論文審査の結果の要旨
氏名:大井田 憲 泰
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:日本の医師における飲酒行動とその関連要因に関する研究 審査委員:(主 査) 教授 石 井 敬 基
(副 査) 教授 亀 井 聡 教授 岩 﨑 賢 一 教授 鈴 木 孝 浩
医師の飲酒習慣に関する調査はカナダ,スイス,ドイツ,フィンランドなどから報告されているが, 本邦で は2007年に「医師の飲酒頻度」のみが報告されている。著者は日本の医師の飲酒に関する意識の向上を目 的として, 医師の飲酒習慣を詳細に調査した。
対象は日本医師会会員 7,500 名を対象とし,(男性:6,500 名,女性:1,500 名)自記式調査票を郵送し,
5,954名(79.4%)と高い回収率を得た。最終的に年齢・性の記載の無い100名を除き, 5,854名(男性:4,627
名,女性:1,227名)の医師を対象に飲酒習慣の有無と年齢, 性, 診療科, 運動習慣, 喫煙との関連, さらに, 勤務実態, 睡眠との関連性について解析を行い以下の結果を得た。
飲酒習慣有り(純エチルアルコール〜男性:40g/回未満, 女性20g/回未満)は男性62.5%, 女性50.2%。 リスク飲酒習慣有り(純エチルアルコール〜男性:40g/回以上, 女性:20g/回以上)は男性 21.0%, 女性
20.9%であった。年齢が進むにつれ飲酒習慣・リスク飲酒習慣はともに減少した。多変解析の結果, 飲酒習
慣は性(男性), 診療科(外科・整形外科), 運動習慣(有り)がリスク因子であった。リスク飲酒習慣では 性(女性), 診療科(外科・整形外科), 運動習慣(有り), 喫煙(有り), 睡眠問題(入眠障害,夜間覚醒,早朝覚 醒有り), 労働時間(1日10時間未満)がリスク因子であった。
上記の結果は年齢が進むにつれ飲酒習慣・リスク飲酒習慣は減少し, 1日10時間以上労働が飲酒習慣や リスク飲酒習慣のリスク因子にはならないことを示唆し, 日本の医師の節度を持った飲酒習慣が明らかに なった。しかし, 女性医師や特定の診療科, 喫煙や睡眠問題のある医師はリスク飲酒習慣のリスク因子で
あり, さらに, 2014年の国民健康・栄養調査による飲酒習慣は男性34.6%, 女性8.2%であり, 一般国民に
比べ医師の飲酒習慣は高率である。医師の患者教育を行う社会的責務を考慮すると,日本の医師たちに望ま しい生活習慣が根付く対策を行う必要がある。
本報告は医師の飲酒習慣と生活習慣・勤務実態との関連を調査した始めての報告である。
よって本論文は、博士(医学)の学位を授与されるに値するものと認める。
以 上 平成 29 年 2 月 22 日