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雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

中堅層教員に対する学校経営関連講座の今日的特徴 と学校管理職選考の対応に関する考察

著者 八尾坂 修

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 45

号 1

ページ 75‑90

発行年 1996‑11‑25

その他のタイトル A Study of the Characteristics of the Courses Related to School Administration for Middle Lead Teachers and the Screening of School Administrator's Positions

URL http://hdl.handle.net/10105/485

(2)

奈良教育人学紀要 第45巻第1号(人文・社会)平成8年  

Bull.Nara Univ.Educ.,Vol,45.No.1(Cult,&Soc.),1996  

中堅層教員に対する学校経営関連講座の今日的特徴と   学校管理職選考の対応に関する考察  

八尾坂  修  

(奈良教育大学教育経営学教室)  

(平成8年4月12日受理)  

1.学校経営関連研修の必要性  

学校教育活動の中核となって、学校の活性化を推進していく役割を果たす中堅層教員は、教職   キャリアからみれば30歳前後から40歳の後半に至るまでの広範囲の時期にある。また教師とし   ての職能が充実・進化する枢要な時期でもある。   

このような重要な職位にあるミドルリーダーはどのような研修ニーズをもっているだろうか。  

中堅教員の職能を教授能力、訓育能力、経営能力の3つの能力からみた調査(l)によれば、まず  

「教授能力」においては「学習内容を組み立てたり、学習集団を組織したりする力」「教科内容に   っいての十分な専門知識」「積極的に新しい知識や技術を吸収し、活用する能力」について研修   希望度とともに重要度の意識が高い傾向にある。基礎的な日々の教育技能に必要な領域を超えた、  

より高次の教授能力獲得による職能成長を求めていることがわかる。   

次に「訓育活動」の面からみると、「カウンセラーの能力をもっていること」「子ども集団を組   織すること」「子どもの状況を正しく把握できること」に対するニーズがある。いじめ・不登校  

といった教育問題をも解決するうえでのカウンセリングマインド的能力、子ども理解能力につい   ての研修を要望していると言える。   

さらにミドルリーダーとしての「経営能力」については、一般に年齢が高くなるにつれて自己   診断得点も上昇度が高いことが明らかにされている。その結果、重要度と研修希望の意識も相関   が強く、「社会の状況や今日の教育課題を判断し、学校経営にいかす力」「教育に関する情報を収   集し、分析し、処理する能力」「集団内のコミュニケーションを活発にし、よりよい決定を作り   出す力」といった項目が重視されている。情報処理能力、いじめ・不登校への対応、人権尊重の   教育、国際理解教育、ボランティア教育といった今日的重要課題とともに、学校内部の人間関係   において和を重んじる集団のもと、教職員間のよりよき意思形成といった側面が研修ニーズとし   て顕在化していることが理解できる。   

ところで30代・40代のミドル教員においては、校内における研修よりも校外の教育委員会・  

センター等による体系的な研修への要望が高いこともこれまでの調査(2)で明らかであった。教職   生涯にわたる教職員の研修体系のなかで、ミドルリーダーとしての中堅教員の位置を京都府総合   教育センターの例を通してみると以下の如くである。   

中堅教員の研修は、経験年数からして11〜20年目にあり、「実践の深化を図る」ことにねら   いがある。つまり学校運営の中止、的な推進者としての自覚のもとに、広い視野から教育をとらえ、  

75   

(3)

八尾坂  修   76  

自己の教育理論を深め担当する領域・分掌への具現化を図るとともに、若年層に対する指導力を   身につけようとしている。このことは以下の研修内容からも察知できる。「新しい教育内容・方   法の指導助言」、「校内研修のあり方」、「特色ある学校づくり」、「同和教育・生徒指導・道徳教   育・障害児教育の推進と指導助言」、「学校教育相談の推進と運営」、「学年経営の実際と評価」、  

「教育課程の編成と評価」、「先輩教師としての役割と資質」、「教育法規とその運用」、「現代の教   育課題とその解決」、「教務の役割」など。   

ただこのような専門研修が中堅層教員全体への研修として位置づけられるかば別である。むし   ろ各県の動向をみると研修内容が各種主任という職位別・専門領域別の研修となっているのも事  

実だからである。すなわち生徒指導主事、進路指導主事、教務主任、学年主任、研修・研究主任  

といった職位別の研修とともに、新たな研修講座としての環境教育、国際理解教育、情報処理教  

育、生涯教育、カウンセラー・教育相談といった研修として位置づけられているのである。   

しかしながら、校長・教頭を対象にした学校経営関連講座はこれまで実施されているものの、  

中堅層教員を対象としたこのような関連講座は果たしてどのような状況にあろうか。中堅層教員   に対して、マネージャーとして、またリーダーとしての感覚をみがくマネージメント・マインド   育成の機会が今日一層求められている。   

このことば管理職登用の若年化傾向からみても検討すべき課題である。教頭を例にとると、44   歳以下の登用率が20.3%であり(平成6年度末)、元年度末の13.7%と比べると約1.5倍の増加  

という状況である。(3)   

このような若手管理職の登用の傾向は、昭和60年代に入り顕著になった。その背景として、  

ひしめく50代と称された世代が定年を迎え、教師の年齢構成の推移からも予期されたことで   あった。   

しかし臨教審答申でも指摘されていたことであるが、校長登用年齢の高齢化などにより、管理   職自身の意欲・活力の低下によって、学校経営活動の沈滞が生じることも問題とされたのである。  

中堅層教員のモラールを高めるためにも、豊かな発想、実行力、優れた指導力を具備した若手年   齢層の管理職への起用を促進することも肝要となる。   

この点、養成・研修の側面からは、単に「地位に基づく影響力」ではなく、教職員側からの主   体的・自発的な受容によって成立する、しかも指導性に裏付けられた「専門的影響力」をどう育   成するかが必要となってこよう。このような観点に立つ限り、若手管理職として校内での先輩教   師、行政当局、地域社会、親との疎隔を調整・運用できる力量を高めることにもなる。   

このような問題意識のなかで、以下の諸点について考察することにしたい。   

①教員センター(4)における中堅層教員への学校経営関連研修の全国的動向、②文部省中央研   修(中堅教員)講座、③アメリカの教育大学院における管理職養成の事例、④管理職、とくに   教頭職選考の全国的動向および教頭職任用前研修、⑤中堅層教員に対する指導者養成の課題。  

2.中堅層教具に対する学校経営関連講座の特徴  

教育センターにおける上記の講座の全国的実施状況を把握するため、62の都道府県・指定都   市教育センター(以下、県市と略称)に対して平成7年8月下旬に実施状況の有無の回答、関連   資料の送付をお願いした。一部の県市には、9月中旬以降再度依頼を行い、11月上旬までに全   県市から回答を得た。   

(4)

中堅層教員に対する学校経営関連講座の今日的特徴と学校管理職選考の対応   77  

表1A.平成7年度中堅層教員対象学校経営関連研修(7日間以上の研修)  

機   関  研修講座名  研修期間・時期  実施総時間数  受講対象数員数  受講資格   研  修   目   的    1.群馬県総合  長期研修員  51日(4月に2日、   小学校19名  中堅層教月  学校経営の意味を深く理解し、学校の教育   

教育  (A)    7月に7日、8月に   

中学校13名  

活動を中核となって推進する教員を育成す    センター  

約328時間       18日、9月に21El、 111 

る。   

月[】、3月に2   同様の研修)  

目、特に7月・8月・  

9月に集中)  

2.宮崎県教育  長期研修講  45日 (10月11日〜    小・中・県立学  教職経験お  学校の教育的課題について、学校経営及び    研修  座   

11月24日連続)  

約270時間   校26名   

よ そ10年  学校管理の面から研究し、教職眉としての   

センター  (第二期)  

以上  資質の向上を図る。   

3.埼玉県立北  中期研修講  13[】(5月に1日、    ○小学校・特殊  中堅層教員  教育実践の程廟と実績をもとに、学校教育   

/南教育  座   

6月に2日、7月に2  

150名  

に関する理論と方法、実践上の諸問題を究   

センター   日、9月に2 日、10  

○【fI学校98名、  

明し、学校経営の推進者としての識見と賢  

約71.5時間      月に2日、11月に2  

質の向上を図る。   

日、12月に1【]、金  

特殊(中・高  

曜日に設定、小学校の   8名)  

場合、他校種も同様)  

4.大阪府教育  教職経験者  7日(6月に2日、7    小・中・特殊学  教職経験  教職経験15年程度の経験を有する教諭に、   

センター  研修講座Ⅱ  月に1日、8月に2   校別    15年目及  今日的教育課題、学習指導、生徒指導、人  

約35時間       日、夏期休業中2日、   (⊃′ト学校253名  ぴ15年以  権教育等学校教育活動全般に係わる総合的  

中学校の場合)   ○中学校163名  f二   

な研修を行い、中堅層教員としての指導力  

の向上を図る。   

5.静岡県総合  短期研修  8泊10日(2通達続)    ○小・中・特殊  教職経験  学校教育の具体的な諸問題を、中堅教員と    教育   11月6E】(月)〜11   42名    15年程度  して学校経営に参画する立場から解明を図   

センター  

約65時間       月10E】(金)、11月   ○高・特殊24  を経た教員  り、学校における教育活動推進のための実    13日 

(月)〜11月17  

名(2講座、  

践力と教職較の確立を巨指す。   

口(金)   8年度4講座  

156名)  

6.広島県立教  教育指導研  12日(第1期7月6・    ○小学校30名  教職経験  学校数青梅導の諸問題の解決に資する研修    育センター  究講座  7日、第2期7月26・   ○中学枚30名  21年以上  を行い、各分野の指導力向上をめざすとと  

27・28日、第3 期8   ○県立学枚35  (受講年齢  もに、中堅教員としての資質の向上を図  

約73時間       月1・2日、第4期8月   41−44才  

23・24・25日、第5期   (各学校別)   が多い   

9月28・29、県立学校  

の場合)  

7.名古屋市教  中堅教員研  7日(5月に1日、6    小・中・特殊学  教職経験  中堅教員として必要を基礎知識と心構えに    約26時間        育センター  健全  月に1日、7月に1   13年目以  

日、8月に2日、9月   上   

に1日、11月に1[])  

8.福島県教育  学校経営  年間9日(前期5月    小学校14名中  教育事務所  教務主任、学年主任等に対し、学校経営及    センター  (B)講座  31日〜6月2日、中   学校11名高校  推薦の教頭  び学年・学級経営上の諸問題解決のための  

約45時間       期8月28日〜8月30   6名計:31名  職受験資格  研修を行い、その識見と指導力を高めるこ  

日、後期1月29日〜   を有する者  とを目的とする。  

1月31日)  

※ ○印は各校種別に実施  

そのなかで、研修目的・内容・対象者等からして、特定の主任(たとえば教務主任、生徒指導   主事等)を対象としない、いわゆる「中堅層教員」を対象とした「学校経営に関連した研修」を   平成7年度に実施しているのは18県市であった。  

18県市における学校経営関連研修の動向を、研修日程からして7日以上(A日程とする)お   よび6日以下(B日程とする)に大別して、まず、A日程の特徴を検討したい。   

表1は、A日程で中堅層教員を対象に学校経営関連講座を開設している機関の研修状況を示   したものである。   

研修実施機関は8機関であるが、特徴的な点を取り上げると次のとおりである。   

0 研修講座の名称は一致してはいない。   

0 研修期間については7日間から51日間にまで及んでいる。研修の時期は、とくに7、8、   

(5)

178  八尾坂  修  

9月に集中して行う場合、連続45日間、5月から12月まで特定曜日(金曜日)に実施、2   週間連続2回、3回連続3期など、各機関の状況に応じ工夫がみられる。   

0 実施総時間数は約26時間から約328時間に及んでいる。   

0 受講対象数員数が多いのは、大阪府と埼玉県である。埼玉県は323名の受講者であり、そ   のうち、小学校では150名対象であるが、この人数は埼玉県下の小学校数の約3分の1弱に   該当している。   

。受講資格は教職経験10年から20年もしくはそれ以上に及んでいるが、15年から20年前   後ぐらいの教職経験者が多いように見受けられる。   

。研修目的からして学校経営の推進者としての識見と資質の向上を図ることをねらいとして   おり、学校教育活動の中核となって推進する教員を育成しようとしていることが理解できる。  

また、実際において教頭職候補者として教育委員会から推薦されている者を暗黙裏に求めて   いる場合もある。   

0 研修内容を表1には示していないが、「教育法規全般」「教育課程の編成・実施」「生徒指   導・教育指導」「教職員への指導と管理」「教育的識見・指導性」等に及んでいるが、一般に   職務に関連する教育法規の研修を必須の受講としている。  

3.埼玉県立北教育センターの事例  

A日程のなかで、受講対象者が多く、年間を通して実施されている埼玉県立北教育センター   の例を取り上げよう。このセンターは小学校教員(盲・ろう・養護学校小学部を含む)の研修講   座を担当しているが、当該研修講座は中期研修講座と呼称され、150名の中堅層教員を対象とし   ている。研修日程として5月から12月にかけて13日間設定され、しかもあらかじめ特定の金曜   日に組み入れ、授業に支障がないよう配慮していることが推認できる。   

研修内容項目は、①「講義・講演」、②「研究協議」、③「演習」からなるが、「講義・講演」は   以下の領域に広くわたり、しかも今日的課題やニーズもふまえている。   

ア、本県学校教育の現状と課題 イ、魅力ある学校づくり り、学校経営と教育法規 エ、教   育課程の編成・実施・評価 オ、今、教師に求められる資質 カ、道徳的実践をめざす道徳教育   キ、学校経営ク、私の人生 ケ、一人一人を生かす指導と評価 コ、国際理解教育の充実を目  

指して サ、実践に結びっく校内研修 シ、教育に期待する者 ス、体験的活動を重視した特別  

活動 セ、登校拒否(不登校)問題の現状と課題 ソ、小学校における環境教育 夕、学校同和  

教育の現状と課題 チ、心身障害児教育の現状と課題 ツ、教師と授業 テ、教育と私  

「研究協議」については、「学校・学年経営」「道徳教育」「学習指導・教科経営」「生徒指導」  

「校内研修」「学校同和教育」「特別活動」の7視点について、各2.5時間充当している。   

具体的な研究協議題は以下に示すとおりであるが、いずれの協議題に対しても(次に述べる  

「演習」も同様)、レポートの作成方法(様式、書き方、作成上の留意点、提出方法、レポート例   文)が示されている。また、提出時期は当該研究協議を行う研修目の前回としており、受講者が   問題意識をもって研修に参加できる工夫がなされている。   

0 協議題(学校・学年経営)   

1学校教育目的の実現を目指して、あなたの学校の学年経営は、学校経営、学級経営とそ  

れぞれどのようにかかわっていますか。具体的に述べなさい。   

(6)

中堅層教員に対する学校経営関連講座の今日的特徴と学校管理職選考の対応   79   

2 あなたの学校において魅力ある学年経営を実践する上での工夫について具体的に述べな    さい。   

協議題(道徳教育)  

1豊かな心を持ち、たくましく生きる人間の育成を図る道徳教育を推進していくためには、   

どのような全体計画を作成したらよいか。自校の全体計画をふまえて、具体的に述べなさ    い。  

2 あなたの学校の道徳教育推進上の課題を1つ挙げ、その改善策について具体的に述べな    さい。   

※ 参考資料:平成5年度実施の「道徳教育推進状況調査報告書」〈平成6年8月、文部    省『初等教育資料』等〉   

協議題(学習指導・教科経営)  

1あなたの学校では、児童一人一人のよさや可能性を生かす学習指導を推進するために、   

どのような創意工夫をしてきましたか。また、その成果及び今後の課題について、実践に    即して具体的に述べなさい。  

2 あなたの学校の実態をふまえ、教科経営を活性化するための方策を具休的に述べなさい。   

協議題(生徒指導)   

あなたの学校における生徒指導上の課題を挙げ、より積極的な生徒指導を推進するための   工夫・改善策について述べなさい。   

協議題(校内研修)   

あなたの学校でほ、研修課題をどのように設定し、その課題を解決するために校内研修を   どのように推進しているか。また、研修推進上の問題点を解決する方策等についてあなたの   考えを具体的に述べなさい。   

協議題(学校同和教育)  

1人権尊重の精神を基盤とした学校同和教育を推進するため、全体計画に基づき、各教    科・領域の特質に応じた年間指導計画をどのように作成し活用しているか、具体的に述べ   

なさい。  

2 あなたの学校の同和教育推進上の課題をあげ、その課題を解決するためにどのように工    夫・改善しているか、具体的に述べなさい。   

協議題(特別活動)  

1あなたの学校では、学校の創意工夫を生かして、どのような「特別活動の全体指導計    画」を作成し、どのように活用していますか。  

2 あなたの学校では、児童が参加の喜びを得られるようにするため、学校行事の指導計画    の作成及び指導において、どのような創意工夫をしていますか。  

「演習」は、ア、学校教育相談(2、5時間)イ、教育法規(15時間)ウ、教育課程(2、  

5時間)の3領域で実施されるが、とりわけ教育法規に関する研修時間を多く取り入れてい   る。   

教育法規に関する研修内容は、「法体系等」「学校と教育委員会」「服務」「任用・分限・懲   戒」「勤務時間・休日・休暇」「教育課程」「児童生徒の就学」「学校管理」「事例に基づく法   規演習(教員の服務、授業中の児童の事故)」と広範囲に及んでいる。   

教育法現に関する演習例として、「学校管理」について以下に示したが、いずれの演習も   

(7)

80   八尾坂  修  

学校管理職として職務上直面する教育法規上の課題を事前に修得させ、通常、任用直後に生    じがちな職務上のコンフリクトを軽減させようとする意図と考えられる。  

【学校管理】平成7年6月23日(金)14:35〜15:50(75分)   

設問1次の事項について、関係する法規等をあげて説明しなさい。   

(1)健康診断   

(2)学校に備えなければならない表簿   

設問2 次の事項について、関係する法規等をあげて説明しなさい。   

(1)児童生徒に対する体罰と懲戒権の限界   

(2)教職員の交通事故防止と事故責任  

4.中堅層教員研修の内容上の相違  

中堅層教員に対する研修指導は、一般に教育委員会・教育センターの指導主事、校長等の学校   教員が担当しており、講演や講義については、大学・企業関係者といった外部講師を充てる場合  

がみられる。   

ところで、中堅層教員に対する研修日数、時間数、目的にさはど差異がみられなくても、学校  

経営関連研修の内容がかなり異なる場合もみられる。A日程のなかで、「大阪府教育センター」  

と「名古屋市立教育センター」の例が典型的である。   

両者の研修期間は年間7日(前者の大阪府は夏期中心、総時間数約35時間、後者の名古屋市   は5月から11月にかけ月1日、8月のみ2日、約26時間)実施され、また研修目的として、前   者は中堅層教員としての指導力の向上、後者は中堅層教員としての必要な基礎知識と心構えを主  

眼に置いている。   

受講資格は、おのおの教職経験15年目以上、13年目以上であり、はぼ類似しているのであり   が、取り巻く地域状況、研修ニーズによって研修内容が相違しているとみられる。   

つまり前者(大阪府)は以下に示す研修内容のように学校における国際化・情報化への対応の   視点から人権・国際理解教育とともに今日的ニーズの高いパソコン実習を行っているのが特徴的  

である。①6月12日(14:00〜17:00)「在日外国人教育の現状と課題」(講演)、「人権尊重の   教育について」(講義)、②6月23日(14:00〜17:00)「情報教育と情報モラル」(講演)、③   7月21日(14:00〜17:00)「学校教育の当面する諸課題」(講義)、「国際理解(現地理解)教   育の現状と課題」(講義)、④8月24日、25日(9:30〜17:00)「実践発表に基づく班別研修」、  

⑤夏期休業中2日間(9:30〜16:00)パソコン実習「ア、ウインドウの基本操作」「イ、表計   算ソフトの活用」「ウ、ワープロソフトの活用」「エ、CAIソフトの活用」。   

これに対し、後者(名古屋市)は、「人権教育と国際理解(人間尊重、異文化間の相互理解、  

世界連帯意識の育成をめざした指導はどうあるべきか)」のはかに、「生涯学習(子どもが主体的   に対応できる力を育て、生涯にわたって学び続けることができる基盤づくりをどのように行って  

いけばよいか)」「校内の研修と研究」「学年・学級経営」「生徒指導・教育相談(望ましい児童・  

生徒理解のあり方、心に悩みをもつ児童・生徒へどう対応すべきか)」「学校をめぐる教育法規  

(勤務上の諸問題を法規の面からどのように受けとめ、どう対処すべきか)」さらには今日的学校  

改革である「学校週5日制(月2回の学校週5日制の実施に伴い、各学校では、どのような指導  

の工夫や改善が必要か)」等にまで及んでいる(表2参照)。   

(8)

中堅層教員に対する学校経営関連講座の今日的特徴と学校管理職選考の対応   81  

表2 名古屋市教育センター「中堅教員研修会」(7日間)  

口】  日 時    研  修  内  容    会 場  形 態  講師・助言者    備   考    5.31(水)  開講式   分館講堂  講  話  教育センター  

ロ     「中堅教員の心構え」   所長   オリエンテーション   説  明  所員   

「自主研修」の在り方    分館講堂  講  話  教育センター研  

修部長    ②第3回研修課題に対する意見書提出  

2  6.27(火) 15:00〜  

・「教育法規の基礎知識」についてはまと  「生涯学習」  

めなくてよい。   

「生涯学習」    パ ネ ル  現場講師2人  (診第2回研修報告書提出  

♯子供が主休的に対応できる力を育て、生  デ ィ ス  指導室指導主事  ④第4回の演題に対する意見書提出  

7.24(月)   カッション  教育七指導主事  「人権教育と国際理解」  

:00 

地元講師    ・「人権尊重の教育をすすめるために」「同  

3  

か。  

杜教王事   和問題の手引き」を参考にまとめる。  

受講者   ⑤第4回研究協議資料提出「学校過5日制」  

「教育法規の基礎知識」   分館講覚  

・第4固までに提案要項をまとめる。  

13:00〜 16:00   (担当班)   

はどのような知識をもつべきか。  

8.7(月)  「人権教育と国際理解」    分館講堂  講  演  中央講師  ⑥第3回研修報告書挺出  

♯人間尊重、異文化間の相互理解、世界蓮  

(∋第5回研究協議資料提出  

:  「学校をめぐる教育法規」  

ベきか。  

4  

「学校過5日制」    [芸芸去芸慧警芸去」)選択  

13:00〜   6人   

・第5回までに提案要項をまとめる。  

16:00  学校では、どのような指導の工夫や改善   (担当粧)   

が必要か。   

8.21(月)  「学校をめぐる教育法規」   

教職員課管理主  ⑧第4回研修報告書提出  

9:00−  楽勤務上の諸問題を法規の面からどのよう  

事6人   

第4回の研修のまとめ提出(担当班)  

12:00  に受けとめ、どう対処すべきか。   ⑨第6回研修課題に対する意見書提出  

[芸芸去芸慧警芸去」)猷   分館 1.2.3.4.   導主事6人   

5  

7.8研   

13:00′・・一  

16:00  

♯校内の研修と研究の在り方についてどの   ように考え中堅教員としてどう取り組む   か。  

「生徒指導・教育相談」    分館講堂  講  話  教育センター指  ⑲第5回研修報告書提出  

6  9.27(水)      弊望ましい児童生徒理解の在り方、心に悩  

導主事   

・第5回の研修のまとめ提出(担当班)  

15:00−  みをもつ児童生徒へどのような対応をす   ⑪第7何の演題に対する意見書提出  

ベきか。  

「これからの教育」   

「これからの教育」    分館講堂  講  演  中央講師  ⑫第6回研修報告書提出  

7  11.7(火)      楽21世紀を担う子供の育成を目指した教  

⑬最終報告書と学年経営案提出  

15:00〜  育はどうあるべきか。   (11月30日必着)  

開講式  

また、分科会形式の協議に対して事前に研究協議資料を作成したり、研修報告書を提出するが、  

そのはか講話や講演における研修課題に対しても前回までに意見書の提出を求めるなど、受講者   の問題意識、研修成果を高めることをねらいとしていることが実施要項から察し得る。  

5.文部省における中堅層教鼻研修  

教育委員会・教員センターのみならず、文部省でも、校長、教頭、中堅教員などに対し、学校  

の管理運営、学習指導などの諸問題について、それぞれの職務に必要な研修を行い、その識見を  

高め、指導力の向上を図ることを目的として中央研修講座を実施している。この点、中堅教員(5)  

を対象とした研修は昭和45年度から実施されているが、平成7年度においては、講習期間36日   間を年間4回、受講者計1,000名(小・中・高・特殊全体、各県20人前後)の規模で実施して   

(9)

八尾坂  修   82  

いる(機関は平成7年5月9日〜6月13日・教務主任のみ、8月17日〜9月21日、9月27日  

〜11月1日、11月14日〜12月19日)。   

中堅教員の研修内容は、以下に示すように大別して6領域に分けられるが、総受講単位が45  

〜58単位(1単位140分)であることからして、総受講時間は最小限約105時間から約135時  

間に及んでいる。研修の方法としては、講義中心のみならず、演習形式を約4分の1はど占めて  

いる。しかも平成7年度からは課題演習のなかに「いじめ」および「登校拒否」に関する事例演   習を各々1単位ずつ取り入れているのが特徴的である。(6)   

①学校管理(6〜8単位)   

「初等中等教育行政上の諸問題」「地方教育行財政制度」「教育と法規」「その他」   

②教育内容・方法等(7〜10単位)   

③学校教育の今日的課題(8〜11単位)   

「情報教育」「環境教育」「ボランティア教育」「国際理解教育」「体験学習」「登校拒否・いじ   めの対応」「人権尊重の教育」「その他」   

④特別講義(教養)(8〜10単位)   

「人文(歴史・民俗、倫理・哲学等)」「自然・科学」「文化(芸術、文学、スポーツ等)」  

(9課題演習(10〜13単位)   

「教育関係法規」「教育指導上の課題」「学校経営上の課題」「パネルディスカッション」「そ   の他」   

⑥館外活動(6単位)  

6.教育センターにおける短期間研修  

教育センターが実施する中堅層教員対象の学校経営関連研修のなかで6日間以下の研修(B日   程とする)は10機関(横浜市、千葉県、兵庫県、神戸市、宮城県、福井県、佐賀県、京都市、  

栃木県、長崎県)によって実施されている。機関によっては教職経験20年前後によって2つの   講座に設定している場合もある。特徴的な点を摘録すると次の通りである。   

o A日程(7日間以上の研修)と同様に、研修講座の名称は一致していない。中堅(層)  

教員研修(会)、指導者層教員研修(会)、校務運営研修、学校経営研修等。   

0 研修期間については、6日、4日、3日、2日の場合がみられる。研修の時期として、6   日間から4日間の研修は主に春から秋にかけて月1〜2回実施されているが、夏期休暇期間   は1機関を除き、行われていない。また2日ないし3日の研修は特定の月に連続している場   合が通常である。   

0 実施総時間数をみると、研修日数の長短とは必ずしも相応していない。つまり年間6日間    実施していたとしても、午後2時間(14:00〜16:00)計12時間という場合もみられるか  

らである(横浜市教育センター、中堅層教員研修、指導者層研修の例)。さらに京都市(機   関、永松記念教育センター)のように4日間、中堅教員研修講座という名称で実施されてい  

るが、勤務時間後の18:00〜20:30の時間帯に研修が設定され、授業に支障がないよう配慮   していることが推察される。また京都市の場合、受講対象者は400名であり、学校経営関連    研修のなかで一番多い状況にある。原則として採用11〜14年目(他都市等の教員経験年数   を含む)の小・中・養護学校教員のうち、学校長が推薦し、かつ本人が希望する者となって   

(10)

中堅層教員に対する学校経営関連講座の今日的特徴と学校管理職選考の対応   83  

いる。   

次にB日程実施の10機関のなかで、研修時間の長い千葉県の内容と教育関係法規のみの研修   を行う栃木県、宿泊研修のみで実施する兵庫県の研修内容を以下の(i)(止)(並)に例示した。   

B日程全般からみた学校経営関連研修の特徴をみると、中堅指導層教員の使命感、組織のなか   でのリーダーシップのあり方とともに、教育法規全般、企業における人材活用、求められる資質、  

さらには教育病理問題(いじめ)、学校カウンセリングなどの研修も重視されている。また中堅   層教員に対し、学校経営上の諸問題について研修し、自らの役割と自覚の高揚を図るとともに、  

教育活動の推進者として専門的識見と実践的指導力の向上を求めようとすることが、研修目的か   ら察知できる。  

(i)千葉県教育委員会(「教育実践研修講座」、6日、約30時間、小学校60名、中学校40   名、中堅教員・主任クラス)  

「千葉県における教育課題」「教育法規と学校運営」「校内研修の活性化」「企業における人   材活用に学ぶ」「マルチメディア社会における学校教育」「家庭、地域社会との連携における   道徳教育」「地域に開かれた学校づくり」「学習指導法の改善への取り組み方」「いじめの問   題の現状と対策」「人間関係とリーダシップ」(以上講話)、「学校運営上の諸問題について」   

(協議)、現地研修他。  

(並)栃木県総合教育センター(「教育関係法規等研修」、4日、約20時間、県立学校各校1   人計20名、主任等の経験者、またはそれに代わる中堅教員)  

「学校数育と教育法規」「これからの学校経営」「本県の教育と高校教育改革」「平成7年度   の重要施策」(以上、講話)、「教務、生徒指導関係法規(1)(2)」「教職員の服務関係法規   

(1)(2)」(以上、演習)、「教育法規と教育指導」(研究協議)  

(臨)兵庫県立教育研修所(小/中/高「学校の活性化をめざす教育経営講座」、4日「1泊   2日の宿泊研修2回」、小学校96名、中学校62名、高校112名「障害児教育諸学校含む」、  

原則として教職経験15年以上の教員)  

「学校教育の今日的課題−いじめ問題への対応」「本県における教育への指針一被災児童へ   の対応」「教育法規のしくみ」「障害児教育の現状と課題」「学校保健・学校安全教育」「阪   神・淡路大震災からの復興をめざして」(以上、講義)、「教科における国際理解の推進に関   する一提言」「学校の活性化と教職員の意識変革−モラールの向上」「環境教育と福祉教育」   

「望ましい教育課程の工夫・改善一学校週5日制に対応して」「生徒指導と学校カウンセリン   グ」(以上、発表・協議)、「教育と法規」(演習)  

7.アメリカの大学院における管理職養成  

アメリカでは教育管理職として、教育長とともに校長の資格には免許状主義が導入されている。  

しかも、今日ほとんどすべての州が最初の校長免許状(一般に教頭をも含み、Principal,  

Administrator等の名称)の取得として実質的に修士号あるいはそれ以上の専門教育を要求し   ている。免許状取得として通常大学院レベルでの履修コースに入学するが、履修内容として修士   号の取得との関連にかかわりなく、教育行政・学校経営にかかわるコース(そのなかで「実習  

(Practicum)」を必須と指定している州が多い)を必修として規定している。(7)   

またいずれの州も通常教職経験を要求しているが、2〜5年間に及び3年間が一番多い(ただ   

(11)

八尾坂  修   84  

し実際、校長の教職経験は9.6年の平均数値である)。さらに一般教員に対してと同様に、校長  

(学校管理職)の免許資格要件の総合的評価の一部として、一般教養的な知識の試験(19州)と   ともに、専門教養的試験を実施する州(19州)がみられる。   

総合的評価の一側面を示す例として、フロリダ州を取り上げてみよう。この州では3等級制の   校長免許状(EducationalLeadership/レベルⅠ免許状、SchooIPrincipal/レベルⅡ免許状、  

ProfessionalSchooIPrincipal/レベルⅢ免許状[この免許状は任意的な資格])を発行してい   るが、レベルⅠ免許状の取得要件の一部として、次の8領域にわたる州教育機関独自の専門教養   的な試験が要求され、一定の合格基準が設定されている。[A公立学校カリキュラムと指導、B   組織管理と開発、C人事管理と開発、D指導専門性の力量、Eコミュニケーションの力量、F教   育工学、G教育法、H教育財政]   

この州ではリーダーシップにかかわる修士号以上の学位、3年間の初等及び/あるいは中等   学校での教職経験、リサーチ、教育基礎、カリキュラムに関して大学院あるいはプログラムでの  

6単位相当の履修のはかに、この種の試験を要求しているのであるが、(8)教育管理職としての専   門的力量が多面的に求められていると指摘できる。   

次にマサチューセッツ州における校長免許状取得要件(教員免許状取得、3年以上の教職経験、  

24単位の大学院での履修[専門的知識、コミュニケーション能力、マネージメント評価能力、  

人間関係調整能力に関する5基準がある]、150時間の実習)に基づく、1995年〜96年度におけ   るハーバード 大学教育学大学院における校長養成カリキュラムの例(9)を以下に示した。秋学期の   No.1,2、春学期のNo.1,2,3の各授業科目からみられるように、臨床経験的要素の多い科目が   半数以上を示していることがわかる。   

A.秋学期(1995年9月〜1996年1月)   

「1.学校改革:カリキュラム・教育指導的リーダーシップ」(必修4単位)   

「2.理論と実践における授業観察」(必修・4単位)   

「3.学校と法」(必修4単位)   

「4.教育社全学:学校文化」(必修4単位)   

「5.教師・校長にとって勤務場所としての学校」   

「6.カリキュラム理論:カリキュラムと教授哲学」   

「7.教育哲学入門」(以上5、6、7、選択科目)   

B.春学期(1996年2月〜6月)   

「1.学校長職のための実習」(必修4単位)   

「2.学校長職のための演習」(必修4単位)   

「3.学級エスノグラフイー学習の研究と改善のための視覚分析」(必修4単位)   

「4.地域社会力、意思決定、教育」   

「5.人種、民族性、教育政策:質と平等問題」(以上4、5、選択科目)  

8.教頭職選考の全国的動向  

これまで分析してきた教育センターにおける学校経営関連研修のなかには、教頭職候補として   推薦でき得る中堅教員を主に対象とする場合がみられるのも確かである。それでは学校管理職へ   の第一段階である教頭職にはどのような選考基準が示されているであろうか。全日本中学校校長   

(12)

中堅層教員に対する学校経営関連講座の今日的特徴と学校管理職選考の対応   85   

会の平成7年度における中学校教頭の選考状況の調査(10)、筆者の一部県教委への電話による再   確認をもとに分析してみる。   

この点、各県で選考基準の検討がなされ、一元化の方向にあると考えられっっも、いまだ独自   の傾向が存続していると言わざるを得ない。   

まず選考制度が特にない県として、神奈川、長野、山口の3県が存在することである。選考制   度がないことから、通常、校長の具申、市町村教委の内申に基づくが、この際、候補者の勤務状  

況、適性・能力、研修参加状況等に関する管理主事との面談による所属校における校長からの申  

し入れ等をふまえて、県教委が任命することになっているそうである。また静岡県のように受験   資格は特に定めていないが、筆答と面接といった選考試験を実施している。他の43県はいずれ  

も一定の受験資格を要求しており、注視すべき点を教職経験、年齢、さらには選考試験の点から   検討してみる。  

(1)教職経験   

教職経験(教育関係職員の在職含む)は15年以上を要求する県が一番多く(19県)、続いて   10年以上(11県)、13年以上(3県)、12年以上(東京都)、14年以上(富山)、20年以上(福   井)である。また岐阜県のように教務主任、生徒指導主事等経験3年以上を資格要件とする場合   もあるとともに、教職経験を特段要求しない県も5県(京都府、島根、岡山、愛媛、鹿児島)存   在する。  

(2)年   齢   

教頭受験資格の下限年齢として35歳から39歳までの範囲に規定している県が17県で一番多   い状況にある(そのなかで「35歳以上」が5県あり、多い)。下限年齢で40歳以上とする県は   14県みられる。しかも下限年齢の最高は45歳以上であり、大分県が該当する。また下限年齢を   定めていない県は12県(宮城、山形、石川、岐阜、和歌山、広島、愛媛、高知、宮崎、京都府、  

千葉、大阪府)存在する。またそのなかで上限年齢を定める県として、京都府(50歳未満)、大   阪府・千葉県(52歳末満)の3県府がみられる。   

そこで下限、上限双方の年齢を要求しない9県について教職経験年数をみてみると、15年  

(4県)、10年(2県)、5年(高知県)、主任等経験(岐阜県)、経験要求なし(愛媛県)の状況   である。このことは高知県をみた場合、年齢制限がなく、しかも経験年数の要求も5年にすぎな   いということを意味するわけである。学校管理職としての識見、指導力を具備した人材を登用す   るとの高知県教委の回答によると、平成7年度は35歳の小学校教頭が誕生している。また愛媛   県は年齢、教職経験のいずれも要求しない唯一の県であり、受験資格として同一校2年以上勤務、  

優秀教員の規定のみである。若年でも受験資格が認められることになるわけである。しかし人事   担当者によればやはり日頃の勤務成績が重視され、若年管理職は教頭職で40代初め、校長職で   50代初めだそうである。   

逆に受験資格年齢の最も高い大分県(45歳以上)は教職経験として15年を要求していること   から自動的に教頭職候補者にとって年齢がハードルとなる。わが国で若手教職員の教頭職登用状   況(平成6年度末)において、先述のように40〜44歳(18.4%)、30歳代(1.9%)の比率を占   め、平均年齢が48.0歳と毎年若年化が図られつつある今日的状況において、中堅層教員のモ  

ラールを高め、学校経営活動の沈滞化を生じないためにも、豊かな発想、実行力、優れた指導力   

(13)

86   八尾坂  修  

を具備した若手年齢層の管理職への起用を促進することも肝要となる。  

(さ)免許状、僻地校、特殊教育経験   

教頭職への受験資格要件としては、相当学校教諭Ⅰ種又は専修免許状を所有することを原則と   している。そのはかに僻地教育経験(秋田、島根(3年以上)、僻地・特殊教育経験(宮城、山   形)、特殊教育経験(千彙、3年以上)を要件の一部としている県もみられるが、幅広い職務体   験を指導性の礎にする上で今後さらに各県で検討されてよいであろう。  

(4)選考試験   

選考試験への受験手続きとしては、選考願一学校長一地教委一教育事務所一県教委のルートを   経る場合が一般的にみられる。試験問題は大別して筆記試験(客観、論文)と面接からなるが、  

試験の目的は管理職としての資質、能力をみるために客観性のある一つの資料を得ることにある   ことから、選考の一環として試験が位置づけられている。出題内容においてウエイトが高い教育   法規のみならず、教育一般について該当することであるが、実務に直結する問題が多いというこ  

とである。中堅層教員に対する学校経営関連研修と教頭選考試験とのかかわりでみた場合、イン   フォーマルな研修歴をも包含したこれまでの研修参加状況、あるいは義務的研修条件との対応で   選考試験を弾力的に実施してもよいであろう。  

9.今後の課題一任用前研修との関連を中心に一  

教育センターと文部省の中堅層教員に対する学校経営関連研修の分析を通して今後の課題を①   研修内容・方法の充実、②教頭職選考との関連、任用前研修、③大学と教育委員会との連携の   視点から考察してみよう。   

第1に、研修日数、実施総時間数は各県の財政的、行政的実情等により異なるのもやむを得な   いともいえようが、実際、例えば60時間以上に及ぶ研修は、群馬県、宮崎県、埼玉県、静岡県、  

広島県、文部省の6機関の研修に過ぎなかった。今後内容的にも充実した、しかも効率的な研修   を実施するためには、実施期日において現行の初任者研修のように、特定曜日、夏期集中方式が   望ましいであろう。   

また今日的な学校病理問題について研修内容として重きを置くとともに、受講者の課題意識を   高揚させるよう、個々参加型研修が多様に導入されてよいのではなかろうか。この点、アメリカ   の学校管理職養成にみられるように実践的な場面を基盤にした演習とそれに連結した実習が行わ   れているのは注目される。   

さらに教育委員会と教育センターの研修実施主体間の連携がややもすれば不十分であるとの指   摘が少なくないが、むしろ今後、文部省(国)の中央研修と教委・教育センターの長期的研修の   連携方策による受講者数の拡大措置も課題となる。   

第2に、学校経営関連研修と学校管理職選考・任用前研修の関連からみた場合、前者における   受講機会・参加の充実度により、選考制度を柔軟に検討する余地もあろう。校長、地方教育委員   会サイドでの推薦、面接を重視されてもよい。   

逆に、管理職養成的視点でフォーマルであれ、インフォーマルであれ、それはど研修が実施さ   れておらず、あるいはオープンな受験制度が確立されている場合には、任用前研修の充実を図っ   

(14)

中堅層教員に対する学校経営関連講座の今日的特徴と学校管理職選考の対応   87  

てもよいのではないだろうか。任用前研修は管理職になってからの職務の多忙化を考えてみても   必要である。   

そこで東京都の平成7年度における教頭任用前研修の状況を検討してみよう。(11)研修の目的   として「教頭の学校経営に関する実践的問題解決能力の向上に資すること」(校長の場合も同様   の目的)が主眼にあり、研修対象者は主に平成6年度教頭選考合格者である(なお選考試験の受   験資格は教職経験12年以上[都公立学校7年以上]、37歳以上53歳未満、1種免許状所持であ  

る)。この任用前研修は臨床経験的要素を含んだ学校経営関連法規を主たる内容とし、具体的状   況は以下に示すが、いずれも学校の管理者に共通に求められている職務上の実践課題について的   確な校務処理能力、指導力とともに人間性の向上を図ることを意図していることが看取できる。  

[平成7年度教頭任用前研修(年間7日間)]   

(1)開講式(5月8日)   

「教頭としての心構え」(講話)、「教育法規」「学校の危機管理」(以上、講演)   

(Ⅱ)適所A(6月の1日、割り振られた日に受講、以下同様)   

(目的・内容)「所属職員の育成と教頭の役割」について、短縮事例法によるグループ討議   を行い、学校経営力の向上を図る。   

(Ⅲ)適所B(6月の1日)   

(目的・内容)「教職員の人事管理」「非常勤制度と再雇用制度」に関して、講義を通して基   礎的知識の習得を図る。   

(Ⅳ)宿泊研修(7月から8月にかけての3日間)   

(目的・内容)「教職員の労務管理」について正しい知識を習得し、適正な労使関係を築く   基礎とする。学校の管理職が共通して直面する職務上の課題について、事例をもとに「ロー   ルプレイング」を行い、管理者としての的確な判断力と問題解決力の向上を図る。「職員団   体制度に関する法規」について演習を通して基礎的知識の習得を図る。   

(Ⅴ)適所C(7月から8月にかけての1日)   

(目的・内容)「教育行政制度」及び「教育公務員制度」に関する法規演習を通して、管理   実務能力の向上を図る。   

(Ⅵ)適所D(9月の1日)   

(目的・内容)「学校事故と訴訟事件」「汚職非行防止・財務管理」「学校職員の公務災害補   償」に関して講義を通して基礎的知識の習得を図る。   

(Ⅶ)開講式(10月17日)   

「現代教育課題」「教育課程管理」「民間企業の組織経営」「管理者向けカウンセリング」(以   上、講演)   

(Ⅷ)課題論文 3題の課題から1題を選択して、4千字程度の論文を作成する。   

最後に、これまでわが国の場合、教育委員会・教育センター所管の研修が主導であった。しか   し大学側も学校経営、教育行政に関する専門的、指導的教育者を養成することを重点に置き、し   かも勤務時間を配慮して授業科目を選択できるような大学院修士課程を設定するようになっ   た。(12)大学院における中間指導層を主にした管理職養成的プログラムにおいて、指導組織・運   営面からの大学と教育委員会における協働関係が今後さらに不可欠となってこよう。   

(15)

88   八尾坂  修  

注   

(1)岸本孝次郎「中堅教員の研修と職能成長」『現職教育の再検討』教育開発研究所、1986年、233−244   頁。  

(2)日本教育行政学会指導行政特別委員会『教職の質的向上と教育指導行政に関する総合的研究』1982年、  

333頁。  

(3)八尾坂修「管理職(校長・教頭)の登用」『教育データランド 96〜 97』時事通信社、1996年、170−  

171頁。  

(4)校外における主任や中堅層教員対象の研修は、一般に都道府県・指定都市教育委員会・教育センター   を中心に実施されている。ただ、各県市における研修の中核的実施機関については、研修の類型(教   職経験、職能、教科等、教育課題、長期研修)によりやや相違があるものの、教育センターの役割に   重きを置く傾向がある。しかも研修事業について教育センターヘの一元化を推進している県市もみら   れるなど(17県市)、「教育センターの役割」が将来さらに高まることが予測されている。文部省教職   員課「初任者研修に続く教員研修の体系的整備について」『教育委員会月報』1995年11月号、20〜31   頁。  

(5)文部省の中堅教員研修講座の受講対象は、国・公立の小・中・高(特殊教育諸学校を含む)の校長、  

教頭以外の教員でおおむね35歳以上50歳以下の者(教職経験10年以上の者)『平成7年度数職員等   中央研修講座実施要項』  

(6)平田幹夫「いじめ問題と教員研修の工夫」『教職研修』1995年11月号、104〜106頁。  

(7)八尾坂修「アメリカにおける学校管理職の資格・免許制度の現状と課題」『日本教育制度学会紀要』第   2号、1995年、98〜105頁。同「アメリカ合衆国における校長職の免許資格制度と養成・現職研修の   対応」『国立教育研究所研究集録』1990年、57〜77頁。  

(8)TheNASDTECManual1994−1995,KendalHuntPublishingCom.,1994,A−73〜A−75.  

(9)Student Handbook PrincipalCertification Pattern,The Principal s Center Harvard Graduate  

SchoolofEducation,(Revisedfor1994−1996),HarvardGraduateSchoolofEducation,1995−  

96CATALOGUE,80−147頁。  

(10)全日本中学校長全教育情報部『中学校教育に関する調査(平成7年度)』1995年、32〜35頁。  

(11)東京都教育委員会『平成7年度数頑任用前研修 研修案内』  

(12)九州大学大学院教育学研究科の修士課程において、学校改善コース・成人教育計画コースが現職学校   指導者の養成をめざして1996年度から開設されることになった。今後の動向が期待される。中留武昭   

『学校指導者の役割と力量形成の改革』東洋館、1995年。  

※ 本稿は平成7年度文部省科学研究費補助金一般研究C(八尾坂修・個人研究)「アメリカ合衆国におけ   る教職員の免許資格と初任者研修の対応に関する実証的研究」に基づく研究成果の一部である。   

(16)

A Study of the Characteristics of the Courses Related to School Administration for Middle Lead Teachers and the Screening

of School Administrator's Positions

Osamu Yaosaka

{Department of Educational Administration, Nara University of Education, Nara 630, Japan) (Received April 12, 1996)

It has been requested that middle teachers have the opportunity to nurture the management mind while cultivating their senses as managers and leaders.

This was made clear in the Adhoc Committee Report (Rinkyoshin) which pointed out that school management activity risks depression due to a decline in desire and vitality of administrators based on the advanced age principals are appointed.

It is important, therefore, to encourage the appointment of younger aged individuals to administrative positions in order to raise the morale of middle teachers.

With such an awareness of these issues, I considered the following points :

1. ) National trends of the courses related to school administration for middle lead teachers by in-service education centers in Japan.

2.) In-service education courses for middle lead teachers by the Ministry of Education.

3.) The case of preparation of school administrators in graduate schools of education.

4. ) National trends of the screening of vice-principals.

5. ) The problem of leader preparation for middle teachers.

In conclusion, the following should be pointed out.

Firstly, it is inevitable that the dates for in-service education and the total amount of time for in-service education differ because of the financial and administrative circumstances in each prefecture. In reality, in the cases of in-service education which cover over 60 hours, only the six organizations of Gunma, Miyazaki, Saitama, Shizuoka, Hiroshima prefectures and the Ministry of Education are applicable. The specific date courses and summer intensive courses, such as the present beginning teacher in-service programs are desirable for conducting effective in-service education hereafter.

Additionally, in-service education through individual participation should be introduced diversely.

Secondly, from the point of view of the relationship between in-service education

related to school administration and the screening of school administrator's positions,

when considering in-service education before appointment for instance, the screening

system should be examined fuzzily according to the fulfillment of class opportunities in

(17)

the former's previous in-service education.

Lastly, partnerships between the university and the board of education from the

instructive organ and management side are indispensable. Furthermore, para-

preparation programs for school administrators in graduate school should focus on

middle lead teachers.

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