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―その多次元性― 太田博雄

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(1)

輝度変化に伴う現象体験の変容について(第2報告)

―その多次元性―

太田博雄

 (1976壬1三1月31日  受ヨ里)

Light Perception with Changing Luminance (II) 

‑lts Multi‑Dimensionality‑

Hiroo Ota

透過光刺激の一次元として,輝度変化をおこなう時に観察される現象体験は「明るさ」の変化だけ でなく, 「まぶしさ」 「かがやき」 「きらめき」 「しゃくねつ」……等の変化としても捉えられる。

 このように,刺激における一次元上の変化に対応する現象体験の変化が,多数の表現の仕方によっ て表わされるということは何を意味するのであろうか。輝度変化という強度次元の変化によって引き おこされる現象体験は多次元的な方向性を持ち,各表現語によってあらわされる現象体験は,それぞ れ独自の量的連続体上を移動することを意味するのか。あるいは,刺激変化に伴う見えの変化は,多 次元的なものではなく,多くの表現語は,同一の現象体験を言い換えたものにすぎないのか。すなわ ち,一つの物理的次元上の変化として輝度の変化をおこなう時,それに伴う見えの世界の変化は,は たして単一の次元の変化として記述可能であろうか,という問題が握起される。換言すれば,輝度変 化に対する現象体験の多次元性についての検討の必要性を意味するものと思われる。

前回の幸晧・・において滴輝麟u激条件にて轍される隅るさの変イヒ」と「まぶしさの変化」な る表現は隈語同義的なものではなく,叡異っ湖象轍に対して付された褒現であることを鵬

かにした。

 しかし,暗背景中の小円透過光という極めて限定された刺激条件においてさえ,輝度変化に伴って 観察される現象体験は,他に「かがやきの変化」「しゃくねつ感の変化」や,擬態語で表わされると

ころの「ぎらぎら」「ぴかぴか」などの変化としても言い表わされ得る。これらの表現がはたして異 綱義触ものであるのか,あるいは,それぞれの表現語は轍によって引齢こされる顯の現象 体験に対して付されたものなのか醐らかにしつつ,輝厳化に対応する見えの世界の多様性をとら

えていこうとすることが本研究の目的である。

(2)

一110 一一 県立新潟女子短期大学研究紀要 第13集 1976

 刺激1円い透過光刺激を暗黒背景中に呈示する。変化する刺激の物理的次元としては,強度と面積 がある。雨積は直径が視角にして22. 8 ,57. 6 ,99.6 。強度はO、 06 nit,20 nit,250nitであるeそれ

ぞれの大きさの刺激が鍛階の強度で変化するので,計9種類の刺激がつくられる・更にそれらの各 刺激について,フリッカー光(約10Hz)と恒常光の2種類があり・計18種類の円い透過光刺激がつ くられた(フリッカー光のon−off比は1である)。なお,刺激設定にあたって考慮したことは次の ようなことである。即ち,本実験の目的は,輝度の変化に伴う現象体験について理解しようとするこ とであるが,光刺激の大きさの大小,時間的な変動性は,見えに大きな相違をもたらすであろうし,

又,強度の変化が同じでも,面積が大きい刺激と小さい刺激とでは,又 フリッカー光と恒常光の場 合とでは受ける印象は異なってくるであろうと考えられるため,おおざっぱではあるが面積条件と時 聞条件を広げた上で,輝度の相違によっておこってくる現象体験の変容を理解しようと考えた。

 評定:18種類の刺激をラソダムの順に呈示し,その条々について,以下のことばに関する評定尺度 上(5段階評定・まったくe−tSい,ほとんど〜ない,やや,かなり・非常1こ)で絶対半蜥を求める・

表現用藷は「まぶしい」「かがやき」 「ぎらぎら」 「ぴかぴか」「こうこう」 「しゃくねつ」の6語

である。

 破験者は女子学生13名,教官2名。計15名である。10分程度の暗順応の後に測定を開始した。

結 果・考 察

 表1は18種の刺激に対する各表現語についての15人の被験者の平均得点と標準偏差値である。評定 による得点は, 「まったく〜ない」をG点,「ほとんど〜ないj1点, 「やや」2点・ 「かなり」3 点,f非常に」4点として計算をおこなった。以下に示されるグラフは6つの表現語の全ての対につ いて,互いの異質性をとらえるために作成されたものであり,従って,結果と考察は・2つの表現語 によってあらわされる現象体験の同質性,異質性を検討するというかたちでおこなわれる。

       表1

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(3)

 〈まぶしい一かがやき〉(図1,図2)

 共通点:共に輝度上昇に伴い増大する。

 相違点:分散が大きいので開確ではないが,本実験条件では「かがやき」が「まぶしい」を上回る 傾向が見られる(図1)。図2は図1にっいて横軸を強度から面積に変換したものであるが,この傾 向は小面積条件になるにしたがって明らかになってくる。0.06 nit条件での面積効果を見ると,面積 の増大につれて「まぶしい」はしだいに増大の傾向を示すが,「かがやき」は変化がないか,あるい は減少する傾向にある。なお,「まぶしい」を感じない刺激にも「かがやき」は感ずるようである。

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〈まぶしい一こうこう〉(図3)

 共通点:共に輝度上昇に伴い増大する。フリ ッカー光条件においては,2つの曲線はほぼ重 なり合っているように思われる。すなわちtこ こから両現象体験の差異は認められがたい。

 相違点:恒常光条件においては,つねに「こ うこう」が「まぶしい」を上回る傾向がある。

すなわち,「まぶしい」は,等輝度,等面積刺 激の場合,恒常光条件とフリッカー光条件とで は,後者における方が量的に大きいが,「こう こう」は恒常光条件で低下することはない。

「まぶしい」「こうこう」共に明るさが増すととも に増大することと,10Hz付近のフリッカー光 では,かなりの明るさの増強現象がある2)こと

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(4)

一112一 県立新潟女子短期大学研究紀要 第13集 1976

搬ると,「こうこう」が齢光ifl・:t・Pとプリ・カー光鮒とにおいて・量的eこ変化ないというこ とは,齢光条件の方が,「こうこう」という囎撒の生起にとって燐倒:ということになろう・

〈まぶい一ぎらぎら〉(図4,図5)

畑点、郷簸上昇に伴って増大する.またフリ・か光条件においては洪に,耐の鰍と

ともに感覚量は増大する傾向が見られる。

雛点,「ぎらぎらコの感勲線の畑ま「まぶしい」に較ぺ小さい・すfs2っち「ぎらぎら」なる 囎鰍は,鍛上昇とともに駒するが,「まぶしい」ほどすみやかた増大は示さない・(これ蕨験 条件の骸性一すなわち,購勺豫から蜘てつくられた鰍 tc・nt・・11・d・m・asu「ed stimulus

→、らくるのかもしれない.勿論このこと馳のすべての現象㈱こついても言えることである・)

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〈まぶしい一しゃくねつ〉(図6,図7)

共通点:共に輝度上昇に伴って増大する。

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相違点,酵の差黙大きくは姻徳覚骸みると緩験条件では詮般をこ「まぶしい」が「し ゃくねつ」を上回る傾向にある.瀦の感勲線は全般噸似しているが,プリ・ 一光小醸鰭

(57.、6 ,22.、8 )において,「しゃくねつ」の変化勾酬「まぶしV・」よりも小さ噸向がみ帥 る.又図7からもわかるように,面積力言ある盤大きいことがrしゃくねつ」勲得るためには必 要のようである.これ購にプリ。カー光条鰹おいて言える・「まぶい」は滴輝度轍でt° P, z 鵬緬翻激に対してもつよく感じられるのに対し,「しゃくねつ」は辮度庫1」激であっても巌 がある程度大きくなければならないようである。

(5)

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    図6  まぶしい 一 しゃくねつ  〈まぶしい一ぴかぴか〉(図8)

 共通点:共に輝度上昇に伴って増大する。ブ リッカー光条件においては両者ほぼ類似した変 化曲線を示している。

 相違点:恒常光条件において「ぴかぴか」の 感覚曲線の勾配は「まぶしい」より小さく,プ

リッカー光条件にくらべて感覚量の減少が著し い。これは,時間的な変動の条件が,輝度が高 いということと共に,この現象体験の生起の上 で重要なものとなることを意味すると思われ

る。

 〈かがやき一こうこう〉(図9)

 共通点:共に輝度上昇に伴って増大する。

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   (面積効果)

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        nit         nit 図8  まぶしい ぴかぴか

又,小面積条件(22.8 )をのぞいて,両者の変化曲線はほとんど類似しているようにおもわれる。

相違点、71J。か光鮒では「こうこう」とい槻象体験は「かがやき」npt.oaど強く存在してい ないように思われる。しかも,その傾向は刺激面積が小さくなるほど明らかとなる傾向にある。した がって「かがやき」にくらべ「こうこう」とい朔象轍は小面積やブリ・ 一光という条件では得 にくいと考えられる。

      1  くかがやき一ぎらぎら〉(図10)

 共通点:共に輝度上昇に伴って増大する。

相鯨,凝験条徽おいては「カ・がやき」がつねに「ぎらぎら控上回っている・こ嵯は麟

(6)

一一 114−一一一 県立新潟女子短期大学研究紀要 第13集 197β

光条件において,より大きい。これは「ぎらぎら」の生起がプリッti」 一一光条件において有利である が,恒常光条件になると感覚量が著しく落ちこむためと思われる。       J一

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図9  かがやき一こうこう 図le

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 〈か力皇やき一しゃくねつ〉(図11,図12)

共通点:共に輝度上昇に伴って増大する。

 損違点:Fしe・くねつ」も前述のギぎらぎら」と同様,本実験条件では「かがやき」感を下回喬 その差異は胴激面積麺小さくなるにつれて大きくなる傾向にある。 「しゃくねつ」は罫かがやき]に

くらべ瀦の影響を強授け,小さくな嶺こつ楓その感覚量が灘ていくため・剃瀬積が小

さくなるにつれて両者の差異は大きくなってくるのであろう。

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(7)

 くかがやき一ぴかぴか〉(図13)

 共通点:共に輝度上昇に伴って増大する。

 相違点:星リッガー光条件ではあまり違いはみられないが,恒常光条件では「ぴかぴか」は「かが やき」にくらべて低下している。

 〈こうこう一ぎらぎら〉(図14>r    、

 共通点:共に輝度上昇に伴って増大するeブリヅカー光条件においては両者の感覚曲線はほぼ重な り合っている。       、      1,

 相運点:恒常光条件において両者の差異がみられる。生起条件としては「こうこう」は恒常光条件 示有利であるが「ぎらぎら」感は不利となる傾向がある。

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 〈こうこう一一しゃくねつ〉(図15)

 共通点:共に輝度上昇に伴って増大する。

 相違点:本実験条件においては全体として「こうこう」がつねに「しゃくねつ」を上回る傾向を持 つが,恒常光条件において,その差が大きくなっている。

 〈こうこう一ぴかぴか〉(図16)

共通点:共に輝度上昇に伴って増大する。

相違点:両者の差異は恒常光条件において明瞭に見られる。すなわち「ぴかぴか」は「こうこう」

を下回り,しかも,その曲線勾配は小さい。

(8)

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図20  しゃくねつ 一 ぴかぴか  (面積効果)

 以上,極く限定された条件下ではあるが,透過光刺激について観察するとき,われわれの持ち得る 現象体験は様々な表現言吾によって言い表わすことができることをみてきた。そして,それらのことば の指示物としての現象体験の異質性,あるいは同質性をさぐることを目的として,今回の実験が行な われた。輝度上昇していく刺激を観察するときに生じる現象を裏現するのに使われることばのうちか ら,特に類似すると思われるものを6語選んで,互いの関係をとらえようとするとき,単一の条件で 輝度変化をおこなうだけでは,その刺激条件が狭小になっていることでi蓑現語間の相違がとらえな

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一118 一一一 県立新潟女子短期プく学僻究紀要 第13集 1976

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き塒にはとらえら紘かった異質性が,小酪条件において顕現したり・齢光条件ではとらえら れなかった異質性が,フリッth ・一条件でとらえられるにいたったものもあった。       、  輝度を変化することによって体験される現象を考えるとき,一一・ maに「明るさの変化」という一つの 次元においてのみ考えがちであるが,実際に観察してみると,単一の属性の量的変化として論ずるこ とは,あまりに単純すぎるように思われる.輝厳化にともない・撫濾覚属性が誤なった次元 上を移動していくという視覚世界の構造が存在しているように思われる。

      参 考 文 献

1)太田博雄:輝度変化に伴う現象体験の変容について一その多次元性一       県立新潟女子短期大学研究紀要.1975,No・12,139−148・

2)杉山貞夫:フリッカーの生i理心理学的研究心理学モノグラフ東大出版会,No・12・1970・56−63・

参照

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