ー
~~
ー は じ め に 二欧米における強姦罪改正の動向 三 強 姦 罪 の 改 正 の 内 容
︵ 強 姦 の 定 義 口 強 姦 罪 の 主 体 と 客 体 口 夫 婦 間 レ イ プ 四 起 訴 前 手 続 国 証 拠 法
5
補強証拠い 過 去 の 性 体 験 に 関 す る 証 拠 因 傍 聴 禁 止 と 匿 名 報 道 四 お わ り に
次
欧米における強姦罪の改正をめぐって
人 権 と し て の 性 的 自 由 と 強 姦 罪
上
寸
← →
一 三 九
貞 美
7 ‑3•4 ‑527 (香法'88)
アメリカ合衆国︑ およびワイセツ罪に関する全向改正︑ 規定の削除︑1
九七五年七月卜日の刑法の売春犯罪に関する規定の大幅な改正︑
︱九
年十二月二八
0
□日の強姦罪
.九八^年年八月四日の刑法い同性愛処罰規定の削除等が代表的なものである︒ を知るようになった︒
まず最初に憲法学専攻の筆者が︑刑法の強姦罪に関する論文を発表することについて若干の説明をしなければなら ない︒弁明する必要はないが︑筆者がとりわけ強姦罪それ自体についてもとより強い学問的関心や好奇心があるわけ ではない︒それにもかかわらず︑強姦罪を研究するに至ったのは︑次のような動機からである︒
筆者はここ数年の間︑現代フランスにおける人権保障をめぐる諸問題の研究に従事し︑
.七八九年の人権宣言の母国フランスにおける人権保障の現代的状況を認識するために︑
じとして負の部分ないし陰の部分に焦点を合わせて︑現代資本主義国家における人権保障の否定的・消極的側面を浮 今日は従来の研究い.環として女性の人権に焦点を移し︑
関する研究を進めていたところ︑女性の権利にかかわる法律改正がここ十余年の間にかなりの程度なされていること
/几じ五年七月卜/日の離婚法改正による刑法の姦通罪およびそれに関連する姦通者殺害免除 同種の間題に関する法律の改正ないし判例の変更は︑単にフランスにとどまらず︑イギリス︑西ドイツ︑イタリア︑
カナダ等のいわゆる先進国においても行なわれている︒またヨーロッパ人権規約や女子差別撤廃条
約においてもこれらの間題は直接または間接に規定されている︒ き彫りにすることを企図したものであった︒ た︒それらの論文の多くは︑
は じ め に
その成果を順次発表してき その手始めに一九七五年
1月十五日の人工妊娠中絶法に
一四
〇
7--3•4-528 (香法'88)
人権としての性的自由と強姦罪一欧米における強姦罪の改正をめぐって一(上村)
女の同性愛行為は犯罪して処罰されなかったし︑社会的にも寛大な扱いをうけたが︑男と男との同性愛行為
( b u g g e
, r
l y ) は出生率にもかかわるので犯罪として処罰されたし忌み嫌われてきた︒しかし同性愛行為も本来本人たちの自由の
(2 )
問題であって︑国家が刑罰権を発動しなければならないような性質の問題ではない︒西ドイツでは一九七三年の刑法
同性愛行為については︑
﹁性
的自
己決
定権
﹂
と考えるようになった︒数年前に優生保護法の改正が問題となったときに︑
ーガンが叫ばれたが︑﹁避妊の自由﹂と﹁妊娠中絶の権利﹂はまさしく﹁性的自由﹂の中核を形成すると思われる︒誰
と性交するかあるいはしないかは個人が自由に決定しうる事項であり︑
であろう︒したがって︑本人が自由意思によって性交することに対して︑国家権力がそれを刑罰によって抑圧するこ とは基本的には許されないであろう︒具体的には姦通と売春が問題になる︒姦通が民法上過去においても違法であっ
殺害免除規定が削除されたのも︑ たし︑現在でも違法であることはいうまでもない︒しかも第二次大戦以前はイギリスやソ連を除いては︑犯罪として処罰されてきたが︑大戦後は日本︑西ドイツ︑フランス︑イタリアで姦通罪が廃止され︑フランスでは同時に姦通者
その女性を差別する内容とともに個人の自由の制約になると考えられたからであろ
性行為の自由の原則から売春の自由︑ 「生む•生まないは女の自由」というスロ
すなわち︑対価・報酬を受けとって性交することも自由であるということが アメリカのように禁止主義
( p r o h i b i t i o n n i s m e ) を採用して売春行為自体に刑罰 を科している国もあるが︑廃止主義
( a b o l i t i o n n i s m e )
を採るイギリス︑
行為そのものを罰していないのは性的自由に背馳するという考え方が背景にあるからではなかろうか︒
ヨーロッパでは女を受け身の性
( p a s s i v e s e x u a l i t y )
一 四
としてとらえる傾向のために︑女と フランス︑西ドイツ︑
日本等において︑売春
引き出されるであろう︒したがって︑
゜
ぶノ これもまた﹁性的自由﹂筆者はこれらの問題を人権としての
﹁性的自由﹂ないしは
のカテゴリーに入る とい概念に包摂しうるのではないか
7-3•4-529 (香法'88)
るいは集会の自由と同じく公的自由の地位を獲得した︑
他方
︑
s e x u e l l e S e l b s t b e s t i m m u n g )
ところでこの﹁性的自由﹂という概念についてであるが︑
﹁自己決定﹂という概念は︑固知の山田卓生教授の﹃私事と自己決定﹄という著書に代表されるようにしばしば用いら
れるようになってきたし︑﹁性的自己決定権﹂という概念も一部では用いられている︒﹁性的自由﹂という概念は刑法
学の中で特に強姦罪に関して用いられている︒西ドイツでも一九七三年の刑法改正によって
の概念が導人され︑
に対する犯罪であると解釈されてきた︒英米の文献にも
s e x u a l f r e e d o
m
という言葉を散見するが︑どのような意味で用いられているのか︑どの程度定着した概念であるのかは定かではない︒
フランス法においては︑最近のある論文が指摘するように︑性的自由
( l a l i b e r t e s e x u e l l e )
が表現の自由あ
ことが分かる︒
思いつくままいくつかの問題を右に指摘したが︑ 違反すると判断した︒
﹁性的自己決定権﹂
( d i e
改正以前は男子の同性愛行為は年令に関係なく犯罪とされたが︑改正によって十八歳をこえる男子が十八歳未満の男 子に対して同性愛行為をしたときにのみ犯罪となった︒この結果︑未成年者を保護するために未成年者を相手にする
同性愛行為のみを禁止する他国並みになった︒またヨーロッパ人権委員会とヨーロッパ人権裁判所は︑
月十八日に成人の同性愛行為を禁止する北アイルランド刑法を私生活の尊重を保障するヨーロッパ人権規約の八条に
﹁性的自由﹂としての自己の意思にもとづいて性交する自由をこの上もなく踏みにじるものはなにか︒それは強姦で
ある︒本稿が性的自由の研究の一環として強姦罪をとりあげる所以はここにある︒
このように﹁性的自由﹂に関連する法的な諸問題が現に存在する
この概念はわが国の憲法学上定着した概念とはいえない︒
また刑法一七七条の強姦罪は﹁性的自由﹂
( d i e
s e
x u
e l
l e
F r e i h e i t )
と暗黙のうちに考えられている︒この論文の著者によると︑
一九
八
0
年七一 四
7 ‑3•4 ‑530 (香法'88)
人権としての性的自由と強姦罪一欧米における強姦罪の改正をめぐって一 (L村)
([
1)
性的自由の法的地位には次のようないくつかの特殊性がある︒
この性的自由は同性愛は別にして男よりむしろ女
まず第:は秘密性
( c l a
n d e s
t i n i
t e )
である︒すなわち性的自由の行使は秘密になされる︒
その二はアンビバレントな性格である︒性的自由の行使が︑
て︑同じ行為が自由になったり犯罪になったりする︒
したがって国家の干渉や介 第三は性的自由の行使は︑参加︑すなわち他人の同意を要求するという点において他の個人的な自由と異なる︒
このような特徴を有する﹁性的自由﹂
の概念がすでに確定したものであるか否かについては若干の疑問がある︒し たがって︑筆者が右に述べた諸問題がすべてそれに包摂されるとはいえないかもしれないし︑また逆に漏れている問 題も多数あるかもしれない︒右に述べた諸問題に限定していえば︑
の方に強い関連があるといえよう︒避妊の自由や妊娠中絶の権利はもとより︑売春や強姦も女の方にウェイトが置か れる問題であるし︑姦通罪も国によって若干の違いはあるが︑規定の差別的内容のために夫よりも妻に対して適用さ れるケースが多かったら︑直接には女の方に関係が深かったといえよう︒
筆者は﹁フランスにおける性的自由﹂というテーマで︑右に述べたような法的諸問題の検討を一応終了した︒本稿 はその第一弾として強姦罪をとりあげるが︑対象をフランスに限定せず︑
イギリス︑西ドイツ︑
アメ
リカ
︑ オーストラリアまで拡げ︑最近の強姦罪改正問題について既述の観点から考察を加えるものである︒
カナ
ダ︑
( l ) 本文で指摘した法律以外に女性の権利にかかわる法律が︑一九八二年六月三
0
日の男女雇用平等法をはじめとして多数存在して
いることはいうまでもない。林瑞枝「フランスー——差別克服の試み——法制化の進展と問題点」法律時報五ご巻八号四五ー四七頁。 入は許されない︒
一四
三
ひそかになされたかあるいは公然となされたかによっ
7 ‑3•4 ‑531 (香法'88)
して
︑
いくつかの欧米諸国においては︑
て少
なく
︑
9ー︶ー
' . .
一九八六年十二月一七日︑ , (
2 ) ( 3
) ( 4 ) ( 5 ) 序
欧米における強姦罪改正の動向
それに対
夫婦間にも刑法
1七七条の強姦罪が成立
同「フランスの女性法令事情田②」時の法令―二七九号、―二八一号、樋口恵子編『各国女性事情』所収•田中喜美子「愛のための女性解放ーー—フランス」、柴山恵美子編『世界の女たちはいま』所収・林瑞枝「フランス」等参照。
B a r n e t t , e S xu al fr ee do m a nd th e o C n s t i t u t i o n (1973)は、同〖性益友行為[#J抑匹EEするアメリカ幸5州ェの法律の合憲性について研究し
た書物である︒この本の冒頭に︑﹁多くの人々はこの本の題名に驚くかもしれない︒﹂と書かれてあり︑当時の状況を推察させうる︒
中谷実﹃アメリカにおける司法積極主義と消極主義﹄三九五頁以
F °
内田文昭﹃刑法各論︹第二版︺﹄一五四頁︑吉川経夫﹃刑法各論﹄七八頁︒
To ny o H no re , S ex La w, 1 9 ( 7 8 ) , p.1 74 によれば︑﹁性的自由権とは︑自らの選択にしたがって自らの肉体を使用し︑かつ同意を 得て他人の肉体に触れる権利である﹂とされるが︑それが今日のイギリスのような社会において認められるか否かは問題であると して いる
︒ ( 6 ) Re go ur d, e S x u a l i t e e l i t b e r t
窃
p u b l i q u e s , An na le s d e l ' u n i v e r s i t e de s s c i e n c e s s o c i a l e s d e T ou lo us e
̀ 1 9
8 5 , p . 4 9 .
( 7 )
Re go ur d. b i i
d ••
p p . 5 1 1 5 3 .
鳥取地方裁判所がわが国の裁判史上はじめて︑
することを認めて大いに耳目をひいた︒
これまでわが国ではこの種の問題が広く社会的な注目を浴びることはきわめ また学界においても刑法各論の書物をはじめとしてほとんど触れられていないのが現状である︒
単に夫婦間レイプの問題だけでなくより広く強姦罪の規定そのものの改正が
一四
四
7 ‑‑3・4 ‑532 (香法'88)
人権としての性的自由と強姦罪一欧米における強姦罪の改正をめぐって一(上村)
理由の第二は︑強姦罪が他の犯罪に比して際立った特徴を有していることである︒すなわち︑強姦はその多くが女 性の人格と尊厳を踏みにじる憎むべき犯罪であるにもかかわらず︑犯人が厳正に処罰されることが少ないということ
である︒そのような不条理が罷り通る原因は︑ 数は九六四人である︒ 均検挙人数はニ︱四七人であり︑昭和六一年度の法務省の
﹃ 第
一四
五
まずなによりも被害者である女性が強姦された事実を警察に告訴しな
︱二検察統計年報﹄によれば︑同年間の平均起訴人 のは四六六人である︒
(5 )
ぼる
︒
因みにわが国においては︑
昭和六一年度版の
﹃犯罪白書﹄によれば︑昭和五六年から六
0
年までの五年間の平 西ドイツでは一九七
0
年に有罪判決を受けたのは
:五
五人
︑
/几七七年には
一 九
0
人にのによれば︑強姦罪で有罪宣告を受けた
九七九年には一六九五件︑最も 4
九八三年度版の司法統計年
0
五二件になり︑フランスでも告訴件数は一九七三年には一五
0
七件
︑
(4 )
一九八三年には二八
0
三件と徐々に増加してきている︒ きている︒イギリス一九七四年には 大きな社会的問題となり︑ここ十年ほどの間に画期的な改正が企てられてきた︒強姦罪の改
問題が大きくクローズ・アップされてきた理由の第は︑先進国において特に青少年による強姦事件
l E
が異常に増加してきたことである︒
多発してきており︑ アメリカ合衆国では警察によって認知された強姦事件の数は︑
‑2
一九八二年には七七七六︳︳︳件という杉大な数に達している︒渡辺圭著ロレイプ・イン・ア
それをいかに防止するか︑
そして被害者をどのように救済するかが大きな社会的関心事になって
︵イングランド及びウェールズ︶では一九七
0
年には八八四件であったのが︑(3 )
一九八一一年には一三三四件に増えている︒
報
( m
i n
i s
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r e
d e
l a
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i c e
S t a t
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q u e
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u e
l l
e
3
l a
j u s t
i c e
p e
n a
l e
en
1
98 3)
の凄まじいばかりの状況を見事に描写しているが︑
他の先進諸国においてもアメリカほどではないにしろ強姦事件が メリカ││ー平和な夜を返せ﹂
︵徳
間菖
店︶
は︑
パ分に.件の割合で強姦事件が頻発しているレイプ先進国アメリカ
七八六
0
件であったのが︑ 九七0
年には7 ‑3•4
‑ ‑ s : n
(香法 '88)いで泣き寝入りすることが多いということにある︒被害者は警察や検察での事情聴取や公判廷において忌まわしい強 姦された状況を再現することや犯人と対面することあるいは被告の弁護人から自己の過去の性体験について執拗に尋
さらには家族を含めて周囲の人々に強姦された事実が暴露するのをおそれて︑
止むなく告訴を断念するケースが多いからである︒
とりわけ妻が夫を強姦罪で告訴するようなことは稀有の出来事で あろう︒強姦事件にまつわるこれらの事情のため︑実際に生じた強姦事件の実数を正確に把握することは不可能とい
ってよい︒すくなくとも実数は警察が認知した数の数倍に昇るといわれている︒
理由の第三は︑公訴が提起された場合の証拠法上の問題に関連がある︒被害者が恥かしさに耐え勇気を出して告訴 しその後公訴が提起されたとしても︑被害者は相変わらず苦境に立たされる︒というのは︑﹁強姦を裁く法廷では︑被 か︑自分が純然たる被害者であることを証明しなければならないのである︒婦女暴行罪は︑加害者の有罪証明が︑被
害者の潔白性が証明されるか否かによって左右される犯罪なの﹂である︒別言すれば︑被告は強姦ではなく和姦であ った︑すなわち被害者が同意したと主張する︒その際︑被害者が貞節であり純潔である場合にのみそのような性交に
同意するはずがないと判定される︒
つまり被害者は加害者の有罪を証明しなければならないばかり
したがって被害者が処女であった場合の有罪率は非常に高くなる︒そこで被告人
の無罪を獲得するために︑弁護人は法廷戦術として被害者の貞節や純潔にかかわる事項について根堀り葉堀り尋問す る︒例えば︑過去に性体験があるとか︑何人の男性と性体験があるとか︑売春したことがあるとか︑被告と過去に性 交したことがあるとか︑複数の男友達がいるとか︑飲酒の習慣があるとか︑派手な服装やヘアー・スタイルをしてい
ヒッチ・ハイクをしたことがあるとか︑
ピルを服用中だったとか︑何故
1人で生活して
いるのか等々︑被害者が貞節でないふしだらな女性であるというイメージを陪審員に抱かせるためにあらゆる手を尽 たとか︑夜︑裸で寝るとか︑ 害者は二つの面にわたって証明しなければならない︒ 問されることに耐えられなかったり︑
一 四 六
7 ‑ 3・4 ‑534 (香法'88)
人権としての性的自由と強姦罪一欧米における強姦罪の改正をめぐって一(上村)
一四
七
これらの行 つまりフランスでも性交や妊
(8 )
くすわけである︒よくいわれることだが︑強姦裁判で審理されているのは被告人ではなくむしろ被害者の方である︑
被害者である女性を保護することよりも無実の男性を有罪にしてはならないという恐れによって支配されてきた裁 判所は︑被害者の﹁桃発﹂や﹁同意﹂を理由に被告を免罪したり︑有罪であっても強姦の証明がないとして強姦罪で はなく傷害罪や暴行罪のような軽い刑罰を宣告することが多かったのである︒裁判所が強姦の犯人に寛大な
0
は︑強姦される被害者の方にも責任があるとする世間の風潮を反映しているという側面も否定できない︒
理由の第四は︑従来までの立法︑判例および学説による強姦の定義が狭く︑新たに発生してきた性犯罪を抑圧する のに適合しなくなってきたということである︒もともとコモン・ローの上では強姦は財産犯であった︒男の所有物た る女を強姦するということは︑所有権者である夫または父の所有物の価値を低下させる行為であったわけである︒フ
ランスでも一八三二年の刑法改正で強姦罪が導入されたのは︑﹁家族の名誉の侵害﹂を保護するためであった︒
妻が夫以外の子を出産して嫡出の親子関係が崩れるのを防止することが目的であった︒
娠が大きな意味をもっていたわけである︒しかし現在の社会状況においては伝統的な強姦だけではなく新しい多様な
( 1 2 )
性的暴行が発生してきているので︑強姦罪を男による女に対する性交に限定しなければならない理由はなくなってき ている︒女による男に対する強姦︑夫婦間レイプ︑さらには男と男︑女と女の間の同性間の性的暴行︑男から女に対
する伝統的な強姦以外の性的暴行等々が増加してきているにもかかわらず︑強姦罪の規定が不備のため︑
為が犯罪として適正に処罰されてこなかったのである︒
以上述べたような状況は︑強姦罪の改正が問題になった国によって若干の違いはあるもののほぽ共通しているとい
えよう︒これらの状況を打開するための法改正を求める運動が︑女性団体を中心にして精力的に展開され︑ というような転倒した状況が生まれるのである︒
それが次
つまり
7 ‑ 3・4 ‑535 (香法'88)
/几七六年六月二五日には
M.L.F
C h
o i
s i
r
(選
択す
る︶
物であるが︑
P
r o v i n c
e
で強姦事件が起きた︒ 面化したのは︑フランスの強姦罪の規定の運用については︑
( 2 )
る法改正に至るプロセスについて簡単に言及しておこう︒
フ ラ ン
l a
f e m m e )
ス
かねてより女性団体を中心にして強い不満が潜在していた︒
一九七二年にパリで﹁女性に対する犯罪を告発する会議﹂(J
o u r n e e d e d e
c l
a r
a t
i o
n d e s c r i m e s c o n t r e
4) (1
が開催され強姦に反対するキャンペーンが行なわれたときであった︒
この事件の裁判の記録が後述すろ嘉訴える女たちレイプ裁判の記録﹄と題する荏臼 この強姦裁判において被害者である︑/人のベルギー人女性の弁護卜として華々しい活躍したのか︑
という女性団体のリーダーであるジゼール・アリミであった︒
法の規定通り重罪として処罰することを求めるために尽
J J
する︒
その
結果
︑
轄権なしの宣言をする︒/几七六年二月一二日︑
A i
, e x
n ' P r o v i n c e
控訴院は被告︱
名を重罪裁判所へ移送する決定をドし^ 1
た︒そこでアリミ弁護七は被告等の有罪を立証するために奮闘する︒
6,
( M o u v e m e n t e d L i
b e
r a
t i
o n
d e s F e m m e s )
論とデモンストレーションを組織し︑C h o i s i r , L i g u e d u D
r o
i t
s d e s F e m m e s
とな
らん
で︑
イベット・ルーディらが参加した︒
この会議は﹁強姦に関するフェミニストの宣言﹂を発表した︒
強姦は女に対する重罪として罰せられていない︒中強姦は自然い法則ではない︑ 強
姦 は 寓 話 で は な く 日 々 の 現 実 で あ る
︒ 図 強 姦 は 偶 然 で は な い そ れ は 女 に 対 す る 恒 常 的 な 暴 力 の 表 現 で あ る
︒
① それは家父長制の神話である︒⑤強
ーレ
︑
J
節で述べる法改正の内容へと結実していったのであるが︑
シモーヌ・ド・ボーボワ というフェミニストの団体が討
1九七五年十月十六日︑
しよ
︑ そ ー ー
軽罪裁判所は竹
アリミ弁護じはこの強姦事件を刑 一九七四年八月ーニ日には
A i x ' e n
その法改正の内容の検討に人る前に︑
一四
八 それが表
それぞれの国におけ
7 ‑‑3・4 ‑536 (香法'88)
人 権 と し て の 性 的 自 由 と 強 姦 罪
1
次米における強湊砂馴)改正をいくってから卜年は一四
0
から.五0
人 ︑
告を受けたのはわずかに.
4 ‑ . .
三人だけであった︒
一四
九
しかも三
0
0
余りの有罪判決の中で︑( 2 0 )
五年以ドはこ血
0
からこハ
0
人であった︒これらの数字はいわゆる軽罪化
つ
か
....
‑
~_;
( c
ヽo r
無期懲役は五年 起することが多かった︒例えば︑
国民議会での審議中の^九八
0
年六月
. .
五日
には
︑
( 1 9 )
にして描姦に反対するデモが行なわれた︒
そして結局
1九八
0
年卜
1月
q ‑
:日には刑法の強姦罪とワイセツ罪の規定と審議を開始した︒ ヽ︶
︒ ヽ
ノ ー
ヽ
リヨン
マルセイユ等の大都市を拠点
標と
して
︑
l a d
i s
s u
a s
i o
n
思い止まらせること︑` ゜
ー
り
↓ を 指 摘 し た
︒
几老院で法案が採択されてから/年十月も枚渭され︑
国民議会は/几八
0
年 四 月 卜 日 か ら や
↓ すなわち犯人い適正な処罰と
p r
o t
e c
t i
o n
保護
︑ すなわち被害者の援助
( /‑. 中す)
八年六月.ぃじ日から審議が開始されたが︑
それに先立って骨法大臣モニク・ベルティエは︑
改正法案の達成すべき日
姦は女の願沼でも快楽てもない︒⑥弛姦は運命ではない﹂
.九ヒ八年に人り︑社会党︑ という内容であった︒
共産党その他のグループから強姦罪の改正案が提出された︒元老院においては/几じ を全面的に改正する法律が成立したのである︒
フランス刑法の強姦罪の全面改正をもたらした動因は何であったのか︒それは︱つには法規定の不備︑他の︱つは 裁判の実際に対する批判であったといえよう︒改正前のフランス刑法三三二条によれば︑強姦は重罪
( c
r i
m e
)
で十年
以t―~十年以下の有期懲役に処せられるべき重罪のはずであった。
ところが実際にはフランスの検察官は強姦事件で あっても犯人を強姦罪として菫罪裁判所に起訴せず︑殴打傷害罪ないし強制ワイセッ罪として軽罪裁判所に公訴を提
一九七五年には一五八九件が強姦罪で告訴されたにもかかわらず︑強姦罪で有罪宣
.、~相崎に進んで)ることを示して)る゜
r e
c t
1 0
n a
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1 0
n )
‑ R
‑
‑
>
し
フランスの検察官や裁判官はなぜこのように強姦犯人に寛大なのであろうか︒強姦は女性にも責任があるという考 え方が背景にあることは間違いない︒それに加えて︑強姦犯人の多くは青年であるが︑将来のある青年に対して重罰
7 ‑3•4 ‑‑537 (香法'88)
ト告審は
は被告人の有罪を維持したが︑
しかし多数意見は︑ある男がたとえ自分の確
伯し
た︑
と主張した︒公判判事は陪審員に対し︑ 判決であった︒
3
強姦罪を改正したS e
x u
a l
O f
f e
n c
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(
A m
e n
d m
e n
t )
A
c t
1976
を成立させた直接の動囚はモーガン モーガンというパイロットをしている男が若い同僚三人を自宅へ招待した︒そして自分の妻と性交す るように勧めた︒その際モーガンは同僚たちに妻は抵抗するかもしれないがそれを気にする必要はない︑
彼女は気まぐれな女でこういうことの方が彼女を興奮させるからと告げた︒彼女の訴えにもとづいて刑事事件になっ たが︑陪審において一二人の被告はモーガン夫人が性交することに同意していたと主張した︒
かったとしても︑自分たちはモーガンが自分たちに告げたことを根拠にして︑彼女がたしかに同意しているものと確 かつそのような確信が合理的な根拠に珪づいていたならば︑被告人は無罪であると指示した︒しかし被告人は有罪宣
告を受けたので控訴した︒
しかし控訴院刑事部は控訴を棄却したので︑彼らは貴族院に上告した︒
( D . P . P
v
Mor
ga
n ︹
忘
7 6
︺
︶
t
つこ ︒イ ギ リ ス
を科しにくいという社会心理も作用したのであろう︒また旧刑法は強姦の定義をしていなかったため︑判例と学説に よって性的結合と被害者の同意の欠如が要件とされていたが︑後述するように実際の裁判では同意の欠如を立証する ために激しく抵抗したことや品行方正・貞節を証明しなければならないとされていたという事情も軽罪化の一因であ いずれにしろこのような状況は犯人の厳正な処罰および被害者女性の救済という観点から好ましくないので︑
ミニストたちによる批判が高まったのは当然といえよう︒
( M
o r
g a
n )
事件 そしてもし同意していな
もし被告人らがモーガン夫人が同意したということを正直に信じ︑
一 五
〇
というのはフ ェ
7--3•4-:138 (香法'88)
人権としての性的自由と強姦罪一欧米における強姦罪U)改正をめぐって
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・中寸)ン・アメリカ﹄に描写されているように︑
一 五
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アメリカにおいて強姦罪改正の先駆的役割を果たしたのはミシガン州であった︒前に引用した渡辺圭﹃レイプ・イ
ミシガン州では強姦事件が頻発したので︑強姦事件の犯人を厳正に処罰し
被害者女性を救済することが大きな社会的問題となった︒そこで州内のフェミニストの団体が︑:
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(平和な夜を返せ
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︶をスローガンにして強姦に反対する集会やデモを行なった︒そして州内のフェミニスト
( 2 5 )
の諸団体を結集して
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( 4 )
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力もとづいてよく指摘されるが︑ 信のために合理的な根拠をもたなかったとしても︑もしその女性が性交に同意していると彼が正直に確信したならば︑
( 2 3 )
と主
張し
た︒
この判決の主旨は^般の人々には不評だった︒
姦事件に関連して︑夕
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ということが︑
数であるべきである︑
というのは︑相手が同意
﹁すべての女性は強姦されることを望んでいる﹂という神話に
これは誤りでC↑
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と解釈するのが:般の常識であろう︒
そこで
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e ︑議長をつとめた女性裁判官の名をとって通称
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委員会が設 立され︑強姦罪改正問題に検討を加えて↓九七五年十月に報告書を提出した︒その主な内容は次の五項目から成り立
っている︒①被害者の過去の性体験
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) に関する証拠と尋問は認められない︑③被害者の道徳的
品性
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r ) に関する尋問は認められない︑③被告の性格は事件と関連性があり︑それは裁判官によって 決定されるべきである︑④被害者の氏名の公表は警察に通報した時点から制限されるべきである︑⑤陪審員は男女同
と勧告した︒⑤と①の一部を除いて残余の勧告の内容は改正法律の中に結実した︒ していると確信すれば強姦罪が成立しなくなる可能性があるわけで︑︳般の常識とはかけ離れているからである︒強 強姦罪で有罪にすべきでない︑
7 ‑ 3・4 ‑‑539 (香法'88)
年にかけて行なわれた︒ サウス・オーストラリア︑ ための委員会が設置され︑
(5)
ニュー・サウス・ウェールズ︑
わずか五ヶ月で新しい強姦法が/九七四年八月十二日に成立し︑翌一九七五年四月から施行されることになった︒
ミシガン州の法改正の目標は︑
まず第一に強姦罪を定義し直すこと︑第二に様々なタイプの性犯罪の加害者に法の 適用範囲を拡げること︑第三に被害者の経験する苦痛を緩和すること︑第四に有罪の比率を高めることであった︒こ れらの目標を実現するためになされた法改正の内容は︑後述するように全面的でかつ詳細きわまるものであった︒
このミシガン州の法改正がもたらした影糊はきわめて大きく︑
リカのほとんどの州で強姦罪に関する改革立法が制定されたが︑
その他の国 カナダでもいで述べたように強姦罪の規定が現在の多様化した性犯罪を抑圧するのに適合しなくなったこと︑
に加えて証拠法
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の様々な制約のため有罪宣告の比率が非常に低いという状況にあった︒そこでミシガン州の法改正 を模範にして︑強姦罪の規定そのものを多様化した性犯罪に適合するように全面的に改めるとともに︑有罪宣告をす るために障害となっていた証拠法卜のルールを改正した法律か.九八
. . 一 年
1
月↓日から施行されることになった︒
オーストラリアでもイギリスでモーガン判決が出されたことを斐機にして︑
になったことである︒
またこれらの裁判が行なわれて
これがいわば引き金となって一九七
0
年代にはアメ その法改革の内容もまた包括的かつ多様であった︒
その報告書にもとづいて法改正がタスマニア︑
ヴィクトリア︑
クイーンズランドの各州において/几七六年から/九八.
イタリアでも.几七
0
年代に人り強姦か大
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な社会的間題となった︒直接の原因はやはり強姦事件が多発するよう そのために婦人運動が起こり︑有名な強姦裁判を傍聴したり︑
ウエスト・オーストラリア︑ /几七パ年以降︑
各州で強姦罪改正い
︱ 五
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7 ‑ 3・4 -~540 (香法'88)
人権としての性的白由と強姦罪——欧米における強姦罪 0) 改 rE をめく')て
(U
)寸の感情か婦人運動に[層いはずみ左うけた
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そして政府が提出した微温的な改正法案に反対するキヤンベ
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ン を は り ヽ 女性のじ張を盛り込んだ法案を作成してこれを支持するための署名運動を積極的に展開してきている︒
西 ド イ ツ で は
/ 几 七 :
・ 年 卜 ^ 月 ↓
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・
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日の第四次刑法改正によって︑
( 2 )
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( 3 )
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17 1.
(4)ジェラール・メリメ、磯村・伊藤•福井監訳『フランス人白書』
. . . 九頁
︒
(5 J)
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. 2 49 .
( 6 )
強姦罪についてよく引用される卜七世紀のイギリスの裁判官ヘイル卿の言葉の.つに︑﹁強姦は告訴しやすい犯罪である﹂という のがあるが︑これは事実によって否定されている︒
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41 3.
女性が強姦裁判を闘うためにいかに
大きな勇気を必要とするかは、ショワジール編、中山真彦訳『訴える女たちー—ーレイプ裁判の記録』(講談社)を.読すればよい。
この本は.九七四年に実際に起きた事件を扱ったもので︑
1九七八年五月:
4
日‑
に 犯 人 た ち が 有 罪 宜 告 さ れ る ま で の 貴 屯 な ド キ ュ
メントである︒
( 8 ) ( 9 )
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か ら く
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という用語に突わったが内容上の変化はほとんどない︒
︿強姦﹀異常社会の研究﹄
( 7 )
ジーン・マックウエラー︑権寧訳﹃レイプ
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19 .
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19 75 ,
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15 04 .
( l ) 判例タイムズ六
対する犯罪とされ︑
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ニ・ 一八 頁︒
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;日に性刑法の改正案が成立し︑
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強姦は
﹁ 性 的 自 由 ﹂
一 五 三
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作 ら j さらには被害者の女性による告訴件数が増えたにもかかわらず︑
被 害 者 に 対 す る 崎 局 の 扱 い に 対 す る 不 正 義
いる周辺で集会やデモを組織
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るという運動を企てた︒
また強姦り被害者に助はと援助を与える施設が有志によって
7 ‑3•4~541 (香法'88)
~ ~
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1 2
ヽ'~
( 1 4 ) ( 1 5 ) 6)
(l ( 1 7 )
~ ~
19 18
ヽ ヽ
これには止むをえない側面もあったといわれている︒というのは︑アメリカでは強姦は重い犯罪で︑無期懲役ないし一
1 ‑ 0
年︑四
0
年ないし五
0
年の懲役が科せられたからである︒
( 1 1 )
金城清子﹁性のモラルと男女平等﹂法律時報五九巻八号︑Sc hw en di ng er , Ra pe , t h e La w a nd P r i v a t e P r o p e r t y ,
Cr im e an d D e l i n q u e n c y ,
1
98 2, p .
28 1f t. とりわけ処女が強姦された場合には商品価値の減少は著しかったのである︒
Br ow nm il le r. ib i d . . p p .
424ー
42 5.
ある著者はいう︑﹁⁝⁝現代においては︑処女喪失の方が強力によるアヌスヘの侵入より悪くないように思える︒﹂
S c u t Rt , ef or
m ,
i n g i n t h e La w o f R ap e: h t e M ic hi ga n E xa mp le . T he Aus tr al ia n L aw Jo u r n a l ,
o l v
. 5
0, p .
61 7.
S t e t s o n . Wo me n' s Rig
ht n F r a n i
c e , p p .
166ー
16 8.
C h o i s i
r という団体は︑
どもを生むあるいは生まないという選択する権利をもつのは女であるという考えにもとづいて︑妊娠中' f 絶の自由化を推進した団体てある︒アリミ弁護
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は一九七五年の妊娠中絶の自由化以前に︑堕胎罪に問われた女性たちの弁護活動 を献身的に行なった︒その記録が﹃妊娠中絶裁判︑マリ・クレール事件の記録﹄︵みすず書房︶である︒このアリミ弁護七の自伝 La cau se e d s F em me が福井芙沖s
f
訳﹃女が自由を選ぶとぎ﹄︵青山館︶として出版されている︒
この団体については︑
na ty g a r e i a g u a d i l l a , l i b e r a t i o n de s f em me s, le m . 1 . f に
詳し い︒ ミッテラン内閣の下で女性の権利者大臣をつとめた人︒自伝﹃フェミニスムの現在﹄福井美津
f
訳︵朝日新聞社︶Jo ur na l O f f i c i e l de la Re pu bl iq ue Fr a n c ; ; a i s e D , eb at s p a r l e m e n t a i r e s . S e n a t ,
1978•
6・27.
p .
17 88 8.
;フランス離婚事情﹄.六じ貞゜
( 2 0 ) ].0•
De ba ts p a r l e m e n t a i r e s ,
s A se mb le e
N a t
i o n a l e .
19 80 .4 .1 1. p p
3.
3 0
ー3
31
・
( 2 1 ) フランスの女性月刊誌エフ・マガジーヌの.九七八年のある号に︑﹁女性の生活と地位を改羞するためにはいま最も緊急なことは なにか?﹂というアンケートに対する日答として︑第.位が可ヵ女間の賃金格芹をなくすこと﹂︑第二位が﹁婦女暴行罪をもっと
となっている︒前掲・﹃訴える女たち
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﹁あ とか ぎー
:;
:二 頁︒ ( 2 2 ) 3) (2
( 1 0 )
厳しく罰すること﹂
モーガン事件については︑
S . E s t r i c h . Re al Ra pe . p p .
9
2ー
97 .A d l e r . R ap e o n T r i a l . p p
2.
6ー
2
7を
参照
︒ フィリップ•S・ジェームス、矢頭敏也監訳,イギリス払(卜)し^ q→七貞゜
Ed wa rd s, b i i
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p p .
16
0ー
16 1.
( 2 4 ) ( 2 5 ) M ar sh
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G e i s t an d Ca pl an . R ap e a nd th e L im it s o f
La
w R ef or m. p .
11 .
かずみせきこ
の
一 五 四
があ る︒
7 ‑3•4 ‑542 (香法'88)
人権としての性的自由と強姦罪一欧米における強姦罪の改正をめぐって ( ・・/木寸)
を維持する利益なり必要性については疑問がある︒
一 五 五
強 罪や同性愛の罪等と敵然と区別されてきた︒
現代ではこの区別
らない固有の意味の性交︑すなわち男性器の女性器への挿入を意味し︑
それ以外の性的侵害行為である強制ワイセッ
もともと強姦とは︑
(一)
( 2 6 )
M
ar sh , G e i s t a nd Ca p l a n , i b i d . . p .
23 .
( 2 7 )
E s
t r i c h , i b i d
••
p .
81 .
( 2 8 )
S
n i d e r , L eg al e R fo rm an d S o c i a l C o n t r o l : t h e Da ng er s o f A b o l i s h i n g R ap e, n I t e r n a t i o n a l J o u r n a l
f o t h e S oc io lo gy f o L a v , ・ . v o l .
13
No . 4
,
p p .
33 8‑ 33 9.
( 2 9 )
P i
t c h , C r i t i c a l C : ‑ i m i n o l o g y ,
h t e C o n s t r u c t i o n o f S o c i a l Pr ob le ms an d t h e Q u e s t i o n s o f R ap e, n I t e r n a t i o n a l J o u r n
a l f o t h e So ci ol og y o f L aw . v o l .
13
No . 1
.
p p .
38
‑4 1. マリアロ—ザ・ダラ・コスタ『家面芋労働口に惰ス金を'→-八貞以ド。
( 3 0 )
中谷瑾f7
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ー デ ン 性 刑 法 の 改 正
﹂ ジ ュ リ ス ト 八 し 1 ・ 号四八貞以ド参照︒
強姦の定義
強姦罪の改正の内容
欧米における強姦罪の改正の内容は多面的・包括的であるので︑
まず第一は従来の強姦の定義に修正が加えられたことである︒
いくつかの項目に分けて検討を加えることにする︒
男が女に対して行なう同意によ
この区別は前述した通り歴史的には意味はあったが︑
いなむしろ現代社会における性的犯罪の多様化に着目すれば︑
姦罪の定義について性交に固執しなければならない理由は存在しないといってよい︒性交を伴なう犯罪︑
すなわち伝
7 ‑3•4 ‑‑543 (香法'88)