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自然発症糖尿病モデル動物における糖尿病性聴覚障害の研究

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Academic year: 2021

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Title

自然発症糖尿病モデル動物における糖尿病性聴覚障害の研

究( 内容の要旨 )

Author(s)

石川, 勉

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(獣医学) 甲第044号

Issue Date

1997-03-14

Type

博士論文

Version

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/2098

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

名(国籍)

学位授与年月

学位授与の要件

研究科及

び専攻

研究指導を受けた大学

(東京都)

博士(獣医学)

獣医博甲第44号

平成9年3月14日

学位規則第4粂第1項該当

連合獣医学研究科

獣医学専攻

岩手大学

自然発症糖尿病モデル動物における糖尿病性

聴覚障害の研究

主査

大 学

副査

大 学

副査

手 大

副査

帯広畜産大学

副査

東京農工大学

佐々木

口 田 田

糖尿病性聴覚障害は臨床的,前臨床的な両側面から研究されてきた。しかし,臨床上の 対象では機能的,形態的な解析を同時に実施することが困難なため,糖尿病性聴覚障害の 発症機序は十分に検討されていない。一方,WBN/Kobラットは Wistarラットに由来する膵 臓の内・外分泌障害に基づく自然発症糖尿病モデル動物で,雄はおよそ 9カ月齢で尿糖陽 性,高血糖および耐糖能障害を発現する。本モデルは糖尿病発症後の長期生存にインスリ ン治療を必要としないため,糖尿病時の様々な病態解析に有用と言われている。そこで, 本研究では雄の WBN/Eobラットを用いて,糖尿病性聴覚障害を機能的,組織学的および組 織化学的に検討することを目的とした。 糖尿病性聴覚障害の解析に先立ち,聴覚受容器における組織構造の形態的,機能的な意 義を同時に検討するため,正常ラットの蛸牛を用いてレクチン組織化学を行った。レクチ ンは非免疫原性の蛋白質で,糖質に特異的に結合するため,組織中の複合糖質の解析に有 用と考えられる。そこで,広範囲な糖結合特異性を有する 21種類のピオチン化レクチン を用い,蛸牛構成組織,すなわち,蓋膜,内・外有毛細胞,支持細胞,血管条およびラセ ン神経節について検討を行った。その結果,蓋膜は s-YGA,STL,WGA,LEL,BSL-l,VVA, RCA-ⅠおよびECLに反応し,これらに特異的な糖鎖の存在が示された。外有毛細胞はBSL-I

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鎖の存在が示された。また,Boettcher細胞にはWGA,STL,VVA,UEA-Ⅰなど16種類のレ クチンが反応を示し,同細胞における活発な生理機能が示唆された。血管条は辺縁細胞, 中間細胞および基底細胞の三層から成り,辺縁細胞はs-WGA,STL,VVAなど12種類のレ クチンに,中間細胞はこれらから ⅤVAを除いた11種類に,基底細胞は PEA-EおよびPHA-L の 2種類に反応を示した。ラセン神経節細胞には Con A,Jacalin,PHA-EおよびPHA-L が反応し,I)eiters細胞に反応するレクチンと一致していた。この様に,蛸牛の各構成組 織に対するレクチンの反応性は様々であり,組織中の糖鎖と聴覚機能の関連を示すものと 考えられた。 次に,自然発症糖尿病モデル VBN/Eobラットを用い,糖尿病性聴覚障害を検討した。同 ラットは 3カ月齢では糖尿病未発症で,聴覚機能は正常であった。6∼7カ月齢では正常血 糖下で耐糖能低下および軽度尿糖が発現し,聴性脳幹反応(ABR)による聴覚閥値が有意に 上昇したが,内耳の病理組織学的ならびにレクチン組織化学的所見に変化はなかった。12 ∼13カ月齢では糖尿病が顕性化し,聴覚開値がさらに上昇した。加えて,ラセン神経節細 胞の減少および血管条の浮腫性変化が認められ,血管条の中間細胞に対する 耶A,S-WGA, STL および Con Aの反応性が低下していた。これは血管条の機能異常を示すものと考えら れた。 この様に,WBN/Eob ラットでは耐糖能障害に伴い聴覚閥値が上昇し,次に蛸牛のラセン 神経節細胞が減少し,血管条の浮腫性変化が起こると考えられた。一方,糖尿病時の一般 的な蛸牛の組織変化はラセン神経節の萎縮であると言われているが,神経節細胞の機能的

な変化は全く解明されていない。ところで,prOtein gene product(PGP)9.5 は神経系の

組織に広く分布するユピキチンの C末端水酸化酵素で,可溶性蛋白質としてラセン神経節 細胞中に均一に分布する。したがって,この免疫組織化学的な反応性の変化は同細胞の形 態的,機能的な変化を反映すると考えられる。そこで,糖尿病発症過程にある WBN/Eobラ ットを用い,ラセン神経節細胞の機能変化を明らかにするため,同細胞中の PGP9.5局在 の変化を定量的免疫組織化学により検討した。7カ月齢の WBN/Eob ラットは半数が正常血 糖および尿糖陰性下で軽度な耐糖能異常を示し,聴覚閉値は上昇していた(未発症動物)。 一方,残り半数は高血糖,耐糖能障害,多尿および尿糖陽性で,聴覚閥値はより上昇して いた(発症動物)。形態計測の結果,未発症および発症動物で有意なラセン神経節細胞数の 減少が認められた。加えて,発症動物の同細胞はPGP9.5に対する反応性に上昇または低 下を示したが,未発症動物では反応性に変化はなかった。したがって,ラセン神経節細胞 の数およびPGP 9.5反応性の変化は糖尿病性聴覚障害の発現および進展を反映すると考え られた。 以上の結果より,自然発症糖尿病モデル耶N/Eob ラットにおける糖尿病性聴覚障害は, 1)耐糖能異常に伴う聴覚閉値の上昇に始まり,2)ラセン神経節細胞数が減少し,3)血管条 の浮腫性変化により障害がさらに増強されることが明らかとなった。加えて,PGP 9.5 の 反応性の変化はラセン神経節細胞の機能的な変化を反映すると考えられた。本研究は,以 上の様に,本モデルにおける糖尿病性聴覚障害発現の実態を明らかとした。

(4)

-155-審

糖尿病性聴覚障害は臨床的,前臨床的な両側面から研究されてきた。しかし,臨床上の対象 では機能的,形態的な解析を同時に実施することが困難なため,糖尿病性聴覚障害の発症機序 は十分に検討されていない。一方,WBN/Kob ラットは椚star ラットに由来する膵臓の内・外 分泌障害に基づく自然発症糖尿病モデル動物で.雄はおよそ 9 カ月齢で尿糖陽性,高血糖お よび耐糖能障害を発現する。本モデルは糖尿病発症後の長期生存にインスリン治療を必要とし ないため,糖尿病時の様々な病態解析に有用と言われている。そこで一 本研究では雄のWBN/ Kob ラットを用いて,糖尿病性聴覚障害を機能的,組織学的および組織化学的に検討すること を目的とした。 糖尿病性畦覚障害の解析に先立ち,聴覚受容器における組織構造の形態的,機能的な意義を 同時に検討するため,正常ラットの蛸牛を用いてレクチン組織化学を行った。レクチンは非免 疫原性の蛋白質でt 糖質に特異的に結合するため,組織中の複合糖質の解析に有用と考えられ る。そこで,広範囲な糖結合特異性を有する 21種類のビオテン化レクチンを用い,蛸牛構成 組乱 すなわち.蓋膜,内・外有毛細胞,支持細胞.血管粂およぴラセン神経節について検討 を行った。その籍果.蓋膜はs-WCA,STL,WCA,LEL,8SL-l,VVA,RCA-tおよぴECLに反応

し.これらに特異的な糖鎖の存在が示された。外有毛細胞は8SL-1に反応を示したが.内有

毛細胞に反応するレクチンはなかった。支持細胞では,Deilers細胞の指節突起にJacalin. Con A.PHA-EおよぴPHA-Lが反応し,これらに特異的な糖鎖の存在が示された.また, Boe=cher細胞にはYCA,STL,VV^.UEA-(など16種類のレクチンが反応を示し.同細胞に おける活発な生理機能が示唆された.血管粂は辺象細胞,中間細胞および基底細胞の三層から 成り,辺最細胞はs一耶A.STL,叩Aなど12種類のレクチンに.中間細胞はこれらから ⅤVA を除いた11種類に.基底細胞はPHA-EおよぴPHÅ-Lの2種類に反応を示した.ラセン神

経節細胞にはCon A.Jacalin,PHA-E j3よぴPtl^-Lが反応し.Deiters細胞に反応するレク チンと一致していた.この様に,鯛牛の各構成組鰍こ対するレクチンの反応性は様々であり, 組織中の糖鎖と聴覚機能の関連を示すものと考えられた。 次に,自然発症糖尿病モデル椚川/Kobラットを用い,糖尿病性味覚障害を検討した.同ラ ットは3カ月齢では糖尿病未発症で,聴覚機能は正常であった.6∼了カ月齢では正常血糖下 で耐塘能低下および軽度尿塘が発現し.瞭性脳幹反応(ABR)による聴覚聞値が有意に上昇し たが,内耳の病理組織学的ならびにレクチン組織イヒ学的所見に変化はなかった。12∼13カ月 齢では糖尿病が頚性化し,聴覚闇値がさらに上昇した.加えて,ラセン神経節細胞の減少およ び血管粂の浮腫性変化が認められ.血管粂の中間細胞に対する耶A.s一隅A,STLおよぴ Con Aの反応性が低下していた.これは血管粂の機能異常を示すものと考えられた. この様に,耶N/Robラットでは耐塘能障害に伴い聴覚聞値が上昇し.次に蛸牛のラセン神経 節細胞が減少し,血管粂の浮腫性変化が起こると考えられた.一方,糖尿病時の一般的な鯛牛 の組織変化はラセン神経節の萎縮であると言われているが.神経節細胞の機能的な変化は全く

解明されていない。ところで,prOtein gene producl(PGP)9.5 は神経系の組織に広く分布

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節細胞の機能変化を明らかにするため,同細胞中のPGP9.5局在の変化を定王的免疫組織化 学により検討した。7カ月齢の椚川/伽bラットは半数が正常血糖および尿糖陰性下で軽度な 耐糖能異常を示し・聴覚間値は上昇していた(未発症動物).一方,残り半数は高血乳耐糖 能障害・多尿および尿糖陽性で・聴覚間値はより上昇していた(発症動物)。形態計測の結果, 未発症および発症動物で有意なラセン神経節細胞数の減少が認められた。加えて,発症動物の 同細胞はPGP g・5に対する反応性に上昇または低下を示したが,未発症動物では反応性に変 化はなかった・ したがって・ラセン神経節細胞の数およびPGP g.5反応性の変化は糖尿病性 味覚障害の発現および進展を反映すると考えられた. 以上の結果より・自然発症糖尿病モデル叩N/Kobラットにおける糖尿病性聴覚障害は, 1)耐糖能異常に伴う聴覚間値の上昇に始まり.2)ラセン神経節細胞数が減少し.3)血管粂 の浮腫性変化により障害がさらに増強されることが明らかとなった。加えて.PGP9.5の反応 性の変化はラセン神経節細胞の機能的な変化を反映すると考えられた.本研究は.以上の様 に.本モデルにおける糖尿病性聴覚障害発現の実態を明らかとした。

以上について.審査委貞全貞一敦で論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の学位論文とし

て十分価値あるものと認めた.

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