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鋼材の塑性変形に期待した連結材による斜角桁の回転防止対策

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Academic year: 2022

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鋼材の塑性変形に期待した連結材による斜角桁の回転防止対策

東日本旅客鉄道株式会社 正会員 ○梶谷 宜弘 東日本旅客鉄道株式会社 正会員 黒田 智也 東日本旅客鉄道株式会社 正会員 金子 達哉 東日本旅客鉄道株式会社 正会員 加藤 格 東日本旅客鉄道株式会社 正会員 山田 正人 1.はじめに

鉄道が道路や河川と交差する場合には,斜角度を有する 橋梁(以下,斜角桁)が採用されることが多いが,大規模 地震時に地震時慣性力により斜角桁が回転した事例が複 数報告されている.東北地方太平洋沖地震でも,当社の斜 角桁が回転する事象が発生している.

これを受け,当社では首都直下型地震対策として,斜角

桁の回転防止対策を実施しているが,これに伴い,既設構造物への影響が小さ く,大きな設置スペースを要さない,弾塑性設計による移動制限装置(以下,

回転防止工)の検討を行った.本検討では,回転防止工の材料試験,ならびに,

実橋梁への取付けを想定した静的載荷による回転試験について述べる.

2.回転防止工概要

検討した回転防止工の概略を図-1,2 に示す.

斜角桁が回転しようとする際に,図-2 に示す連 結材が軸方向に変形,エネルギーを吸収すること で回転を抑止する.連結材には引張軸力のみが作 用するよう,両端をピン結合としている.また,

損傷後の早期復旧と汎用性を考慮し,材料は

SS

材,または

SM

材を基本とした.

3.時刻歴応答解析による連結材の挙動推定

連結材の設計を行うには,連結材が降伏した後の軸方向への 変形量(以下、変形量)を予め把握する必要がある.そこで,

地震時の上部構造と下部構造の相対変位量を推定するため,橋 梁の上部構造と下部構造を質点に置き換えた

2

質点系のバネマ スモデルによる時刻歴動的解析を行った.図-3に解析モデルの 概要を示す.この解析モデルについて,連結材の降伏震度を

0.4G

1.2G

の範囲で

0.2G

毎の

5

ケースを設定した.

入力地震動は,鉄道構造物等設計標準(耐震設計)の

L2

震動を使用し,地盤種別は首都圏の地盤全体を網羅するため,

G1

G5

地盤 とした.また,東北地方太平洋沖地震において最大震度を観測した宮城県 栗原市築館の地震波(防災科学研究所 K-NETより)も使用した.

解析結果から得られた上部構造と下部構造の相対変位量,すなわち,連

結材の必要変形量を表-1に示す.なお,連結材の降伏震度

1.0G

1.2G

では連結材が降伏に至らない結果となった.

4. 連結材の材料引張試験

時刻歴動的解析により推定された連結材の必要変形量を得るために必要となる,連結材の長さを把握するため,

材料引張試験を実施し,鋼材の変形量と長さの相関関係を把握することとした.

キーワード:鉄道構造物,首都直下型地震対策,斜角桁,移動制限装置,鋼橋梁 連絡先:〒151-8512 東京都渋谷区代々木二丁目 2 番 6 号 JR新宿ビル4階 東日本旅客鉄道株式会社 構造技術センター TEL:03-6276-1251

写真-1 東北太平洋沖地震による斜角桁の回転状況

橋台 橋台

回転前 回転後

鈍角 鋭角

回転

回転

回転防止工 回転防止工

図-1 回転防止工の設置状況概略

桁連結部 主桁下フランジ

ピン連結

橋台連結部 腹板

回転

A

A

(平面図)

図-2 回転防止工構造概要

橋台連結部

主桁 下フランジ

ボルト連結 桁連結部 連結材

ピン連結 ピン連結

橋台もしくは 桁座拡幅に固定

(A-A 断面図)

連結材の 降伏震度

必要変形量

(mm) 地震波 地盤種別 0.4G 358 K-NET築館 -

0.6G 130 L2 G5

0.8G 90 L2 G2

表-1 解析結果による連結材必要変形量 (B)履歴特性

スリップ型 剛性低減 RC 型

JR 総研

図-3 2 質点系バネマスモデル (A)解析モデル

上部構造重量

下部構造重量 ばね要素1

ばね要素2 入力地震波

荷重P

δy 変位δ Phy

K0

αK0 (α=1/100)

荷重P

変位δ δy Phy

K0

αK0 (α=1/100)

(ばね要素 1) (ばね要素 2)

土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)

‑603‑

Ⅰ‑302

(2)

試験片は図-4に示す形状とし,伸び代が

900,800,700,400,200mm

5

タイプ を設定した.また,材料の製造ロットによる影響を考慮するため,

5

タイプそ れぞれについて製造ロットの異なる

2

試験片を使用した.

材料引張試験の結果を表-2に示す.ここで,変形率は図-4の

L

に対するこ の部分の軸方向への変形量⊿Lの比率である.この結果から,製造ロットによ る差はあるが,Lと⊿Lには一定の比例関係があると見られる.製造ロットに よる変形量のばらつきは

20mm

程度と見られるため,連結材の設計ではこのば らつきを考慮した長さの設定が必要である.

5.静的載荷による回転防止工の機能試験 回転防止工の連結材両端に設けたピン構造 の有効性,及び斜角桁の回転による連結材の変 形量確認を目的として,斜角桁を模擬した試験 体を静的載荷により回転させる載荷試験を実 施した.地震時の斜角桁の回転挙動を再現する ため,載荷は橋軸・橋軸直角方向の2方向とし,

図-5の手順で載荷を行った.斜角桁端には,図 -5のとおり,橋軸直角方向への載荷時に桁の回 転中心となるピン構造を設けた.また,連結 材の表裏に

3

軸ゲージを設置し,桁回転時の 連結材の応力分布を把握するとともに,糸式 変位計を設置し,連結材の変形量を計測した.

試験は,連結材の

L

の長さ,主桁との取付け 方法(図-6),及び取付け角度をパラメータ とし,表-3の

10

ケースについて実施した.

図-7 に橋軸直角方向への載荷による連結 材の主ひずみ及び主応力の方向の例を示す.

連結材の主応力の方向は,載荷荷重に関係な く

90

度でほぼ一定した.したがって,連結 材のピン構造が有効に機能し,連結材に軸方 向の引張応力のみが作用したと考えられる.

図-8 に連結材の荷重-変位関係を示す.連結 材の取付け角度が小さいほど,最大荷重が小 さくなる傾向があるが,変形量に関しては明 確な差異は見られない.なお,連結材取付け 方法による変形量,最大荷重への影響は認め られなかった.ただ,図-9のように,引張材 料試験結果よりも連結材の

L

の長さに対する 変形量が小さい結果が得られたため,L の長さを

10~30%程度大きく補正することとした.以上より,

斜角桁回転防止工の連結材における

L

の必要長さを表-4 のとおりとした.

なお,降伏震度

0.4G

は必要長さが過大となるため除外した.

6.おわりに

本検討では,解析,及び試験により,首都直下型地震対策に必要となる斜 角桁回転防止工の所要性能を明らかにすることができた.

0 10 20 30 40 50 60 70 80 100 90 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200 210

0 200 400 600 800 1000 1200

鋼材L (mm)

伸び代(標点間距離) L ( mm) 製造Lot A

製造Lot B 載荷試験結果

860 600

変形L (mm)

図-9 連結材の長さ-変形量の相関

L (mm)

図-7 連結材ひずみ分布(L=500mm、取付け角度 30 度)

0 20 40 60 80 100 120 140

0 25000 50000 75000 100000 125000 150000 175000

kN)

ひずみε(μ)

連結材 表面 連結材 裏面

0 20 40 60 80 100 120 140

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180

荷荷kN)

主応力の方向(度)

連結材 表面 連結材 裏面

連結材取付け角度

図-8 連結材の荷重と変形量の関係

0 20 40 60 80 100 120 140 160

0 25 50 75 100 125 150 175 200

載荷P(KN)

連結材伸び量⊿L(mm)

60度

30度 40度

(L=1000mm)

0 20 40 60 80 100 120 140 160

0 25 50 75 100 125 150 175 200

載荷荷P(KN)

連結材伸び量⊿L(mm)

60度

30度 40度

(L=500mm)

連結材変形量⊿L 連結材変形量⊿L

伸び代L(標点間距離L)

(900,800,700,400,200mm) 機械掴み代

(200mm) 機械掴み代

(200mm)

W=68mm

t=12mm 118mm

25R

図-4 材料試験片形状

L (900,800,700,400,200mm)

表-2 試験ケースと材料試験結果

製造 ロット

降伏応力

(N/mm2 L (mm) 変形量

⊿L (mm) 変形率

(%)

1 360.8 900 159.0 17.7

2 359.9 800 155.0 19.4

3 366.2 700 133.0 19.0

4 350.9 900 149.0 16.6

5 407.4 400 84.4 21.1

6 388.3 200 52.5 26.3

A

B

載荷前 橋軸方向載荷 回転防止工 載荷後

(ステップ 1 橋軸方向載荷)

載荷前 載荷後

橋軸直角方向載荷

ピン構造 回転

回転防止工

(ステップ 2 橋軸直角方向載荷)

図-5 静的載荷試験載荷ステップ

内側 主桁

外側 内側

主桁 外側

主桁外側に取付)

(主桁内側に取付)

図-6 主桁への取付方法 表-3 静的載荷試験 試験ケース

試験

ケース 取付け角度 主桁

取付け方法 L (mm)

1 90°

2 60°

3 40°

4 30°

5 90°

6 60°

7 40°

8 30°

9 40°

10 30°

外側

内側 1000

500

1000

表-4 連結材の必要長さ

材料試験 載荷試験 0.6G 130 460 600 0.8G 90 760 860 必要L長さ (mm) 連結材の

降伏震度 必要変形量

(mm)

取付け角度 取付け角度

土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)

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参照

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