8
6
(9)
堤
篤
子
医学博士
乙第654 号
昭和59 年 4 月20 日
氏名(生年月日〉
本 籍
学 位 の 種 類
学位授与の番号
学位授与の日付
学位授与の要件
学 位 論 文 題 目
論 文 審 査 委 員
学位規則第
5
条第
2
項該当(博士の学位論文提出者〉
先 天 性 チ ア ノ ー ゼ 性 心 疾 患 の 眼 底
( 主 査 〉 教 授 内 田 幸 男
( 副 査 〉 教 授 高 尾 篤 良 , 教 授 肥 田 野 信
論 文 内 容 の 要 旨
研究目的
心臓血管系と眼底は非常に密接な関係にあり,眼底
変化は全身の循環動態特に脳内血管の状態を知る上で
重要である.先天性チアノーゼ性心疾患の根底に,動
静脈の拡張・蛇行・手
L
頭浮腫がみられることは知らわし
ているが,詳細にわたる報告は少ない.多数例の先天
性チアノーゼ性心疾患患者の眼底を精査し,血管径e
血管の蛇行率を測定し,全身的検査データとの関連性,
年齢的変化の影響,脳血管障害との関連性について検
討した.
対象および方法
生 後 1 カ月-43 歳までの先天性チアノーゼ性心疾患
患者121 名に対し,眼底検査を行ない,オリンパス眼底
カメラにて眼底写真を記録,必要な症例に蛍光眼底撮
影を行なった. 79例に対し,眼底写真から測定し乳頭
径と比較して補正した血管径を求め,また血管の実長
を測定し直線距離で除した蛇行率を算出した.これら
の値と,血算・血液ガス・出血凝固時間との関係を検
討した.
結果および結論
1.根底所見
1)血管径
静脈径は赤血球数と相関係数4640. (p< 0.0 1)で最
も相関し,
P0
2と負の相闘をしていた.動脈径も赤血球
数と,相関係数53.40 (p<O.0 1)で最も相関し,
P0
2と
負の相関をしていた.これらの結果から,血中酸素濃
度の低下を補なうために,赤血球数・全血流量が増加
し,その結果動静脈の拡張をきたすことがわかった.
2
) 血管の蛇行
静脈の蛇行は赤血球数と,相関係数0.243(p<0.05)
で相関していたが,血管径の拡張に比べ,個人差が大
きい.動脈の蛇行率はいずれの検査結果にも相関しな
か っ た . 平 均 蛇 行 率 は , 静 脈4701. 士8.040 , 動 脈 が
1
. 80: t l 49.00 で動脈の方がやや高かった.赤血球数・
全血流量が増すと,血管床の容積には限度があるため,
その容積を広げようと,蛇行が生じると考えた.
3
) 乳頭の変化
2
1
1 例中02例に乳頭の発赤・腫脹が認められた. 02例
中1例に脳膿蕩の既往があり 1例に脳血栓の発生を
みたが,その他国例では脳血管障害や頭蓋内圧允進症
状は認めなかった.赤血球増多症では真性・二次性を
問わず乳頭浮腫を合併することがあるとされている.
今回2例に蛍光娘底撮影を施行したところ,乳頭上お
よび周囲血管の拡張・蛇行は強いものの,乳頭部より
の蛍光漏出所見は認めなかった.先天性チアノーゼ性
心疾患に合併する乳頭変化は,乳頭部での血管拡張蛇
行のため腫脹してみえるのであって,乳頭浮腫と表現
することは適切で、はないと考えた.
4
)
その他の眼底所見
症例中に網膜中心静脈血栓症2例・黄斑出血1例・
網膜中心動脈閉塞2例・周辺血管の白鞘形成2例がみ
られた.周辺血管の白鞘形成は主に静脈にみられ 1
例で動静脈吻合・増殖性変化・網膜裂孔を形成してい
た.これら眼合併症はすべて赤血球数008 万
/mm
3
以上
の症例に起こり,強い多血症を伴なう場合,このよう
な眼合併症の発生に留意する必要がある.
-706-8
7
2
.
年齢的変化について があり,そのうち
8
例で,脳血管障害発症前の眼底を
眼底変化を
0-7
歳未満・
7 -15
歳未満・
5
1
歳以上 観察した.血管の拡張蛇行は著明であったが,乳頭変
の3群に分けて検討したところ, 0 - 7歳未満群で静 化がみられたのは1例のみであった.眼底変化をきた
脈の拡張・蛇行の強L、ものが多かった.また乳頭の発 す要因として重要なhypoxia や多血症は,そのまま脳
赤腫脹のある
0
2
例中
6
1
例 が
7
歳以下の症例であった. 血管障害を起こす重要な因子とも考えられ,眼底変化
年少例は血管床の容積も小さく,血管壁も柔軟なこと の観察は,これら合併症を推測する上で手がかりとな
から,血流の増加に反応しやすいと思われた. る.しかし乳頭の発赤腫脹は眼底の重篤さを示すもの
3
.
脳血管障害との関連について の,必ずしも脳病変の存在を示唆するものではない.
2
1
1
例中
2
2
例に脳血管障害〔脳膿虜・脳血栓〉の既往
論 文 審 査 の 要 旨
本 論 文 は 多 数 例 の 先 天 性 チ ア ノ ー ゼ 性 心 疾 患 患 者 の 眼 底 を し ら ベ , 血 管 径 の 赤 血 球 数 と の 相 関 ,
P0
2
と の 負 の 相 関 , 静 脈 蛇 行 率 の 赤 血 球 数 と の 相 関 を 証 明 し , こ れ ら と 全 身 的 諸 検 査 成 績 お よ び 脳 血 管 障
害 と の 関 連 性 等 を 検 討 し た も の で あ り , 学 術 上 価 値 あ る も の と 認 め る .
主論文公表誌
先天性チアノーゼ性心疾患の眼底
臨 床 限 科 第
7
3
巻 第
7
号
933-938
頁(昭和
8
5
年
7
月
5
1
日発行〉
副論文公表誌
1)渦状角膜を伴った Fabry 病の1例
限臨
1
7
)
9
(
8
1
1
1
-
6
1
1
1
)
7
7
9
1
(
2
) 水平斜視手術の定量について
限臨
2
7
)
1
1
(
8
6
3
1
-
4
6
3
1
)
8
7
9
1
(
3
) errych der otsp と 角 膜 混 濁 を 伴 っ たβー
g
a
l
a
c
t
o
s
i
d
a
s
e 低下症の 1 例
眼臨
3
7
)
3
(
237-243
)
9
7
9
1
(
4
) 乳児上眼険に急激に増大した良性血管内皮細胞
醸の 1 例
眼臨
3
7
)
6
(
622-625
1(
)
9
7
9
5
) 小児童症筋無力症の眼症状と予後について
眼臨
4
7
)
7
(
839-842
)
0
8
9
1
(
6
) 糖尿病性網膜症に対するアルゴンレーザ一光凝
固療法の経験
眼臨
4
7
)
7
(
897-901
)
0
8
9
1
(
7
) 両 側 性 眼 球 突 出 を 伴 っ たciliHhponisoreepy
syndrome の1例
限臨
4
7
)
1
1
(
2
3
4
1
-
7
2
4
1
)
0
8
9
1
(
8
) Fabry 病胎児の角膜所見
眼臨
6
7
)
0
1
(
0
1
4
1
-
7
0
4
1
)
2
8
9
1
(
7
0
7
ー
9
) 角膜混濁を伴ったGaucher 病の1例
限臨
6
7
)
1
1
(
3
3
7
1
-
0
3
7
1
)
2
8
9
1
(
1
0
) Neuraminidase ycneicifed and mulationaccu
o
f
scilai dica ni setycohpmyl ni tldua eypt
s
i
a
l
i
d
o
s
i
s ithw laitrap βaseosidactlag
-d
e
f
i
e
n
c
y
(
βidosctaal-G
a
s
e 低下を伴った成人
型 シ ア リ ド ー シ ス リ ン パ 球 に お け る Neur
-a
m
i
n
i
d
a
s
e 欠損とシアル酸の蓄積〉
Ann Neurol
1
1
)
5
(
3
4
5
-
:
-
1
4
5
)
2
8
9
1
(
1
1
)
眼球運動障害を伴った先天性筋線維タイプ不均
等症の 1 例
眼臨
6
7
)
2
1
(
9
0
8
1
-1812
)
2
8
9
1
(
1
2
)
先 天 性 チ ア ノ ー ゼ 性 心 疾 患 に み ら れ た-irep
p
h
e
r
a
l evitarefilorp yhatopinetr の1例
眼臨
7
7
)
3
(
421-424
)
3
8
9
1
(
1
3
)
大動脈弁上狭窄症候群ralulvvaarpus( citroa
s
t
e
n
o
s
i
s syndrome) の眼所見について
眼臨 77
)
6
(
892-896
1(
)
3
8
9
1
4
)
福山型先天性筋ジストロフィー症の限底変化に
ついて
眼臨
7
7
)
9
(
2
4
4
1
-
8
3
4
1
)
3
8
9
1
(
1
5
)
Noonan 症候群の眼所見について
限臨
8
7
)
1
(
-15
0
1
)
4
8
9
1
(