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クラスター分析による伊勢湾海域の水質構造解析に関する一考察

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Academic year: 2022

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(1)II-042. 土木学会中部支部研究発表会 (2008.3). クラスター分析による伊勢湾海域の水質構造解析に関する一考察 名古屋大学大学院工学研究科. 正 会 員. 川崎. 浩司. 名古屋大学大学院工学研究科. 学生会員 ○ 宇都宮健志. 名古屋大学大学院工学研究科. 学生会員. 大久保陽介. 1.はじめに 半閉鎖性内湾の一つである伊勢湾は,外海との海水交換性が悪く,植物プランクトンの異常増殖による赤 潮,夏季における底層の大規模な貧酸素水塊の形成,同水塊の湧昇に伴う苦潮などの水環境問題を抱えてい る.これら諸問題を解決するためには,伊勢湾海域における水質構造を把握することが必須である.これま で,伊勢湾海域の密度・水質構造の季節変動特性について検討した例(例えば,川崎ら,2006)はあるもの の,長期観測データに基づいて水質構造を定量的に解析した研究はあまり ない.そこで,本研究では,長期観測データの有効活用として,統計的手 法の一つであるクラスター分析を用い,伊勢湾海域の水質構造解析を行う ことを目的としている.そして,クラスター分析結果に基づき,分類され た海域毎の各水質項目の経月変化を調べることにより,伊勢湾における水 質構造の季節変化について考察する. 2.観測データの概要 本研究では,三重県科学技術振興センターが 1972 年 4 月から現在に至る まで長期的に観測を行っている浅海定線調査のデータを使用した.観測は, 毎月上旬に 1 回,図-1 に示す 20 箇所の観測点で行われている.クラスタ ー分析では,表層,底層それぞれに対する 20 箇所の観測点毎に,1972 年 4 月~2005 年 12 月の期間で平均した値を,解析データとして使用した.使. 図-1 三重県科学技術振興セン. 用した水質項目は,水温,塩分,溶存酸素量(DO),溶存無機態窒素(DIN),. ターによる浅海定線調査の観測. リン酸態リン(PO4-P)の 5 項目である. 3.クラスター分析の概要 クラスター分析は,異なる性質をもつ対象を,類似度,非類似度で定義さ れる対象間の距離により分類する手法である.クラスターとは,類似した対 象の集合体のことである.以下の流れで,クラスター分析を行う.なお,対 象間距離はユークリッド距離を用い,クラスター生成後の距離については実 用性で評価が高いウォード法を用いて計算した.. 0. 2. 4. 0. 2. 4. (3)新しく形成されたクラスターと他の対象に対し,非類似度行列を計算. (4)非類似度行列より,最も類似度が高い 2 つを結合して 1 つのクラスターを作成. (5)以上の作業をクラスターがひとつになるまで繰り返し計算.. 4.クラスター分析による伊勢湾海域の水質構造解析 図-2 は,クラスター分析により得られた樹形図であり,距離が短い,すな わち類似度が高い観測点の順にクラスターが形成されていく過程を表してい る.本研究では,図-2 に示すとおり,4 つの海域(Area1~Area4)に分類す. -201-. 8. 10. 12. 8. 10. 12. (a)表層. (1)n 個の対象について,p 個の変数から対象間の距離(非類似度行列)を計算. (2)非類似度行列より,最も類似度が高い 2 つを結合して 1 つのクラスターを作成.. 6. 1 2 3 4 6 8 5 9 13 16 11 B 12 10 A 7 14 17 15 18. 6. 1 4 3 7 12 A 17 9 14 B 13 16 15 18 2 8 5 10 6 11. (b)底層 図-2 クラスター分析により 得られた樹形図.

(2) II-042. 土木学会中部支部研究発表会 (2008.3). ることとした.クラスター分析結果を表-1,図-3 に示す.図-3 から,表層と底層では異なる海域分類となっ ており,水質構造の空間分布に違いがあることがわかる. つぎに,分類された各海域の水質特性を具体的に検討するため,各海域内の全観測点で平均された表層, 底層に関する水温,DO,PO4-P の経月変化をそれぞれ図-4,図-5 に示す.図-4 より,表層における水温, DO については,分類海域ごとにあまり差違はみられない.紙面の制約上,図示しないが,塩分に関しては, 河川からの流入水の影響を受けやすい Area1 で夏季に低く,湾口部に近い Area3 や Aarea4 では高い値となっ ていた.PO4-P に対しては,河川からの表流水の影響を受けやすい湾奥部の Area1 で高い傾向が認められる. 一方,図-5 に示すように,底層では,Area1 で水温の季節変化が大きい.これは Area1 に分類されている観 測点は水深が 10m 前後と浅く,表層付近の水温変化や日射の影響を受けやすいためである.10 月頃になる と,4 つの分類海域では水温差がなくなり,底層全体でほぼ均一となっている.DO について考察すると,表 層では分類海域による違いはあまり確認されないが,底層では 7 月~9 月頃にかけて湾口部の Area4 を除き 貧酸素化している.特に水深の深い Area2 では,6 月~10 月の期間,DO 値が 3mg/l 以下となっている.一方, 底層 PO4-P は貧酸素化が激しい夏季の Area2 で高い.このことは,PO4-P の増加と DO 値の低下に関連性が あることを示唆しているといえる. 5.結論 本研究では,長期観測データを用いてクラスター分析を行うことにより,水質特性の類似性に応じて伊勢 湾海域を分類し,それぞれの海域における水質の経月変化特性について検討した.今後は,流動場と季節毎 の水質構造の関係を調べることにより,さらなる水質構造の解明を行う予定である. 謝辞: 三重県科学技術振興センターから,貴重な観測データを提供頂いた.ここに謝意を表する. 参考文献: 川崎浩司・村上智一・大久保陽介(2006):長期現地観測データに基づく伊勢湾の密度・水質構造の季節変動 特性,海岸工学論文集,第 53 巻,pp.946-950. 30. Area2 Area3. 1,2,3. 1,3,4,7. 4,5,6,8,9. 2,5,6,8,10,11. 7,10,11,12,14. 9,12,13,14. 15,17,18,A,B. 16,17,A,B. 13,16. 15,18. 20 15 10 5. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 20 15 10 5. 12. area1 area2 area3 area4. 25. 1. 2. 3. 4. 5. (a)水温 10. 8. 8. 6. 6. are a1 are a2 are a3 are a4. 2 0. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 0. 12. 1. 2. 3. 4. 5. 6. M onth. (b)DO. 12. 7. 8. 9. 10. 11. 12. area1 area2 area3 area4. 0.030 0.025. PO4-P(mg/l). PO4-P(mg/l). 11. (b)DO. area1 area2 area3 area4. 0.025 0.020 0.015 0.010 0.005. 0.020 0.015 0.010 0.005. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10 11. 12. M onth. (b)底層年平均. 図-3 クラスター分析による伊勢湾の海域分類. 10. 0.035. 0.030. (a)表層年平均. 9. M onth. 0.035. 0.000. 8. area1 area2 area3 area4. 2. 4. 7. (a)水温. 10. 4. 6. M onth. M onth. DO(mg/l). Area4. 底層観測点. 25. Water Temperature (℃). Area1. 表層観測点. area1 area2 area3 area4. DO(mg/l). 表-1 海域分類と観測点. Water Temperature (℃). 30. 0.000. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10 11. 12. M onth. (c)PO4-P. (c)PO4-P. 図-4 表層水質の経月変化. 図-5 底層水質の経月変化. -202-.

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参照

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