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急勾配海底条件下における防波堤の法止めブロックの

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(1)B-54. 平成25年度. 土木学会北海道支部. 論文報告集. 第70号. 急勾配海底条件下における防波堤の法止めブロックの 耐波安定性に関する検討 Stability of Toe Protection Blocks for Breakwaters under Steep Foreshore Conditions 室蘭工業大学大学院 ○学生員 室蘭工業大学大学院 フェロー (独)土木研究所 寒地土木研究所 正会員 1.まえがき 海底勾配が急な場所に設置される防波堤には,衝撃的 な波力が発生しやすく,直立部における耐波安定性の確 保が難しいことが知られている.一方,上久保ら 1)は急 勾配海底条件下の消波護岸を対象として,消波ブロック の安定性を検討するとともに,法止めブロックの有効性 を指摘している.しかし,法止めブロックの必要質量の 算定方法は未だ確立されておらず,これまでの経験に基 づいて設計されているのが現状である. 本研究は,急勾配海底条件下において施工中の防波堤 を対象として,法止めブロックの耐波安定性について水 理模型実験および数値波動水路 CADMAS-SURF/2D に より明らかにすることを目的としている. 急勾配海底条件下の防波堤の事例 図-1 は,日本海側に位置する A 港を示している.A 港は急峻な海底勾配が続いており,防波堤の構造形式は 消波ブロック傾斜堤である.本体部には 50t および 60t の消波ブロックが使用され,堤体の法止めブロックには 25t および 40t の平型ブロックが設置されている. 図-2 は,2004 年 9 月 4 日に発生した台風 18 号の進路 を示す.台風 18 号は勢力を強めながら日本海側を北上 し,8 日 0 時ごろには A 港付近の海域に到達した.近隣 のナウファス測定点において,13 時に同日の最大波で ある,有義波高 H1/3=7.58m,有義波周期 T1/3=11.8s を記 録した.A 港防波堤は,前出した図-1 の丸線内に示す ように岸側堤頭部の法止めブロックのみが移動した.ま た,各断面における法先水深は,同図中に示すとおりで ある.. 佐藤篤志 (Atsushi SATO) 木村克俊 (Katsutoshi KIMURA) 上久保勝美 (Katsumi KAMIKUBO). 陸地 断面1 (法先水深 4m). 移動箇所 (断面1 堤頭部). 断面2 (法先水深 6m). 港内. 60m 法止めブロック 断面3 (法先水深 8m). 図-1. A 港防波堤の平面配置. 2.. 海底勾配の設定方法 A 港周辺の波浪変形に及ぼす海底地形の影響は,非定 常緩勾配不規則波動方程式モデルを用いて検討した. A 港における沖側の海底地形は,汀線付近が 1/10 勾配 で,その後 1/2.5 勾配となる複合勾配である.この複合 勾配を図-3 の下段に示すようにモデル化し,上段に示 す 1/10 の一様勾配と比較した.データ作成領域は,沿 岸方向 2.5km,岸沖方向 3.5km とし,計算領域は同図に おける赤枠で囲んだ沿岸方向 1.5km,岸沖方向 2.5km と した.設計波は,周期 T=12.0s で一定とし,沖波換算波 高 H0’は 5.0m,6.0m,7.0m,8.0m および 9.0m の 5 ケー スとした.なお,波向は単一方向波とした. 図-4 は,水深 h=10.0m 地点における通過波高 H1/3 と 沖波波高 H0’の関係を示す.同図より,通過波高には複. 図-2. 2004 年台風 18 号の経路. 3.. 波高観測水深(h=10.0m). 計算領域. 一様勾配. 2500. 1000. 0 -50 -100 -150 -200 -250 -300. 波高観測水深(h=10.0m). 計算領域 複合勾配. 2500. 1000. 0 -50 -100 -150 -200 -250 -300. Unit:m. 図-3 一様勾配と複合勾配.

(2) 平成25年度. 土木学会北海道支部. 合勾配の影響が小さいことから,後述する実験について は,海底勾配を i=1/10 の一様勾配で行うこととした. 実験方法 実験は,図-5 に示す 2 次元造波水路(長さ 22.0m,幅 0.8m,高さ 2.0m)内に,縮尺 1/50 のもと,海底勾配 i=1/10 のモルタル床を設け,造波機前面の水深 h0 は 72.3cm で一定とした.また,防波堤の法先水深 h は, 8.0cm,12.0cm および 16.0cm の 3 ケースとし,各水深 で通過波高 H1/3 を計測した.なお,それぞれの水深を断 面 1,2 および 3 とし,各断面における静水面上の天端 高 hc=9.4cm および天端幅 B=21.4cm を一定とした.使用 する法止めブロックの質量は,190g,240g,300g およ び 500g の 4 ケースとした.なお,現地量を同図中に示 す.実験波は,Bretschneider・光易型のスペクトルを有 する不規則波を用いて,1 波群の作用波数は 200 波とし, 有義波周期 T1/3=1.70s,有義波高 H0’=7.0cm,9.0cm, 11.0cm,13.0cm および 15.0cm の 5 ケースで実施した. 安定実験は,堤幹部および堤頭部を対象に行った.堤 幹部は標準部を指し,堤頭部は防波堤の端部を指す.堤 頭部の安定実験は,水路幅半分長の消波ブロック堤を設 置し,周囲に法止めブロックを設置して行った.安定実 験では,ブロックの並び替えを行わず波高を段階的に大 きくし,以下に示す式(1)より被害率 D(%)を算出した. 4.. D. n  100 N. (1). 10.0 i=1/2.5~1/10 i=1/10. 通過波高 H1/3 (m). 第70号. 5. 堤幹部の法止めブロックの耐波安定性 (1)法止めブロックの被害率 写真-1 は,断面 2 における法止めブロック質量 30t の移動状況を示す.被害率は H1/3=6.6m の場合では 0% であるが,H1/3=7.1m の場合では 15%となる.このこと から安定限界波高 Hc は,2 つの波高の中間値である Hc=6.9m を用いた. 図-6~8 は,各断面における被害率を示す.法先水深 が浅い断面ほど小さい波高で被害が起こるとともに,被 害率の増大傾向が顕著となる.これは急勾配条件下では, 防波堤前面で砕波が生じやすく,水深の浅い地点では砕 波の影響が大きくなるためと考えられる. (2)ブロック質量の基本式 一般にブロックの必要質量 M は,以下に示す式(2)の 安定数 Ns を用いたハドソン式から求められる.. M. H 1 / 3. (2). Ns ( Sr  1) 3 3. ここで,ρ はコンクリートの密度(t/m3),H1/3 は有義波 高(m),Sr はコンクリートの海水に対する比重,Ns は主 としてブロック形状や勾配,被災度(被害率から求まる 値)等により定まる係数である.また,基準安定数 Ns0 はブロックに対する固有値であり,一般のブロックにつ いては以下に示す式(3)から算定できる.. Ns0  K D cot  . 1/ 3. (1). ここに N は法止めブロックの設置個数,n は法止めブ ロックの基準幅以上を移動した個数と定義した.. 8.0. 論文報告集. (3). ここで,KD はブロックのかみ合わせなどによる固有 定数,θ はブロック法面と水平面がなす角度である.な お , 本 実 験 で 使 用 し た 法 止 め ブ ロ ッ ク は KD=11 , Ns0=4.8 である. (3)堤幹部の安定数 高橋ら 2)は被災度,砕波及び斜面勾配等の効果を考 慮したマウンド被覆材の Ns 値の式を提案している.. 6.0. 4.0. 通過波高 H1/3=6.6m. 通過波高 H1/3=7.1m. 2.0. 0.0 0.0. 2.0. 4.0. 6.0. 8.0. 10.0. 入射波高 H0’ (m). 入射方向. 図-4 波浪変形の計算結果. 写真-1 法止めブロック安定実験 (断面 2 堤幹部) 法止めブロック質量. 断面1(h=0.08) 断面2(h=0.12). 断面3(h=0.16). 造波機. 実験量 (g). 190. 240. 300. 500. 現地量 (t). 24. 30. 38. 63 消 波 工. 消 波 工 0.723. 0.70. 3.00. 2.00. 7.00. 6.00. 3.50 Unit:m. 0.50. 図-5 実験水路. 2.00.

(3) 平成25年度. 土木学会北海道支部. 本研究では,この式を準用し,急勾配海底条件下におけ る法止めブロックの安定数を,水深波高比 h/H1/3 と水深 波長比 h/L1/3 を考慮し以下に示す式(4)を提案する..  h Ns h    0.45  exp   Ns 0  H 1 / 3 L1 / 3 . (4). 図-9 に式(4)を用いた安定数 Ns の計算値と実験値を示 す.同図より,h/H1/3×h/L1/3 が小さくなると Ns も小さく なり,法止めブロックの安定性において厳しい条件にな ることが確認された.また計算値は実験値とおおむね一 致し,かつ安全側に評価することができた. 設計波を台風 18 号による波浪と同等の規模とし,式 (4)を用いて各断面の安定質量を求めた.断面 1,2 およ び 3 では 28t,41t および 61t が必要となる.なお,現地 では,断面 1 に 25t,断面 2 および断面 3 に 40t が設置 されており,移動は確認されていない.また,断面 3 の ように水深が深い場合は安定質量をやや大きく評価する 傾向があるが,断面 1 および 2 はおおむね一致した. 数値波動水路(CADMAS-SURF/2D)による検討 (1) 計算方法 高橋ら 3)はマウンド被覆材の安定質量はマウンド近傍 流速に依存し,6 乗に比例することを示している.水理 模型実験では,周期の影響を考慮することができなかっ たため,底面近傍流速の計算では,周期を考慮して検討 した. 6.. 論文報告集. 第70号. CADMAS-SURF/2D の計算領域の設定は,前出した図 -5 の 2 次元造波水路と同様にし,通過波高も同様の水 深にした.なお,底面近傍流速 v(m/s)は各断面の底面か ら高さ 2.0cm の位置における流速とした.また,波浪条 件は,周期 T=1.27s,1.70s および 2.12s の 3 ケースとし, 波高 H0’=7.0cm,9.0cm,11.0cm,13.0cm および 15.0cm の 5 ケースとした全 15 ケースを規則波で実施した. (2)底面近傍における流速 図-10 は,底面近傍流速と水深波長比の関係を示す. 各断面において,水深に対して波長が長くなるほど流速 が大きくなることがわかる. 図-11 は,底面近傍流速と水深波高比の関係を示す. 各断面において,水深に対して波高が大きくなるほど流 速が大きくなることがわかる. 以上のことから,数値解析で得られた結果は水理模型 実験と同様の傾向を示しており,法止めブロックの安定 性は水深波長比と水深波高比に依存していることを明ら かになった. 堤頭部における法止めブロックの耐波安定性 (1)法止めブロックの被害率 図-12 は,断面 1 の堤頭部における被害率を示す.法 止めブロックの移動状況を同図中の写真に示す.同図よ り断面 1 の堤幹部に比べて小さい通過波高 H1/3 で被害が 起こることがわかる.また前出した図-1 に示す法止め ブロックの移動箇所と同様に,法先水深の浅い堤頭部周 辺の法止めブロックが岸側に移動することが確認された. 7.. 100 法止めブロック質量 24t 30t 38t. 80. 100 法止めブロック質量 24t 30t 38t. 60 被害率 D (%). 被害率 D (%). 80. 40. 60. 40. 20 20. 0 3.0. 4.0. 5.0. 6.0. 7.0. 8.0. 9.0 0. 通過波高 H1/3 (m). 3.0. 4.0. 5.0. 6.0. 7.0. 8.0. 9.0. 通過波高 H1/3 (m). 図-6 堤幹部の被害率 (断面 1). 図-8 堤幹部の被害率(断面 3) 6.0. 100. Ns (exp) Ns (exp). 法止めブロック質量 24t 30t 38t. 5.0. Ns (cal) Ns (cal). 4.0. 60. 安定数 Ns. 被害率 D (%). 80. Ns0=4.8. 40.  h Ns h    0.45    Ns0  H1/ 3 L1/ 3 . 3.0. 2.0. 20. 1.0. 0 3.0. 4.0. 5.0. 6.0. 7.0. 8.0. 通過波高 H1/3 (m). 図-7 堤幹部の被害率 (断面 2). 9.0. 0. 0.01. 0.02 h/H1/3×h/L1/3. 0.03. 図-9 安定数の実験値と計算値. 0.04.

(4) (5). 堤幹部と比較した場合,堤頭部の Ns が 3 割程度小さ くなることが確認された.これをハドソン式に適用する と,堤頭部の安定質量は,堤幹部の安定質量に対して割 増しする必要性が確認された. 堤頭部は,波の回り込みなどの影響により,堤幹部の 安定質量より重くする必要がある.木村ら 4)は堤頭部の 消波ブロックの安定質量を堤幹部の安定質量の 5 割増し にすることを指摘している.そこで 5.(3)で求めた断面 1 の堤幹部の安定質量 26t を,5 割増しした結果,断面 1 における堤頭部の安定質量は 39t となる. まとめ 急勾配海底条件下における法止めブロックの耐波安定 性について,得られた結論は以下のとおりである. ① 堤幹部および堤頭部の法止めブロックの安定数 Ns を h/H1/3×h/L1/3 の関数で評価した. ② 安定実験で得られた安定数から,堤頭部に対し ては堤幹部の質量を割り増しする必要があるこ とを示した. ③ 数値解析で得られた流速場の特性から,法止め ブロックの安定性に水深波高比と水深波長比が 影響していることを明らかにした. 8. 謝辞:本研究における波浪変形に関する数値解析の実施 においては,日本データーサービス株式会社の葛西弘行 氏の協力を得た.ここに記して謝意を表します. 参考文献 1) 上久保勝美,山本泰司,木村克俊,清水敏明,吉野 真史:急勾配海底条件下における消波護岸のブロッ クの安定性,海洋開発論文集,第 26 巻, pp.489494,2010. 2) 高橋重雄,半沢稔,佐藤弘和,五明美智男,下迫健 一郎,寺内潔,高山知司,谷本勝利 :期待被災度 を考慮した消波ブロックの安定重量-消波ブロック 被覆堤の設計法の再検討,第 1 報-港湾技術研究所 報告,第 37 巻,第 1 号,pp.3- 32,1998. 3) 高橋重雄,木村克俊,谷本勝利:斜め入射波による 混成堤マウンド被覆材の安定性に関する実験的研究, 港湾技術研究所報告,第 29 巻,第 2 号,pp.3-36, 1990. 4) 木村克俊,上久保勝美,坂本洋一,水野雄三,竹田 英章,林倫史:消波ブロック被覆堤の堤頭部におけ るブロックの耐波安定性,海岸工学論文集,第 44 巻,pp.956-960,1997.. 周期 T (sec). 断面位置. 5.0 底面近傍流速 v (m/s).  h Ns h    0.3  exp   Ns 0 H L 1/ 3   1/ 3. 第70号. 6.0. 9. 12. 15. 1 (h=4m) 2 (h=6m). 4.0. 3 (h=8m). 3.0 2.0 1.0 0.0 0.00. 0.01. 0.02. 0.03. 0.04. 0.05. 0.06. 0.07. 水深波長比 h/L. 図-10 底面近傍流速と水深波長比の関系 6.0 断面位置. 5.0 底面近傍流速 v (m/s). (2)堤頭部の安定数 図-13 は,堤頭部および堤幹部における安定数の比較 を示す.なお,堤頭部の安定数は,式(4)を準用し以下 に示す式(5)で評価する.. 論文報告集. 周期 T (sec) 9. 12. 15. 1 (h=4m) 2 (h=6m). 4.0. 3 (h=8m). 3.0 2.0 1.0 0.0 0.00. 0.40. 0.80. 1.20. 1.60. 2.00. 水深波高比 h/H. 図-11 底面近傍流速と水深波高比の関系 100. 法止めブロック重量 38t 63t. 80 被害率 D (%). 土木学会北海道支部. 60. 40. 20. 0 3.0. 4.0. 5.0. 6.0. 7.0. 8.0. 9.0. 通過波高 H1/3 (m). 図-12 堤頭部の被害率 (断面 1) 6.0. Ns (Head exp) Ns (Head cal) Ns (exp) NsNs(Trunk cal) (Head cal). Ns0=4.8. 5.0. Ns (Trunk cal). 4.0 安定数 Ns. 平成25年度.  h Ns h    0.45    Ns0  H1/ 3 L1/ 3 . 3.0.  h Ns h    0.3    Ns0  H1/ 3 L1/ 3 . 2.0. 1.0 0. 0.01. 0.02 h/H1/3×h/L1/3. 図-13 安定数の比較. 0.03. 0.04.

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