氏を選び、また氏も、こころよくこれ をお受けになりました。

このたび、早稲田の誇りというべき偉大な先輩のご逝去にあた り、大学ではその追悼のため、記念の展覧会および講演会を明年 一月に開催することといたしました。現在、図書館を中心として 鋭意準備中でございますが、貴所におかれましては何とぞこの企 画の趣旨をお汲みいただき、ご協力を賜りたく、ここにお願い申

し上げます。

なお具体的には、図書館の担当者よりご所蔵資料の拝借のお願 いをさせていただきますが、宜しくご高配を賜りますよう、お願 い申し上げます。

敬具

(9)

平成五年ー0月二五日 殿

図書館展覧会

早 稲 田 大 学 総 長 小 山 宙 丸

井伏鱒二展のような大学主催の展覧会では、学内に実施委員会が構成さ れ、そこで企画概要および予算につき承認を得ておく必要がある。また、

前述したように、関係者との連絡を密にしておくことも重要である。井伏 鱒二展の場合には、井伏氏のご夫人に当時の安藤常任理事と野口図書館長、

監修者である平岡文学部教授が挨拶に出向き、ご遺族のご承認とご協力を 取りつけてのち、実際の作業をスタートした。

展示テーマ、趣旨・目的、会期、会場、担当スタッフ、予算額などの企 画概要が決定されると、それに従って準備作業のスケジュールが組まれ、

スタッフ各自の役割分担を決めて、準備にかかることになる。

もっとも標準的な展覧会の準備作業のフローチャートを図1に示す。

準備作業においてもっとも大切なことは、時間の管理である。それは、

「いつの時点までに、どの作業がどこまで進んでいなければならないか」

ということを明確につかんでおくことである。とくに担当責任者は、つね に全体の進行度合を頭に入れておかねばならない。

決定された展覧会の会期から逆算すれば、個々の準備業務の具体的なス ケジューリングができる。実際には、展覧会の規模により、また関係者・

関与者の多寡により、作業に要する時間は異なるし、とつぜん外から企画 が持ちこまれ、ほとんど余裕のないままに取りかからねばならないことも 多いのだが、できれば余裕をもったスケジュールを立てるに越したことは ない。

スケジュールを確実に把握し、進行の度合をチェックするために、スケ ジュール管理表をつくっておくのも一法である。ただしこれは、あくまで も目安として用いられるにすぎない。というのも、大がかりな展覧会にな ればなるほど、企画段階では想像も及ばなかった問題や障害があらわれて、

‑ 9‑

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企 画 概 要 決 定

(半年前)

担当スタッフ決定 予 算 見 積 り

(3 ‑4月前)

現 物 調 査 苔誌溝在採寸

(I凋布カード作成)

I

出品資科決定・リスト作成

会場運営・警備

撤収・資料返却

1 展示準備業務の流れ

‑ 10 ‑

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図杏館と展梵会

スケジュールを狂わせることが多いからである。

2‑2  出品資料の選択

企画の概要が決定されると、つぎに必要となるのは、なにを展示するか という検討である。

展示の目的、趣旨に沿った資料を選んでゆくことになるが、同時に、す でに会場は決まっているわけであるから、展示できる資料の数量を、あら かじめ設定しておくことが肝要である。

とくに研究者や教員が監修する場合、あらかじめ展覧会場のイメージと、

展示資料の許容量について、監修者に情報を与えておく必要がある。多く の場合、監修にあたる研究者は実際的でなく、夢想的でさえあり、物理的 に不可能な数量の資料を展示することを要求してくることがある。つい

「あれも、これも」となるわけだ。

しかし実際に資料を集め、陳列する立場から言えば、展示空間に対応す る資料の適量をあらかじめ把握しておかねばならない。そのためには、展 示会場の構造と、展示可能空間の実寸を最初にきちんと把握しておくこと が必要である。

一般的に言って、展示の設備は造りつけのガラスケースと移動式の覗き ガラスケースがその主なものである。前者は壁面に、 50‑80cmくらいの奥 行きを持って造られ、壁面とその前の平台の上に展示物を飾ることができ る。その上で、全面をガラス板で覆い、施錠できるようになっている。壁 面の上の縁には、額などを吊り下げるためのワイヤーロープのフックがか けられる鋼製のピクチャー ・レールが取りつけてあるのが普通である。

展示のレイアウ トを考えるとき、つねに、「壁面の処理」ということが 大きな問題となる。通常、壁面には額入りのものや掛軸などを飾るわけだ が、テーマによっては、そう都合よく壁面をうめる資料がみあたらないこ とがある。しかし、平台にだけ資料が並んでいて壁になにもないのは寂し いし、奇異な感じを与える。壁面に飾るべき生資料があまりない場合には、

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写真パネルなどを作成して空間を埋める工夫も必要となる。

会場の構造と、展示ケースの実寸、とくに内寸を確実に把握しておかね ばならない。過去、某デパートの催事場を借りて行った展覧会で、持ちこ まれるケースの寸法をよく把握していなかったために、他機関から借用し てきた資料をすべて並べることができなかった例もあった。

時間に余裕がある場合は、展示テーマに沿っていると思われる資料をラ ンダムにあげてゆき、そのなかから選択するのがよい。テーマに沿って、

展示するべき資料を選定する作業は、展覧会の内容を決めるもっとも重要 な作業である。

しかし、闇雲に資料を集めても使えないことも多い。相互に関連のない 資料をいくら並べても、説得力のある展示を構成できるとは限らない。

はじめに展覧会の企画を決定する際、おおまかな展示の流れを考えてお く必要がある。どのような資料をどのような原則に従って並べるか、その

イメージがある程度明確になっていることが望ましい。たくさんの資料の なかから当てもなく捜すのではなく、ある条件を設定して、その条件を満 たす資料を集めるのである。

たとえば「井伏鱒二追悼展」というテーマを与えられたならば、井伏鱒 二氏の生い立ちから青春、文壇デビューから活躍時代、井伏氏をとりまく

人々、井伏氏の人となりを示すエピソード"…•といったように、時系列を 主とする展示構成が考えられる。それらの構成に必要な資料は何かという ことを、まず考える。すると「生い立ち」では故郷の風景とか、幼児期・

少年期の写真といった資料が必要となり、「文壇での活躍」となれば自筆 の原稿、有名な作品の初版本や初出雑誌、受賞式での写真などといったも のがすぐに思い描ける。むろんこうしたことは、監修者がいる場合委せて よいのだが、担当者も実際の展示のイメージをつねに持っていた方がよい。

そのためには、事前にそのテーマについて、ある程度の知識を得ておく 必要がある。図書館にある資料は、ほぼ全学問分野をカバーするものであ るから、論理的にはあらゆるテーマで展覧会を開催し得る。しかし現実に

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図紺館と展罠会

大限重信展出品候補資料カード

Ho. 

沢 料 名

文 吝 書 問 書 蹟 原 稿

著作者名 分 類 告 藉 雑 誌 新 聞 写 真

絵 画 彫 刻 博 物

M・T・S  その他( ) 

発 行 者 形 態

学 内 数皇

寸 内 寸 C

学 外

請 求 番 号 注 外 寸

cm 

現物照合 済•未済

記入月日 記入者

図2

‑ 13 ‑

(14)

は、展示スタッフに選任された固書館員は、多くの場合そのテーマについ てほとんど素人同然である そうした意味からも専門の研究者の助言 •監 修はぜひ必要なことなのであるが、実際に筏料をならべて展示を構成する のは図書館員であることを忘れてはならない。

展示候補資料は、すべて事前に現物を調査し、以下の各項目について情 報を把握しておかねばならない。

1)  資料のタイトル、著作者、年代などの書誌的事項

2)  形状(図書か、絵画・写真などの非図書資料か。図書の場合、冊 子体か、巻物等か)

3)  特徴(彩色の有無など)

4)  寸法(縦

x

横X高さ、または奥行きcm、掛け軸の場合は、軸の長 さ。展示する形にしたうえで実測する。たとえば、本ならば開いた 状態、巻物は展示すべき部位の長さ)

5)  飾る位置(壁面か、平台か)

6)  その資料が展示のテーマの上でどのような意味を持つか。

7)  展示する場合の重要度。どうしても必要か、あればよいという程 度か。

8)  資料の所在。図書館外の所蔵の場合の貸出の条件など。

9)  その資料の一般的価値。保険をかける場合の評価額。

10)  その他注意事項(劣化しているか、破損はあるかなど)

資料に関するデータは、一定のフォーマットに従って記述されることが 望ましいので、あらかじめ調査カードを作成しておき、それに書き込める ようにするとよい。図2はその例である。このカードはコピーをとるなり、

回覧するなりして、担当スタッフ全員が情報を共有できるようにしておく ことが重要である。

監修者の意見を参考にして、会場の構成を考えながら、出品する資料を

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図魯館と展翌会

一つずつ確定してゆく。この際、図書館所蔵資料だけなら問題はないが、

テーマによっては他からの借用が必要になる場合がある。たとえば1994年 の秋に開催した「北村透谷展」では、 100点ほどの展示資料のうち、早稲 田大学図書館所蔵のものはほんの数点で、ほとんどのものは借用資料で あった。夭折した作家であるため資料が少ないのはやむを得ないが、これ はかなり異例のことである。

他機関、個人などから資料を借用する場合、館長名、展示責任者名、借 用期間・条件などを明記した借用証書を作成し、借用の際に先方へ預けて おかなければならない。

また、他からの資科借用に際しては、保険をかけることが必要となる。 信頼関係が成立している所蔵者の場合、これを省略することもあり得るが、

原則として保険をかける。

保険といっても、多くの場合、所蔵者にとってはお金には代えられない いわば宝物ともいうべきものであるから、借用、搬送等には十分注意し、

信頼できる運送業者を選び、事故がないよう万全の注意を払うべきである ことは言うまでもない。

保険をかける場合、個々の資料の評価額を示すことが必要になる。古書 や原稿などの場合、古書店の目録などを参考にすればある程度の評価はで きるが、所蔵者との信頼関係を損なわぬためには、ある程度高めに評価す る方がよい。

借用資料の搬送には、かならず担当スタッフが立ち会うことが必要であ る。前述した、「北村透谷展」の場合、電話で依頼したところ宅急便で資 料を送ってきた所蔵者もあったが、そのようなことは稀であり、かならず 担当者が所蔵者の前で現物を確認し、借用証書を渡した上で梱包、搬送す るべきである。

出品候補資料が出そろったところで、会場のレイアウトを考えあわせな がら、最終的に展示する資料を選ぶことになる。

出品する資料を確定すると、一覧できるよう、「出品資料リスト」を作

‑ 15‑

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成する。このときに資料番号が与えられ、またこのリストが、展示目録の 原稿となる。

2‑3  展示のレイアウト

レイアウトとは、展示会場に資料をどのように並べるかということであ る。一つのテーマに沿った展示である以上、資料はばらばらに置かれるの でなく、ある論理性のもとに順序立てて並べられなければならない。

まず最初に決めるべきことは、会場の入口から入って右回りに並べるか、

左回りに並べるか、という問題である。

よほどのことがないかぎり、和漠の資料は右から順に左へ並べてゆき、

洋の資料は左から順に右に並べてゆくのが基本である。これを逆に並べる と、見ている人は違和感を覚える。和漢の文字は右から左へ行がうつって ゆき、洋書は左から右にページが進むので、この順序が自然なのである。 1995年3月に行った「洋学資料展」のような展示では、和洋の資料が入り

まじるので、むずかしい面もあるが、和洋混合している場合には、絶対数 の多い方の並べ順を採用するのがよい。

字のない資料、たとえば絵画のみの展示の場合は右回りでも左回りでも よいが、その場合は、キャプション(解説プレート)を縦書きにした場合 左回り、横書きにした場合右回りとすればよい。

寸法入りの展示会場の詳細図面の上に、展示資料を一つ一つ、寸法を計 算しながらあてはめてゆく 。資料と資料の間は約20‑50cm、最低限でも 数cmは開けることが望ましい。展示空間に資料が入りきらず、重なりあっ てひしめいているような展示をときおり見かけるが、また、早稲田でも結 果としてそうなってしまった展覧会もあるが、飾る側からはあるいは「充

実している」などと感じられたとしても、やはり、あまり見よいものでは ないから、そういう満艦飾のような事態はなるべく避けたい。

むろん、その資料がどれもきわめて重要であり、ぜひ展示するべきもの ばかりであるときはやむを得ないが、展示はなるべくゆったりとしたもの

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図書館と展覧会 16/1/錢釈犬 15珪令;;

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展示レイアウト図の例

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でありたい。もし隙間のないほど詰めこまねばならぬとしたら、それは展 示会場の選択を誤ったのである。

レイアウトは全体の構成、展示の流れをつねに考えに入れながら行うこ とが肝要といえる。たとえば全体を四部構成とした場合、会場全体をおお まかに四つに分け、それぞれの空間において、壁面と平台の関係にも留意 しながら最適と思われるデイスプレイを考えてゆかなければならない。

一つの資料のかたまりをある長さの空間に割りふる場合、展示空間の長 さが資料の寸法をすべて加算した長さより長い場合はそのままでよいが、

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資料の寸法の方が長くなる場合には、途中で比較的小さい資料を二段にし て飾るとか、資料のうちいくつかを引っ込めるといった検討をしなければ ならない。

つぎに資料一つ一つを並べる順序をきめる。これはたとえば年代順とい うような、統一された原則に則って並んでいるのがわかりやすいし望まし いが、多少入れ違ってもよい。たとえば、ある資料とある資料を並べて比 較するというような展示効果のために、年代順の並びをすこし入れ替える、

ということはあってよいし、むしろそうするべきである。

図面の上でのレイアウトはいくらでもやりなおしがきくので、時間のゆ るすかぎり詳細に検討するべきであるが、ひとつ注意すべきことは、計算 間違いである。一つ一つの資料の採寸が間違っていたり、転記する際に誤 記してしまうことがよくある。これが全体のレイアウトに歪みを生じさせ ることがよくあるので、注意が必要である。

図面はラフでよいから、どの資料をどこにおくかが一目でわかるものを 作成しておき、展示設営の際に使用する。実際に現物を並べてみると、机 上で考えたときとまたイメージが変わる場合もあるが、もちろんその場合 は、臨機に変更してもよいのである。レイアウト図はあくまでおおまかな 指針にすぎず、それ以上のものではない。時として、きわめて詳細精密な 縮尺図などつくつて、かえって失敗することがある。

展示目録を作成するか否かにかかわらず、出品する資料には展示番号を つける方がよい。目録をつくる場合には、できるだけ番号順に並べた方が 見やすいし、観覧者は目録に沿って見てゆくことができる。しかしこれも、

あまり早い段階から番号をつけると、あとで出品追加が出たときなどに番 号をずらす必要が生じ、要らざる混乱をおこすもとにもなる。

図3は、 1996年3月に開催した「早稲田大学蔵貴重書展」の会場レイア ウト図の例である。

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園書館と展究会

お わ り のくにぐんじ ひゃくせい 1ブぶみ

1 尾張国郡司百姓等解文

文庫12‑1

永延

2

( 9 8 8 )1 1

8

日 写 一 弘 安

4

( 1 2 8 1 )   8

5

1

巻 重要文化財

平安時代中期に尾張国の郡司らが国司の苛政 を中央政府に訴えた文雲の古写本。

(「古文書 集 ー 」 所 収)

4 展示キャプションの例

2‑4 解題執筆・目録作成

展示資料はただ並べておくだけでは何のことやらわからないので、資料 のそばに、その内容について簡潔に説明するプレートを置くことが必要に なる。これをキャプショ ンというが、資料番号、資料名、著作者、成立年 代といったいわゆる書誌的事項のほかに、簡単な解説を付す場合もある。 固4は「早稲田大学蔵貴重書展」のキャプションの例である。

キャプションは展示物が何であるかを観覧者に示すために置かれるもの であるから、なるべく平易、かつ、わかりやすいものが望まれる。事前に 何の知識ももたない観寛者を想定して作成するべきである。そのためには、

読みにくい字にはかなをふったり、元号に西暦を付したりすることは、ぜ ひ必要であるだろう。またそのほうが教育的効果もある。

かつては、 キャプションは写植に出したり、それが間に合わなかったり 予算がなかったりすると担当者が手書きで作成していた。本館の特別図書 をひもとくと、ときおりいつの展覧会のものか、毛筆で書かれた展示キャ プションがはさまっていたりする。最近は日本語ワードプロセッサとレー ザープリンタの進歩によって、 比較的簡単に、短時間で作成できる ように なり、 隔世の感がある。

キャプショ ンの字体も、今は、いろいろ選べるので、可読性を考慮に入

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れて選ぶべきである。展覧会場の普通よりも暗い照明のもとでは、明朝体 のようなほそい字は読みとりにくい 和文• 欧文とも、ゴチック系の太い 文字を選んだほうがよい。できあがったキャプションは発泡スチロールの パネルに貼り、カッターを用いて、上下左右1‑2 cmの余白をのこしてき れいに切り、展示資料のわきに添える。

展示目録は観覧者の手引きとなり、あとに記録として残るので、できれ ば作成しておくに越したことはないが、展覧会によっては、とくに作らな くてもよいこともある。 1993年2月に行った「本が壊れてゆく―図書の劣 化とその対策」展では、目録は作成せず、図書の劣化問題を簡単に解説し たチラシをこれに代えた。この展覧会は、劣化してボロボロになった本や 雑誌や新聞を展示したので、その資料は劣化のサンプルとして出しただけ で目録を作るのは無意味だったからである。また、 1995年12月の 「早稲田 と映像の一世紀」展でも、通常の展示目録を作らず、映画100年史の年表 を作ってこれに代えた。

しかし、通常の展覧会では、出品資料を列記する目録の作成は不可欠で あろう。早稲田大学図書館では通常、目録として8ページから12ページ程 度の小冊子を印刷発行しているが、規模の大きな展覧会の場合、図録を作 成することもある。最近では1987年秋の「幕末・明治のメディア展」、

1988年 5 月の「好十郎展」、同年 10 月の「生誕150年記念•大隈重信展」、

1989年11月の「ワセダと現代の作家たち」展、 1991年10月の「早稲田と文 学の一世紀展」などでは、早稲田大学図書館としては異例といえる大冊の 展示図録を作成している。上記図録のいずれもが図書館の担当スタッフに よって編集されたものだが、展覧会準備業務と並行して、 100ページ以上 ある図録を編集するのはたいへんな仕事である。

ここでは、通常の展示目録について述べる。

出品資料が確定し、 リストができたら、それをもとに展示目録の割付け を考える。印刷の都合上4の倍数が好ましいので、8ページ、もしくは12 か16ページといったところで考える。

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固苦館と展笈会

つぎに判型(大きさ)をきめる。早稲田大学図書館では伝統的に、 A5 判の目録が多く作られている。国立公文書館や憲政資料館、宮内庁書陵部

などで出す展示目録も、多くはA5判である。判型は展示の規模、資料の 量、予算額などを勘案して決定する。

つぎに、内容をきめる。12ページとした場合の例として「早稲田大学蔵 貴重書展」(資料影印叢書国書篇完結記念、 1996年3月)の目録は次のように なっている。判型はA5判である。

1頁 表紙(展示タイトル、会期、会場、主催者名)

2頁 空 白

3頁 開催にあたって(館長のことば)

4頁 総 長 の こ と ば

5頁 影印叢書刊行委員長のことば 6頁‑9頁展示目録(二段)

10頁‑11頁 影 印 叢 書 国 書 篇 刊 行 一 覧 12頁奥付(発行年月、担当者名)

「北村透谷展」や「洋学資料展」の目録はB5判とし、展示資料一つず つに解説を付した。上記の「貴重書展」の場合は、目録は書誌的事項のみ にとどめ、前述のごとくキャプションに簡単な解説を入れた。

展示資料に解説を付す場合、目録に付すのがよいか、キャプションにつ けた方がいいかはいちがいには言えない。両方についていればいいわけだ が、キャプションは字数が多くなればなるほど見にくくなるので、なるべ く少ない字数で簡潔に書かねばならない。せいぜい2行、 50‑60字程度が 限界であろう。一般に、ある事項を解説する場合、少ない字数のなかに必 要な事実や情報を盛り込むのは至難のわざである。解説というものは、短 いほど書くのがむずかしいといえる。

さらに、そもそも、「図書館員が解説を書くのが適当か?」という問題

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がある。

図書館で展示するような資料は、多くは学術的資料であり、なかには、

通説を越えた研究成果が出てきているようなものもあるだろう。しかし展 示を担当する図書館員が解説を執筆する場合、よほどのことがないかぎり は、ありきたりのことしか書けない。歴史資料であれば「国史大辞典」、

蘭学資料であれば「洋学事典」などを見て、そこにある解説を短くパラフ レーズして書くだけである。学生向けには、それでもいいのかも知れない が、専門の研究者が見れば、よく知らずに書いていると多分わかってしま

うだろう。

かといって展示の解説を研究者に頼むのも考えものである。おそらく、 60字以内とか、 200字以内といった制限はいとも簡単に破られるだろう。 おまけに、その分野を専門に研究しているからといって、文章が簡潔で平 明であるとはかぎらない。

昔は展示資料にいちいち解説などはつけなかった。極めてぶっきらぼう に、図書館のカードそのままの書誌的事項を記して、それでおしまいだっ た。読みがなさえも振っていなかった。「知るひとぞ知る」でよいのだ、

と言わんばかりで、もちろん、学会の人しか見にこないような特殊な展示 の場合はそれでいいし、それはそれでひとつの見識ではあるわけだが、専 門家でない観覧者にとっては、これほど不親切なこともないだろう。

「展示デザインの原理」の著者、ロジャー

・S

・マイルズは書いている。

事前の知識をもたない一般観覧者には、展示の意図や意味はわかりにく く、茫然の態で展示室を一巡して、無駄な時間を過ごすことになる。この ような状況が続くかぎり、展覧会は、素人に劣等感を抱かせるための壮大 な道具でしかない……

上述したような8‑12頁程度の小冊子の目録であれば、原稿の発注は開 催の 1か月前までで十分間に合うが、当然これも余裕を見て発注するほう

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図書館と展買会

がよい。とくに出品資料の多くを外部からの借用にたよっている場合、関 係者の記憶違いや思い込みなどが原因で、目録に記載された資料が出てこ ないといった事態も起きる。何によらず事前の確認が必要なのだが、種々 の理由によりそれができないこともある。あらゆる危険性にそなえて、目 録の末尾にはつぎの文言をつけくわえておいたほうが無難である。

「会場の都合により、 一部、目録と異なっている場合がございますので ご了承下さい。」

2‑5  広報

どんなによい展覧会を企画しても、観覧者が米なければなんの意味もな い。大学図書館でやる展覧会は、入場料をとって利益を上げることを目的 にしているわけではないから、大入り満員になる必要はないが、ある程度 の人数は集まるに越したことはない。

そこで展覧会の予定を、あらかじめ各方面に広報し、宣伝しておくこと が重要になる。大学図書館における展覧会の広報手段は、一般的にはつぎ のようなものがある。

・ポスターを作成し、学内や関係機関に頒布し掲出を依頼する。

・ 案内ハガキを作成し、関係者にダイレクトメールとして送る。

・ 図書館の広報紙、大学内の広報紙に予告を掲載する。

• 関係学会等の機関紙、広報紙に予告を掲載する。

• 大学の広報課などを通じ、あるいは直接に、マスコミ等に宣伝する。

大学図書館のサービス対象は、学生および教職員であるから、まず学内 への広報がもっとも重要である。通常は広報紙に予告を出すほか、直前に は昔ながらの立て看板を学内の要所に立てるのが効果がある。また、イン ターネットのホームページに展覧会の予告を載せるのも有効である。

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「井伏鱒二展」などのように、 一般社会にもインパクトがあるような展 覧会のときは、マスコミから取材がくることもある。1994年1月に開催し た同展は、その時点では、前年の夏に井伏さんが亡くなってから、いちば ん早い大規模な回顧展だった。この展覧会は事前に読売新聞にかなり大き な記事が載り、おわったあとでも週刊文春にとりあげられた。むろんこれ は、井伏鱒二という偉大な文学者の余徳の賜物であっただろう。このよう に一般的な話題性のあるテーマの場合はべつとして、大学でやるような展 覧会は、たいてい地味なものであるので、マスコミに華々しく取りあげら

れるようなことはほとんどないといってよい。

広報・宣伝はなるべく早い時期から行った方がよい。展覧会の企画概要 がある程度固まり、承認を得た段階で、その内容を流すべきである。

ポスターおよび案内ハガキは、直接的な広報手段であるが、通常、大学 の予算では、ポスターデザインをプロのデザイナーに依頼する余裕はない。

したがってこれも展示担当スタッフの仕事となるのが普通である。 箪者も何十回となく展覧会ポスターの制作にかかわったが、よいポス ターをつくるのは難しい。よいポスターとは、伝えるべき情報内容が一目 でわかり、なおかつインパクトがあって、しかも大学の行事らしく品格の あるものをいう。多くの場合、その展示につかう代表的な資料の写真と展 覧会のタイ トル、会期、会場などを組み合わせて作成するが、あまりよく できたと思った記憶はない。

ポスターとハガキは同じ図柄にしていっぺんに印刷してしまうことが多 い。これもなるべく早い時期の納品が必要であり、おおむね展覧会開催日 の2週間前までくらいに出来あがっていなければならない。そこから逆算 すれば、 1か月か1月半前にすでに発注していなければならない。

展覧会の運営

3‑1 資料の搬送

展覧会場に資料を運び入れる作業は、通常、開催日の前日に行う。

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図書館と展翌会

出品資料リストに従って資料を出納し、展覧会会場まで搬送する。図書 館の展示室であればブックトラック等で運ぶが、遠い会場の場合は梱包が 必要となる。

梱包は美術運送等の専門家に依頼するのが最も望ましいが、自分たちで やらなければならない場合も多い。出品資料のうち他から借用するものが ある場合、借用する際に梱包することが必要となる。

資料の梱包の基本原則は、資料が損傷することのないよう、なるべく衝 撃を受けにくい状態に梱包するということである。資料によって梱包方法 は当然異なるが、殆どのものは薄葉紙(はくようし)で現物をまず包み、

それをエアーキャップで包んで固定する、というのが原則である。 資料を借りる場合、所蔵者の目のまえでこの作業をおこなうので、その 信頼をえるためにも、資料を大切に扱うところを見せなければならない。 なるべく白手袋をした方がよいだろう。それも軍手などではまずい。ドラ イバー用の綿の白手袋がよい。

巻物や掛軸の取扱い方も心得ておかねばならない。巻物を巻きひろげ、

巻きおさめるとき、左手で巻軸を支持し、右手で巻いてゆく。巻きつけ方 も中心からずれないよう、きつ過ぎずゆる過ぎぬようつねに注意する。巻 紐はひらきはじめるとき、巻頭の中に入れ、出てこないようにする。巻き おさめたら、左手に巻物を持ち、右手で紐を重ねないように巻きつけてゆ き、紐の末尾をふたつ折りにしてくぐらせ、固定する。何度か練習しなけ ればできない。掛軸も同じ要領であるが、幅がひろいものが多いので、で きれば二人で扱う。掛軸を巻きおさめるとき、風帯 (表装の上部に付いてい る左右二本の帯)を折り目に添ってきちんと畳み込むのを忘れないように する。掛軸の紐は、中央に持ってきて巻き、末尾を二つ折りにして、掛け 紐にくぐらせ固定する。練習が必要である。

現物をよく確認し、傷や破損などあるときはそのむねを所蔵者に確認し てから、丁寧に薄葉紙でくるむ。薄葉紙は二、三枚重ねて用いる。それを さらにエアーキャップで包み、ガムテープで止める。エアーキャップは凹

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凸の面と平らな面があるが、平らなほうを表にして包む。

額入りのものは必ず、ガラス側でないほうにガムテープがくるようにし、

ガラスの側にはエアーキャップの上に「ガラス注意」などとマジックイン クで書いておく。また、扁額や屏風仕立てのものは、搬送中破れるのを防 ぐ意味で「平積み無用」などと書いておき、立てて運ぶようにする。

一枚ものの資料、未装丁の文書、原稿、書簡などは、あらかじめ用意し た中性紙の封筒やタトウにおさめる。

包装後、展示番号をそれぞれに付しておくのを忘れないようにしたい。 搬送に注意を要するのは、彫刻である。ブロンズなどの場合は問題はな いが、石膏や粘土の像はきわめて割れやすいので、慎重なうえにも慎重な 取扱いが必要である。これらはエアーキャップで包むだけでは危ない。車 の震動だけでも影響があり、いちばん安全な運び方は、人間が手で持って 歩いて運ぶことである。厄介なのでなるべくなら石膏彫刻は借用しないに 越したことはない。

エアーキャップで包装を終え、展示番号を付したもののうち、取扱注意 のものを除き、段ボール箱に入れる。段ボールのなかで隙間があいたとき は、新聞紙などをパッキンとしてつかい固定するようにする。箱ごとに資 料の展示番号を控えておき、何個口の何番というように箱番号もつけ、記 録する。

資料の搬送は、きわめで慎重を要する作業であるので、とくに借用に行 くような場合、かならず担当スタッフは複数で行動したい。

3‑2 会場の設営

資料を会場に運びこみ、梱包を解いたら、用意してあるレイアウト図に したがって、資料をディスプレイする作業に入る。

展覧会の印象を左右するのは、展示室の床や壁面の色や質感である。薄 汚れていたり、多くの色や材質が混在していたりすると印象がよくない。 とくに資料の置かれるケース内の汚れ、ごみやほこりを丁寧に取り除いて

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図古館と展詫会

おくことが必要である。

筏料が直接置かれる台には、落ち着いた色のフェルトなどの布を敷きつ めるのがよい。壁面と色を合わせるのが最も好ましいが、それが不可能な 場合でも、調和のとれた色の組み合わせを考える。壁や床の色は、展示物 を目立たせる背景であり、地色であるから、展覧会の内容、雰囲気に合う 色を選び、できるだけ統一をはかるべきである。資料が置かれる布の色―

つで印象はがらりと異なる。一般的には深い色、紺、黒、焦げ茶、濃いえ んじ色などがよく、黄色や緑色、桃色やオレンジ色などは避けた方がよい。

会場を整備した後、搬送してきた資料の入った段ボール箱などをあけ、

出品目録リストと照合しながら資料を出す。桐箱や峡に入っているものは それらから出し、レイアウト図に従って、とりあえずその近辺に置く。空 の箱や峡は資料番号を書いた付箋をつけてまとめておく。

設営はまず壁面から行う。壁面にすべての資料を飾り終えたあとで、平 台の森科にとりかかる。

壁面で注意すべきことは、資料を飾る位置である。高過ぎてもよくない し低すぎるのも感心しない。また、並んだ資科がでこぼこしてもよくない。 そのようなことを防ぐため、まずはじめに、すべての壁面に、日本人の平 均身長 (160illくらいか)の人の目の位置に紙テープなどを張りめぐら

し、位置決めのめやすとする。

展示の設営にはさまざまな道具が必要である。これらは平素から、品物 の有無や消耗の度合をチェックし、必要に応じて補充しておくべきである。

一般的に常備しておくべき展示設営のための備品を以下に挙げる。

びょう(画鋲不可。頭が透明なプラスチック製のもの)

虫ピン、ピン打ち器 メジャー(巻尺)

水平器 ガラス棒

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壁面吊り下げ用ワイヤーロープ(または自在)

引っ掛け金具(フック、ヒートン)、固定用釘 かなづち、ペンチ、 ドライバーセット

矢筈

カッター、カッターマット、鋏、定規 調湿剤、調湿剤容器

ガムテープ、セロテープ、紙テープ マジックペン、鉛筆

開いた本を固定するための短冊型に切ったポリエチレンフィルム ビニール紐、テグス糸、エアーキャップ、薄葉紙、新聞紙 糊つき発泡スチロールパネル

何種類かの額(白木の縁、塗りの縁、大小数種類)、額用マット、組紐 いろいろな色、大きさのフェルト布、和紙

書見台、アクリル板

壁面へ資科を飾るには、専用のワイヤーロープを用いる。もし壁面の上 部にレール設備がない場合は、フックの付いた金具を壁面に打ち込み、額 や軸の紐をかけることになる。

壁面の構成は、その展覧会の印象を決定するといえる。最も重要なのは 資料の配置であるが、資料と資料の間の空間の幅はなるべく均ーでありた い。また、資料の位置(高さ)も、できるだけ揃っていることが望ましい。

そうはいっても、ほとんどの場合、同じ大きさの資料を飾るわけではな いので、バラつきが生じるのはいたしかたない。なるべくバランスのとれ た印象を与えるためには、たとえば掛軸であれば、資料の下の線を揃える か、さもなければ資料の中心線がちょうど目の高さにくるようにする。も ちろんこれは、展示により、展示物によってさまざまな場合があり、その 場で臨機に、見識にもとづいて位置をきめてゆくことである。

飾ったら、資料が傾いていないか、歪みはないかをチェックし固定する。

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凶也館と展既会

額や掛軸がわずかに浮き、反り気味に見えるようなときは、プラスチッ クのびょうや虫ピンなどを用いて補正する。しかし、なるべく資料そのも のに圧力がかからないよう注意が必要である。額や掛軸の掛け紐の端が垂 れて外に出ていたりすることのないよう、結んで裏へまわしておく。

資料の下もしくは右下に、発砲スチロール貼りしたキャプションを添え る。キャプションや写真パネルなどは、虫ビンを壁面に打ち込み固定する。 板枠張りの写真パネルは、びょうを二本水平に打ちこみそこにかける。

作業をしながら、つねに全体のバランスに留意することが肝要である。 壁面の資料が確定したら、その前の台上に置く資料、移動式覗きケース におさめる資料にかかる。

巻物は平らな台の上で静かに巻きひろげ、巻紐を巻頭のなかにおさめて から展示部位をひろげ、その両端にガラス棒を置いておさえる。ガラスで なくアクリル板を細く切ったものを用いてもよい。科紙が厚いもので、巻 頭や巻軸がひろがってしまうような場合には、テグス糸などを用いてそっ

と押さえる。

ひらいて展示するべき本の開きが悪く、すぐ閉じてしまうような場合は、

短冊型に切ったポリエチレンフィルムで開くべき部分を巻き、うしろで フィルムをセロテープ止めして固定する。このとき、資料そのものにセロ テープがかかることのないよう、くれぐれも注意する。また、これにポリ 塩化ビニル製のものは使わないようにする。

本をひらき、やや起こして掛け、見やすいように展示したいときがある。 と く に 大 き な 判 型 の も の な ど は 、 書 見 台 を 用 い る か 、 ま た は ウ レ タ ン フォームなどを加工して台をつくり、それに載せる。

未表装の文書や手紙、写真などを展示するときは、台の上にそのまま置 いて両端をガラス棒で押さえるか、もしくは反りのあるような場合、全面 をアク リル板で押さえる。文書などの紙背を見せたいようなときは、あら かじめ写真を撮影してパネルにして並べ、キャプションでそのむね説明す ることが必要になる。

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器物、とくに割れやすいものを展示する場合は、力学的に最も安定した 状態に置くことと、地震などの衝撃を吸収するような配慮も必要となる。 肝要なことは、展示することによって資料が傷ついたり、劣化したりす ることのないようできるだけ配慮してやることである。資料が多くてどう

しても重ねなければならないような場合でも、重ねることによって下にな る資料が傷んだり、汚れたりすることのないよう注意しなければならない。

それ以上に重要なのは、観覧者が見やすいように陳列することである。 ガラスケースの表面に光が反射するようなところには賓料を置かない。ま た、なるべく手前に出す。肝心の資料がよく見ることができないのではし かたがない。レイアウト図に従って並べても、どうもうまくないと思った ら、現場で適宜変更してよい。ぜひ観覧者に見てもらうべき資料、目玉の 資料は、もっとも見やすく目立つ場所に展示されていなければならない。 平台に並べた資料のそばにキャプションを置いてゆく。これも見やすい ように、すこし起こすようにしたい。

資料リスト、レイアウト固をチェックして、飾り洩れのないことを確か める。

担当者がチェックすべきことは以下のような点である。

・資料はすべてならんでいるか。

・資料は安定しているか。

・資料は必要な部位が展示され、見にくくないか。

・資料のそばにキャプションがあり、読みにくくないか。

・ 壁面と台の資料のバランスはよいか。

・ケースのなかに虫ピン、びょうなどが落ちていないか。ゴミ、ほこり

はないか。

・全体として内容的に充実し、見る者に趣旨やメッセージが十分伝わる か。

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図雹館展蓑会

資料の設営が終わると、会場の仕上げにかかる。

順路表示を適当な場所におき、禁煙や撮影禁止の表示もおく。主催者あ いさつのパネルを入口ちかくに設置する。受付の机と椅子を準備し、芳名 帳、硯、墨、筆、サインペンなどを用意する。展示を見るという行為は疲 れるので、観覧者の休憩用の椅子も用意するべきであろう。

会場に、展示の内容に合った

BGM

を流しておくのもよい。

よい展覧会とは、快適な環境で、見やすくわかりやすい展示がしてある

展覧会である。平易で間違いのない解説、リーズナブルな陳列順列と構成、

印象に残る展示資料がそろえば、展覧会は成功する。

3‑3  会場運営

展覧会開催中は、観覧者がゆっくり展示をみることができるよう、静謡 な環境を保つよう注意を払い、また展示資料がいたまないように、環境の 保全に留意することが必要である。

展覧会場には多くの場合、受付が設けられる。受付の業務は入場者数の 把握、観覧者へのサービス (目録などの配布、質問への対応)、会場の警

備がその主なものである。

入場者数の把握は人感センサーのような装置でも可能であるが、出入口 を人が通るたびにカウントされるので、実数と合わないことが多い。入場 者数を正確に数えることには、それほどの意味はないが、やはり会場に足 を運んでくれた人の数は、主催する側にとっては重要である。

展覧会場にはさまざまな人がやってくる。当然、観覧者がする質問もさ まざまで、なかには病気としか思えないような内容の質問もあるが、圧倒 的に多いのは、展示されている資料の内容、意味、来歴などについての質 問である。前述したように、キャプションや展示目録にある程度の解説を つけることにより、質問のかなりの部分をカバーすることができる。

写本や文書などで、そのままでは読めない資料を展示する場合は、キャ プションとは別に、活字に起こしたものをパネルにして添えておけば、よ

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り親切であり、役に立つ。

どんな展示会でも、観覧者によっては不満を感じ、苦情を寄せてくるこ とがある。苦情のうちで最も多いのが、キャプションの字が小さくて読み にくい、というものである。キャプションを作成する際、かなり思い切っ て大きなポイントで作成したつもりでも、かならず「字がちいさい」と 言ってくる人がいるものである。

しかし、キャプションは大きければいいというものでもなく、それなり の適切な大きさでなければならない。とくに、展示資料現物よりも大きく なってしまうと格好もよくないし、混乱した印象を与える。キャプション はあくまで添えるものであり、なるべく小さく簡潔にまとまっている方が よい。通常は、平台上に置くもののキャプションよりも、壁面の資料を解 説するキャプションをやや大きめに作ることが必要である。

会場の警備はきわめて重要な要素で、全体を一目で見渡すことができな いような広い会場の場合には、ガードマンや職員が開催中随時巡回するこ とが必要となる。資料を借用する場合、それが条件に入っていることも多 学内の小さな展示室ではその必要もあまりないが、それでも国宝• 重 要文化財やそれに準じる貴重資料を展示している場合や、他から借用した 資料を展示しているような場合は、警備のために人員を配置しなければな

らない。

担当スタッフは開催期間中、会場の開閉に責任をもって立ち会うほか、

関係者が来場したときや難しい質問の出たときに備えて、適宜、交代で会 場に詰めているのが望ましい。観覧者の質問や感想は、できるだけ記録す るようにしておくと、つぎの展覧会に参考になる。

一日の開催時間が終了し、展覧会場を閉鎖したあと、展示物に異常がな いか調べる。多くの場合、ガラスケースの表面は、観覧者の手などがふれ て汚れている。つねに会場にガラスクリーナーを用意しておき、乾いた布 でふきとって汚れをとっておくことが必要である。

会場に受付を置かず、無人のまま入場自由にしておく展覧会もありうる。

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