英虞湾沿岸未利 用地 にお ける海水導入 による環境再生効果の検討
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(2) 1272. 海. 岸. 工. 学. 論. 文. 集. 第55巻(2008). し,も う1区 画 は対 照 区 と して 現 状 が維 持 され る条 件 と し た(総 面 積200m2).海. 水 導 入 区 の 水 位 は,海 域 側 の潮 位. に あわ せ て変 化 す るよ うポ ンプ流 量 を 設 定 した.流 域 負 荷 を含 め た 未 利 用 地 の環 境,未. 利 用 地 環 境 が 淡 水 系 か ら海. 水 系 に変 化 す る ことに よ る水 質,底 質,底 生 生 物,植 生 お よ び周 辺 海 域 へ の影 響 を把 握 す る ことを 目的 と し,現 在 も モ ニ タ リング を継続 中 で あ る. (2) 現 地 調 査 方 法 a) 事 前 調 査 堤 防 後 背 地 の 現 状 を把 握 す る ため,図‑1に. 示 す よ う に,. 潮 受 け堤 防後 背 地 の未 利 用 水 域 につ いて,英. 虞 湾 内 の代. 図‑3. 計 算 モ デル. 図‑4. 計算 ケ ース. 表 的 な場 所 を それ ぞ れ3箇 所(杓 浦(DL+1.0m,+0.5m, ±0m:海. 水導 入 実 験 予 定 地),立 石 浦(DL+0.5m,±0m). 及 び 石 淵(DL+1.0m,+0.5m,±0m))選 とに年4回,1年. 定 し,季 節 ご. 間 の 底 質 とマ ク ロベ ン トスの変 化 を調 査. した.調 査 日時 を表‑3に 示 した. b) 海 水 導 入 後調 査 海 水 導 入 実 験 区 造 成 後,2006年6月 対 照 区 及 び堤 防 前 面 の海 域(干 高 毎(DL:0m,+0.5m,1m)に 類 数,個. よ り海 水 導 入 区 と. 潟)の. 測 点 に お いて 地 盤. 底 質,マ ク ロベ ン トス(種. 体 数,湿 重 量)に つ いて 同 様 に年 に4回,定. 的 に調 査 を行 った(図‑2).底. 質 は直 径8cmの. 期. ア ク リル製. 表‑1. 流 入負 荷 およ び海側境 界 の物質 濃度. コアを用 いて 干 潟 底 質 の未 撹 乱 試 料 を採 取 し,ク ロロ フ ィ ル‑aは. 表 層 か ら1cm,そ. T‑N,TOC)は. れ 以 外(含. 泥 率,COD,AVS,. 表 層 か ら12cmを 分 析 試 料 と した.マ ク ロベ. ン トス の調 査 は,各 地 点 面 積0.2m2(0.2m×0.2m×5回), 深 さ20cmで か けた後,残. 干 潟 底 泥 を採 取 し,1mmメ. ッ シュの ふ る いに. 留 物 につ いて マ ク ロベ ン トス の種 類 数,個 体. 数,湿 潤 重 量 及 び食性 を調 べ た.食 性 につ いて は,風 呂 田 ら(2000)の. 表‑2. 底 質上 の物 質収 支 の設定 条件. 干 潟生 物 の摂 食 様 式 を参 照 し,分 類 した.. (3) 海 水 導 入 によ る環 境 再 生 効 果 の検 討 a) モ デル 概 要 海 水 導 入 によ る環 境 再 生 効 果 を検 討 す るた め,実 験 デ ー タを元 に流 動 ・水 質 ・底 質 シ ミュ レー シ ョ ンを行 った.計 算 プ ログ ラ ムは デル フ ト水 理 研 究所 で 開発 さ れたDelft3D‑ FLOWお. よ びDelft3D‑WAQを. 2005a,2005b),水. 使 用 し(Delft. Hydraulics,. 質 と底 質 の相 互 作 用 を考 慮 した平 面2. 次 元 シ ミュ レー シ ョ ンを実 施 した.計 算 モ デル を図‑3に 示. 域 の物 質 濃 度 を与 え た.堤 防 後 背 地 に は,流 域 か らの流 入. す.計 算 モ デル は,海 水 導 入 実 験 を対 象 と し,計 算 領 域 は,. 負 荷 を陸 側 の 中央 か ら与 え た.流 入 負 荷 と海 域 境 界 の物 質. 海 域 は岸 沖60m× 岸15m,グ. 沿 岸75m,堤. リ ッ ド間 隔2.5m,水. 防後 背 地 は岸 沖15m× 深1.4m(1層)と. 海 水 導 入 は,海 側 境 界 の潮 汐 周 期,振. 沿. 設 定 した.. 幅 に合 わ せ て 海 域. 濃度 は海 水 導 入 実 験 の調 査 結 果 を 参 考 に 設 定 した(表‑1). 海 側 境 界 濃 度 は,植 物 プ ラ ンク トン,デ トリタス,溶 存 態 有 機 物 の濃 度 を それ ぞ れ 表‑1の. とお り設 定 した.流 入 負. と堤 防後 背 地 の 中央 にそ れ ぞれ 設定 した取 放 水 口を通 じて. 荷 の値 は,降 雨 時 に堤 防 後 背 地 に流 れ込 む 流 量 お よび流 入. 行 わ れ る もの と し,上 げ潮 時 は堤 防後 背 地 内 に流 入,下. 物 質 濃 度 を 実 測 した 結 果 を 用 い,流. げ. 潮 時 は海 域 に流 出 す る.堤 防 後 背 地 で は,こ の海 水 交 換 に よ り後 背 地 水 量 の約35%が1日2回 件 で あ る.海 側 境 界 は潮 汐(M2潮,振. 外 海 水 と交 換 され る条 幅0.5m)で. あ り海. 0.0005m3/s,物. 域 か らの 流 量Qは. 質 濃度 は表‑2に 示 す.. b) 計 算 ケー ス 計 算 ケ ー スを 図‑4,表‑2に. 示 す.計 算 は,堤 防 で海 と.
(3) 1273. 英虞 湾沿 岸未利 用地 にお ける海水 導入 に よ る環境 再生 効果 の検討 表‑3. 英虞 湾 内堤 防後背 地 の底質 と底生 生物 の特 徴. こ とが知 られ てい る(寺 島 ら(1999)).つ. ま り,潮 受 け堤. 防 後 背 地 の 底 質 に は,陸 上 植 物 由 来 の リター等 が 流 入 し, 堤 防 によ り後 背 地 に堆 積 して い る ことが推 測 され た. マ クロベ ン トス は,塩 分 も15‑22‰ と低 い ことか ら,イ ト ゴ カ イ(Capitella. sp.)や ユ ス リカ(Chironomidae)の. よ. うな 小 型 でか っ 汽 水 域 で生 息 す る生 物 が 優 占 して いた.ま た湿 重 量 は極 端 に小 さ く,多 様 性 の低 い生 物 相 で あ った. これ は,過 去 の干 拓 によ る潮 受 け堤 防 の建 設 が,原 因 と し て 考 え られ る.堤 防 に よ り分 断 され た後 背 地 は,海 水 の交 換 も悪 く,陸 域 か ら流 入 す る リター等 の有 機 物 を蓄 積 す る た め,底 質 の有 機 物 含 有 量 が高 く,そ れ に よ り夏 季 に は 況),. AVSが 高 い,過 栄 養 かつ 還 元 的 な底 質 環 境 とな り,生 物 の. 水 導 入 に干. 生 息 を妨 げて い る ことが 推 測 され た.そ れ に よ り,ベ ン ト. 仕 切 られ た堤 防 後 背 地 の状 況 を 再 現 した ケー ス1(現 海 水 導 入 を実 施 した ケ ース2(海. 水 導 入),海. 潟 の 浄 化 効 果 を付 加 した ケ ー ス3,ケ 干 潟)の4ケ. ー ス4(海. ース を実 施 した.底 質 上 の物 質 収 支 条 件 と し. て,現 地 観 測 か ら得 られ た 溶 出 速 度,酸 子 状 有 機 物PONの とPOPの. 素 消 費 速 度,粒. フ ラ ック スの値 を与 え た(表‑2).POC. フ ラ ックス の値 は,PONの. ドフ ィー ル ド比C:N:P=50:6:1を. ス の餌 とな る クロ ロ フィル‑aは 高 い値 に もか か わ らず,多 様 性 や 生 物 量 が低 く,比 較 的 富 栄 養 な環 境 に強 い多 毛 類 が優 占す る貧 弱 な生 物相 に な るこ とが 推 測 された. (2) 海 水 導 入 後 の底 質 とマ ク ロベ ン トスの変 化. 現地観 測値か らレッ. 用 いそ れ ぞれ 算 出 した.. 表‑1に 示 す 海 域 お よ びケ ー ス1,2の 始 直後,ケ. 水 導 入+. 値 は海 水 導 入 実 験 開. ー ス3の 値 は,実 験 開 始 か ら1年 半 後 の 観 測. a) 底 質 の 変 化 海 水 導 入 区,対 照 区 お よ び堤 防 前 面 海 域 の潮 間 帯(地 盤 高DL+0.5m)の. 測 点 にお け るTOCとAVSに. 事 前 調 査 よ り海 水 導 入 後1年. つ いて,. 半 の変 化 を図‑5に 示 した.. 結 果 を用 い た.ケ ー ス4の 値 は,英 虞 湾 に造 成 され た泥 質. 事 前 調 査 お よ び海 水 導 入 直 後 で は,TOC,AVS共. の 人 工 干 潟 にお け る造 成3年. 嫌 気 的 な状 態 で あ った.し か し,実 験 開始 後 約6ヶ 月 で 海. いた(国 分 ら,2006).表‑2よ. 後 の 物 質 収 支 観 測 結 果 を用 り,ケ ース3は,ケ. ー ス2. 水 導 入 区 でTOC,AVSが. 減 少 し,1年. に高 く. 半 後 に は対 照 区 と. に比 べ,溶 出 速 度,酸 素 消費 速 度,粒 子 状 有 機 物 の フラ ッ. 明 確 な差 がみ られ た.一 方,堤 防 前 面 の干 潟 底 質 につ いて. クス が大 きい ことが分 か る.こ れ は,海 水 導 入 実 験 の継 続. は,特 に変 化 は見 られ なか った.こ れ は,海 水 導 入 を行 う. に よ り得 られ た 堤 防 後 背 地 の干 潟 効 果 と言 え る.ケ ー ス4. こと によ り,堤 内 外 との海 水 交 換 が 促 進 され,徐 々 に海 水. にお け るPONの. 導 入 区 が 好 気 的 状 態 に変 化 して い る ことを示 す.そ の た め. 除 去 速 度 は,ケ ー ス2に 対 して 約10倍 で. あ る こ とが分 か る.計 算 は100日 間,す. なわ ち降 雨 が 連 続. して100日 続 き堤 防 後 背 地 に流 入 負 荷 が 流 入 し続 けた場 合 を計 算 した. 3.. 海 水 導 入 区,対 盤 高DL+0.5m)の. 事 前 調 査 を行 っ た図‑1に 示 す堤 防 後 背 地3地. 点 にお け. る底 質 お よ び出 現 したマ ク ロベ ン トスの分 析 結 果 につ いて, 1年 間 の平 均 値 ±標 準 誤 差 を表‑3に 示 した. 外 観 性 状 は泥 質 で,底. 測点 で 出現 した底 生 生 物 につ いて,事. 水産. 団 法 人 日本 水 産 資 源 保 護 協 会. はるか に超 え る高 い値 を示 した.ま た,底 質 の は12.2‑37.0mg/kgと 底 質 の有 機 物 含 有. 量 と同 様 に高 い値 を 示 した.底 質 のC/N比. 始 後,海. 半 の変 化 を図‑6に 示 した.実 験 開. 水 導 入 区 で は塩 分 が29‑32‰ に上 昇 した た め,マ. ク ロベ ン トス は前 述 の 汽 水 性 の ものか ら,ミ ズ ヒキ ゴカ イ (Cirriformia tentaculata)や. 質 の 有 機 物 含 有 量 は 高 く,杓. 浦,立 石 浦,石 淵 とも に富 栄 養 化 してお り,AVSも 用 水 基 準0.2mg/g‑dry(社. 照 区 およ び 堤 防 前 面 海 域 の 潮 間 帯(地. 前 調 査 よ り造 成 後1年. (1) 堤 防 後 背 地 の現 状. クロ ロ フ ィル‑a量. 示 され る還 元 物 質 の. 量 が減 少 して い る ことが考 え られ た. b) マク ロベ ン トスの 変 化. 結 果 と考 察. (2000))を. 底 質 中 の有 機 物 が 分 解 され,AVSで. を み る と,堤. 防 後 背 地 で11.4‑12.7と な り,湾 内 の 一 般 的 な 干 潟 底 質 の. senhousia)の. ホ ト トギ ス ガ イ(Musculus. よ うな海 水 性 かつ 富 栄 養 化 した場 所 に生 息 す. る生 物 相 に変 化 した.さ らに1年 半 後 で は,種 類 数 も29種 類 ま で増 加 し,ウ メ ノハ ナ ガ イ(Pillucina pisidium)や メ コ ブ シガニ(Philyra. pisum)に. マ. よ うな二 枚 貝 類 や 甲殻 類. も出 現 した.ま た湿 重 量 につ い て は堤 防 前面 海 域 の潮 間帯 と比 較 す る とまだ少 な いが,徐 々 に増 加 した.底 質 につ い て も,前 述 の とお り,徐 々 に好 気 的 に変 化 して い る ことか. 7.8‑8.9(国 分 ら2008)と 比 較 し,特 に高 い値 を示 した.こ. ら,堤 内 に堆 積 して い る高 濃 度 の 有機 物 の分 解 が 徐 々 に進. れ は,陸 か らの影 響 を示 す と考 え られ る.陸 上 の 高 等 植 物. 行 し,ベ ン トス の生 息 に適 した底 質 環 境 へ 変 化 して い る こ. ほど,セ ル ロー スの 割 合 が 大 き くな り,C/N比. とが 推 測 された.一 方,堤 防 前 面 海 域 に つい て も,徐 々 に. が上 昇 す る.
(4) 1274. 図‑5. 海. 海 水 導 入 実 験 後 の 底 質(上. 岸. 段:AVS,下. 工. 学. 論. 段:TOC)の. 文. 集. 第55巻(2008). 図‑6. 海 水導 入実 験後 の マ ク ロベ ン トス(上 段:種 類 数,下 段:湿 重量)の 変化. 変化. よ り外 海 水 との交 換 が 促 進 され外 海 水 濃 度 と同 等 の水 質 に で はあ るが,湿 重 量 が 増 加 傾 向 に あ った.こ れ につ いて は,. な った こ とを示 す.こ れ は現 地 実 験 にお け る降 雨 時 の対 照. 干 潟 底 質 等 に明 確 な変 化 はみ られ ない が,海 水 交 換 に よ り. 区 と海 水 導 入 区,海 域 にお け る平 均TOC濃. 堤 防 後 背 地 か ら有 機 物 等 の栄 養 が 豊 富 な水 が 供 給 され るた. 4.31,1.98,1.78mg/lと. め,堤 防 前 面 の マ クロ ベ ン トスが増 加 した可 能 性 が 考 え ら. また,ケ ー ス3に 付 加 した干 潟 の効 果 は,水 質TOCに. れ た.し か し,現 段 階 の デ ー タは不 十 分 で あ り,今 後 継 続. られな か った.. した調 査 が 必 要 で あ る.. 度 が それ ぞ れ,. な る こ とか ら も同様 の傾 向 を示 す. はみ. 以 上 よ り,堤 防 後 背 地 に海 水 導 入 を行 う と,堤 防 後 背. 以 上 よ り,今 後 継 続 して 調 査 す る必 要 が あ るが,海 水 導. 地 で は,今 まで封 じ込 まれ て いた高 い有 機 物 濃 度 の水 質 が. 入 によ り過 栄 養 か っ嫌 気 的 状 態 に な って い る潮 受 け堤 防 後. 外 海 と交 換 され る ことに よ り,海 域 と同程 度 の水 質 に改 善. 背 地 の底 質 環境 の改 善 と生 物 量 を向 上 で きる可 能性 が示 唆. で き る ことが 分 か った.ま た,著 者 らが事 前 に実 施 した 海. され た.. 水 導 入 に よ り与 え られ る海 域 へ の水 質 ・底 質 へ の影 響 の 事. (3) 海 水 導入 によ る環 境 再 生 効 果 の検 討. 前検 討 に よれ ば,堤 防 後 背 地 の高 い有 機物 濃 度 の水 質 を 海. a) 水 質 のTOCの. 域 に流 出す る こと によ り,海 域 の水 質 を 悪 化 させ る場 合 も. ケ ー ス1,2,3に. 変化 お け る海 水 導 入100日 後 の 水 質TOCに. つ い て,堤 防 後 背 地 と海 域 の中 央 点 で の比 較 を 図‑7に 示 す.水 質TOCは,植. 物 プ ラ ンク トン,デ. トリタス,溶 存. 態 有 機 物 の総 和 と し,図 中 に は水 質TOCの. 構 成 お よ び総. 和 の値 も示 した. 水 質TOCは,ケ. あ る こ とを 確 認 して い る(高 山 ら,2006).現. 海 水 導 入 実 験 の流 入 負 荷 で は,海 域 の 水 質 を悪 化 させ る こ とな く堤 防 後 背 地 の 水 質 を 改 善 す る こ とが で き る ことが分 か った. b) 底 質 のTOCの. ー ス1で は海 域 に比 べ て堤 防 後 背 地 で. 在実施 中の. 経 時変 化. 図‑8に ケ ー ス1〜 ケ ース4に お け る100日 後 の 堤 防 後 背 地. 増 加 した.そ れ以 外 の ケー スで は,堤 防後 背 地 と海 域 で 均 一 に な る傾 向 とな っ た .ケ ー ス2,3の 堤防後背地 および. の底 質TOCに. つ いて,堤 防 後 背 地 の 中央 点 で の比 較 を示 す .. 底 質TOCは,底. 質 中 のデ トリタス と した.堤 防 後 背 地 の底. 海 域 の値 は ケ ース1の 海 域 と同 レベル で あ った.各 ケ ー ス. 質TOCの. の水 質TOCの. 構 成 を 見 る と,ケ ー ス1の 堤 防 後 背 地 は,. 計 算 初 期 値 は50mgC/gで あ る.. 底 質TOCに. つ い て,初 期 値(50mgC/g)に. 対 す る増 減 を. 溶 存 態 有 機 物 が3.50gC/m3と 最 も多 く,植 物 プ ラ ンク トン. 比 較 す る.ケ ー ス1で は初 期 値 に対 して 大 幅 に増 加 し,そ. が7.68gC/m3,デ. れ 以 外 の ケ ー スで は初 期 値 に対 して 減 少 した.底 質TOCの. ト リタ スが0.44gC/m3で. あ った.こ れ は,. 堤 防 後背 地 で は,沈 降 性 の デ トリタス に対 し浮 遊 性 の 溶 存. 減 少 は,水 質TOCと. 態 有 機 物 と植 物 プ ラ ンク トンの 濃度 が著 し く増 加 す る こ と. 寄 与 す るデ トリタスが 海 域 に流 出 した こ とに加 え,流 入 負. を示 して い る.ケ ー ス1の 海 域,ケ. 堤防後背. 荷 に比 べ て底 泥 の分 解 速 度 が大 きい た めで あ った.こ の よ. 構 成 は,ほ ぼ全 てが 溶 存 態 有. うに ケ ース1と2を 比 較 す る こ とによ り,海 水 交 換 を行 うこ. 地 お よ び海 域 の水 質TOCの. ー ス2,3の. 機 物 であ った.こ れ は,堤 防 後 背地 の水 質 は,海 水 導 入 に. とで,堤. 同 様 に,海 水 導 入 に よ り底 質TOCに. 防 後 背 地 底 質 の 改 善(有. 機 物 の減 少)が. 可能で.
(5) 1275. 英 虞湾 沿岸 未利 用地 に おけ る海 水導 入 に よる環境再 生 効果 の検討. 産 性 の 向上 を 図 るた め,阻 害 され て い る海 水 流動 を 回復 さ せ る海 水 導 入 実 験 を実 施 し,海 水 導 入 前 後 の底 質 と底 生 生 物 の変 化 特 性 につ いて 整 理 し,数 値 シ ミュ レー シ ョンに よ り,海 水 導 入 によ る環 境 再 生 効 果 を検 討 した.本 研 究 の 主 要 な結 論 を以 下 に示 す. (1)潮受 け堤 防 に よ り干 拓 され た後 背 地 は,海 水 の交 換 も悪 く,陸 域 か ら流 入 す る有 機 物 を蓄 積 す るた め,底 質 の有 図‑7. 各 ケ ー ス に お け る 水 質TOCの. 比較. 機 物 含 有 量 が高 く,過 栄 養 か つ還 元 的 な底 質 環 境 と な り, 生 物 の生 息 を妨 げて い るこ とが わ か った. (2)海水 導 入 実 験 後1年. 半 で 底 質 の好 気 化 と堆 積 した 高 濃. 度 の有 機 物 の分 解 が 進 行 し,そ れ に伴 って マ ク ロベ ン ト ス も種 類 数 と湿 重 量 共 に増 加 す る こ とが分 か った. (3)数値 シ ミュ レー シ ョ ンの 結 果,海 水 導 入 す る こ とに よ り 海 域 へ の負 荷 を増 加 させ る こ とな く,堤 防後 背 地 の水 中 TOC濃. 度 を低 下 させ るこ とが で きる ことが 示 さ れた.ま. た,底 生 生 物 の 増 大 に と もな って干 潟 の浄 化 効 果 が 大 き 図‑8. 各 ケ ー ス に お け る底 質TOCの. 比較. くなれ ば,さ. らに底 質TOC濃. 度の低下が期待で きるこ. とが 分 か った. あ る こ とが示 唆 され,減 少量 は過 大 評 価 で あるが,前 述 し た現 地 実 験 結 果 と も同様 の傾 向 を示 した. 次 に,ケ ー ス2〜 ケー ス4を 比 較 す る こと によ り干 潟 の 効 果 を検 討 した.堤 防 後 背 地 の底 質TOCは,ケ 対 し,ケ ー ス3,ケ の 大 きさ は,表‑2に. 以 上 よ り,海 水 導 入 によ り過 栄 養 化 した潮 受 け堤 防後 背 地 の生 物 生 産 性 を向 上 で き る可 能 性 が 示 唆 され た.さ. ー ス2に. ー ス4の 順 で減 少 した.こ の 低 減 効 果. らに. 海 水 導 入 効 果 を発 揮 す るた め に は,予 め堤 防 後 背 地 の底 質 を適 度 な有 機 物 量 に改 善 す る ことが 有 効 で あ る ことが 示 さ れ た.. 示 した粒 子 状 有 機 物(以 下POM)の. 除 去 能 力 に依 存 した もの であ る.こ れ は,干 潟 のPOM除. 謝 辞:本 研 究 は三 重 県 地 域 結 集 型 共 同 研 究 事 業 の一 部 で. 去 能 力 は底 生 生 物 量 に依 存 す る こ とか ら(三 重 県2008),. 実施 された.ま た,現 地 実験 にあた り,英 虞 湾再 生 コ ンソー. 底 生 生 物 の増 大 に と もな って干 潟 のPOM除. シア ム,立 神 真 珠 研 究 会,志 摩 の 国 漁 協 立 神 支 所,芙. くな れ ば,さ. らに底 質TOC濃. 去 能 力 が大 き. 度 の低 下 が 期 待 で き る こ と. 蓉. 海 洋 開 発 か ら多 大 な協 力 を 得 た.こ こに謝 意 を表 す.. を示 す.し か し,現 状 の生 物 量 で は,ケ ース3に 示 すPOM 除去 能 力 しか 発 揮 で きな いた め に,ケ ー ス2と 大 差 はな い. その た め,ケ ース4のPOM除. 去 能 力 が 発揮 で きる生 物 量. に後 背 地 の 底 質 を改 善 す る必 要 が あ る.し か し海 水 導 入 の み に任 せ た干 潟 の 発 達 だ けで は,前 述 した現 地 実 験 で 示 さ れた よ うに,生 物 量 が豊 富 な底 質TOCに. 低下 す るまで に1. 年 半 以 上 を要 す る と考 え られ た. 以 上 よ り,海 水 導 入 は,堤 防 後 背 地 の水 質 浄 化 効 果 が 大 きい利 点 はあ る もの の,効 果 的 な 海 水 導 入 を実 施 す るた め に は,堤 防 後 背 地 の浄 化 能 力 を発 揮 させ る こ とを 目的 と した利 用 が望 ま しい ことが分 か った.そ の た め に は,予 め 堤 防 後 背 地 の 底 質 を底 生 生 物 に適 度 な有 機 物 量 に 改 善 す る ことが有 効 で あ り,そ の底 質 環 境 を維 持 す るた めの 干 潟 浄 化 能 力 の検 討 が 不 可 欠 で あ る. 4.. まとめ. 本 論 文 で は,過 栄 養 化 した 潮 受 け堤 防 後 背 地 の生 物 生. 参. 考. 国 分 秀 樹 ・奥 村 宏 征 ・松 田治. 文 (2008):. 献 英 虞 湾 に お け る干 潟 の歴. 史 的 変 遷 とそ の底 質, 底 生 生 物 へ の 影 響, 水 環 境 学 会 誌, Vol.31, No.6, pp.305‑311 国 分 秀樹 ・奥 村 宏 征 ・高 山百 合 子 ・湯 浅城 之 ・上 野 成三 (2006): 英 虞 湾 の 凌 渫 ヘ ドロを用 い た人 工 干 潟 にお け る潮 汐 に伴 う水 質 変 動 の連 続 観 測, 海 岸 工 学 論 文 集, 第53巻, pp.1231‑1235. 高 山 百 合 子 ・国 分 秀 樹 ・奥 村 宏 征 ・湯 浅 城 之 ・片 倉 徳 男 ・上 野 成 三 ・松 田治. (2006):. 沿 岸 未 利 用 地 へ の海 水 導 入 によ る環. 境 再 生 実 験 に関 す る水 質 シ ミュ レー シ ョン, 海 岸 工 学 論 文 集, 第53巻, pp.1246‑1250. 寺 島 美 南 子 ・古 宮 正 利 ・寺 島 滋 (1999): 北 海 道 西 方 海 域 か ら 得 られ た 海 底 堆 積 物 中 の 有 機 物 組 成 と初 期 続 成 分 解 の地 球 化 学 的 研 究, 地 質 調 査 所 月 報, 50,pp.307‑319. 風 呂 田利 夫 (2000): 干 潟 底 生 生 物 の 分 布 と摂 食 様 式, 洋, Vol.28, No.2, pp.166‑177.. 月刊 海. 社 団 法 人 日本 水 産 資 源 保 護 協 会 (2000)水 産 用 水 基 準. 三 重 県 (2008): 三 重 県 地 域 結 集 型 共 同 研 究 事 業 英 虞湾物 質 循 環 調 査 報 告 書, 第8章,. pp.353‑434.. Delft Hydraulics (2005a): Delft3D‑FLOW User Manual. Delft Hydraulics (2005b): Delft3D‑WAQ User Manual..
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