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腫瘍血管内皮細胞のがん転移への関わり 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 )    間 石 奈 湖

学 位 論 文 題 名

腫瘍血管内皮細胞のがん転移への関わり 学位論文内容の要旨

近 年 , が ん 組 織 形 成 過 程 に お い て , 線 維 芽 細 胞 や 炎 症 性 細 胞 , 血 管 構 成 細 胞 な ど の 問 質 細 胞 が , が ん 組 織 内 に 動 員 さ れ , が ん 組 織 形 成 に 関 与 す る と と も に

が ん の 進 展 や 転 移 に 促 進 的 に 関 わ る こ と が 報 告 さ れ て い る . が ん 微 小 環 境 に お け る こ れ ら の 問 質 細 胞 は , 腫 瘍 細 胞 と 相 互 に 作 用 し て お り , と き に 異 常 性 を 獲 得する.例えば、 Cancer‑associated fibroblast (CAF)や Tumor‑associated macrophage (TAM)な ど の 問 質 細 胞 は , 正 常 組 織 に お け るfibroblastやmacrophageと 比 べ て

さ ま ざ ま な 生 物学 的性 質が 異な るこ とが 知ら れて いる .

血 管 新 生 に よ り が ん 組 織 内 へ 誘 導 さ れ た 腫 瘍 血 管 は , が ん に 栄 養 や 酸 素 を 供 給 し , 老 廃 物 な ど を 排 出 す る 経 路 を 提 供 す る . 近 年 , 腫 瘍 血 管 の 形 態 が 正 常 血 管 と 比 べ て 病 理 組 織 学 的 に 異 な る こ と や , 構 造 , 機 能 の 違 い か ら , 腫 瘍 血 管 と

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正常血管では血管内皮細胞そのものの性質に違いがあることが示されている.

我々は,これまで腫瘍血管内皮細胞(Tumor endothelial cell: TEC)の分離,培養 を行い,それらが正常血管内皮細胞(Normal endothelial cell: NEC)に比べ,染色 体 異常 をも つこ と, 特異 遺伝 子を 発現していることなど,さまざまな違いがあ る こ と を 報 告 し て き た . ま た ,A375とA375‑SMは 同一 のヒ 卜ヌ ラノ ーマ 由来 細胞 株で ある が,A375は低 転移 性腫 瘍(Low metastatic tumor:LM tumor), A375‑SMは高 転移 性腫 瘍(Highly metastatic tumor:HM tumor)細胞株として樹 立さ れて いる ,こ れら のマ ウス の皮 下移植 腫瘍 からTECをそ れぞ れ分離・培養 し,そ れら の生 物学 的特 性の 差異について比較検討したところ,高転移性腫瘍 由来 の血管内皮細胞(Highly Metastatic TEC: HM‑TEC)は,低転移性腫瘍由来の 血管 内皮 細胞(Low Metastatic TEC: LM―TEC)に比べ,血管新生能や遊走能,浸 潤 能, 幹細 胞能 が高 く, 腫瘍 細胞 を含 む微小環境の違いによって腫瘍血管内皮 細胞の性質も異なることが明らかになった,

一方 ,が んの 血行性 転移 にお いて は,腫瘍細胞の原発巣からの離脱,血管へ の遊 走と 接着 ,血 管内 皮細 胞間 を通 り抜けることが必要である,上述の様にが ん の転 移能 が異 なる とTECの性 質も 異な って いた こと から ,わ れわれは腫瘍細

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胞が血管 内に侵入 するという 転移の初 期のステ ップにお いては, 近接した血管 内皮 細胞が, 腫瘍細胞の 転移に対 して作用 している 可能性も あるのではないか と仮 説を立てた .っまり ,腫瘍細 胞から血 管内皮細 胞へのみ ならず,血管内皮 細胞から 腫瘍細胞 への作用に ついても 解析する ことが, がんの転 移のメカ ニズ ムの解明や制御にっながるのではないかと考えた.

そこで, 本研究で はがんの転 移とTECの関係を明らかにすることを目的とし,

転移能の 異なる腫 瘍由来の血 管内皮細 胞を用い て,がん の血行性 転移における 腫 瘍 細 胞とTECとの 相 互 作用 , 特に が ん の転 移 の初 期 過程に おけるTECの 性質 の違いが与える影響について解析した.

異なる 転移能の 腫瘍からそ れぞれ血 管内皮細 胞を分離 する前に ,用いる腫瘍 細胞(LM tumor, HM tumor)な らび に その 皮 下 移植 腫 瘍の性質の 差につい て比 較検 討 した , こ れらLM tumorとHM tumorをヌ ー ドマウ スの皮下に 移植した と こ ろ,肉眼的 にHM tumorの方がLM tumorよりも遠隔転移が多いことが示され,

こ れはこれま での報告 と一致し た結果で あった. 転移の頻 度と腫瘍血管新生に はこれま で高い相関があることが報告されている.そこで,それぞれの皮下移植 腫瘍にお ける微小 血管密度(Microvessel density: MVD)を 解析した ところ,HM

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tumorにおいて有意に高く,HM tumorの方がLM tumorよりも血管新生能が高い ことが示された.

次に,転移能が異なる腫瘍由来の血管内皮細胞の性質の違いを比較検討する

ため,これらの腫瘍組織からそれぞれ腫瘍血管内皮細胞(HM‑TEC,LM―TEC)を 分離,培養した.さらにNECとして,正常ヌードマウスの皮膚から正常皮膚血 管内皮細胞を分離培養した,血管内皮細胞の分離は,Hidaらが報告した方法に 準拠して行った.フ□ーサイ卜メーターおよびPCR法によりこれら血管内皮細 胞における血管内皮特異マーカーの発現,さらにマトリゲルにおける管腔形成 能が確認され,これらは血管内皮の特性を維持していることが示された.

血行性転移の初期過程である腫瘍細胞の血管内皮細胞への遊走,接着,血管 内皮間の通過についてin vitroで解析した.腫瘍細胞はLM―TECやNECよりも

HM‑TECに対して最 も高い走化 性,接着能 を示した. また,HM‑TECは他の2 つ の血管内皮 に比較してVEGFAやCXCL12など の血管新生 や細胞遊走 に関連 するサイトカインのmRNA発現が亢進していた.さらに,これまでわれわれが TECマ一カーとしてその機能について解析を進めてきた分子,biglycanの発現も 高かった,Biglycanはプ口テオグリカンのーつであり,細胞外基質を構成する糖

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夕ンパ クである が,近年, 線維芽細 胞のシグ ナル伝達 や細胞増 殖,遊走,炎症 反 応 に関 わ るこ と が 報告され ている. 我々は最近biglycanが,TECの遊 走に関 与 す る こ とを 見 出 して い る, 各 血 管内 皮 細胞 の 培 養上 清 を 回収 し ,Western blottingでbiglycanの 分泌量を 比較した ところ,HM―TECにおいて有意に分泌量

が多か った,そ こで、HM‑TECのbiglycan発現をsiRNAによ ルノックダウンし,

HM‑TECが 分泌 し てい るbiglycanの 腫瘍 細 胞の 遊 走 能へもた らす影響を 検討し た ,Biglycanノ ッ ク ダウ ンHM‑TECに 対 して , 腫瘍 細胞の遊 走は有意に 減少し た . これ ら の結 果よ り,HM―TECは 細胞の遊 走などに 関わるさま ざまなサ イ卜 カイ ンなどの 因子を発 現して腫瘍細胞の転移にかかわる可能性が示唆された.

また,がんの性質によって血管内皮細胞の特性が異なることが示された.

HM‑TECの 上述 の よう な 特 性は が ん微 小 環 境内 で 獲 得され たもので はないか と考 えた.が ん微小環境 には,腫 瘍細胞か ら分泌さ れるタン バク質や核酸とい っ た腫 瘍 細胞由来 因子が存 在する,HM−TECの特性 が腫瘍細 胞由来因子 によっ て 獲 得 さ れ た の で あ れ ば ,in vitroで 腫 瘍 細 胞 由 来 因 子 処 理 に よ りNECも HM‑TECの特 性 の少 な く とも 一 部 を獲 得 する の で はな いか と仮説を 立てた. 腫 瘍 細 胞培 養 上清 に よ りNECを 処理 し た とこ ろ , 上述 の サイ ト カ イン のmRNA発

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現が亢 進し,より 多くの腫 瘍細胞を 走化,接 着させた ,このこ とより腫瘍 細胞 が 産 生 す る 液 性因 子 に よりNECがHM‑TECの 性質 の 一 部を 獲 得し た こ とが 示 唆

さ れた .

本研 究 で は, が ん の性 質 によ りTECの性質が 異なるこ と,腫瘍細 胞由来因 子 に よ っ てNECの 性 質 が 変 化 す る こ と , さ ら に 高 転 移 性 腫 瘍 内 で はTECが biglycanの分 泌を介し てがんの 転移促進 に関与し ているこ とを世界で 初めて示 し た ,転 移 の関 門 で あるTECを 標的とし 転移を防 ぐことを目 的とした 腫瘍血管 新生阻害療法の開発が期待される.

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

主査   特任教授   井上農夫男 副 査    教 授    進 藤 正 信 副査   特任准教授   樋田京子

学 位 論 文 題 名

腫瘍 血管内皮 細胞の がん転移への関わり

  審査 は,審査担当者全員の出席の下,申 請者の研究内容の説明がなされ,関連事項に ついて口頭 試問が行われた.

【 背景 】近年,腫瘍微小環境において,が ん問質が異常性を獲得し,がんの進展や転移 に 促進 的に関わることが報告されている. がんの血行性転移の初期過程では,腫瘍細胞 は 原発 巣から離脱し,血管へ遊走,接着し ,血管内皮間を通過して血液循環に入ること か ら, 腫瘍細胞と血管内皮細胞の相互作用 は重要である.われわれはこれまで腫瘍血管 内 皮 細 胞(TEC)の 分 離 培 養 を 行 い , そ れ ら が 正 常 血 管 内 皮 細 胞(NEC)と 比 較 し て , 様 々な 差異 があ るこ と を明 らか にしてきた,また,転移能が異なる腫 瘍由来のTEC間で は ,細 胞増 殖能 や遊 走 能, サイ トカ イン のmRNA発 現な ど, 様々な性質の違いがあるこ とを明らか にしてきた.

【 目的 】本研究では,腫瘍血管内皮細胞の がんの転移への関わりについて明らかにする ことを目的 とした.

【材料と方 法】ヌードマウスにヒト腫瘍(高転移性腫瘍,低転移性腫瘍)を皮下移植し,

2種類の腫瘍血管内皮細胞(高転移性腫 瘍由来血管内皮細胞: HM一TEC,低転移性腫瘍由 来 血管 内皮細胞: LM―TEC),および正常皮膚由来血管内皮細胞(NEC)を分離培養した,

3種 のECに お い て , 血 管 新 生 や 転移 能に 関す る遺 伝 子発 現を 定量 的リ アル タイ ムPCR 法 によ り比較検討した. HM−TECが低転移 性腫瘍細胞の転移を促進するのかどうかを解 析 す るた め, 腫瘍 細胞 と各ECを 共移 植し ,末 梢循 環 腫瘍 細胞(CTC)と 肺転 移の 有 無を

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転移性腫瘍からの因子により獲得される可能性があるのではと考え,高転移性腫瘍細胞 の培養上清(CM)によるNECへの影響を検討した.

【結果と考察】HM‑TECにおいてCXCL12,VEGF‑AなどのサイトカインのmRNA発現が亢 進していた.HMITECとの共移植により,CTC数の増加と肺転移の促進が認められた,腫 瘍細胞はHM―TECに対して最も高い走化性,接着能を示した.Biglycanをノックダウン されたHM一TECに対して腫瘍細胞の走化性が低下し,HM−TECが分泌するBiglycanは腫 瘍細胞の遊走能に関与していることが示唆された,高転移性腫瘍細胞のCMで培養され たNEC(CMlNEC)では上述のサイトカインの発現が亢進し,また,CM−NECに対して腫瘍 細胞の走化性,接着能も亢進したことから,腫瘍CM存在下でNECが一部HいTEC様の性 質を獲得したことが示唆された.

【結論】腫瘍微小環境内で変化した腫瘍血管内皮細胞が,Biglycanを発現し,がんの 転移促進に関与することが示唆された.

  以上,論文について概要が説明された後,各審査員より,本研究の背景,方法,結果,

考察および関連の研究について質問がなされた,主な質問内容は,@腫瘍細胞が分泌す る何が,血管内皮のBiglycan発現を亢進させているのか,◎Biglycanは正常組織には 発現していなぃのか,◎Biglycanは腫瘍組織およぴ炎症組織ではどのように分布して いるのか,@血管内皮細胞の分離方法にっいて,FACSを用いていないのか,◎CD45は 単球マーカーといっていいのか,Leukocyte common antigenなので,汎血球マーカー といった方がいいのではないか,◎Tdtomatoとは、◎細胞培養上清中のBiglycan発現 量について,細胞培養上清は濃縮したのか、◎BiglycanはMarfan症候群と関係があっ たりするのか、◎得られた知見から,今後の研究や臨床応用をどのように考えているの かなどであった.論文提出者はいずれの質問に対しても明確かつ的確に回答し,さらに 今後の研究についても発展的な将来展望を示した.

  本論文は,腫瘍微小環境内で変化した腫瘍血管内皮細胞が,Biglycanを発現してい ることを明らかにし,さらにがんの転移促進に関与することを示唆している.本研究に は新規性が認められ、今後の歯科医学の発展に大きく貢献するものと評価された.また,

学位申請者は,本研究を中心とした専門分野はもとより,関連分野にっいても十分な学 識を有していることを審査員一同が認めた.よって,学位申請者は北海道大学博士(歯 学)の学位を授与される資格あるものと認めた,

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参照

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