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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 水 産 学 )Manal Nader Raif

    学 位論 文題 名

    Studies on the effects of growth faCtorS OntheSpermatogenetiCCyCleoftheJapaneSeee1,     4 な 彫Zぬ ゾめ 〇〃 ぬロ

( ニホ ンウ ナギ の精 子形 成に およ ぼす増殖因子の作用に関する研究)

学位論文内容の要旨

  配 偶子形成の制御機構の詳細を調べることは、有用生物資源の人工種苗生産 技術 を開発、あるいは改良する上で、非常に重要である。しかしながら、雄の 配偶 子形成である精子形成は、脊椎動物および無脊椎動物に共通の現象である に も か か わ ら ず 、 そ の 制 御 機 構 は 現 在 の と こ ろ 不 明 な 点 が 多 r。   養 殖環 境 下 の ニ ホ ンウナ ギ(AngufJ7ajaponj ca)の精 巣に は、 増殖 開始 前 の精 原細胞のみが存在し、それ以上に発達した生殖細胞は全く認められない。

これ らの ウナギ に対 し、 ヒト 絨毛 性生 殖線 刺激 ホル モン くHCG)を投与するこ とに より、精原細胞の増殖から減数分裂、精子変態にいたる一連の精子形成を 誘導 することができる。またウナギは、すでに開発されている生体外精巣器官 培養 を用い、ホルモンの制御により生体外で全精子形成を誘導することができ る唯 一の動物であり、精子形成を解析する上で優れた実験動物である。これま で の 研究 に よ り 、 ウ ナギの 精子 形成 は、HCGの刺 激によ り、 精巣 中の ステ ロ イド ホル モンで ある11‑ケト テス トス テロン(11 ‑ KT)が 、増 殖因子を含む多 くの タンバク性の因子を増減させることにより、進行するものと推察されてい る。 そこで本研究は、ニホンウナギの器官培養を用いた組織学的手法および分 子生 物学的手法を用い、生殖細胞の増殖、分化に関与すると考えられるいくつ かの 増殖 因子の 精子 形成 への 作用 機構 を解 析し た。

(1) インスリン様増殖因子(IGF)

(2)

     まず、IGF の精子形成への作用を精巣器官培養系を用いて解析した。これま での研究により、インスリンを含む培養液中に11 ‑ KT を添加すると精子形成 は誘起されるが、インスリンを含んでしゝない培養液に11 ‑ KT を添加しても、

精子形成は全く進行しないことが解っている。培養系でのこのインシュリンの 作用は、生体内ではIGF の働きを示している可能性が高い。そこで、A 型およ び初期B 型精原細胞のみを有する精子形成開始前の精巣片を11‑KT 10 ng/ml の存在、非存在下の培養液中に、ヒトリコンビナント(rh) IGF‑ エ及び矼を さまざまな濃度で添加し、15 日間培養した。11‑ KT の非存在下にthIGF ‑ エ、

H を添加しても、精原細胞は増殖しなかったが、11‑ KT の存在下でthIGF .I 、 n を ぞれ ぞれ 100 ng/ml を添 加した群では、精原細胞が増殖し、後期B 型精 原細胞が認められた。また、11 ‑ KT の存在下、thIGF‑ エ、100 ng/ml の実験群 で t ま 、 培 養 開 始 45 日 目の 精巣 片中 に変態 した 精子 が多数 認め られ た。

   次に、ウナギ精巣IGF .I 及びII cDNA のクローニングを行い、それらの一次 構造を調ぺた。他の動物種で明らかにされているIGF .エ及ぴIGF ‑ II の保存領 域を基にプライマーを合成し、 IGF ‑ エはHCG 未投与魚の精巣cDNA を、IGF‑

H は HCG 投 与 6 旨 目 の 精 巣 cDNA を 鋳 型 に PCR 反 応 を 行 い 、 そ れ ぞ れ の cDNA 断 片 を 得 た 。 ウ ナ ギ 精 巣 (et) IGF‑ エ の cDNA 断片 は、 212 塩基 対で あり、それより予想されるアミノ酸配列は、ニジマスおよびキンギョと96 %、

ゼ // ヾ ス と 89 % の 相 同性 を 示 し た 。 ま た etIGF ・ H の cDNA 断 片 は 、 448 塩基対であり、そのアミノ酸配列は、ヨーロッパヘダイ及びテイラピァとそれ ぞれ73 %、 71 % の相 同性を 示し 、ニ ジマ スとは 67 % の相 同性を示した。

次に、これら etIGF‑I 、H の精巣での発現を調べた。HCG 投与により精子形成

を誘起させたウナギの精巣から経時的にmRNA を抽出し、それらを逆転写した

cDNA を用い、RT ‑ PCR 解析を行った。その結果、etIGF‑ エ、etIGF‑ II 両方の

mRNA の発現が全ての精子形成過程に認められた。これらのことより、IGF‑I 及

びn は、精巣で産生され、11 ‑ KT によって誘起される精子形成に対し、必要不

可欠な役割を果たしていることが明らかとなった。

(3)

(2)血小板由来増殖因子(PDGF)

  2つ目の増殖因子として、PDGFの精子形成への作用を調ぺた。PDGFは、血清 中に存在 する細胞分 裂促進物質 であり、2つのポりベブチド鎖A、BがPDGF‑

AA、AB、BBの3つのアイ ソフオーム を形成する。そのレセブターもQ及びlB のサブユニットから構成されている。そこで、精子形成開始前の精巣片をイ ンスリン1 pLg/mlの存在、非存在下の培養液中に、thPDGF ‑ AA及びBBをさ まざま,な濃度で添加し、9日間培養した。精原細胞の増殖は、DNAの複製時 に取り込 まれる5‑Bromo・2‑deoxyuridine (BrdU)をサンプリング24時間前 に培養液中に添加し、免疫組織化学的に検出した。thPDGF ‑ AA、BB添加群とも に低濃度添加群に比べ、高濃度添加群でBrdUの取り込み率が有意に高かった。

インスリンの影響は、thPDGF‑ AAでは認められなかったが、thPDGF‑ BBでは、イ ンスリン非存在下に比ベインスリン存在下のthPDGF‑BBl、10 ng/ml添加群で、

BrdUの取り込み率が有意に増加した。

  次 に 、ウ ナ ギ精 巣 より 、PDGF‑RQ及 びpcDNAのク 口ーニング を行った。

PDGF‑Rのクロー ニングにあ たって、ま ず他の動物種で明らかにされている PDGF‑Rの保存領域を基にプライマーを合成し、ウナギ脾臓cDNAを鋳型にPCR 反応を行 い、cDNA断片を 得た。その 後、脾臓で得られたcDNAのシークエン スをもと に、再度プ ライマーを 合成し、HCG未投与魚の精巣cDNA鋳型にPCR を行った 。その結果 、etPDGF‑RのcDNA断片のアミノ酸配列はフグp型と7っ

%の相同 性を示し、チキンa型と57%の相同性を示したことから、etPDGF‑R p型であると予想された。以上より、PDGFは、ヒトリコンビナントが精原細胞 の増殖を誘導すること、そのレセプターが精巣に存在することより、精子形成 の制御に関わっており、その作用には、精子形成誘起ホルモン:11‑ KTの存在 を必ずしも必要としないものと考えられた。また、thPDGF ‑ AAとBBのインスリ ンとの関係の違いから、それぞれのサブタイブは異なる機能を持つ可能性が示 示唆された。

  ー方、細 胞増殖の制 御に関わろ 増殖因子であろTGFa、EGF及ぴIGFの発現

(4)

機構に関与すると考えられる成長ホルモンは、ウナギ精巣器官培養系では効果 が認められなかった。

  以上本研究により、生殖細胞の増殖、分化に関わると考えられる増殖因子の うちIGF‑I、H及 びthPDGF‑ AA、BBがニホン ウナギの精 子形成の制 御に関 与することが明らかとなった。

(5)

学位論文審査の要旨 主査    教授    山内晧平 副査    教授    原   彰彦 副査    教授    荒井克俊 副査   助教授   上田   宏 副査   助教授   足立伸次

     学位論文題名

    Studies on the effects of growth factors on the spermatogenetlCCyCleoftheJapaneSeeel ,     4 卿 Z ぬブゅ〇〃zc ロ

( ニホ ンウ ナギ の精 子形 成におよぼす増殖因子の作用に関する研究)

  配偶子形成の制御機構の詳細を調べることは、有用生物資源の人工種苗生産技術を開 発、あるいは改良する上で、非常に重要である。しかしながら、雄の配偶子形成である精 子形成は、脊椎動物および無脊椎動物に共通の現象であるにもかかわらず、その制御機構 は現在のところ不明な点が多い。

  養殖環境下のニホンウナギ(Anguilla.iaponica)の精巣には、増殖開始前の精原細胞の みが存在し、それ以上に発達した生殖細胞は全く認められない。これらのウナギに対し、

ヒト絨毛性生殖線刺激ホルモン(HCG)を投与することにより、精原細胞の増殖から減数 分裂、精子変態にいたる一連の精子形成を誘導することができる。またウナギは、すでに 開発されている生体外精巣器官培養を用い、ホルモンの制御により生体外で全精子形成を 誘導することができる唯一の動物であり、精子形成を解析する上で優れた実験動物であ る。これまでの研究により、ウナギの精子形成は、HCGの刺激により、精巣中のステロ イドホルモンである11−ケトテストステ口ン(11‑KT)が、増殖因子を含む多くのタンパ ク性の因子を増減させることにより、進行するものと推察されている。そこで本研究は、

二ホンウナギの器官培養を用いた組織学的手法および分子生物学的手法を用い、生殖細胞 の増殖、分化に関与すると考えられるいくっかの増殖因子の精子形成への作用機構を解析 した。

  まず、インシュリン様成長因子くIGF)の精子形成への作用を精巣器官培養系を用いて解 析した。これまでの研究により、インスリンを含む培養液中に11一KTを添加すると精子 形成は誘起されるが、インスリンを含んでいない培養液に11ーKTを添加しても、精子形 成は全く進行しないことが解っている。培養系でのこのインシュリンの作用は、生体内で はIGFの働きを示している可能性が高い。そこで、A型および初期B型精原細胞のみを有 する精子形成開始前の精巣片を11‑KT 10 ng/mlの存在、非存在下の培養液中に、ヒト リコンビナント(rh) IGFーI及び矼をさまざまな濃度で添加し、15日間培養した。11‑

1078

(6)

KTの非存在下にthIGF―I、Hを添加しても、精原細胞は増殖しなかったが、11−KTの 存在下でthIGF−I、IIをそれぞれ100 ng/mlを添加した群では、精原細胞が増殖し、

後期B型精原細胞が認められた。また、11一KTの存在下、thIGF−I、100 ng/mlの実験 群 で は 、 培 養 開 始45日 目 の 精 巣 片 中 に 変 態 し た 精 子 が 多 数 認 め ら れ た 。   次に、ウナギ精巣IGF−I及びII cDNAのク口一二ングを行い、それらの一次構造を調 べた。他の動物種で明らかにされているIGF−I及びIGF‑ IIの保存領域を基にプライマー を 合 成 し 、IGF−IはHCG未 投 与 魚 の 精 巣cDNAを 、IGF―nはHCG投 与6日 目の 精巣 cDNAを鋳 型にPCR反 応を 行い 、そ れぞ れのcDNA断片を 得た。ウナギ精巣(et)IGF― IのcDNA断 片は 、212塩基 対で あり 、そ れよ り予 想さ れるアミノ酸配列は、二ジマ ス お よ び キン ギ ョ と96% 、 ゼ ノ パ ス と89%の相 同性 を示 した 。ま たetIGFーnの cDNA断片 は、448塩 基対 であり、そのアミノ酸配列は、ヨー口ッバヘダイおよびテ イラピアとそれぞれ73%、71%の相同性を示し、二ジマスとは67%の相同性を示し た。次に、etIGF−Iの精巣での発現を調べた。HCG投与により精子形成を誘起させたウ ナギ の精 巣か ら経 時的にmRNAを抽出し、それらを逆転写したcDNAを用い、RT―PCR 解析を行ったところ、etIGFーImRNAの発現は全ての精子形成過程に認められた。これ らのことより、IGF―I及びnは、精巣で産生され、11−KTによって誘起される精子形成 に 対 し 、 必 要 不 可 欠 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。   2つ目の増殖因子として、血小板由来増殖因子(PDGF)の精子形成への作用を調べた。

PDGFは、 血清 中に 存在す る細胞分裂促進物質であり、2つのポりペプチド鎖A、Bが PDGF‑AA、AB、BBの3つ の ア イ ソ フ オ ーム を形成 する 。そ のレ セプ ター もa及 びb のサプュニットから構成されている。そこで、精子形成開始前の精巣片をインスリン1 mg/mlの存 在、 非存 在下 の培養液中に、thPDGF―AA及びBBをさまざまな濃度で添加 し、9日間培養した。精原細胞の増殖は、DNAの複製時に取り込まれる5−Bromo一2― deoxyuridine (BrdU)をサンプリング24時間前に培養液中に添加し、免疫組織化学的 に 検 出し た。thPDGF‑AA、BB添加 群と もに 低濃度 添加 群に 比べ 、高 濃度 添加 群で BrdUの取り込み率が有意に高かった。インスリンの影響は、rhPDGFイAでは認められ な か っ た が、rhPDGF−BBで は 、 イ ン スリ ン非存 在下 に比 ペイ ンス リン 存在 下の rhPDGF−BB1、10ng/m1添 加 群 で 、BrdUの 取 り 込 み 率 が 有 意 に 増 加 し た 。   次 に、 ウナ ギ精 巣より 、PDGF―RQ及 びBcDNAのク口 ーニングを行った。PDGF―R のク口ーニングにあたって、まず他の動物種で明らかにされているPDGF−Rの保存領域 を基 にプ ライ マー を合成 し、ウナギ脾臓cDNAを鋳型にPCR反応を行い、cDNA断片を 得た。その後、脾臓で得られたcDNAのシークエンスをもとに、再度プライマーを合成 し 、HCG未 投 与 魚 の 精 巣cDNA鋳 型 にPCRを 行 っ た 。 そ の 結 果 、etPDGF―RのcDNA 断片 のア ミノ 酸配 列はフ グB型と77% の相 同性 を示し 、チキンQ型と57%の相同性 を示したことから、etPDGF・−RB型であると予想された。以上より、PDGFは、ヒトリ コンピナントが精原細胞の増殖を誘導すること、そのレセプターが精巣に存在することよ り、精子形成の制御に関わっており、その作用には、精子形成誘起ホルモン:11−KTの 存在を必ずレも必要としないものと考えられた。また、rhPDGF―AAとBBのインスリン との関係の違いから、それぞれのサプタイプは異なる機能を持つ可能性が示唆された。

  一方、細胞増殖の制御に関わる増殖因子であるTGF&、EGF及びIGFの発現機構に関 与すると考えられる成長ホルモンは、ウナギ精巣器官培養系では効果が認められなかっ た。

  上記のように、本研究では、二ホンウナギの生体外器官培養系を用い、精子形成の制御 に関与すると考えられる増殖因子に関する詳細な知見が数多く得られた。これらの結果 は、今後、精子形成をより詳細に解析する上で極めて重要な知見を提供したものとして高 く評価され、本論文が博士(水産学)の学位請求論文として相当の業績であると認定し た。

    一l079―

参照

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