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鉄道における石積擁壁の実態に関する基礎調査

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Academic year: 2022

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(1)IV-323. 鉄道における石積擁壁の実態に関する基礎調査 鉄道総研 正会員 斎藤善樹 正会員 杉山友康 正会員 村石 尚 1.はじめに 石積構造物は、城壁に見られるのもが代表的であるが、これ以外にも道路、橋りょう、堤防、鉄道などの幅 広い分野に使用され、土木技術が急速な進歩を遂げている現在でも地味ではあるが、日本独特の美しさをもっ て全国至るところで見ることができる。東京圏においても例外ではなく、大都会の騒々しさの中で一期はその 美しさを呈し、人々の心を和ませてくれる。一方で、安定性の評価という点では未だに解明されていない部分 が多く残っており、興味深い分野である。 そこで、本報告では安定性を評価するための素因を抽出することを目的に、特に鉄道の切取部を対象に、石 積擁壁の構造形式の実態と過去の地震による被災事例、そして都市圏における実態調査の結果を述べる。 2.石積擁壁の構造 積石の種類には野石、間知石、雑割石、割石1)などがあるが、都市圏の鉄道. 控 え. に用いられている多くは、間知石である。図1はその間知石の各部の名称を示し. 胴 尻 合い端. ている。 また、間知石の積み方には、谷積、布積、乱積1)などが知られているが、都 市近郊の鉄道における古い石積擁壁では、谷積と布積に大別できると考えられる。. 面 剣先. 図2は谷積と布積の違いを示している。谷積は各段ともできるだけ一定の谷がで. きるように、剣先を上にして積む方式であり、不安定な石の組み方にしなければ、 図 1 間知石各部の名称 もっとも堅固な石積であると言われている2)。布積は各段の高さをそろえて積み、 横目地が水平に一直線となるように積む方式である。 また、背面構造は石積擁壁の安定性を支配する重要な要素であると考えられる。特に裏込石は、石積と一体 となり、積石にかかる土圧の影響を軽減するとともに、石積に水圧が作用しないように浸透水の排水をよくす る役割を持っている。図 3 はその重要な役割を果たしている切取部の背面構造の分類を示す。残されている財 産図や古い文献を調査した結果、背面構造には空積と練積があることが分かり、さらに練積の中には、胴込め コンクリートを合端まで打設した合端練積という背面の構造形式があるという新たな知見を得た。. 栗石. 栗石 胴込めコンクリート. 栗石. (谷積). 胴込めコンクリート. 裏込めコンクリート. (布積). 図 2 積み方式による分類. (空積). (合端練積). (練積). 図 3 構造形式による分類. ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― キーワード:石積,間知石,地震,安定性評価 連絡先:〒185-8540 東京都国分寺市光町 2-8-38. TEL 042-573-7263 FAX 042-573-7398. -646-. 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月).

(2) IV-323. 3.関東大地震の被災状況 関東大地震による鉄道の主な被害3). 表1. 石積擁壁の安定性が問題となるのは、主として地震時である。. 線. 空積. 被害状況 崩壊:約 670 ㎡ 孕み出し:数箇所 山崩れで 崩壊:約 1,000 ㎡ 崩壊:崩壊 6 箇所 孕み出し 崩壊:約 4,000 ㎡ 崩壊:約 600 ㎡ 崩壊:数箇所 崩壊:約 800 ㎡. のある路線の石積擁壁が崩壊した状況であるが、その奥には崩壊. 空積. 上部崩壊、孕み出し. していない石積擁壁を確認することができる。これは、単に石積. 練積. 変状なし. 空積. ほとんど全壊. 練積. 傾斜、亀裂. そこで、大正 12 年 9 月 1 日に発生したマグニチュード約 8 の関. 名. 背面構造形式. 東大地震を一つの例として石積擁壁の被害の実態を調べた。表 1. 山手線. 空積練積共. は鉄道における石積擁壁の被害のうち主なものを背面の構造形. 中央線. 空積練積共. 式に着目し、まとめたものである。この結果、熱海線の 2 箇所に. 東海道線. おいて、空積に対して練積の被害が小さいという安定性に関する 重要な知見を得た。また、崩壊した石積に隣接する箇所では崩壊 に至らなかった事例があったことが明らかになった。図 4 は都内. 貨物線. 空積練積共. 横浜線. 空積. 横須賀線. 熱海線. 擁壁の背面構造の違いだけでなく、背後の地山の状態も安定性を. 空積. 支配している素因の一つであることを示唆している。なお、図 5. 空積練積共. は崩壊に至らなかった石積擁壁の現在の様子である。このことは、. 山崩れで上部崩壊. あの大地震にも耐えた石積擁壁が存在しており、尚かつ現在に至っているという貴重な事実である。. 図 4 石積擁壁の崩壊状況4). 図 5 崩壊に至らなかった石積擁壁(現在) 25. 4.現状の実態把握. 高さの程度が高くなるに従って、空積の占める割合が低く、逆 に練積が占める割合が高くなている。構造形式を高さの程度で 使い分けている点では、既に過去において安定性に関する理念 が存在していたと言えよう。. 練積:80%. 15 10 5 0. ~ 1 ~ 2 ~ 3 ~ 4 ~ 5 ~ 6 ~ 7 ~ 8 ~9 ~ 1 ~0 11 ~ 12 ~ 13. 積擁壁の高さ別、背面の構造形式別の頻度分布を示している。. 空積:20%. 20 箇所数. 都内のある路線を対象に現状の実態を調査した。図 6 は、石. 高さ(m). 図 6 高さ別・背面構造別頻度分布. 5.まとめ. 本研究において過去の災害事例、現状の実態把握をした結果、石積擁壁の安定性を評価するための重要な要 素の姿がわずかではあるが見えてきた。それは、大きく分けて構造形式、高さ、そして地盤条件であり、その 兼ね合いが深く関係しているということである。今後、これらの結果を基礎として、石積擁壁の安定性に関す る検討を進める予定である。 【参考文献】1)窪田. 祐:石垣と石積壁,学芸出版社. 平成 4 年 2)大久保森造・大久保森一:石積の秘法とその解説,理工図. 書,1994 年 3)土木学会:復刻版 大正十二年関東大地震震害調査報告 全 5 巻,昭和 59 年. 4)野田正穂・原田勝正・青木栄一・. 及川慶喜:大正期鉄道資料,第Ⅱ期,第1巻,国有鉄道震災誌,日本経済評論社,1990 年. -647-. 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月).

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