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2 型糖尿病モデル動物である

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 医 学 ) 増 田 学 位 論 文 題 名

2 型糖尿病モデル動物である

OLETF ラットにおけ る塩酸テモカプリルによる 早期糖尿病腎症抑制効果についての検討

学位論文内容の要旨

    I.緒言

  糖尿病腎症の発症阻止,`進展抑制のためには血糖のコン卜ロールが最も重要であるのは言うまでもない が,すべての患者が糖尿病による合併症を発症しない血糖コントロールを維持することは現実的には難し い,そのため糖尿病腎症の発症を阻止し,またその進展を抑制する薬剤の開発,その有効性の検討が急務と なっている.ACE阻害剤はすでに臨床の場で高血圧患者に多く使用されている薬剤で,以前から糖尿病腎 症進展抑制効果について報告されている,また最近では,アンジオテンシンII (Ang II)受容体拮抗薬によ る糖尿病腎症進展抑制効果についても報告されてきており,Ang IIの作用を阻止することが糖尿病腎症進展 抑制にっながると考えられている.本研究ではACE阻害剤である塩酸テモカプリル(以下テモカプリル)

を用い,腎での病変が2型糖尿病患者の腎症と類似しており,肥満,インスリン抵抗性といった特徴を併 せ持っている2型糖尿病モデルラットのOtsuka Long‑Evans Tokushima Fatty(OLETF)を用い,早期腎症 の抑制効果についての検討を行った.

    n.材料と方法

  22週齢 のOLETFラットをランダムに無投薬群(以下DM群),テモカプリル投与群(以下ACEI群)の 2つのグループに分けた,また週齢数をマッチさせたLETOラットを正常コシトロールとして使用した(以 下コントロール群).テモカプリルは22週齢から飲水に混ぜ投与した.経時的にOLETFラット,LETOラ ットの体重,血糖値,尿蛋白排泄量,血圧,クレアチニンクリアランスを測定した.さらに,それぞれの群 の40週齢のラットを用い糸球体内圧,平均動脈圧を測定し,またそれぞれの糸球体体積,糸球体に占めるメ サンギウム領域比,糸球体基底膜の厚さ,糸球体基底膜における陰性荷電粒子数の変化等,糖尿病腎症腎 組織の評価を行った.

    m.結果

1.体重, 血糖値お よび血 圧の推移

体重 は24週齢か ら40週齢 で常にDM群 とACEI群は コント 口一ル群 に比べ大きく,40週齢時における

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体重 はDM群 (B7.3土24.2g),ACEI群(700.8士11.6g)はコントロ ール群(567.2土12.9g)に比 べて有意に大きか っ た . 血 糖 値 は20週 齢 か ら40週 齢 で 常 にDM群 とACEI群 は コ ン ト ロ ー ル 群 に 比 べ 高 く ,40週 齢 時 に お ける血糖値はDM群 (188.8士10.Omg/dl),ACEI群(162.3土7.6mg/dl)はコントロール群(116.4土3.Omg/dl)に比 べ て 有 意 に 高 か っ た . ま た 有 意 差 は な い がACEI群 はDM群よ り低 い傾 向 にあ った ,収 縮期 血 圧は10週 齢 では 各 群聞 に有 意差 は なか った . 20週齢ではDM群,ACEI群は コントロール群に比べ有意 に高かったが,30 週齢,40週齢ではACEI群(それぞれ120.1土2.2mmHg,112.9土4.6mmHg)はDM群(それぞれ155.5士4,9mmHg 140.5士4.3mmHg)に比べ有意に低下していた,

2.腎の機能的およ び組織学的評価

  ク レ ア チ ニ ン ク リ ア ラ ン ス は20週 齢 か ら40週 齢 で 常 にDM群は コン ト ロー ル群 に比 べ高 く ,ま た30週 齢時 ,40週 齢時 にお い てACEI群 (そ れぞ れ2.82土0.19,2.61土0.4ml/min)はDM群(それ ぞれ5.85土0.31, 5.61土0.6ml/min)に 比 ペ 有 意 に 改 善 し て い た . 尿 蛋 白 排泄 量はDM群 に おい て20週齢 から40週齢 にか け て尿 蛋 白排 泄量が急増しているの に対し,ACEI群ではほぽ一定 で,40週齢時ではACEI群(43.8土14.7mg/day) はDM群(185.3士26.2 mg/day)に 比ベ 有意 に 低下 して いた .糸 球 体内 圧はACEI群(46.9士2.OmmHg)はDM群

(57.5士3.8mmHg)に比ぺ有意に低 下した,平均動脈圧はACEI群 (102.1土2.7mmHg)でDM群(115.8土2.3mmHg) に比 ペ 有意 に低下した.組織学的 な検討では糸球体体積はACEI群(15土0.6xlOSロm3)でDM群(21.5土0.7xl05 ロII13)に比ぺ有 意に減少した.また糸球体に 対するメサンギウム領域比 はACEI群(16.5士014%)でDM群(23.3 士0.6矚) に比べ有意に減少した ,糸球体基底膜の厚さはACEI群(225.5土4.9nm)でDM群(269士5.6nm)に比ぺ 有意 に 減少 した .糸 球 体基 底膜 の陰 性荷電粒子数はACEI群(18.7士0.4/1000nm)でDM群(173土0.4/1000nm) に比ぺ有意に改善 した,

    1V.考 察

  ACE阻害 剤の 作用 点 にあ たるAng IIは , 糸球 体輸 出細 動 脈を 収縮 させ ,そ の結果糸球体内圧は増 加し糸 球 体過剰濾過を 起こすことにより尿蛋白の増 加をもたらすとされる.ま たこうした糸球体高血圧とは 別に,

Ang IIは細胞増 殖促進作用,細胞肥大作用, 細胞外基質蛋白の産生促進 作用により硬化性病変を促進 し糖尿 病 腎症 メサ ン ギウ ム細 胞の 陰 性荷 電粒 子を 構成 す るへ パラ ン硫 酸プ ロ テオ グリ カン(HSPG)の生 成を 抑制 す ると考えられ ている.糸球体基底膜のcharge barrierとして作用して いるHSPGの生成抑制作用は尿 蛋白出 現 の原 因の ー つと なる .本 研 究に おい て,ACE阻害 剤で あ るテ モカ プリ ルは 糸球体内圧を低下させ ,クレ ア チニ ンク1Jアラ ンス も改 善 し糸 球体 過剰 濾過 を 改善させた,さらに 尿蛋白排泄量もDM群では増加 してい く のに 対し ,ACEI群で は抑 制 され てい た. また 組 織学的検討でも糸球 体体積の減少,糸球体に占め るヌサ ン ギウ ム領 域 比の 減少 ,糸 球 体基 底膜 の肥 厚の 改 善,陰性荷電粒子数 の改善などを認めた.これら の結果 よ ルテモカプリ ルはAng IIの多彩な作用を阻 止することにより腎組織学 的所見の有意に改善し,またcharge barrierの 破綻 を抑 制 し, 糸球 体血 圧や 尿 蛋白 を改 善したものと考えら れた.他にもACE阻害剤には ,イン ス リン 抵抗 性 を改 善さ せる 作 用が ある と考 えら れ てお り, 今回 の結 果 でもACEI群の 血 糖値 はDM群に 比べ 有 意な 差は な かっ たが 低下 傾 向で あっ た.OIrETFラットのような肥満 ,高インスリン血症のある場 合には イ ンス リン 抵 抗性 の改 善作 用 によ り血 糖値 の低 下 をもたらし,腎症の 進展抑制に関与した可能性も 考えら れ た.

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    V.結語

  2型糖尿病モデルラットであるOLETFラットを用いてテモカプリルによる糖尿病腎症抑制効果について の検討を行い,早期からの投与により尿蛋白排泄量,糸球体内圧,腎組織学的所見の有意な改善やcharge barrierの破綻抑制が確認された.以上の結果より、より早期からの治療介入が糖尿病腎症の発症,進展の 阻止に大きく寄与することが確認でき,特にOLETFラットのもつ特徴,すなわち肥満,高血圧を併せ持つ 2型糖尿病患者には効果的である可能性が考えられた.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

    2 型§ 尿病モデ ル動物で ある

OLETF ラッ トにおけ る塩酸テモカプ 1J ルによる      早 期糖 尿 病 腎症 抑 制効果に ついての検 討

  本 研 究 は 、 ア ン ジ オ テ ン シ ン 変 換 酵 素 阻 害 剤(ACE阻 害 剤 ) で あ る 塩 酸 テ モ カ プ リ ル を 、 腎 で の 病 変 が2型 糖 尿 病 患 者 の 腎 症 と 類 似 し 、 肥 満 、 イ ン ス リ ン 抵 抗 性 と い っ た 特 徴 を 併 せ 持 っ て い る2型 糖 尿 病 モ デ ル ラ ッ ト のOtsuka Long‑Evans Tokushima Fatty

(OLETF) ラ ッ ト に 投 与 し 、 代 謝 ・ 循 環 パ ラ メ ー タ ー 、 腎 組 織 の 評 価 に よ り 早 期 腎 症 の 抑 制 効 果 を 検 討 し た も の で あ る 。

  1型 糖 尿 病 患 者 や 動 物 の 糖 尿 病 腎 症 に 対 す るACE阻 害 剤 の 有 効 性 は 以 前 か ら 報 告 さ れ て い る が 、2型 糖 尿 病 患 者 や 動 物 の 早 期 腎 症 に 対 す るACE阻 害 剤 の 有 効 性 を 、 代 謝 ・ 循 環 パ ラ ヌ ー タ ー や 病 理 組 織 学 所 見 な ど を 含 め て 総 合 的 に 評 価 し た 報 告 は 皆 無 で あ る 。   検 討 に 際 し て は 、22週 齢 のOLETFラ ッ ト を 無 作 為 に 無 投 薬 群 ( 以 下DM群 ) と 塩 酸 テ モ カ プ リ ル 投 与 群 ( 以 下ACEI群 ) の2つ の グ ル ー プ に 分 け 、 塩 酸 テ モ カ プ リ ル は22週 齢 か ら 飲 水 に 混 ぜ 投 与 し た 。 ま た 週 齢 数 を マ ッ チ さ せ たLETOラ ッ ト を 正 常 コ ン ト 口 ー ル と し て 使 用 し た ( 以 下 コ ン ト 口 ー ル 群 ) 。 経 時 的 にOLETFラ ッ ト 、LETOラ ッ ト の 体 重 、 血 糖 値 、 尿 蛋 白 排 泄 量 、 血 圧 、 ク レ ア チ ニ ン ク リ ア ラ ン ス を 測 定 し た 。さ ら に 、 それ ぞ れ の 群 の40週 齢 の ラ ッ ト を 用 い 糸 球 体 内 圧 , 平 均 動 脈 圧 を 測 定 し 、 ま た糸 球 体 体 積、 糸 球 体 に 占 め る ヌ サ ン ギ ウ ム 領 域 比 、 糸 球 体 基 底 膜 の 厚 さ 、 糸 球 体 基 底 膜 に おけ る 陰 性 荷電 粒 子 数 の 変 化 等 、 腎 組 織 所 見 の 評 価 を 行 っ た 。

  塩 酸 テ モ カ プ リ ル は 糸 球 体 内 圧 を 低 下 さ せ 、 ク レ ア チ ニ ン ク リ ア ラン ス も 改 善し 糸 球 体 過 剰 濾 過 を 改 善 さ せ た 。 さ ら に 尿 蛋 白 排 泄 量 もDM群 で は 増 加 し て い く の に 対 し 、ACEI 群 で は 有 意 に 抑 制 さ れ て い た 。 ま た 組 織 学 的 検 討 で もACEI群 で 糸 球 体 体 積 の 減 少 、 糸 球 体 に 占 め る ヌ サ ン ギ ウ ム 領 域 比 の 減 少 、 糸 球 体 基 底 膜 の 肥 厚 の 改 善 、 陰性 荷 電 粒 子数 の 改

夫 顕

隆  

  充

池 畠

小 北

授 授

教 教

査 査

主 副

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善などを認めた。

   塩酸テモカプリルの作用点であるアンジオテンシンII (Ang II) は、糸球体輸出細動脈 を収縮させ、その結果糸球体内圧は増加し尿蛋白の増加をもたらすとされる。またこうし た糸球体高血圧とは別に、Ang II は細胞増殖促進作用、細胞肥大作用、細胞外基質蛋白の 産生促進作用により硬化性病変を促進し、またヌサンギウム細胞の陰性荷電粒子を構成す るへバラン硫酸プ口テオグリカン(HSPG) の生成を抑制すると考えられている。糸球体 基底膜のcharge barrier として作用しているHSPG の生成抑制作用は尿蛋自出現の原因の ーつとなる。本研究の結果より塩酸テモカプリルはAng II の多彩な作用を阻止すること により腎組織学的所見を有意に改善し、またcharge barrier の破綻を抑制し、糸球体高血 圧や尿蛋白を改善したものと考えられ、より早期からの塩酸テモカプリルの投与が糖尿病 腎症の発症,進展の阻止に有効であることが確認できた。他のACE 阻害剤の作用として、

全身的な高血圧の是正やインスリン抵抗性を改善させる作用があると考えられており、

OLETF ラットのもつ特徴、すなわち肥満、高血圧を併せ持つ2 型糖尿病患者には効果的 である可能性が考えられた。

   発表終了後、北畠教授から、メサンギウム細胞において高血糖状態がアンジオテンシン H の産生を亢進させる機序、ACE 阻害剤の種類による腎症の進展抑制効果に対する差、

アンジオテンシシ受容体拮抗薬の腎症の進展抑制効果についての質問があった。次いで吉 岡教授から、クレアチニンクリアランスを体重で補正していない理由、ACE 阻害剤によ り分解が抑制されるキニンの腎症に与える影響、ATI レセプターの分布についての質問が あった。最後に小池教授から、腎症におけるACE 阻害剤の開始時期、正常血圧の腎症患 者に投与する際の注意点、今回の研究での新たな知見についての質問があった。これらの 質問に対し、申請者は概ね適切に回答した。

   この論文は、ACE 阻害剤による,より早期からの治療介入が2 型糖尿病での腎症の発症、

進展の阻止に大きく寄与することが改めて確認できた研究として高く評価され、今後、実 地臨床の場につながるACE 阻害剤の有用性の重要なェピデンスとなるものと考える。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども

併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと判定した。

参照

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