氏 名(本 籍 地)菊 地 直 宏(愛 媛 県 〉 学 位 記 お よ び 番 号 博 士(歯 学),甲 第340号 学 位 授 与 の 日 付 平 成27年3月10日
学 位 論 文 題 名 論 文 審 査 委 員
「 再 現 性 が高 い 口腔 カ ンジ ダ症 マ ウスモ デル 」
(主査)廣 瀬 公治教授 (副査)清 浦 有祐教授 鎌 田政 善教授 論文 の内容 および審査 の要 旨
【 研 究 目的 】 口腔 カ ン ジ ダ症 の 研 究 に 必 要 な モ デ ル 動 物 は,研 究 者 に よ り そ の 手 法 が 異 な り安 定 的 な 再 現 性 の あ る研 究 結 果 を得 る こ とが 困 難 で あ る。
そ こで,口 腔 カ ン ジ タ症 を 安 定 して 再 現 性 よ く発 症 す る マ ウ ス を作 成 す る た め の 条 件 を見 つ け 出 す
こ と を本 研 究 の 目的 と した 。
【 研 究 方 法 】 実 験 に 用 い たICRマ ウ ス に,0.2mg の プ レ ドニ ゾ ロ ン を皮 下 注 射 し,塩 酸 ク ロル テ ト ラ サ イ ク リ ン含 有 水 で24時 間 飼 育 し た 。 そ の 後, マ ウ ス の 鎮 静 の た め,0.1mgの ク ロル プ ロ マ ジ ン を筋 肉 注 射 し,Candida albicans(C.a)を 綿 棒 に て 口 腔 内 に接 種 し た。 感 染3日 後 に マ ウ ス の 舌 を摘 出 し,舌 表 面 の 観 察 を 行 っ た 後,舌 に お け る 定 着 したC.a数 をGS培 地 に よ る 復 元 培 養 法 に て 測 定 した 。 さ らに舌 を ホ モ ジナ イ ズ し,そ の浸 出
液 中 に 含 ま れ るMIP‑1α,MCP‑1,IL‑1α,
TNF‑α 及 びIL‑17の 量 をELISA法 に よ り定 量 し た 。
【 研 究 結 果 】 飲 料 水 に投 与 し た テ トラ サ イ ク リ ン は,マ ウ ス ロ腔 内 細 菌 数 を有 意 に減 少 させ た 。 一 方,こ の 投 与 に お け る マ ウ ス の 体 重 変 化 は 認 め ら れ な か っ た 。C.aを 接 種 し3日 後 の 舌 を観 察 した と こ ろ,テ トラ サ イ ク リ ン+プ レ ドニ ゾ ロ ン投 与 マ ウ ス に お い て 白 苔 の 形 成 を認 め た 。 ま た,こ の 舌 に お い て 多数 のC.aが 復 元 培 養 に て観 察 され た。
感 染 が成 立 した舌 に お け る 各 サ イ トカ イ ン量 を測 定 した と こ ろ,MIP‑1α とIL‑1α に有 意 な産 生 の 増 加 が 認 め られ た 。
【 考 察 】 口 腔 カ ン ジ ダ症 は 日和 見 感 染 症 の1つ で あ る が,超 高 齢 社 会 の 我 が 国 に お い て は 今 後 そ の 患 者 が 増 加 す る こ と が予 想 され る。 口腔 カ ン ジ ダ症 の 発 症 メ カ ニ ズ ムや そ の 治 療 法 の 開 発 に は 再 現 性 の 高 い モ デル 動 物 が 必 要 で あ る。 よ っ て,そ の 確 立 の た め の 基 礎 的 知 見 や 技 術 は 重 要 な 意 味 を 持 つ 。 本 研 究 に お い て,再 現 性 の 高 い マ ウ ス ロ 腔
内 カ ン ジ ダ症 を 発 症 させ る た め に 必 要 な抗 菌 薬 と 免 疫 抑 制 剤 の 投 与 方 法 を示 す こ とが で き た。 さ ら に,カ ン ジ ダ が 定 着 した舌 組 織 に お け る サ イ トカ イ ン量 を 調 べ た と こ ろ,真 菌 感 染 に 対 し防 御 的 に 作 用 す る も の の 産 生 が有 意 に認 め られ た。 以 上 の こ と か ら,こ の モ デ ル 動 物 は 肉 眼 的,微 生 物 学 的 に カ ン ジ ダ症 を再 現 で き るの み な らず,マ ウ スの 全 身 の 免 疫 応 答 の 状 況 を舌 を材 料 に 定 量 で き る こ と を示 す 。 よ って,本 モ デ ル 動 物 は,口 腔 カ ン ジ ダ症 の 新 た な 治 療 法 の効 果 判 定 に 応 用 で き る可 能 性 が あ る。
【 結 論 】 マ ウ ス を 用 い た 口腔 カ ン ジ ダ症 モ デ ル 動 物 の 確 立 に は,適 切 な 塩 酸 ク ロル テ トラサ イ ク リ ン と プ レ ドニ ゾ ロ ンの 前 投 与 が 必 要 で あ る。 ま た,本 モ デ ル 動 物 の 舌 は 口腔 カ ン ジ ダ症 の 臨 床 的, 生 化 学 的 指 標 を得 る た め の 材 料 とな る こ とが 示 さ れ た 。
【 審 査 の過 程 と結 果 】 本 論 文 に 関 して の審 査 委 員 会 は,平 成27年1月22日 正 午 よ り 開 催 され た 。 は じめ に 申 請 者 か らの 論 文 の 要 旨 に つ い て 説 明 が あ り,そ の 後,審 査 委 員 か ら次 の 質 疑 が あ っ た °1) 研 究 目 的:口 腔 カ ン ジ ダ症 モ デ ル 動 物 を確 立 す る 意 義 につ い て 。 口腔 カ ン ジ ダ症 研 究 を進 め る上 で モ デ ル 動 物 が 必 要 な理 由 につ い て 。2)研 究 方 法:
接 種 したC.aの 数 につ い て 。 検 討 したMIP‑1α を は じ め と す る各 種 サ イ トカ イ ン を選 択 した 理 由 に つ い て 。ELISAサ ン プ ル の タ ンパ ク定 量 実 施 の 有 無 につ い て 。3)考 察:マ ウ スへ の 塩 酸 ク ロル テ トラ サ イ ク リ ン,プ レ ドニ ゾ ロ ンの投 与 量 の妥 当 性 につ い て 。C.aが 選 択 的 に舌 組 織 か らの サ イ トカ イ ン産 生 誘 導 を行 っ て い る理 由 につ い て 。 実 験 群 の マ ウ スの 全 身 状 況 につ い て 。 この モ デ ル 動 物 の 応 用 法 に つ い て 。
これ ら質 問 に対 し申 請 者 か らは 適 切 な 回 答 が得 られ た。 また,審 査 委 員 の 指 摘 に よ り,① 抄 録, 緒 言,方 法,結 論,考 察 の文 の 修 正,② 図 の 説 明 の 修 正 の 指 摘 が な され,後 日,適 切 に 加 筆 修 正 さ れ た こ と を各 委 員 が 再 確 認 した 。
本 研 究 は 口 腔 カ ン ジ ダ症 の 予 防 や 治 療 の 方 策 を 検 討 す る 上 で 有 用 な 再 現 性 の 高 い モ デ ル 動 物 の 開 発 につ な が る も の で あ り,今 後 の こ の 領 域 の 研 究 を推 進 す る大 き な ツ ール と な る こ とが 期 待 され る。
よ って 審 査 委 員 会 は,本 論 文 が 申 請 者 に博 士(歯 学)の 学 位 を授 与 す るの に 十 分 な価 値 が あ る もの と認 め合 格 と判 定 した 。
掲 載 雑 誌
奥 羽 大 学 歯 学 誌 第42巻,3号 55‑63 2015