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言語強化の組合せにおける2つの機能

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

言語強化の組合せにおける2つの機能

著者 玉瀬 耕治, 浦上 隆

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 30

号 1

ページ 243‑249

発行年 1981‑11‑25

その他のタイトル Informational and Motivational Properties of Verbal Reinforcement Combinations

URL http://hdl.handle.net/10105/2407

(2)

言語強化の組合せにおける2つの機能

王 瀬 耕 治・浦 上   隆

(奈良教育大学心理学教室) (柏原市立柏原小学校) (昭和56年4月30日受理)

言語強化には、従来から主に情報機能と動機づけ機能という2つの機能があると考えられてい る Spear (1970)は、この2つの機能を分離するために次のような実験を行っている。彼は 小学校1年生と5年生を被験者にし、 2選択弁別課題を用いて実験した。彼の実験では、情報は ランプですべての群に等しく与えられ、強化が動機づけの働きのみを果すように計画された。言 語強化の条件は、称賛群、叱責群、および統制群であった。情報機能を反映する測度としては、

基準までの試行数と誤反応数が用いられ、動機づけ機能を反映する測度としては、反応速度が用 いられた。

この実験の結果、情報機能の測度では、いずれも3群間に有意差はみられず、動機づけの測度 でのみ有意差がみられた。すなわち、 1試行あたりの反応速度は、叱責群が称賛群と統制群より

も有意に遅かった。この実験は、情報機能を統制して動機づけ機能のみを捉えているが、 Dusek and Dietrich (1973)は、両方の機能を同時に査定することを試みている。彼らは、 4歳の幼 児を用い、 2選択マーブル落とし課題で実験した。この課題は、 Stevenson (1965)がしばしば 用いた単純なマーブル落とし課題に、弁別学習の要素を付加したものである Dusek らは、正 反応率(偏好率変化)で情報機能を査定し、反応速度で動機づけ機能を査定した。

強化の条件としては、次の3群が設けられた。すなわち、正反応に随伴して強化が与えられる 随伴強化群、反応のいかんにかかわらず随伴強化群に1対1対応させて強化が与えられるYoked 統制群、および強化が与えられない無強化群であった。実験の結果、正反応率に関しては随伴強 化群が他の2群よりも高かった。また反応速度に関しては、随伴強化群と Yoked統制群が無強

化群よりも速かった,これらの結果は、強化の情報機能は随伴強化群でのみ示され、動機づけ機 能は随伴強化群と Yoked統制群でともに示されたことを意味している。

本研究では、 Dusek らと類似の課題を用いて、言語強化の組合せにおける強化の機能を検討 する。言語強化の組合せに関する従来の研究(Buss, Braden, Orgel, & Buss, 1956; Brackwill

& O'Hara, 1958; Spence, 1970)では、情報機能と動機づけ機能を明確に分離して捉えたもの はないように思われる。言語強化の組合せとは、次の3つの場合をいう(1)正反応には"正し い"と言い、誤反応には"まちがい川 という(Right‑Wrong,以下RW), (2)正反応には"正 しい''と言い、誤反応には何も言わない(Right‑Nothing,以下RN), (3)正反応には何も言わ ず、誤反応にのみ"まちがい''と言う(Nothing・Wrong,以下 NW)C 従来の多くの研究では、

RW≒NW> RN という成績が示されているが、これは主として言語強化の情報機能を反映し ているものとみなされる。

本研究では、先の研究にならって、情報機能の測度として正反応率を用い、動機づけ機能の測 度として反応速度、すなわちブロックごとの総反応数を用いることにした。

243

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244 玉瀬 耕治・浦上  隆

方     法

被験者  幼稚園年長児60名が被験者として用いられた。これらの被験者は、男女の数を考慮 しながら、 RW群、またはNW群のいずれか‑割り当てられた。各群は、男子10名、女子10名 で、合計20名であった。各群の平均年齢は、 RW群5歳9か月、 RN群5歳8か月、 NW群5 歳9か月であった。

実験材料  課題は、ビー玉落とし課題であった。厚紙で作られた10.0cmx25.0cmx9.0cmの 箱が用いられた。箱のふたの部分には、 5.0cm隔てて横に2つ直径2.8cmの穴があけてある。直 径1.2cmの青みがかった透明のビー玉が300個用いられた。ビー玉は15.0cmx22.5cmx4.5cmの ふたのない箱に入れられている。総反応数と正反応数を測定できる記録用紙が用意された。

手続き  実験は幼稚園内に設けられた仮の実験室で個別的に行われた。被験者は1人ずつ実 験者によって実験室‑連れてこられた。部屋にはいると実験者と被験者は、机に向かって横に並 んで座った。名前を聞いたり、 2、3の短い会話をした後、ビー玉の入った箱を被験者の前に置き、

その向こう側にど一玉落とし課題の箱を置いた。

(1)オペラント期‑初めに、被験者に次のような教示を与えて、 2分間ビー玉落としをさせ た。"これからど一玉落としゲームをしてもらいます。前の箱に2つ穴があいていますね。この箱 からビー玉を1つずつ取って、この穴‑入れて下さい(動作を示す)。どちらに入れてもよろしい よ。お兄ちゃんが̀止め'と言うまで続けて下さい。では始め。"教示の後、 2分間被験者の反応 を記録した0 2つの穴のうち、どちらか1つの穴だけにど一玉を入れた被験者は、この2分で実 験を中止した。これらの被験者は,分析の対象から除外されている。

(2)習得期‑オペラント期で、それぞれの穴に1個以上の反応をした被験者には、続いて次 のような教示を与えた。"もう1度同じことをやってもらいますから、がんばってやってね。では 始め°"教示に続いて6分間被験者の反応を記録しながら、オペラント期の2分間で反応がより少 なかった穴を正反応の穴として、各群の条件で強化した。強化の与え方は次の通りであった。RW 群:正反応には"あたり"と言い、誤反応には"はずれ"と言う。 RN群:正反応には"あたり"と 言い、誤反応には何も言わない。 NW群:正反応には何も言わず、誤反応には"はずれ"と言う【

結     果

正反応率  図1は、各群の2分毎の平均正反応率を示したものである。正反応率は、各ブロ ックの正反応数を総反応数で除することによって求められた。オペラントブロックについて分散 分析を行ったところ、 F(2/57)‑1.50 で有意でなかったので、各群は等質とみなされるO 平 均正反応数について3 (組合せ)×4(ブロック)の分散分析を行ったところ、組合せの主効果 がF(2/57)‑ll.75、ブロックの主効果が F (3/171)‑53.50,組合せとブロックの交互作用が F (3/171)‑4.00で、いずれも1%水準で有意であった。

単純効果の検定の結果、組合せの主効果については、 NW群はRW群およびRN群よりも有意 に成績がよく(境にj‑3.00, f‑5.25,いずれもdf‑57, P<.01), RW群はRN群よりも成績 がよい0‑2.25, df‑57 P<.05)ことを示している。ブロックの主効果については、全体とし て、オペラントブロックから習得1にかけては有意に成績が上昇しているが(〜‑5.75, 〟"‑171,

(4)

P<.01)、習得1と習得2、習得2と習得3の間には、いずれも差がみられなかった0‑1.25,

*‑0.25,いずれもdf ‑171)c

組合せとブロックの交互作用については次のとおりであった。まず、ブロックごとに亜群の差 の検定をすると、習得1では NW群とRW群の差は′(228)‑1.83で有意でなく、 RW群と RN群の差が*(228)‑2.33で5%水準で有意であった.習得2ではNW群とRW群の差が

〜(228)‑2.67で有意であったが、 RW群とRN群の差は′(228)‑1.67で有意ではなかった。習 得3では、NW群とRW群、 RW群とRN群の差がいずれも有意であった(〜‑2.50, g‑2.67,い ずれも〃‑228)c 次に、各群ごとにブロック間の差を検定すると次のとおりであった。 NW群 では、オペラントブロックから習得1にかけて、また習得1から習得3にかけて有意に成績が上 昇している(順に(‑7.75, *‑2.25,いずれもd/‑171)。 RW群とRN群は、オペラントブロ ックから習得1にかけては有意に成績が上昇しているが(7‑6.75, t‑2.50,いずれも#‑171), 習得1と習得3では差がない0‑1.25, t‑0.75,いずれも<*/‑171)c これらの結果は、 NW群 の成績がもっともよく、次いでRW群、 RN群の順であることを示している。

1.0

0.9

0.8

正 0.7 反0.6

0.5

0.4

0.3

0.2

ォ1

0

オペラント    習得1    習得2     習得3 2分ごとのブロック

図1 各群のブロックごとの平均正反応率

総反応数  表1は、各群の2分毎の平均総反応数を示したものである。オペラントブロック について分散分析を行ったところ、 F(2/57)‑0.63で有意ではなかったので各群は等質とみなさ れる。平均総反応数について、 3(組合せ)×4(ブロック)の分散分析を行ったところ、次のと おりであった、組合せの主効果は F(2/57)‑1.21で有意ではなかった。ブロックの主効果は

(5)

246 玉瀬 耕治・浦上  隆 表1 各群のブロックごとの平均総反応数

2分ごとのブロ ック

オペラント  習得1  習得2   習得3

RW群

RN群

NW群

X    59. 25

∫∂    9.82 X    55. 90

∫β   15.09 54. 80

∫∂   12.68

67. 33 7. 96 62. 20 13. 14 58. 40 13.51

69. 45    71. 50 13.53   13. 10 64. 15    68. 95 14. 15   14.68 63. 80    66. 90 13. 76   14.77

F(3/171)‑40.13で1%水準で有意であった。また、組合せとブロックの交互作用はF(6/171)

‑0.67で有意ではなかった。ブロックの主効果については、さらに検定を行った。その結果、

全体として、オペラントブロックと習得1の間でのみ有意差がみられ 0‑2.93, df‑171, P<.01),習得1と習得2、習得2と習得3の間では差がみられなかった 0‑1.54,(‑1.62,い ずれもrf/‑171)c

反応反復率  強化の後、続けて同じ反応を繰り返す割合が群によって異なるかどうかを調べ るため、次式によって、反応反復率を求めた。正反応反復率‑正反応反復数/総反応数‑1,誤 反応反復率‑誤反応反復数/総反応数‑1。ここで正反応反復数とは、たとえば正、正、正、誤 正、正と反応した場合、 3と数えられる。図2は、各群の反応反復率を示したものである。これ らの値について、 3(組合せ)×2 (正・誤反復率)の分散分析を行った。その結果、組合せの主 効果は、 F (2/57)‑4.00で 5%水準で有意であった。反復率の主効果は、 F(l/57)‑41.38,級

R W R N N W

図2 各群の平均反応反復率

(6)

合せと反復率の交互作用は、 F(2/57)‑9.J となり、いずれも1%水準で有意であった。

有意な交互作用について、さらに単純効果の検定を行ったところ、次のとおりであった。各群 ごとに正反応反復率と誤反応反復率の差を調べてみると、 RW群とNW群では有意差がみられ たが(順に、 t‑3.67, 」‑6.89,いずれもdf‑57)、 RN群では両者の問に差がみられなかった 0‑0.56, J/‑57)c

考     察

本研究では、強化の情報機能を反映するものとして測定された正反応率では、 NW>RW>

RNという結果が得られた。 RW群とNW群がRN群よりも成績がよいという点では、従来の結 果(たとえばBuss ら、 1956)と一致している。しかし、 NW群がRW群よりも優れていたこ とについては説明しにくい。このような結果は、非言語的な強化を用いたPenney and Lupton

(1961)の研究でも得られている。

彼らは小学校2、 4年生と中学校2年生を用い、 2選択弁別課題で実験した。正反応にはお菓 子を与え、誤反応には不快音を与えるRP群、正反応にはお菓子を与え、誤反応には何も与えな

いR群、および正反応には何も与えず、誤反応には不快音を与えるP群を比較した。その結果、

誤反応に不快音を与えたP群の成績がもっともよく、続いてRP群、 R群の順であった。このよ うな結果について彼らはP群ではお菓子をもらえない欲求不満によって動機づけが高められ、成 績がよくなったものと解釈している。

この解釈は本研究にはあてはめにくい。 W (またはP)は、随伴的に与えられているので、動 機づけよりも、むしろ不快な事態を回避させ、結果的に正反応の学習を促進するという、いわば

"方向づけ"の機能をもつと考えられる。ちなみに、本研究では、反応反復率を算出したところ 興味ある結果が示されている。すなわち、 RW群とNW群では、正反応反復率と誤反応反復率に 明らかな差異がみられるが、 RN群では、両者の間に差がないということである。このことは、

Wには反応を分化させ、一定の方向づけを与える働きがあるが、 Rには反応を分化させる働きが あまりないことを示唆している。

次に、強化の動機づけ機能を反映するものとして測定された総反応数については、 3群間に差 がみられなかった。しかし、どの群においても総反応数は試行とともに増加しており、強化の導 入が反応を促進したことを示している。この測度が、適切な動機づけの指標であるかどうかは、

さらに実験を繰返して検討する必要があろう。

要     約

言語強化には、従来から情報機能と動機づけ機能があることが示唆されているが、これを明確 に分離して捉えた研究は少ない。本研究では、言語強化の3つの組合せ条件の下で、情報機能と 動機づけ機能を別々に査定した。被験者は幼稚園児を用い、課題は2つ穴のビー玉落とし課題を 使用した。習得試行では、オペラント試行でより少なく反応した穴を正反応の穴とし、次の3つ の強化条件のいずれかで強化した(1)正反応には=あたり"と言い、誤反応には"はずれ"と 言う(RW)、 (2)正反応には"あたり"と言い、誤反応には何も言わない(RN)、 (3)正反応に は何も言わず、誤反応には"はずれ"と言う(NW)e 言語強化の情報機能は、ブロックごとの

(7)

248

玉瀬 耕治・浦上  隆 正反応率で査定し、動機づけは総反応数で査定した。

主な結果は次のとおりであった(1)正反応率は、 NW群がもっとも高く、次いでRW群、

RN群の順であった(2)総反応数では、 3群問に差がなかった(3) NW群とRW群では、正 反応反復率が誤反応反復率よりも有意に高かったが、 RN群では正誤反復率に差がみられなかっ

た。これらの結果は、情報機能に関しては3つの組合せ条件間に差異があり、 Wの情報機能がR よりも強いが、動機づけ機能に関しては、どの条件でも差がないことを示唆している。

引 用 文 献

Brackbill, Y., & O Hara, J. 1958 The relative effectiveness of reward and punishment for discrimination learning in children. Journal of Comparative and Physiological Psychology, 51, 747‑751.

Buss, A.H., Braden, W., Orgel, A., & Buss, E. H. 1956 Acquisition and extinction with different verbal reinforcement combinations. Journal of Experimental Psychology, 52, 288‑295.

Dusek, J.B., & Dietrich, D. M. 1973 Informational and motivational components of social reinforcement.

Journal of Experimental Child Psychology, 16, 267‑277.

Penney, R. K., & Lupton, A. A. 1961 Children's discrimination learning as a function of reward and punishment. Journal of Comparative and Physiological Psychology, 54, 449‑451.

Spear, P.S. 1970 Motivational effects of praise and criticsim on children's learning. Developmental Psy‑

chology, 3, 124‑132.

Spence, J.T. 1970 Verbal reinforcement combinations and concept‑identification learning: The role of nonreinforcement. Journal of Experimental Psychology, 85, 321‑329.

Stevenson, H.W. 1965 Social reinforcement of children's behavior. In L. P. Lipsit & C. C. Spiker (Eds.), Advances in child development and behavior, Vo】. 2. New York: Academic Press, 97‑126.

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Informational and Motivational Properties of Verbal Reinforcement Combinations

Koji Tamase

Department of Psychology, Nara university of Education, Nara, Japan

and Takashi Urakami

Kashihara Elementary School, Kashihara City, Osaka, Japan (Received April 30, 1981)

The purpose of this experiment was to examine the informational and motivational properties of verbal reinforcement under three verbal reinforcement combinations.

Sixty丘ve‑year‑old children were tested in a two‑hole bead dropping task. They were

assigned to one of the three experimental conditions; RW, RN, and NW. The task was to drop beads one at a time into either one of the two holes of the box. The correct responses were to drop beads into the hole into which the subject dropped beads less frequently during two‑minute operant trials. After operant trials the subject was given three blocks of two‑minute reinforcement trials under one of the reinforcement combi‑

nations: (l) "Hit" for the correct response and "Miss" for the incorrect response (RW), (2)

"Hit" for the correct response and nothing for the incorrect response (RN), and (3) nothing for the correct response and "Miss" for the incorrect response (NW). For each

reinforcement block an informational property of verbal reinforcement was assessed by the proportion of the correct responses and a motivational property by the total number of responses.

The following results were obtained. The proportion of the correct responses was

highest in NW, midst in RW, and lowest in RN condition, which was interpreted to show

that W was stronger than R for the informational property. The total number of the

responses was not signi丘cantly different among three conditions, which was interpreted to show that the verbal reinforcement combinations did not differ from each other for the motivational property.

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