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雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

学級における社会的受容に関する発達心理学的研究 (?)―相互選択・相互排斥の発達的傾向―

著者 上田 敏見

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 16

号 1

ページ 161‑170

発行年 1968‑02‑29

その他のタイトル A DEVELOPMENTAL STUDY OF CHILDREN'S SOCIAL ACCEPTANCE IN THE CLASSROOM: (III) SOME DEVELOPMENTAL TRENDS OBSERVED IN MUTUAL CHOICES AND REJECTIONS

URL http://hdl.handle.net/10105/3281

(2)

学級における社会的受容に関する発達心理学的研究 (Ⅱ)

‑相互選択・相互排斥の発達的傾向‑

上  田  敏  見 (心理学教室)

161

I 従来の研究

Moreno, J. L. (1953)の公立校における研究によると、相互選択対の数は、幼稚園で最低で 学年上昇につれて大体増加していくような傾向が認められた。今、第2回目(第1回目のテスト から22カ月後)のソシオメトリック・テストにおいて見出された相互選択数を列挙してみると、

幼稚園児6%、小学1年生5%、 2年生12%、 3年生10%、 4年生16%、 5年生18%、 6年生16

%、 7年生17%、 8年生20%であった。又、別に行なった14才〜18才児153名(男子)についての4 人制限のテスト結果では、寮生だけについてはその82%が、通学生においてはその68%が、それ

ぞれ相互選択をもっていたといわれているO新しく作られたグループ内には比較的少数の相互選 択しかみられないのが通例であるが、成員間の熟知度が増すにつれてその数が増加するようで、

このような事実は上記の結果の他に、 Bronfenbrenner, U. (1945)もすでに見出した所であ

<.">o

Bonney, M. E., Hoblit, R. E., & Dreyer, A. H. (1953)は、大学の男子寮生75名につい て、 10月の第2過すなわち大学開講後3過日に、 4つのビルの全寮生の中からルームメイト、レ ジャーの友人を無制限に選ばせた。この申A寮75名のルームメイトにおける相互選択は、選択水 準に比例していた。すなわち、第1選択の29%、第2選択の13%、第3選択の4%が、それぞれ 相互選択であった。このことは、第1選択が他の低い水準の選択よりもいっそうrealisticであ

ることを示すらしい、と解されている。

依田新・大橋正夫・島田四郎(1954)の研究の一部に、積極的ないし拒否的に相互選択し合っ ているクリーク(積極的選択においては3人のクリークもみられたが、拒否的選択では2人のも のしかみられなかった)の数をしらべ、下位集団の構造化の分析をしたものがある。その積極狗 相互選択数は、 2人結合が、小学1年生12回の合計男子のみのもの12、女子のみのもの53、混合 6 ; 2年生では男子のみのもの32、女子のみのもの88、混合23 ; 3年生では男子のみのもの41、

女子のみのもの93、混合2となり、 3人結合のクリ‑クは、 1年生で1個、 2年生で5個、 3年 生で6個であった。このように、積極的選択のクリークでは、女子のみで構成されるものが最 高、次いで男子のみのもの、一番少ないのは男女混合のものとなっている.これを学年別にみる

と、 2人結合は男女共に学年進行につれて増加していくこと、男女混合のクリークは2年生がピ ークで3年生では減少することが分る0 3人のクリ‑クでは、男子は着実に増加するが女子は変 動せず、混合のクリークは2人の場合と同じく2年生で最高を示していること、すなわち、相互 結合を作り構造化することは男子よりも女子において早く、文、 3年生頃になると男女の対立が

かなり明確となることが明らかになった。拒否的選択のクリークの数は、積極的選択のそれと比

(3)

162

学級における社会的受容に関する発達心理学的研究cm) (上田)

ベるとはるかに少数である。そして性差は認められず、発達的には、男女共1年生から2年生に かけて増加するが、 2年生から3年生へは余り変化しないことが分った。しかし、混合のクリー クは、 1年生では1個、 2年生では9個、 3年生では23個と急激に増加し、積極的選択のクリー クの場合にみた傾向と同じく、この時期に男女の対立がかなり進むことを示唆している。これを 平均相互選択数(相互選択をもっている成員が平均何個の相互選択を行なっているかという こ

と、 ‑成員間の相互依存の程度を表わす一つの指標、集団の組織化の質的指標と考えられる)か らみると、積極的選択では、 1年生1.15、 2年生1.34、 3年生1.38、同様に拒否的選択では、 1 年生1.00、 2年生1.11、 3年生1.24であった。

田中熊次郎(1964)は多年にわたる広汎な研究の結果から、各年令段階のtacおよびtarを 次のように示した tac,すなわち相互選択傾向指数は、 415才0.154、小学1・2年生0.217、

同3 ・ 4年生0.264、同5 ・ 6年生0.312、中学生0.337、高校生0.387、大学生0.430、成人0.423で あった。このように、 tacは、大体において、発達段階上昇につれて増大していくことが明らか になった tar,すなわち相互排斥傾向指数は、上の順に示すと、 0.025、 0.051、 0.066、 0.096、

0.098、 0.048、 0.065、 0.125であった。このように、ねγは、必ずしも減少を示さなかったので ある。なお、いずれの年令段階においても、成員問の相互選択関係の方が、相互排斥関係よりも 優位になっているが、この点について田中は、 「集団内では、親和力の方が反発力より優勢にな っていて、そのバランスが保持されていると考えてよかろう」と述べている。

Bjerstedt, A (1956)はスエ‑デンの第3学年〜第8学年の児童の、男ばかりのクラス・女 ばかりのクラス・男女混合のクラス・男女混合でグループ・ワークの経験をもつクラスのそれぞ れについて、積極的相互選択数をしらべているO全被験者(約860名)の平均は2.72、範匡酎ま0‑

10となり、 1‑4のものが約75%いることが明らかとなった。クラス構成別に・平均をみると、男 子ばかりのクラスが2.61、女子ばかりのクラスが2.69、男女混合クラスが2.96、グループ・ワー クの経験をもつ男女混合クラスでは2.66となり、発達にともなう変化憤向は必ずしも一貫したも のをとらえることができなかった。

北野栄正(1958)は、相互選択に関する結果を次のように報じている。すなわち、積極的選択 における相互選択では、各学級編成を通じて異性の相互選択はなく、しかも5人以上の相互選択 はなかった。普通学級においては、 2人の相互選択が圧倒的に多くなっているが、児童数の少な い複式学級ほど3人、 4人の相互選択もかなりみられる。これは児童の交友関係が相互依存的 で、下位集団が重畳しているものと考えられているO これに反して、拒否的選択における相互選 択は、各学年を通じてきわめて少なく、特に児童数の少ない複式学級はど相互拒否的選択が少な

Table l 各学級編成における積極的相互選択数(北野栄正)

(4)

学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(M) (上田)

163

くなっている。相互選択数はTable lの通りである。

Gronlund, N. E. (1959)は異なる学年において相互選択をしているものの割合をTable 2 のように示している。ここに明らかなように、いずれの学年においても相当多数のものが相互選 択をもっているが、この一因は大学以外の他の学年ではクラス成員が6‑8カ月間共同集団生活

Table 2相互選択をもつ生徒の比率(Gronlund, N. E.) 学年  学級数

co

*I Oc ot

o i

to co oo to <r> to 10

生徒数      相互選択の割合

男  女       男      女

T‑H CO tO tD LD oO U'l O Ln C^ cO CO W ^H t‑  (O OO tO LO LO CD

1

‑ 1  

1   1

  T

I   サ

ー I

O l  

^   N   o O   I O   O O   C O   l f l   O   I O   H

N ^ Tf cO Ol tN QO ID IO 'iJ CO

t H

  t

‑ [

   

r ‑

¥  

  i

‑ I

Q O  

^   H   N   N   N   t D   c O  

^   W   O N   N   C O   ォ J   C O   c O   O O   O O   サ   ォ   0 )

77 81 80 71 84 96 84 93 93

00 4

8 8

(注)

(%) 1、 5人制限

2、規準:作業(3‑6学年) 、座席(7‑12学年) 、教育実習(大学)

をしていたからであろうといわれている。又、興味あることには、相互選択をもたない生徒たち は、社会測定的地位の低いカテゴリーに属する傾向があったが、これは、 Gronlundによれば、

主として、低地位群のものが高地位群に属するものを選択する傾向があり、高地位群のものは相 互に選択し合う傾向があること、さらに、低地位のものたちは相互に選び合わないから、と解釈 されている。次に発達的にみると、第7学年で相互選択をもつものの率が著しく高くなり、バイ スク‑ルや大学を通じて82?を下らないことが注目されるOなお、 3個以上の相互選択をもつ生 徒の割合を計算したところによると、第3‑6学年では19‑31%、第7学年では45%に達し、バ イスク‑ル時代を通じて40%を下らなかった。このことは高学年児において高い程度の社会化に 特徴的な、より複雑な社会的構造が形成されていることを反映しているものであると解されてい

る。

Gronlundはさらに進んで性差の検討を加えている。その結果によると、第3学年から第12学 年にいたる各学年の絵選択数の中で相互選択数の占める割合は、男子相互間が、学年頓に、 34

%、 36%、 35%、 31%、 40%、 42%、 41%、 38%、 34%、 33%、同様に女子相互間のそれは、 38

%、 35%、 37%、 35%、 41%、 48%、 49%、 48%、 39%、 38%であった。大学生では、男女相互 間が33%、女子相互間が激減して22%であった。このように同性間の相互選択は総選択数の3分 の1ないし2分の1を占めているのに対し、異性間のそれは各学年共きわめて少なく、第3‑8 学年では 蝣3%,第9‑12学年では各学年境にそれぞれ、 6%、 4%、 7%、 5%、大学生で やっと12%に達するという程度にすぎないことが明らかにされた。青年期における異性間相互選 択の増加は、異性への興味の発達から考えて当然予想されたところであるが、このソシオメトリ ック・テストのように選択を同一学級内に限定することがなければ、さらに多数の異性間選択が

(5)

164

学級における社会的受容に関する発達心理学的研究as) (上田)

みられたことであろう。なお、同性間相互選択も第7学年から第10学年の間で増加しているが、

これは青年の社会化の発達を示すものであろうし、叉、女子大学生の同性間相互選択の激減は、

おそらく、異性への選択が増加したためであろうと考えられる。さらにいえば、第4学年と大学 を除いては、女子の方が一貫して男子より多くの同性間相互選択をもっているが、これは、 「女 子は男子よりも、よりいっそう社会化する傾向が大きい」という Moreno(1953)の仮設を支持 するものであり、しかもこの性差が第8‑12学年の間に著しいことから、以上の傾向は青年期に 最大になるといえるであろう。

水原泰介・剣持一郎(1960)は、小学校2年生から中学3年生まで各学年5クラス宛を対象と して、無制限選択のソシオメトリック・テスト(規準:好きな友だち)を実施し、上位に選択さ れた3人だけの資料を用いて相互選択の発達にともなう増加、有機的な全体の形成過程を検討し た。ここでは相互選択の量のインデックスとしてCoを用いているが、 Coの平均は、小学2年生 30.5、 3年生34.6、 4年生39.2、 5年生43.4、 6年生42.5、中学1年生33.9、同2年生40.5、同

3年生45.3であった。この結果を、小学校低学年(小2 ・ 3年) 、同高学年(小5・6年) 、中学 高学年(申2 ・ 3年)という3群にまとめてみると、 Coの平均はそれぞれ、小学校低学年32.5、

同高学年43.0、中学高学年42.9となり、前2者間の差は1%水準で有意となったが、小学校高学 年と中学高学年の差は有意水準を逸した。すなわち、 Moreno (1953)の結果と同様に、相互選 択数は小学校4 ・ 5年までは増加するが、それ以後には大きな変化が認められなかったわけであ る。なお、この研究によると、相互に選択し合っている2人が第3者をともに好きになる現象は 学年上昇につれて増大する傾向のあることが見出された。このことは、 「学級内の友人構造が単 なる2人関係のモザイク的集合ではなくなり、有機的な全体が形成されてくることを示してい る。低学年においては児童AとBとの友人関係はBとCの友人関係とは無関係に存在し得るが、

高学年になるにつれてABCが有機的なつながりをもつようになり、 1人における変化が全体に 影響をおよぼすようになってくる。 」ことを示すものと解釈きれている。

吉田貴子(1960)は小学校4年生8クラス、 434名、同6年生10クラス、 566名、中学2年生8 クラス、 366名、合計1,366名を被験者として、相互選択傾向を′′を用いてしらべてみた。その結 果のt′は、平均4年生で0.076、 6年生で0.212、中学2年生で0.256となり、学年上昇につれて 増大する傾向が認められた。

Long, N. J., Cook, A. R., Evans, E. D., Kerr, J., Linke, L. A., Neubauer, B., &

Payne, D. C. (1962)は、学級集団の心理に焦点をおき担任教師が教育指導するのによく役立 つようなL‑Jソシオメトリック・テストを考案し、小学校5年生1クラス(男9名、女22名) に縦断的に使用した結果を報告している。先ず第1回テスト(11月10日施行)の結果と第4回目

(翌年5月25日施行)の結果とを比較してみると、相互選択数は当初の3倍となったということ である。すなわち、第1回目テスト当時は、男子間には相互選択が全然みられず、女子間に3対 だけみられたのであるが、約6カ月半経過後の第4回目テストにおいては、男子間に3対、女子 間に6対、合計9対に増加したのである。このことは、少なくも一部分は、成員相互間の熟知度 の増加という点から説明できると思われる。したがって、相互選択傾向の測定においては、その 集団の成員間の熟知度をコントロールしておくことが大切な条件と考えられる。

なお相互選択の考察に際しては、 Davids, A., & Parenti, A. N. (1958) , DeVault, M.

V. (1957), Gross, N., & Martin, W. E. (1952), Lott, A. J., & Lott, B. E. (1961), Maisonneuve, J. (1954) , Zelen, S. L. (1954)の研究なども大変示唆的である。

(6)

学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(班) (上田)

165

‑11 日    的

従釆行なわれてきた相互選択に関する研究は、すでにみてきたように、異なる発達段階を散発 的に扱ったものが多かっt: (Moreno, 1953 ;依田・大橋・島田1954 北野, 1958;吉田, 19 60) 。これらの研究はほぼ相互選択が発達につれて増大することを明らかにしたが、興味深いの は、相互選択数が小学4年生頃以上ではもはやふえなくなるというMoreno (1953)や水原・剣 拷(1960)の結果、さらに、第7学年以後において相互選択が急激に増加するというGronlund

の結果(1959)などである。この両者とも相互選択傾向指数を用いていないので直接比較はでき ないが、その結果は、かなり大きなサンプルを用いた田中の研究C1964)や吉田の研究(1960) と必ずしも一致していない。田中の場合では中学以後もなお相互選択傾向指数が増大しており、

小学校高学年頃における停滞もみられないのである。この点についてさらに検討を加え、従来の 諸研究にはほとんど欠けていた発達傾向の統計的分析を試みることが必要であろう。

なお相互選択と熟知慶の関係を扱ったもの(Bronfenbrenner, 1945 ', Moreno, 1953; Long et al., 1962)や、選択水準と相互選択の関係の分析を試みたもの(Bonney, Hoblit, &Dreyer,

1953)があるが、相互排斥傾向指数を用いて相当広範囲のサンプルに、丹念な研究を行なったの は田中(1964)ただ1人である。したがって、田中の示唆しているように、いずれの発達段階に おいても相互排斥はきわめてわずかであり、発達的に変動しないものなのかどうか、統計的に確 証づけることがのぞまれるのである。勿論予測としては、発達が進むほど集団ののぞましい理想 状況に近づくこと、つまり、相互選択傾向は高学年になるにつれて増大すること、相互排斥傾向

は高学年になるにつれて減少すること、が考えられる。

そこで本研究は、熟知期間10カ月を経過した小・中学校の学級について、次の2仮説を検証し ようとするものである。

仮説( I) 学級内における相互選択傾向は、学年上昇につれて増大するであろう。

仮説(Ⅲ) 学級内における相互排斥傾向は、学年上昇につれて減少するであろう。

Ⅱ 方    法

学級編成後10カ月を経過した1964年2月末、男女ほぼ同数より成り立つ小学校1年生7クラス (男女計252名) 、同3年生7クラス(男女計286名) 、同5年生7クラス(男女計274名)、中学 校1 ・ 2年生7クラス(1年生4クラス男女計173名および2年生3クラス男女計134名)の被験 者に、規準を清掃当番とするソシオメトリック・テストを実施した。その形式・実施手続きは著 者の以前に用いたもの(上田, 1964)と同じであり、ただ中学生用は漢字まじり文としグループ 調査と名付けた。選択・排斥は無制限に許したが、結果の処理は上位者5名について行なったO なお、上記の被験者の中の小学生は、奈良市内(1校)および大和高田市内( 1校)の公立校の 児童、中学生は大和郡山市内(1校)および大和高田市内(1校)の公立校の生徒であった。

Ⅳ 結    果

被験者の反応はすべて各クラス毎にソシオマトリックスに記入され、その中で、さらに相互選 択・相互排斥のチェックがなされた。各クラス別の相互選択傾向は田中(1964)のtacを算出する

ことにより、叉、相互排斥傾向は同様にしてtarを算出することによって示されたO次のTable 3はtac (相互選択傾向指数)の各学年中央値と範囲を示したもの、 Fig. 1はその発達傾向を図示

(7)

166

学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(M) (上田)

したものである tac、 Iarの算出は次式によったO

tac ‑

2JV(N‑1)me‑T2c Tc JN(N‑1)‑Tcj ただし、 me蝣蝣蝣相互的選択態度反応

Tc ‑選択総数

蝣*/*.蝣=

2N(N‑1) mr‑T*r

Tr 〔N(N‑ 1)‑Tr〕

ただし、 mr‑・相互排斥態度反応 Tr一排斥揺数

小1  小3   小5   中1・2 学年

Fig. 1相互選択傾向の発達

Table3に明らかなように、 tacは学年進行につれてその値が大きくなっており、 Hテストに かけて検定した結果、 H‑13.45、 df‑ 3となり、 1%水準で4個の学年中央値は互いに異なる といえることが明らかとなった。すなわち、全体としてみると、相互選択傾向指数は、学年上昇 につれて増大していくことが認められたのである。なお、さらに進んで各学年対間の差の有意性 を、対応のない場合のTテストにかけたところ、小学1年生と同5年生の間では1%水準(T‑

31) 、小学1年生と中学1 ・ 2年生の間でもやはり1%水準(T‑32)で有意差が認められ、小 Table 3 学年別の相互選択傾向指数(tac)

学 年    中央値 小      0.217 小      0.317 小      0.374 中      0.381

範   囲

0.160‑0.337 0.269‑ ‑0.338

0.223′‑0.471

0.269‑0.540

学3年生と同5年生の間では5%水準の有意差が認められた(T‑35) 小学1年生と同3年生 の差は、予測された方向のものではあったが、わずかに有意水準を逸した(T‑37) 。このよ うにして、 tacは、小学校高学年および中学において、小学校低・中学年より有意に高くなるこ と、つまり相互選択の有意の増加が確証づけられたのである。なお、各学年のtacの平均値(小 1‑0.237;小3‑0.314;小5‑0.376;申1・2‑0.391)にもとづく分散分析も試みられた が、 F‑6.975、 df‑3と24、となり、 1%水準で学年間に有意の差が認められ、 Hテストの場 合にみたと同様な傾向が確かめられた。

次に、 Table4はtar (相互排斥傾向指数)の各学年中央値と範囲を示したものである。この 表にみられるように、 tarの値は各学年ともきわめて小さく、各学年間に有意の差を認めること

ができなかった(H‑5.05, df〒3) 0

(8)

学級における社会的受容に関する発達心理学的研究「(M) (上田)

Table 4 学年別の相互排斥憤向指数{tar) 巾屯!n'i i石   川

l

1 3 5

0.029      ‑0.028‑0.120 0.108       0.033‑0.138

0.079      0.048′‑0.092

0.070         ‑0.007‑0.128

167

Ⅴ 考    察

本研究において得られた前述の結果について、当初たてた仮説ごとに以下若干の考察を試みた い。先ず第1に仮説(I) 、すなわち、学級内にわける相互選択傾向は、学年上昇につれて増大 するであろう、という仮説は十分支持された。相互選択傾向を示す指標であるtacは、学年上昇 にともなって増加傾向を示し、高学年におけるtacは、小1 ・小3より有意に高いことが明かに なった tacの大きさについていえば、田中(1964)の得た値にきわめて類似しており、小学校

1 ・ 2年生の値0.217は、本研究の小1の値と全く‑致したのである。その発達傾向も田中のそ れに酷似しているが、本研究では中学3年以上の被験者を欠いているので、 Gronlund (1959) が得た結果のように、第7学年以後に相互選択が急激に増すかどうか、何ともいえない。ただ、

本研究の小5‑申1 ・ 2の差は有意水準に達せず、この点、 Moreno (1953)、水原・剣持(1960) の結果に近い。異なる規準やアプローチを用いたとはいえ、相当一致した傾向(小学校高学年以 上では相互選択が増加しない傾向)が確かめられたことは、一応注目に値するであろう。おそら く、この主因は、青年前期の自我の目ざめや異性意識の発達であろう。小学校高学年までは、少 なくとも、相互選択が増加するという点では、依田・大橋・島田の結栄(1954)、北野(1958)早 吉田(1960)らの結果と矛盾するものではないOなお、本研究は熟知度を10カ月とする時点で発 達傾向をとらえてみたのであるが、熟知度と相互選択とは正の相関が考えられる(Moreno, 1953

;Bronfenlarenner, 1945; Long, et al., 1962)ので、たとえば熟知期間を15カ月、 24カ月と した今後の分析も必要であろうし、さらに、異性間相互選択・同性間相互選択の究明も意義が大 きいであろう。女子の同性間相互選択がより多いという結果(Moreno, 1953; Gronlund, 1959) や選択水準と相互選択の関孫を明らかにしたBonney, Hoblit & Dreyer (1953)の結果をふ まえて、高校生以後のサンプルをも含めた選択水準別、性別相互選択傾向の解明もみのり多いで あろう。いずれにせよ、本研究の規準とサンプルの関する限りでは、学年上昇にともなう相互選 択傾向の増大は確かめられたといってよいであろう。

次に仮説(Ⅲ) 、すなわち、学級内における相互排斥傾向は、学年上昇につれて減少するであ ろう、という仮説は支持されず、学年による変動を認めることはできなかったO このような本研 究の結果は、田中(1964)の得た結果と比較されたが、そのtarの値や発達傾向の明らかでない 点は、全く一致した tarは各学年とも0に近く、集団の理想状況に近いことを示す負の値を とったクラスも若干みられたO このようにtarの値が低学年からはやくもきわめて低いことが、

発達にともなう有意の変動を示さない結果をもたらしたのであろう。そして、小学校1年生頃か ら tar が低く相互排斥傾向が微弱であるのは、与えた排斥数そのものが元来与えた選択数より 有意に少ないこと、選択を与える場合にはほとんど感じられない反応‑の抵抗が強く、指定され た制限数に達しないものが多いこと、などにもとづくのではないかと思われる。今後の研究とし

(9)

168

学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(IE) (上田)

ては、従釆ほとんど看過されていた排斥ないし相互排斥傾向の資料をつみ上げることが第1に必 要であろう。中でも、熟知度を長期にした場合にも排斥し合う傾向は依然消失しないものかどう か、この点について、長期間同一クラスを用いて縦断的に追跡研究することが大切であろうO さら に、本研究では扱わなかった高校生以上の青年(勤労青年をも含む)について、相互排斥傾向の 性別分析を行なうこと、なお、排斥を反応するに際しての抵抗を感じさせないソシオメトリック

・テストの発問法、などの問題の解明がのぞまれるのである。又、 Bonney, Hoblit, &Dreyer (1953)が示したような相互選択と選択水準の関係が相互排斥の場合にみられないかどうかの分 析も意義があると考えられる。

最後に、北野(1958)の研究から示唆されたことであるが、学級の成員数と相互排斥傾向・相 互選択傾向の関係の分析、進学などの問題に関連する学級経営方針によるtac・tarの差異や一般 的規準・特殊的規準などによるtac・tarの比較分析なども、学級経営・生徒指導に多くの示唆を 与え得るであろう。

Ⅵ 総    括

本研究の目的は、 ( 1 )学級内における相互選択傾向は、学年上昇につれて増大するであろう、

(Ⅲ)学級内における相互排斥傾向は、学年上昇につれて減少するであろう、という2仮説を検証 することであった。

この両仮説検証のため、新学級編成後10カ月を経過した1964年2月末、男女ほぼ同数より成り 立つ小学校1年生・ 3年生・ 5年生各7クラスずつ、および中学校1 ・ 2年生7クラスの被験者

(男女合計1,119名)に、清掃当番を規準とする無制限ソシオメトリック・テストを実施した。

ただし、結果の処理は選択・排斥とも第1噸位から第5順位までを用いてなされた。相互選択憤 向の指標としては田中(1964)のtac 、同様に相互排斥傾向の指標としては田中のtarが採用さ れ、各学年の中央値について月テストによる発達傾向の分析がなされた。本研究で得られた結果 の主なものは、およそ次の通りである。

(1)相互選択傾向指数の学年中央値の間には有意の差が認められ、仮説( Dは支持された。

すなわち、学級内の相互選択傾向は、小学校1年生から中学生まで総じて増加していくことが 明らかになった。この結果について従来の諸研究との比較がなされ、若干の考察と将来の問題 の展望が述べられた。

(2)相互排斥傾向指数の学年中央値の間には有意の差が見出されず、仮説(Ⅲ)は支持されな かった。すなわち、学級内の相互排斥傾向は、小学校低学年の頃からすでにきわめて小さく、

学年上昇につれて減少を示さなかった。この結果について可能な解釈と今後の研究への示唆が 若干呈出された。

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学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(mo (上田)

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(昭和42年9月27日受理)

(11)

170

A DEVELOPMENTAL STUDY OF CHILDREN'S SOCIAL ACCEPTANCE IN THE CLASSROOM:

(III) SOME DEVELOPMENTAL TRENDS OBSERVED IN MUTUAL CHOICES AND REJECTIONS

Toshimi Ueda

Department of Psychology, Nara University of Education, Nara, Japan

There have been a few studies concerned, from the standpoint of developmental trends, with the mutual choices and rejections in the classroom. The present study

represents an attempt to explore the developmental trend, if any, observed in

relation to the mutual choices and rejections, with relatively large samples of 10 months' acquaintanceship. The sociometric criterion situation employed in this study was in the area of cleaning duty of the classroom and the playground. To calculate tac and tar, both five choices and rejections were analyzed, though unlimited choices and rejections were allotted in the sociometric test. Median tests were conducted to evaluate the developmental trends.

Ss were from grade 1 through 8 ; 7 classrooms each of 1st-, 3rd-, and 5th-graders, with 7 classrooms of 7th-and 8th-graders combined.

An analysis and comparison of the data revealed the following findings:

(1) As shown in Table 3 and Fig. 1, the magnitude of tac, very similar to that of Tanaka's (1964), tends, as a whole, to increase as grade level increases, though the difference between lst-graders and 3rd-graders, and that between 5th- graders and 7th-and 8th-graders combined, both, fail to reach statistical significance.

This result, while based upon tentative measures and a restricted sample, may safely be interpretedto indicate that there is a tendency for mutual choices to increase

with increasing grades.

(2) As shown in Table 4, tar does not, contrary to our prediction, show a

significant decrease in magnitude among upper-graders, ff-test revealed that there were no significant differences among the four grade-groups involved, which fact is consistent with the findings reported by Tanaka (1964).

(3) These results mentioned above were compared with those obtained in

earlier studies and some discussion was made in regard to the agreements and

discrepancies.

参照

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