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糖尿病状態における血管平滑筋細胞のアポトーシス制御機構に関与するPKCの役割

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Academic year: 2021

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Title

糖尿病状態における血管平滑筋細胞のアポトーシス制御機

構に関与するPKCの役割( はしがき )

Author(s)

山本, 眞由美

Report No.

平成12年度-平成14年度年度科学研究費補助金 (基盤研究

(C)(2) 課題番号12671105) 研究成果報告書

Issue Date

2002

Type

研究報告書

Version

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/591

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

研究成果 糖尿病状態では血管平滑筋細胞増殖が異常に促進しており\これが糖尿病患者の動脈硬 化促進因子のひとつと考えられている。異常な血管平滑筋細胞増殖が糖尿病患者の動脈硬 化症進展の特徴であり、正常な細胞増殖・アポトーシス調節機構が糖尿病状態によって破 綻をきたすことが推察される。代表研究者の山本は、従来よりこ細胞内情報伝達機構にお けるプロテインキナーゼC(PKC)の役割についての研究を続けており、特に血管平滑 筋細胞やヒト乳癌細胞の細胞増殖調節機構にPKC分子種が重要な役割を担っていること を明らかにしてきた。この研究基盤を踏まえ∴高血糖状態、すなわち高濃度ブドウ糖が血 管平滑筋細胞の増殖とアポトーシスに与える影響について検討したム 研究は、以下の3っの裾点から検討をすすめた。すなわち、(1)高濃度ブドウ糖は血管平 滑筋細胞の増殖やアポトーシス調節に如何に影響するであろうか、(2)PKC分子種の役割 を明らかにするために、各PKC分子種を過剰発現すると血管平滑筋細胞の増殖とアポト ーシス調節は如何に変化するであろうか、(3)高濃度ブドウ糖は、′PKC分子種やアポトー シス関連蛋白(Bcl-Xl,Bf卜1/Al)の発現に以下に影響するであろうか、である。 (1)高濃度ブドウ糖の血管平滑筋細胞増殖とアポトーシスへの影響 ヒト冠動脈血管平滑筋細胞(AOSMC)、ラット大動脈由来血管平滑筋細胞(AlO)を用いて検 討した。生理的濃度(5.5mM)と高濃度(25mM)のブドウ糖で細胞を刺激した際の細胞増殖(生 細胞数、MTT、チミゾンの取り込みによるDNA合成、細胞周期関連蛋白の発現で検討)とアポト ーシス(DNA断片化率、フローサイトメトリー解析、アポトーシス調節蛋白の発現により検 討)の変化を検討した。高濃度ブドウ糖は、細胞増殖を有意に増加し、アポトーシスを有 意に抑制した。したがって、高濃度ブドウ糖は、血管平滑筋細胞増殖に対して、常に促進 的に働くことが明らかとなった。 (2)PKC分子種を過剰発現したときの血管平滑筋細胞増殖とアポトーシスへの影響 PKC分子種のうちPKC-βⅠを過剰発現した細胞では細胞増殖が増加しアポトーシスが 減少した。また、PEC-βⅠⅠを過剰発現した細胞では細胞増殖が減少し、アポトーシスが増加 した。各種のPKC分子種のうち、PKC-βⅠとPKC-βIIは細胞増殖とアポトーシス制御におい て、括抗的に相反しながらバランス制御として機能していることが示唆された。その他、P KC-8も細胞増殖に抑制的な機能を持っていることが推察されたが、詳細な検討に至らず、今 後の課題である。 (3)高濃度ブドウ糖のPKC分子種やアポトーシス関連蛋白(Bc卜xl,Bfl/Al)の発現に対す る検討 高濃度ブドウ糖は、PKC分子種のうち細胞増殖に抑制的に働くPKC-βⅠⅠをダウンレギュレ

(3)

ーションさせた。また、細胞のアポトーシス発現を抑制的に働いているアポトーシス関連 蛋白のBcトⅩ1とBfl/Alの発現を増強させた。したがって、高濃度ブドウ糖は、細胞増殖に 抑制的に作用しているPEC-βⅠⅠをダウンレギュレーションさせることにより細胞増殖を促 進させ、また、アポトーシスを抑制しているBcl-Ⅹ1やBfl/Alなどのアポトーシス関連蛋白 の発現を増加させることによりアポトーシス発現を抑制させることが、明らかとなった。 以上より、高濃度ブドウ糖に、よるPK叩ⅠⅠのダウンレギュレーションを介した細胞増殖抑 制機構の減弱、あるいは、高濃度ブドウ糖によるBcl-Ⅹ1やBfl/Alなどのアポトーシス抑制 関連蛋白の機能発現増加が、高濃度ブドウ糖による血管平滑筋細胞増殖促進、アポトーシ ス抑制作用の分子機構のひとつと考えられた。臨床において深刻な問題である、高血糖状 態と動脈硬化症促進機序の関連が、分子生物学的レベルで明らかにすることができた。 これらの検討は、高血糖状態による血管平滑筋細胞の増殖やアポトーシス制御機構の異 常な変化を阻止して、糖尿病患者の動脈硬化症進展を阻止することができるかという目的 につながっている。たとえば、上記の検討で明らかとなったアポトーシス調節蛋白やPK C分子種に特異的な阻害薬が、副作用の心配なく使用可能になれば、これらの阻害薬を使 用して患者の異常な血管平滑筋細胞増殖を阻止して動脈硬化症を予防することができるの ではないかと期待できる。さらには、高濃度ブドウ糖が変化を与えるこれらのアポトーシ ス調節蛋白やPKC分子種のプロモーター領域のミニ遺伝子を絞り込んで明らかにするこ とができれば、将来、動脈硬化症進展阻止の遺伝子治療の良いターゲットになるのではな いかという期待もある。今回の我々の知見は、糖尿病患者における異常な動脈硬化症進展 に対する治療法開発の一助になりうるものと考える。 ヒトの動脈硬化症病変において血管平滑筋細胞のアポトーシス調節の変化が重要である ことは1995年にBennett MRら(JClinInvest95:2266-2274.1995)によって示されている。 その後、この変化にはBc卜2(LeszczynskiD et al.AmJPathol145:1265-1270,1994)やp 53(Bennet MR et al.Circ Res77:266-273,1995)、PI3-K pathway(BaiHong-Zhiet al. Circ Res85:229-237,1999)などの細胞内情報伝達機構の関与が示されているが、未だその

詳細については明らかでない。今回、我々は、各種PKC分子種のうちPKC-βⅠとPKC-βⅠⅠや Bcl-XlやBfl/Alなどのアポトーシス抑制関連蛋白が、ヒト動脈硬化症病変における血管平 滑筋細胞のアポトーシス調節変化に重要であるという新しい見地を追加する事ができた。

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