奈良教育大学学術リポジトリNEAR
言語条件づけ課題における代理強化の組合せ
著者 玉瀬 耕治, 浜本 洋子
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 27
号 1
ページ 161‑169
発行年 1978‑11‑25
その他のタイトル Effects of Vicarious Verbal Reinforcements on Verbal Conditioning
URL http://hdl.handle.net/10105/2519
言語条件づけ課題における代理強化の組合わせ
玉 瀬 耕 治 浜 本 洋 子 (心理学教室) (東大阪市立大連東小学校)
(昭和53年5月1日受理)
玉瀬(1970)は、言語条件づけ課題において、強化の組合わせの効果を検討し、正の強化(称 賛)と負の強化(叱責)を共に用いた場合の方が、正の強化だけを用いた場合よりも成棟がよい ことを示唆した。このことは、行動変容の効果的な技法を検討しようとする場合に、考慮すべき 問題を含んでいる。行動変容の実践においては、強化を単独で用いる場合が多いが、強化の組合 わせを考慮することによって、さらに効果的に行動変容を達成しうると期待される。このような 観点から、言語条件づけ課題における強化の組合わせについてさらに吟味することは意味あるこ とと思われる。
先の研究は小学校5年生の児童を被験者にしたものであったが、玉瀬・門田(1977)は、大学 生についてこの問題を検討した。彼らの実験Iでは、直接強化の事態で3つの組合わせが比較さ
れた。すなわち、 (1)規準反応には=よろしい"と言い、それ以外の反応には=だめです"と言う 場合(RW群)、 (2)規準反応には"よろしい"と言い、それ以外には何も言わない場合(RN群) および(3)規準反応には何も言わず、それ以外の反応に=だめです"という場合(NW群)である。
その結果、 RW群と NW群の成績はほぼ同じで、ともに RN 群よりもすぐれていた。この結 果は、先の研究(玉瀬, 1970)やBuss, Braden, Orgel, and Buss (1956)、村田(1959)の結 果とも一致している。
玉瀬・門田の実験Ⅱでは、代理強化の事態で先の3つの組合わせ条件が比較された。この実験 では、被験者は直接的には全く強化されないが、 10試行どとにテープに録音されたモデルの反応 を聞く。したがって、被験者の成績の差は、モデルに与えられた代理強化条件の違いを反映して いるとみなされた。その結果、実験Iの場合と同様に、 RW群とNW群の成緒が、 RN群より もよかった。実験Iと実験Ⅱは、直接強化か代理強化かということ以外はほとんど同じ条件で行 なわれたものであるが、結果がきわめて類似していたことは興味深い。代理強化に関しては、近 年、研究者の関心が高まっているが(春木, 1977;利島, 1977)、実験Ⅱで得られたような結果 は、児童を被験者にした場合にもあてはまるであろうか。祐宗(1975)、および祐宗・田中・前 田・川島・石橋(1976)は弁別学習課題でこの問題を調べている。彼らはRW群に関してはど ちらの実験でも成績がもっともよく、他の2群に関しては一貫性がみられないことを示している。
本実験は、言語条件づけ課題を用いて、児童における代理強化の組合わせの効果を調べ、先の研 究(玉瀬, 1970;玉瀬・門田, 1977)との差異を明らかにしようとするものである。
方 法
被験者 東大阪市立枚岡西小学校5年生3クラスの児童116名(男子54名、女子62名)。および 奈良市立鳥見小学校5年生3クラスの児童109名(男子59名、女子50名)。合計225名が被験者と
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玉瀬 耕治・浜本 洋子・して参加した。これらの被験者は、クラスごとに3つの実験条件のうちのいずれかに割り当てら れた。被験者のうちで、回答の不完全な者、オペラント試行で極端に規準反応が多い者および少 ない者は除外された。統計的に処理された被験者の人数は、 RW群では63名(男子29名、女子34 名)、 RN群では65名(男子28名、女子37名)、 NW群では56名(男子24名、女子32名)、合計 184名であった。
材料 玉瀬・玉城(1975)にならって、 Taffel型課題を集団用に改良したものが用いられた。
この課題は、刺激カードに書かれた4つの人名のうちから1つを選び、その下に書かれた1つの 動詞と結びつけて文を作るというものである。モデルテープを聞かせる際に被験者に呈示する刺 激カードは、 B 4版大画用紙に書かれたもので、 60枚用意された。被験者の反応用には、 9 ×13 cmの大きさの冊子に同様の刺激語が書かれたものが用いられ、 1人につき20枚綴1冊、 lo枚柾
6冊が用意された。刺激カードと反応カードに書かれた主語となる4つの人名は、ともに=たろ う"、 =よしこ"、 "はなこ"、および‑まこと"であり、動詞はカードごとにすべて異なるもので あった。動詞はいずれも3音節で、連想価、印象価、および熟知度に関してほぼ等価なもの140 語が選ばれている。 4つの名前の位置は、偏りが生じないようにカードごとに変えられている。
モデルテープは、小学校5年生の児童があらかじめ決められた反応をし、それに対して女子学 生の実験者が強化を与えたものが用いられた。モデルの反応は全部で60試行あり、モデルは10試 行ごとに2、 3、 4、 6、 7、 8個の規準反応(正反応)を行っている。テープは6種類用意さ れた。そのうち3本はモデルが男児で、規準反応が"たろうば'で始まる文、残りの3本は、モ デルが女児で、規準反応がHはなこば'で始まる文であった。 ‑たろうば'を規準反応としたモ デルテープは枚岡西小学校で用いられ、 =はなこば'を規準反応としたものは烏見小学校で用い
られた。テープの内容は、実験条件にあわせて3種類あり、 RW群用には、モデルの規準反応に 対して=よろしい"、それ以外の反応に対して‑だめです"という強化が与えられている。 RN 群用には、モデルの規準反応に対してだけ‑よろしい日が与えられ、それ以外の反応には何も強 化が与えられていない。 NW群用には、規準反応以外の反応に対してだけ=だめです"が与えら れ、規準反応には何も強化が与えられていない。
手続き 実験はクラスごとに集団で行われた。各クラスには実験者1名と補助者2名が割り当 てられた。実験者は教境に立って画用紙大の刺激カードを見せながら、まず課題を説明するため に、次の教示を読んだ。
=これから、ことば遊びをしましょう。テストをするのではありませんから安心してやって 下さい。やり方を言います。ここにカードがあります。このカードには、 ̀たろうば、 ̀よしこ ぼ、 ̀はなこば、 ̀まことばという4つの名前と、 ・かわる'ということばが書いてあります。
4人のうちの誰かと̀かわる'ということばをつないで下さい。たとえば、 ̀はなこはかわる'と いうようにします。 4つの名前のうちどの名前を使ってもかまいません。ここにこのカードと 同じようなカードをたくさんプリントしてきましたから、皆さんは、このプリントに答えを書 いて下さい。答え方は次のようにします。4つの名前から1つ選んでその名前を⊂⊃で組みま す。今は̀はなこぼに⊂⊃をつけましたが、皆さんはどの名前に⊂⊃をつけてもかまいませ ん。答え方はわかりましたか。ではカードを配りますJ"
実験者が、実験に対する省間がないかどうかを確かめた後、補助者が、オペラント試行用の20 枚絞りの冊子を配布した。オペラント試行(l‑20試行、第1ブロック)を行う前に、実験者は 次の教示を与えた。
…まだあけないで下さい。表紙に組と名前を書いて下さい。これから先は絶対にしゃべらない ようにして下さい。まず表紙をあけて1枚目をやって下さい。 1枚目ができたら次のページも やって下さい。できたら裏を向けて机の右端に置いて下さい。"
習得試行(21‑80試行、第2‑4ブロック)では、モデルテープを聞かせる前に次の教示を与 えた。
…今度は、 5年生の男の子(女の子)が同じようなことをやったテープを聞いて下さい。その 後、また皆さんにやってもらいますので、よく聞いておいて下さい。''
実験者は、テープレコ‑ダ‑でモデルの反応を聞かせながら、刺激カードを呈示した。 10試行 続けてモデルの反応を聞かせた後、 10枚綴りの冊子を配布し、次の教示を与えた。
"表紙に名前を書いて下さい。では、前と同じように1枚もぬかさず全部やって下さい。一一
‑‑‑できたら裏を向けて机の右端に置いて下さい。''
このように、モデルの反応10試行と被験者の反応10試行を交互に行い、この交替を6回くり返 した。ここで呈示されたモデルテープの内容は、先に述べたように、 RW 群、 RN 群、および NW群でそれぞれ異なるものであった。
全試行終了後、モデルの反応と強化(被験者には代理強化)の随伴性に関する意識性、および 強化を受けよう(避けよう)とする意図性の有無が調べられた。これらに関する質問項目は、各 群ごとにプリントされており、 6‑8項目であった。質問紙を配布する前に、実験者は被験者に
=絶対しゃべらず、思ったとおり書いて下さい"と強調した。
さらに、烏見小学校では、代理強化の効果の個人差を検討するため、称賛・叱責の強化歴に関 する9項目の質問を行った。これらの項目は両親および担任教師からどれくらいはめられたり叱 られたりしているかを尋ねたものである。いずれの項目も、回答は3つの選択肢の中から選ぶよ うになっている。たとえば、 ̀̀あなたは1週間のあいだにお母さんにどれくらいはめられますが'、
①ほとんど毎日はめられる、 ②ときどきはめられる、 ⑨ほとんどはめられない、の如くである。
結 果
代理酎ヒの組合わせの効果 まず、学校別にブロックごとの平均規準反応数を算出し、 2校の 成績を比較したところ、いずれもブロックごとに上昇し、 3群の順位も同じであったので、 2校 をこみにして分析を行った。図1は、 20試行のブロックごとに各群の平均規準反応数を示したも のであるo オペラント・ブロックについて分散分析したところ、 F(2/181)‑1.03で有意ではな かった。したがって、各群はほぼ等質であるとみなされる。次に3 (組合わせ) ×4(ブロック) の分散分析を行った。表1はその結果を示したものである。この裏で明らかなように、代理強化 の組合わせの主効果、ブロックの主効果、および組合わせとブロックの交互作用は、いずれも1
%水準で有意であった。
そこで、分散分析の誤差項を用いて、さらに個々の平均値の差の検定を行った。組合わせの主 効果は、 RW群の成績がRN群とNW群の成績よりも有意によいことを示している(RW対 RN, f‑3.16,P<.01; RW対NW, *‑2.38,P<.05; RN対NW, f‑0.67, ns),ブロックの 主効果は、 1 (オペラント)ブロックと2ブロックの間には差がなく(f‑0.45)、 2ブロックと 3ブロックの問(*‑5.39,P<.01)、および3ブロックと4ブロックの問(f‑9.61.P<.Ol)で 有意差があることを示しているOすなわち、 3ブロックから4ブロックにかけて成績が上昇し、
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平 均 規 準 反 応 数 9 8 76
玉瀬 耕治・浜本 洋子
2
(習得)
3
(習得)
20試行ごとのブロック 図11 各群の平均規準反応数
表1平均規準反応数に関する分散分析
df MS
変 動 因 SS被験者間
組合わせ(A) 240. 04 誤差 4111. 15 被験者内
ブロック(B) 3118.74 Ax 188. 13 誤差 5573. 59
120. 02 5. 28**
181 22. 71
1039. 58 101. 32**
31. 36 3. 06**
543 10. 26
** P<.01
条件づけが成立したことを意味している。
組合わせとブロックの交互作用については次のとおりであった。 RW群では、 1ブロックと2 ブロックの間に差が認められないが、 2ブロックと3ブロック(*‑5.10)、 3ブロックと4ブロ ック a‑5.i7)の問には有意差が認められる。RN群では、 1、 2、 3ブロック間には差がな く、 3ブロックと4ブロックの間(f‑5.64)に有意差が認められる。NW群では、 1ブロック と2、 3ブロックの間には差がなく、 3ブロックと4ブロックの問(*‑5.63)に有意差が認め られる。また、ブロックごとに3群を比べてみると、 2ブロックでは差がなく、 3ブロックと4 ブロックでは、 RW群とRN群、 NW群の間にそれぞれ有意差が認められ(〜‑3.91,∫‑3.16), RN群とNW群の間には差がない。すなわち、習得ブロックの後半では、 RW群の成績が他の
2群よりもよかったと言える。
代理強化の組合わせと強化歴 鳥見小学校で行った称賛・叱責の強化歴の各質問に、 3段階の 得点化を行い、合計得点が+9点から‑9点まで分布しうるようにした。実額の得点分布は+8 点から‑6点までであった。合計点が0点の者を除いて、プラス得点の者を称賛群、マイナス得
点の者を叱責群として、代理強化の組合わせの下位群ごとに、成績の増加量(4‑1ブロック) を算出した。表2はこの結果を示したものである。これらの平均値について3 (組合わせ) ×2
(強化歴)の分散分析を行ったところ、組合わせの主効果は F (2/53)‑0.26、強化歴の主効果 はF (1/53)‑0.57で、いずれも有意ではなかった。
組合わせと強化歴の交互作用は、 F (2/53)‑2.42であったが、この値はほぼ10%水準に相当 する。したがって有意ではないが表2から次の傾向がうかがえよう。すなわち、称賛群ではRW よりもNWで成績がよく、叱責群では逆にNW よりも RW で成績がよい。また、 RN はR WとNWの中間に位置し、両群ともほぼ同じ成績である。
意敵性と意図性 実験後に、代理強化の随伴性(5年生の男の子、女の子がどんな答え方をし た時日よろしい"、 =だめです''と言われたと思うか)について意識性を調べたところ次のとおり であった。意識性ありとみなされた被験者は、 RW群27名(43&)、 RN群12名(18%)、 NW群 16名(29%0 であった。また、意図性(=よろしい"、 =だめです"と言われたい、言われたくな
いと思ったか)を調べたところ、 RW群35名(56%)、 RN群42名(65&)、 NW群33名(59%) であった。次に3群をこみにして意識性と意図性が両方ある者(37名)、意識性だけがある者 (18名)、意図性だけがある者(73名)、および両方がない者(56名)に分けて成績を比較した。
これらの被験者について、オペラント・ブロックから最終ブロック‑の規準反応の増加量を算 表2 代理強化の組合わせと強化歴
強 化 歴 RW RN NW 増加量 3. 50 5. 14 6. 10 称賛群 SD 5.77 4.67 5.73
人 数 10
全 体 5.00
増加量 8. 85 5. 25 3. 89 6. 27 叱責群 SD 6.32 3.72 5.61
人 数 13 12
全 体 増加量 6. 81 5. 21 5.05 人 数 21 19 19
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出したところ、順に10.54 (f‑13.96)、 10.89 (*‑7.71)、 3.40 (f‑5.89)、 2.09 (2‑4.48)で、
いずれも1%水準で有意であったO これらの増加量について分散分析したところ F (3/180)‑
38.22で1%水準で有意であった。これは、平均値を見ると明らかなように、意図性の有無にか かわらず、意識性のある者の成績がよいことを示している。
考 察
本実験では、全体に顕著なモデリングの効果がみられたが、代理強化の組合わせに関しては、
RW群がRN群およびNW群よりも有意に成績がよいことが示された。 RW群の成績がよい ということは、これまでの研究(玉瀬, 1970;玉瀬・門田, 1977)で得られた一貫した結果であ る。この結果は、強化の主な2つの機能である情報的機能と動機づけ機能のうち、どちらを重視 する立場からも解釈することができる。すなわち、強化の情報的機能を重視する考え方に立てば、
RW群では、すべての反応に情報としての明白な強化が与えられているので、 RまたはWのみが 与えられる他の2群に比べて、学習の手かかりが多いとみなされる。また、強化の動機づけ機能
を重視するなら、 RW群ではRによる積極的動機づけとWによる回避的動機づけが共に作用し、
両者の相乗的な効果によって学習が促進されたと考えられる。
ところでRN群と NW 群の関係については、大学生の場合(玉瀬・門田, 1977)とは異な る結果が得られている。すなわち大学生の場合は、 NW群がRN群よりも成績がよく、むしろ RW群に近かった。この結果は、直接強化を用いた場合にも同様であって、これは従来の研究 (Buss, Braden, Orgel, & Buss, 1956)に一致するものであった。しかし、本実験ではNW群 はRN群とほぼ同じ成績であり、 RW 群よりも悪かった。子どもで代理強化を用いた祐宗(19 75)も、われわれと同様の結果を得ている。したがって、本実験の結果は、子どもの被験者にお ける1つの特徴をあらわしているものと思われる。 Buchwald (1959)は、強化の情報的意味を 重視して、 RまたはWと組合わされた N が、それらと反対の強化値を獲得すると考えた。 そ の際、NW における N は、 RN における N よりもより大きな強化値を獲得すると仮定し、
NWがRWに近いという結果を説明した。しかし、杉村(1964)はN が強化値を獲得する仕 方は年令によっても異なることを示唆している。
Hill, Emmerich, Gelber, Lazar, and Schickedanz (1974)は、この点に関連して、子どもが 代理強化事態において、 RとWに組合わされたNをどのように解釈するかを検討している。彼 らは、モデルの反応がNの時、それが=正しい"、 =まちがいり、 =わからない日 のいずれを意味 するかを判断させた。その結果、子ども達はN をそれぞれ組合わされた強化と反対の意味をも つものとして解釈していることがわかった。また、その相対的な強さは、 RN とNWの条件下 で同じであった。これは、子どもではRN とNWにおける N の情報的な機能が等しいこと を示唆している。これらのことから、本実験の結果は、代理強化の事態において、子どもに対す るRN とNWがほぼ同程度の情報的意味をもつことを示すものとして解釈される。
本実験におけるもう1つの興味ある結果は、代理強化の効果が、被験者の強化歴によって幾分 異なることである。過去において、より多くはめられている称賛群の被験者は、 NW で成績が よく、他方、より多く叱られている叱責群では、 RWで成績がよかった。すなわち、はめられる ことが多い子どもは、他見が叱られることによって、また、叱られることが多い子どもは、他見 がはめられたり叱られたりすることによって影響されやすいといえる0
このような事実は、まだあまり明らかにされていないが、Van De Reit(1964)は、直接強化の 事態で、学業不振児には叱責がより有効であり、称賛はかえって成績を低下させることを示して いる。また、 Crandall, Good, and Crandall (1963)も過去の称賛・叱責と実験場面でのRまた はWによって生じる期待値との関連を検討しているo その結果、 Rでは叱責群のみ次の正反応へ の期待値が上昇し、 Wでは称賛群、叱責群ともに期待値が上昇した。この結果は本実験の結果と も類似している。なぜなら、称賛群・叱責群ともに、 Wが効果的であり、また叱責群では称責群 よりもRが効果的であるので、これらの組合わせから、称賛群では NW が、叱責群では RW がそれぞれ効果的であると考えられるからである。このような強化歴と強化の効果に関する研究 は、今後さらに進められる必要があろう。
要 約
Taffel型の言語条件づけ課題を集団用に修正し、小学校5年生児童を被験者にして代理強化 の組合わせの効果を検討した。モデルテープにふき込まれた代理強化の組合わせの条件は、 (1)規 準反応に=よろしい"、それ以外の反応に=だめです"と言う場合(RW群)、 (2)規準反応に=よ ろしい"と言い、それ以外の反応には何も言わない場合(RN群)、および(3)規準反応には何も 言わず、それ以外の反応に̀̀だめです'と言う場合(NW群)の3種であった。
主な結果は、 RW群がRN群およびNW群よりも有意に成績がよいことであった。この結 果は、 RW群とNW群がRN群よりも成績がよいという玉瀬・門田(1977)の結果と異なる ので、実験事態が代理強化であり、被験者が子どもであるという点から議論された。代理強化の 効果は、被験者の強化歴によって異なることが示唆された。すなわち、過去の日常生活において より多くはめられている被験者はNW でもっとも成績がよく、より多く叱られている被験者は RWで成績がよい傾向がみられた。
引 用 文 献
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Buss, A. H., Braden, W., Orgel, A., & Buss, E. H. 1956 Acquisition and extinction with different verbal reinforcement combinations. Journal of Experimental Psychology, 52, 288‑295.
Crandall, V. C, Good, S., & Crandall, V. J. 1964 Reinforcement effects of adult reactions and nonreactions on children's achievement expectations ; A replication study. Child Development, 35, 485‑497.
春木 豊1977 観察学習における正示範・誤示範、観察回数及び代理強化の効果 心理学研究 48, 271‑
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Hill, K. T., Emmerich, H. J., Gelber, E. R., Lazar, M. A., & Schickedanz, D. 1974 Children's interpretation of adult nonreaction : A trial‑by‑trial self‑report assessment and evidence for contrast effects in an observational context. Journal of Experimental Child Psychology, 17, 482‑494.
村田孝次1959 選択学習に及ぼす言語罰の効果 心理学研究 30, 34‑41.
杉村 健1964 子どもに与える言語的賞罰の効果 奈良学芸大学附属幼稚回紀要 3.
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Effects of Vicarious Verbal Reinforcements on Verbal Conditioning
Koji Tamase
Department of Psychology, Nara University of Education, Nara, Japan and
Yoko Hamamoto
Ohasuhigashi Elementary School, Osaka, Japan (Received May 1, 1978)
The purpose of this experiment was to examine the effects of the combinations of vicarious verbal reinforcements upon the children's performances in a Taffeトtype verbal conditioning task. Three types of the vicarious reinforcement combinations were recorded in tapes and used as the models. These were (1) HGood" for a critical response and HBad"
for the other three non‑critical responses (RW), (2) "Good" for a critical response and nothing for the others (RN), and (3) nothing for a critical response and "Bad" for non‑
critical responses (NW). One hundred and eighty‑four 5th‑graders from two elementary schools participated as the subjects. Each class was assigned to each one of the vicarious reinforcement combinations. The Taffeトtype task was modified to fit in group adminisト ration. After 20 operant trials, 10 responses by a model tape were presented to all the class members, and then the subjects were required to choose a suitable name from the four alternatives printed on a booklet through 10 trials. The alternation of the model's and subjects'responses was repeated 6 times (60 trials).
The results were that RW was significantly superior to either RN or NW, and the latter two did not differ from each other. The results were interpreted by both viewpoints which stress informational and motivational components of reinforcement. Our previous study with adults showed that RW and NW were significantly superior to RN.
The discrepancy between the previous and present results may be attributed to children's inability to use W component in NW as effective information for learning. It was found
that the effects of the vicarious reinforcement combinations depended on the subjects' reinforcement histories: the subjects who had received more approvals in the past
performed better under NW than under the other two, whereas the subjects who had received more disapprovals performed better under RW.