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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 理 学 ) 今 山 武 志

     学位論文題名

    Tectono − thermal evolution   in the Far ― Eastern Nepal Himalaya:

petrological and geochronological studies

(極東ネパールヒマラヤにおける構造―温度発達史:

     岩 石 学 的 お よ び 地 球 年 代 学 的 研 究 )

学位論文内容の要旨

  著 者 は 、 極 東 ネ パ ー ル ヒ マ ラ ヤ ( Tamor河 上 流 セ ク シ ョ ン ) に お い て 、 変 成 岩 類 の 変 成 圧 力 一 温 度 条 件 お よ び 圧 力 一 温 度 履 歴 の 推 定 を 行 な い 、 全 岩 ネ オ ジ ム 同 位 体 比 、 黒 雲 母K‑Ar 年 代 お よ ぴ ジ ル コ ン の 分 光 観 察 を 加 え て 構 造 一 温 度 発 達 史 を 解 析 し た 。 高 変 成 度 岩 で 構 成 さ れ る 上 位 の 高 ヒ マ ラ ヤ 帯 は 、 下 位 の 低 変 成 度 岩 か ら な る 低 ヒ マ ラ ヤ 帯 と 主 中 央 衝 上 断 層(Main Central Thrust、 以 下 、MCT)に よ っ て 境 さ れ て い る 。MCTは 地 殻 中 部 の デ コ ル マ か ら 分 岐 す る 断 層 群 の う ち 、 高 ヒ マ ラ ヤ 帯 を 地 表 に も た ら し た 断 層 と し て 最 も 重 要 な 断 層 の ー っ と 考 え ら れ て い る 。MCT帯 は 幅lkm以 下 か ら 数kmに 及 ぶ 脆 性 ー 延 性 せ ん 断 帯 で あ り 、 そ の 上 限 断 層 で あ るMCTに お い て 低 ヒ マ ラ ヤ 帯 と 高 ヒ マ ラ ヤ 帯 の 全 岩 ネ オ ジ ム 同 位 体 比 、eNd(0)値 ( 低 ヒ マラヤ 帯:ー22.O〜ー26.9,高ヒマラヤ帯:ーlO.O〜−18.O,MCT帯:一19.7〜−26.2)に大きな違い が 認識で きる。

  上 記 セ ク シ ョ ン に 茄 い て 、 変 成 岩 中 に み ら れ る ザ ク ロ 石 成 長 累 帯 構 造 に ギ プ ス 法 を 適 用 し て 温 度 圧 力 経 路 を 推 定 し た 結 果 、MCTを 境 と し て 圧 力 一 温 度 履 歴 の 不 連 続 が 存 在 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。MCTの 下 盤 の 岩 石 は 断 熱 的 な 圧 力 上 昇 経 路 を 示 す の に 対 し 、 そ の 上 盤 で は 温 度 上 昇 ・ 圧 力 上 昇 経 路 か ら 温 度 上 昇 ・ 圧 力 降 下 経 路 へ 変 化 す る 。 こ の 圧 カ ー 温 度 履 歴 の 不 連 続 は 、 造 山 帯 の 異 な る 場 所 で そ れ ぞ れ 圧 力 ― 温 度 ピ ー ク に 到 達 し た 岩 石 が テ ク ト ニ ッ ク に 集 合 し た 結 果 と し て 説 明 で き る 。 こ の こ と は 、 前 述 の 高 ヒ マ ラ ヤ 帯 と 低 ヒ マ ラ ヤ 帯 に お け る 全 岩 ネ オ ジ ム 同 位 体 比 の 異 な る 値 が 、 源 岩 の 相 違 を 反 映 し て お り 、 両 者 は 元 来 大 き く 離 れ た 場 所で形 成され たこ とを示 唆する ことと も調 和的で ある。

  ま た 、 著 者 は 、 地 質 温 度 計 、 圧 力 一 温 度 グ リ ッ ド 、 お よ ぴ 変 成 組 織 に 基 づ い て 、 同 セ ク シ ヨ ン に 韜 け る 変 成 圧 力 一 温 度 プ ロ フ ァ イ ル を 推 定 し た 。MCT帯 か ら 構 造 的 上 位 の 高 ヒ マ ラ ヤ 帯 上 部 に 向 か っ て 、 泥 質 片 麻 岩 中 に み ら れ る 指 標 鉱 物 は 、 ザ ク ロ 石 出 現 、 十 字 石 出 現 、 藍 晶 石 出 現 、 珪 線 石 出 現 、 白 雲 母 消 滅 、 き ん 青 石 出 現 の 順 に 変 化 し 、 そ れ ら の ア イ ソ グ ラ ッ ド は 構 造 的 上 位 へ の 温 度 上 昇 を 示 し て い る 。 ザ ク ロ 石 一 黒 雲 母 地 質 温 度 計 を 用 い て 最 高 温 度 条 件 を 推 定 し た 結 果 、MCT近 辺 で は 最 高 温 度 は 構 造 的 上 位 へ ゆ る や か に 上 昇 し ( 約610740℃ ) 、 白 雲 母 消 滅 ア イ ソ グ ラ ッ ド よ り 上 位 の 高 ヒ マ ラ ヤ 帯 内 部 で は ほ ば 一 定 の 温 度 を 示 す こ と が 明 ら か に な っ た 。 一 方 、 ザ ク ロ 石 一 黒 雲 母 一 石 英 ー 斜 長 石 の 地 質 圧 力 計 か ら 見 積 も ら れ た 最 高 温 度 時 の 変 成 圧 力 条 件 は 、MCTの 直 上 に お い て 圧 カ ピ ー ク を 示 し 、 高 ヒ マ ラ ヤ 帯 内 部 で は 構 造 的 上 位 ヘ 低 下 し 、 上 部 で は ほ ば 一 定 に な る 。 こ れ ら 地 質 温 度 圧 力 計 か ら 見 積 も っ た 温 度 圧 力 条 件 と そ の 岩 石 の 鉱 物 組 み 合 わ せ は 、 温 度 圧 カ グ リ ッ ド か ら 推 定 さ れ る 鉱 物 組 み 合 わ せ の 安 定 領 域 と 概 ね 調 和 的 で あ る 。 た だ し 、 き ん 青 石 を 含 む 片 麻 岩 か ら 見 積 も ら れ た 温 度 ー 圧 力

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条件は、上記グリッドから推定されるきん青石を含む鉱物組み合わせの安定領域より幾分高 い圧カを示す。この圧カの相違は、同片麻岩中のザクロ石斑晶の周りに発達したきん青石の コロナ構造から推定される後退変成時における等温減圧経路を考慮した場合、調和的に説明 される。

  さらに、見積もった変成圧カー温度条件および圧力一温度履歴を、近年プレート収束域で 注目されているチャネル流れモデル(HT1モデル:Jamieson et al.,2004)から予想されるそれ らと比較した。その結果、観察される変成圧力一温度条件と上記モデルから予想されるそれ らとの相違点と類似点が明瞭になりつっある。モデルは本研究で推定された最高温度プロフ ァイルに 対して、 構造的 下位(MCT近 辺)で熱 過剰を示し、その上位(高ヒマラヤ帯中〜上 部)で熱不足を起こす。また、モデルで予想される大きなフイールド温度勾配は、観察され るMCT近 辺の緩や かなフ イールド 温度勾 配やより 上位の 等温的な 最高温度 とは明らかに矛 盾する。 さらに、 低ヒマラヤ帯においてモデルから予想される等圧温度上昇経路は、MCT下 盤から推 定された 天然の断熱的圧力上昇経路の傾向とも大きく異なる。一方で、MCTの上盤 と下盤で の異なる 圧力一温度履歴や、MCT直上の変成圧カピーク、およびきん青石片麻岩に おける等温減圧経路は、チャネル流れ予想と調和的である。

  さらに、 著者は 、同セク ションに おける6試料 の片麻 岩類から 黒雲母に よるK‑Ar年代測 定を行な い、それ らの冷 却年代( 約300℃)を推定した。これらの結果は9‑27 Maの幅広い 年代分布を示し、過剰アルゴンの影響を無視できると仮定した場合、後期に活動した熱水活 動を伴う断層運動を異なる程度に受けた結果、冷却年代が異なる程度リセットされ、幅広い 年代分布を持っに至ったと解釈できるかもしれない。また、これらの冷却年代はチャネル流 れモデル から推定 される 冷却年代 (く8Ma)に 比べて、十分に古い。さらに、カソードルミ ネッセンス像を用いて片麻岩中のジルコンの内部構造観察を行なった結果、基質部のジルコ ンからは砕屑性起源の累帯構造を示すコアとそれを取り囲む薄いりムが認識された。それら のコアーリム構造は、源岩が堆積する前の火成活動時とその後の高温変成作用時にそれぞれ形 成されたと考えられる。

  これまで述べてきたように、現状のチャネル流れモデル予想と本研究の観察結果に総ける 主な矛盾点は、温度発達史に多く関連しており、広域的な温度場の起源の再検討が必要とさ れる。特に、現状のチャネル流れモデルはマグマや流体移動による熱移流を考慮しておらず、

これらの垂直方向の熱移流を加えてモデルを改変することにより、現モデルが予想する高い フイールド温度勾配はより天然に観察される緩やかな勾配へと近づき、それら矛盾点の一部 は解消される可能性がある。

‑ 1175

(3)

学位論文審査の要旨

主査    教授    竹下    徹 副査    教授    圦本尚義 副査    教授    松枝大治

副査    研究員    在田一則(総合博物館資料部・

副 査   准 教 授   岩 森

    元 理 学 研 究 科 教 授 ) 光(東京大学 大学院理学系     研究科)

     学位論文題名

    Tectono −thermal evolution

  in the Far − Eastern Nepal Himalaya:

petrological and geochronological studies

(極東ネパールヒマラヤにおける構造―温度発達史:

     岩 石 学 的 お よ び 地 球 年 代 学 的 研 究 )

  著 者は,極東ネバールヒマラヤ(Tamor河上流セクション) において,変成岩類の変成 圧力一温度条件および圧カー温度履歴の推定を行い,全岩ネオジム同位体比,黒雲母K‑Ar 年代の測定およびジルコンのカソードルミネッセンス観察を加えて構造一温度発達史を解 析した.高変成度岩で構成される高ヒマラヤ帯は,低変成度岩からなる低ヒマラヤ帯と主 中央 衝上 断層(Main Central Thrust, 以下MCT)によ って境 される.両者の境界部には 幅1〜 数kmに 及 ぶ 厚 い 剪 断 帯(MCT帯 ) が 存 在 す る が , 本 研 究 で はMCT帯 の 上 限 断 層 であるMCTより上 位の高ヒマラヤ帯と下位の低ヒマラヤ帯の間で,全岩ネオジム同位体比 (eNd(0))に大きな違いがあるこ とが明らかとなり(低ヒマラヤ帯:‑22.0〜‑26.9,MCT 帯:‑19.7〜‑26.2,高ヒマラヤ帯:‑10.0〜‑18.0),両者を構成する原岩が大きく異なって いることが推定された.

  著者は,MCTに ほぼ直交する上記セクションにおいて地質温度圧力計および圧カー温度 グリッドに基づき変成圧力一温度の空間分布 を推定した.その結果,MCT帯から構造的上 位に向かって,泥質片麻岩中に認められる指標鉱物は,ざくろ石出現,十字石出現,藍晶 石出現,珪線石出現,白雲母消滅,きん青石出現のアイソグラッドを通過して変化し,変 成温度の上昇が示された.ざくろ石―黒雲母地質温度計に基づぃて推定された最高温度条

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件は,白雲母消滅アイソグラッドまでは緩やかに上昇し(約610‑ 740℃),その上位でほば 一定となる.一方,ざくろ石ー黒雲母ー石英ー斜長石の地質圧力計から見積もられた最高 温 度時の変 成圧力 条件はMCT直上 において 最大( 約12 kb)となり ,その上位で緩やかに 低 下し,高 ヒマラヤ帯でほぼ一定(約6‑8 kb)となる.これらの地質温度圧力計から見積 もった温度圧力条件は,変成鉱物組み合わせから推定されるそれ(圧力一温度グリッド)

と概ね調和的であるが,きん青石を含む片麻岩から地質温度圧力計を用いて推定された温 度圧カは,圧力―温度グリッドが示すものよりも高圧側にずれている.この事実は,コ口 ナ構造に基づき,きん青石が後退変成作用時に形成されたと解釈されることと調和的であ る,

  さらに著者は,変成岩中に認められるざくろ石の成長組成累帯構造にギブス法を適用し て 圧力温度 経路を推定した.その結果,MCTの下盤の岩石は断熱的な圧力上昇経路を示す の に対し, 上盤では温度上昇・圧力上昇経路から温度上昇・圧力降下経路に変化し,MCT を境に大きな圧力温度経路の不連続があることが明らかとなった.この事実は,上記の全 岩 ネオジム 同位体比から推定されるMCTを境とする原岩の大きな相違も考慮すると,高ヒ マ ラヤ帯と 低ヒマラヤ帯の岩石は,もともとかけ離れた場所で変成作用を被り,MCT付近 まで移動し合体したことを示唆する.

  見積もった変成圧力―温度条件および圧力―温度履歴は,近年ヒマラヤ変成岩について 行われた構造―温度発達史モデル計算(Jamieson et al.,2004)と比較された.その結果,

観察される変成圧力―温度条件とモデルから予想されるそれとの類似点および相違点が明 瞭 になり, ヒマラヤ変成岩形成の妥当な物理モデルが絞りこまれつっある.例えば,MCT 直 上 の 圧カ ピ ー クやMCTを 境 と す る圧力温 度経路の 不連続 は,モデ ルから 予想され る MCTに沿う 高ヒマラヤ帯岩石のェクストルージョン的上昇と調和的であるが,一方でモデ ルから予想される高いフイールド温度勾配は,観察される非常に低い温度勾配と全く一致 しない.この相違は,モデルではヌルトや流体移動による熱移流を考慮していない一方,

天 然 で は 大 量 の メ ル ト や 流 体 移 動が 生 じ て いる こ と で説 明 さ れる か も しれ な い .   さ らに著 者は,同セクションから得られた6個の片麻岩試料について黒雲母K‑Ar年代測 定 を行い, それら の冷却年 代(閉 鎖温度,約300℃)を推定した,その結果,1試料が示 す 若い年代 (9 Ma)を除き,16‑‑‑27 Maの年代幅を持つ値が得られた,1つの若い年代は 後期の断層活動に伴う熱水変質に起因する.可能性がある.一方,もし過剰アルゴンの影響 が無視出来るならば,その他の冷却年代は,これまで得られているピークの変成作用の年 代 が20 Ma前後であることを考慮すると非常に速い冷却速度を示唆し,非常に速い変成岩 の上昇が生じたことが推察される.ジルコンのカソードルミネッセンス観察により,ジル コンは振動累帯構造を示すコアと無構造の薄いりムからなることが明らかとなった.コア はもともとマグマから成長し砕屑物として形成され,リムは変成作用時に過成長したジル コンと推察される.

  以上,本論文の著者は,ヒマラヤ変成岩の構造ー温度発達史について新たな新知見を得,

地球造構学(テクトニクス)の進展に貢献した,よって著者は,北海道大学博士(理学)

の学位を授与される資格があるものと認める,

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参照

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